ベグニオンモブ将転生   作:野竜先輩

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第二十九話 元老院の罪

 バルテロメの私兵団が到達したのは、ヘッツェルを説得した翌日の昼間だった。私兵団を率いるのはセルゲイという、主人ほどでないが鼻の大きな男だ。

 

 あのバルテロメに絶対の忠誠を誓っており、散り際のセリフは『バ、バルテロメ様……』だ。信じられん。原作では女王エリンシアの決死の制止により、ラグズ連合、ベグニオン帝国軍双方が一時撤退する中、クルベア私兵団を率いる彼は、バルテロメの命に従って非武装のエリンシアに襲い掛かった。

 

 結果としては、その場に残っていたグレイル傭兵団と王宮騎士団にコテンパンにぶちのめされるのだが……それでも戦場を去るバルテロメの殿を見事に務めたのである。元老院の臣下としてはかなり出来た将軍だ。口は悪いが。

 

 そんな男だからこそ救えない。ノーズやロンブローゾのようにはいかないのだ。

 

 ただ少なくとも、グレイル傭兵団に殺されることはないだろう。原作と違い神使が完全に手中にある現状、行動を起こすタイミングはこちらが決められる。クリミア領内でラグズ連合とベグニオン軍が相対するより早く。なんならクリミア領内でベグニオン軍による、事実上の略奪が行われるよりも早く動くことも不可能じゃない。

 

 そこは今日の結果次第だな。そんなことを考えながら、フラゲルの前まで辿り着いたセルゲイを迎える。

 

「出迎えご苦労。貴殿がモンテ将軍か?」

「えぇ。長旅お疲れさまでした……ちなみにバルテロメ様ですが」

「分かっている。すぐに出立すると言っているのだろう? そのつもりで兵たちには、少しばかり休息を取らせている」

 

 ドヤ顔で語るセルゲイだった。さ、さすがバルテロメの部下だ。さながら亭主関白な夫を献身的に支える妻の如し。

 

「ふっ。バルテロメ様はああみえて、苦労のかからぬ方なのだ」

「そうか……?」

「そうだとも! 私からバルテロメ様の素晴らしさについて、日が沈むまで語り明かしてもいいのだが……それはまた別の機会にしようか」

 

 まぁ分かりやすい人ではあるけども。今俺がバルテロメを上手く転がせるのは、俺の勝利条件と彼の勝利条件が食い違っているからに過ぎない。だがもしかしたら、何かしらのコツを掴めば、案外簡単に操縦できるのかもしれない。

 

 ……逆にヘッツェルは操縦なんて出来る気がしない。なにせ昨日、どうしてルカンを裏切ることを飲んでくれたのか。説明しがたいのだ。もう一、二度交渉が必要になると思っていたのに、あんなにも容易くルカンを裏切った理由が。何かを見落としている気がする。

 

「あぁ、セルゲイ。よく来てくれました」

 

 そうこうしている内に、バルテロメが現れて、セルゲイに話しかけた。

 

「ゼルギウスには、既に軍の準備をさせています。このままクリミアを進みましょう」

「はっ! バルテロメ様の御心のままに!」

 

 ……もしかしてセルゲイが甘やかしたから、バルテロメがこんなことになったのでは? いや、ほんの数行程度のテキストしかないお前が、どうしてこんなはっちゃけてるのかは分からないけど。

 

 それはそうと、俺も留守を預かる身分だし、一声くらいかけておこうか。

 

「バルテロメ様、どうかお気をつけて」

「くすくす……この私が、いったい何を気を付けると言うのです。不思議なことを言うものですね」

 

 社交辞令です。まぁでも機嫌は悪くなさそうなのでいいか。ゼルギウスの心労が少しでもマシになれば儲けものだ。

 

「バルテロメ様」

 

 そんなことを思っていれば、今度はゼルギウスがやってくる。

 

「ゼルギウス。軍の準備は済みましたか?」

「はい。問題なく進軍可能です」

「よろしい……くすくす、すべてが順調ですね」

 

