ベグニオンモブ将転生   作:野竜先輩

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第六十話 激突

 アイク率いる精鋭部隊による内部攻撃と、正門から雪崩込んだ騎士団や獣牙族部隊の攻撃により、正午前にウムノ収容所攻略が完了した。

 

 アイクはさすがに驚いた様子だったが、セネリオからは、「戦闘が早く終わるに越したことはありません」と淡白な評価だった。浮かれてはいられない、次の戦いはすぐそばまで迫っている。

 

 ルソードから齎された情報については、攻略完了後すぐに内部攻略組にも展開した。

 

「……だが、水源に毒なんか入れたら、周辺住民を巻き添えにするんじゃないか?」

「三年前のダルレカと同じでしょう。今回のデイン軍も、作戦のためなら民の犠牲など安いものということです」

 

 アイクの疑問に、セネリオが解答する。

 

 しかし、これは……どう考えればいいんだろうか。さすがにペレアスが何の理由もなしにこの作戦を承認するとは思えない。

 

 血の誓約は契約主である元老院の変節によって、もはや何の足枷にもならないはずだ。アシュナード派の件もあるし、ミカヤが攫われたことで、ペレアスでは国内の統率が取れなくなっているのかもしれない。

 

「……恐らくイズカ殿の策でしょう。デイン解放の戦いの中で、ミカヤ殿に却下されたものです。私もそこにいました」

 

 考える俺をよそに、その場に呼んでいたジルが証言を補強する。イズカがその作戦をミカヤに却下されるシーンにいたことを、原作知識で知っていたから呼んでおいた。さすがにデインの裏切り傭兵1人のタレコミでは情報の確度が足りないかもという懸念からだ。

 

 それが必要だったかはさておき、セネリオはこの情報を信用することに決めたようだ。

 

「では事実という想定で事を進めましょう。代替の水源を定めて――」

 

 セネリオが言葉を続けようとしたときであった。

 

「敵襲だ! 東からデインの大軍が押し寄せてるぞ!」

 

 ティバーンが現れ、敵襲を知らせる。

 

「……大方、私の脱走で作戦が露呈したと判断したのだろう」

 

 ルソードの推理は恐らく正しい。作戦の概要を知っている男が、敵の竜騎士と共に去るなんて場面が目撃されていないなら、そもそも見張りがなってないと言える。作戦が露呈したと判断された時点で計画は失敗。態勢を立て直すか、それとも無理攻めするか……その二択で、デイン軍は後者を選択した。

 

「……それと、敵陣には竜麟族のなりそこないが複数いた」

 

 ティバーンの報告に、その場に緊張が走る。

 

 竜麟族。人間の倍以上の体躯に見合った耐久力と、熱線のようなブレス攻撃を両立するテリウス大陸最強のラグズである。彼らが住まう竜麟族の国、ゴルドア王国は他国との交流を絶っているが、とある事情によりイズカに捕らえられ、なりそこないにされていた。

 

 そのイズカと、イズカ率いるなりそこないの大群と戦うマップが原作にも存在する。そのマップは『イズカファーム』などと呼ばれるように、決して難しいマップではない。竜麟族のなりそこないも、ティバーンならば大体1ターンで撃破可能だし、最上級職の味方ユニットをぶつければ撃破は容易だ。

 

 ……しかし問題は、この世界がマス目状ではないことだ。作中ムービーで描写された竜麟族のブレスは、城塞の塔を遠距離から容易く焼き切るほどの威力を秘めている。あれが軍勢に向けられたとき、それは人知を超えた脅威以外の何物でもない。

 

「……竜麟族にはブレスがあります。この程度の建造物に籠城するのは得策ではない。アイク、打って出ましょう」

「分かった」

 

 セネリオも同じ懸念を持っているようで、アイクを促す。

 

「モンテ将軍は引き続きベグニオン軍を率いてください」

「承知した」

 

 セネリオに返事をして、その場を去る。今回の戦いが正念場となりそうだ。

 

 セネリオと別れると、東の空から複数の影が接近してくるのが見えた。哨戒に飛ばしていた聖竜騎士団のようだ。先頭を飛んでいるのは、かなり慌てた様子のザック団長である。

 

「せ、聖竜騎士団、ただいま戻りました! 敵軍が攻め寄せておりまして――」

「それについては聞いている。ザック団長――」

 

 ザック団長、そして聖竜騎士団には今後の予定を伝えておく。今回の戦闘では、ほぼ間違いなく彼らの機動力が必要になるだろう。

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 ――管轄のベグニオン軍をまとめ上げ、クリミア軍の左翼に布陣させ終わった頃。ちょうど敵影が現れる。

 

 黒鎧で武装した大規模な兵団。それも今回は民兵などまったく混じっていない。完全なる正規軍の兵団だ。上空にはデインの竜騎士団、そしてそれに混じってなりそこないの鷹や鴉が従軍している。地上には報告通り赤竜がいる他、虎や猫といった獣牙族のなりそこないの姿がある。数はそんなに多くないが、普通のベオク兵に比べて強力な敵だ。間違いなくデインの残存兵力の多くが、ここに集結している。

 

 恐らく収容所の軍勢は囮で、民兵は総兵力をかさ増しして見せるためだけのものだったのだろう。そして収容所の内部で連合軍が休息を取り、半日くらい経って毒が回り始め、混乱している所にこの部隊をぶつける――これがデイン軍の当初の作戦ということか。

 

 危なかった。ルソードが知らせを持ってきてくれなかったら完全に詰んでいた。なんならキルヴァス兵の爆撃