 一人悦に浸るバルテロメを尻目に、セルゲイがゼルギウスへと話しかけた。

 

「貴殿が音に聞くゼルギウス将軍ですか。クルベア公爵軍の将、セルゲイです」

「うむ。よろしく頼む」

「えぇ、こちらこそ。貴方は神聖なるバルテロメ様に見初められた方です、今後ともよしなに」

「……!?」

 

 動揺を隠せないゼルギウス。一応元老院議員は全員聖職者だから、神聖という表現は文化的には間違っていない。ゼルギウスも、神聖なるセフェラン様とか適当に言い返してもいいんだが。なんならセフェランはベグニオン初代女王オルティナの王配、神使のご先祖様にあたる。バルテロメよりはだいぶ神聖だ。

 

「ゼルギウス、セルゲイ。挨拶はそのくらいにして、早く支度を済ませなさい。進軍しますよ」

 

 バルテロメに促された両将軍は、それぞれの軍勢を率いてフラゲルを出立していった。あれはゼルギウス、大変だろうなぁ。

 

 

 

 その後はノーズ邸に借りた執務室に戻り、普段通りの業務に戻る。

 

「お疲れ様です」

 

 執務室に戻るとフォレが出迎えてくれた。机を見ると、整頓された書類の山が出来上がっている。

 

「私の方で終わらせられるものは終わらせておきました」

「そうか、ありがとう。なら……」

「少し休憩されてはいかがですか?」

 

 最近はフォレに予定管理すら任せているから、フラゲルに着いてから俺が裏で"何か"をやっているのは筒抜けだ。事の全容を知らないから、なお不安なのだろう。

 

「そうだな。たまにはいいだろう」

 

 仕事はフォレが終わらしてくれたので、ティータイムとでも洒落込むか。

 

 執務室でフォレと二人、用意してもらった紅茶に口を付ける。紅茶は門外漢なのであまり分からないが、帝都でよく飲む銘柄と比較して香りが強い気がする。セリノスの森をベグニオンが支配したのはちょうど例の虐殺があってからだから、文化的な隔絶があったのかもしれない。

 

「……総司令も離れましたし、これで少し落ち着きますか?」

 

 フォレが問いかけてくる。俺の気苦労の理由にバルテロメが上がってくるか。でも表向きのストレス要素は彼くらいだなぁ。裏では結構おっかなびっくり色々やっているんだが。

 

「こっちはそうだな。ノーズにロンブローゾに、他にも見知ったメンツばかりだ。落ち着く」

「こっちは……というと?」

「裏で進めてる案件が、そろそろ片付く。今まで黙ってて申し訳なかったな」

「ラメール絡みの件ですね? ……最近は鴉使いが荒いって、ラメール怒ってましたよ」

「そうだな。ラメールは特に気の毒だった。話せるようになったら、全部話そう」

 

 未だに彼女が一番気にしている血の誓約について、鴉の民がラグズを裏切り続ける理由を聞けていないだろうからな。飛ばし合う指示もそれなりにぼかしたものばかりだし、ストレスはすごそうだ。それでも任務は忠実にこなしてくれるから、彼女は信頼できる。

 

「……それが終わったら、モンテ将軍も少しは休めますか?」

「むしろやる事自体は増えそうだが、精神的には楽になるな」

「……将軍ご自身は気付いていないみたいですけど、明らかにしんどそうですよ。心配にもなります」

「分かった。これが終わったら、まとまった休みを取る」

 

 流石にすべてがまとまった後なら、一日くらいは身体を休める日を設けてもいいだろう。とにかく今日が正念場だ。

 

 そうしている間に、扉をノックする音が鳴る。誰が許可を出すでもなく、ラメールが入ってきた。

 

「……モンテ将軍に伝言。『荷物は無事運び入れ終わった』ってさ」

「分かった。フォレはシグルーン隊長に、ノーズ邸まで来るよう伝えてくれ」

 

 フォレに指示を出し、自分はオリヴァーの下へ向かう。

 

 荷物とは当然サナキのことだ。バルテロメがフラゲルを発ったのち、キルヴァス勢で秘密裏にノーズ邸に運び入れる手筈となっている。セキュリティは当然内側にいる俺が抜け穴を用意していた。あとはシグルーンを呼び出し、ヘッツェルを連れてくるだけだ。ここで主要メンバーを集め、計画の最終調整を行う。

 

 

 

 リワープの杖でヘッツェルを連れてくる。オリヴァーはこの会議には参加しないでもらう。サナキはオリヴァーのことを死んでいると思っているはず、要らぬ警戒をさせたくない。

 

 二人で部屋の扉を潜る。部屋の中ではすでに、サナキとネサラが待機していた。ヘッツェルはネサラの姿を見ると、得心がいったとばかりに声を漏らす。

 

「そうか……キルヴァスが、動いていたのだな……」

「ちなみにこれは好奇心ですが、元老院はどう考えていたのですか」

「……ルカン殿の推理では、元老院の誰かか、クリミア、デイン辺りが候補だったな……」

 

 キルヴァスは候補から外れていたのか。もっともこの世界線のキルヴァスは、血の誓約の抜け穴を知ったタイミングが最悪に近い。裏切りを働き、フェニキス島が焼き払われた直後だ。単独では神使を手土産にラグズ連合への寝返りも難しい状態で、わざわざそんなことをする理由はない。

 

 それでもクリミアよりは怪しいと思う……というのは、クリミアの頭脳であるフェール伯ユリシーズが別の仕事をしていると、俺が原作知識で知っているからだろう。

 

 やりとりをしている間に、シグルーンが部屋に入ってくる。シグルーンはサナキを視界に入れるや駆け出した。

 

「サナキ様……っ!」

「シグルーン!」

 

 シグルーンはサナキの前で跪き、サナキはシグルーンを抱擁する。

 

「よく……よくぞご無事で……!」

「そう泣くでない……ここからが忙しいのじゃからな」

「はい……!」

 

 ひとしきり再会を嚙み締めたのち、サナキが顔を上げる。俺たちの方を――ヘッツェルを見るその目付きは厳しかった。

 

「……神使様」

「ヘッツェル。おまえには聞かねばならぬことが山ほどあるが……時間が無いゆえ、ここでは一つだけ聞く。なぜわたしを助けた?」

 

 げ、ヘッツェル。ここは話を合わせて……

 

「……私は何もしておりません。どこからか計画を知ったモンテが、独断で神使様をお救いしたのです。私が軟禁の話を聞いた時には、既にルカンが事を進めた後で……私は、何も……」

 

 この局面、いくらでも口裏を合わせるくらい出来たはずだ。それが分からぬ彼ではない。ふと、過去にヘッツェルが言ってきた言葉の数々が思い出される。

 

『私たち元老院は、遠からず処刑されるであろう』

『神使様が死ぬべきではなく、私たちの罪は裁かれるべきだと』

『私のこれまで犯してきた罪、元老院が犯してきた罪を……懺悔したい』

 

 ……合点がいった。ヘッツェルは許される気がない。すべての罪を懺悔した後、裁かれるくらいのつもりでいる。今日ここに来たのは、俺の立てた計画を前に勝ち目がないとさっさと白旗を上げたに過ぎない。

 

「そうやって、セリノスの民も見殺しにしたのか」

「あの時は、私は何度も反対をして……それでもルカン殿に押し切られ……」

「我が祖母、先代神使の時もか!」

「……先代の神使様の時は……私は……」

 

 ヘッツェルは目を伏せ、息を吐いた。そして言いづらそうに言葉を紡ぐ。

 

「……賛成も、反対もせず。ただ行く末を、見ていました」

 

 先代神使暗殺事件。先代の神使であるミサハが、神使の秘密について世間に暴露しようとした直前のタイミングで、元老院により暗殺された事件だ。セリノスの虐殺に繋がる事件だが、これも首謀者は既に元老院に籍を置いていた、当時28歳のルカンということになっている。

 

「なぜじゃ! なぜ祖母ミサハは、殺されねばならなかった!」

 

 ダメだ。止めなきゃマズいのに、絶対俺が知っているはずのない情報過ぎて口が出せない。

 

「……先代の神使様は、元老院と皇帝家のみに伝わる事柄を、世間に公表しようとしたのです」

「今ここで申せ、拒否は許さぬ」

 

 サナキに強く言い渡されたヘッツェルは、俺とネサラの顔を見てから、観念したように吐き出す。

 

「過去の神使は、すべて印付き。そう、発表されようとしていました」

 

 神使はすべて印付き。つまり皇帝家はラグズとの混血ということだ。ミサハが公表しようとしていた内容であり、彼女がこれを公表しようとした直前、元老院によって暗殺された。

 

 初代ベグニオン王国女王オルティナが鷺の民エルランと成した子が、現在まで連綿と続く神使の系譜の祖だ。しかしその子が生まれたとき、エルランはラグズとしての力を失ってしまう。ベオクとラグズの間に子どもが生まれると、ラグズ側の親の能力が失われてしまうのだ。

 

 絶望したエルランと黒竜王デギンハンザーは、この事実は特にラグズ側に深い反発が生まれると考え、事実を隠蔽することにした。エルランは事故死したことにして表舞台から姿を消すことになり、オルティナはベオクと再婚して、エルランとの子どもはその男との実子として育てられる。『ベオクとラグズの婚姻は禁忌、女神の意志に反する』という話はこのタイミングで作られたものだ。

 

 神使も印付きなんだから印付き差別止めましょう。女神の作り出した命に優劣なんか存在しない……というのが作中の文脈だ。だけど少なくとも、帝国の前身たる王国の初代女王オルティナ~初代神使までの血統表への信頼性が損なわれるから、普通に皇帝家の正統性に関わる事案なんだよな。子どもの取り替えはしちゃいけないねってこと。

 

「……女神様のお声を聞く力は、女神様の怒りに触れたはずの、印付きの力によるものなのです」

 

 ……あぁそうか! 『神使が印付き』なのは知ってるけど、『印付きが女神の怒りに触れた罰というのは、エルランとデギンハンザーが作った嘘が発端』って情報を持ってない元老院視点では、神使って『女神の声とされる何か』を受信してる悪魔の血筋にしか見えないのか! そりゃ総出で軽んじるわ!

 

 しかも都合の悪いことに元老院は聖職者ばかり、一般的な政治家より圧倒的に信心深い。おまけにこんな情報、当然外には持ち出せないトップシークレットだ。議員になったときに敬虔であればあるほど、ストレスも尋常じゃないだろう。原作ではやられ役の元老院側の視点なんて当然出てこないから、なんだか新鮮だ……なんて感心してる場合じゃない。

 

「嘘を申せ! それなら、わたしは……!」

 

 サナキは印付きではない。ベオクとラグズの混血ならすべて印付きという訳ではなく、混血の家系から稀に生まれてくる。印付き以外の混血は至って普通のベオクで、特異な力は持ち合わせない。

 

「……神使様は印付きではございませぬから、女神様の声を聞けぬのも道理です」

「わたしは……神使では、ない?」

 

 神使であることを待望され、自身もそれに応えようとしていた齢13の少女には、あまりに荷が重い事実だ。

 

「ちょっと待った。その話、事と次第によっちゃ……」

 

 マズい。今度はサナキがベグニオンの国家元首でないと困る立場のネサラが立ち上がった。えっとえっと……

 

「ベグニオン皇帝は慣例的に神使の力を有する者が継いでいましたが、神使でなければ皇帝になれないという規則は存在しません。神使様が国家元首であることは揺るぎない事実です」

「……モンテの言う通りです。神使様に反抗せぬ限り、ベグニオンとキルヴァスの間の、血の誓約が発動することはありません」

「……」

 

 元老院側のヘッツェルの言葉添えもあったことで、何とか納得してくれたのかネサラは席に戻る。あ、危なかった。ここでネサラ離反なんて展開になったらやってられん。

 

「……この話、セフェランは知っておるのか」

 

 サナキは震える声で、腹心の名を出した。セフェランは20年以上議員を務め、ついこの前には議長にまでなっていた。この事実を知らないならばおかしいし、知っているなら『サナキが神使でない』ことを知りながら、それを黙って寄り添っていたことになる。

 

「元老院議員となった折に聞かされているでしょうな……」

「やはり嘘じゃ。セフェランは言っておった。わたしは『待ち望まれた神使として生まれた』……そう言っておった」

「……セフェラン殿は、嘘は申されておりませぬ。母后様が神使様を身籠られたのは、先代の神使様が亡くなられてから……ずっと後なのです。この世に生を受けた瞬間から、神使の力の有無に関わらず、神使様は神使様なのです」

 

 腹心の言葉の真意を知らされたサナキは、茫然自失となって膝から崩れ落ちる。

 

「……本当なら、そのような過酷な運命を背負わずともよい子が、政争に揉まれ、果てや暗殺されかけたのです……」

 

 地に頭を伏せ、縮こまって震えるヘッツェル。彼に聖職者としての慈悲の心が残っていたから、すべてを知っていながらもせめて神使を神使として尊重したがために、元老院の中では穏健派といった評価に落ち着いていったのかもしれない。

 

「……サナキ様」

 

 シグルーンが動揺しながらもサナキの手を取る。しかしサナキの手に、力は籠っていない。

 

「ヘッツェルの言うことを、すべて信じる訳ではない……しかし、女神の声が聞こえぬのは本当のことじゃ。わたしは、本当は神使ではないのかもしれぬ……」

 

 サナキは辛うじて言葉を絞り出し、縋るような眼差しをシグルーンに向ける。だがそのシグルーンですら、『神使』親衛隊の隊長だ。目の前が真っ暗になった心境だろう。

 

「……わたしはどうすればよい?」

 

 喪失感に包まれた一人の少女の、行き場のない問い。それに真っ先に答えたのは彼女の騎士だった。

 

「サナキ様。一つ申しておきたいことがあります」

「な、なんじゃシグルーン……」

「私の忠誠はサナキ様ご自身にあります。神使という位に対するものではありません」

 

 目を見開くサナキを、シグルーン自身は跪いたまま立ち上がらせた。

 

「幼いながら元老院の言いなりにならず、セフェラン様と共に常に民のために働きかけておられた。私たち親衛隊は、この方になら生涯お仕えできると思ったのです」

「シグルーン……しかし民は……わたしが神使だから、慕ってくれていたのだ」

「それは……」

 

 主従のやりとりを眺めていたい気持ちもあるが、そろそろ割って入らせてもらう。俺自身の立ち位置を、サナキに示す必要がある。

 

「それはその通りです。神使様……いえ、皇帝陛下」

 

 俺が声をかけると、サナキとシグルーンがこちらを向く。

 

「陛下は政を執るようになってまだ日が浅い。神使という煌びやかな地位に、実績が及ばぬのも当然です」

「モンテ将軍、言葉が過ぎ――」

 

「ですから陛下はこれから実績を積み重ねればいいのです。今現在の難局を乗り越え、再びシエネに辿り着いたとき。陛下は数十年もの時間を得ることが出来る。その時間で何をするかは、陛下の御心のままにございます」

 

 少なくとも今は彼女に立ち上がってもらう必要がある。神使の力の有る無し等は、帝都に戻ってからじっくりと考えればいい。

 

「シエネに戻るための策は、既に私が準備しています。私も全霊を以て、陛下をお支えいたしましょう」

「……ただし条件がある。そうじゃな」

 

 よし、紆余曲折あったが、ようやく話がここまで戻ってきたぞ……!

 

「私の望みはヘッツェル様の助命。この一点です」

 

 ここまでお膳立てして、本人にその気がないからじゃあさよならって諦められるほど、俺もモンテ将軍も諦めがいい方ではないのだ。絶対生き残らせるぞ。

 




今更ですが、元老院側の設定は余白が多いので割と好き勝手解釈しています。
次回、長かった第三章も最終回です。
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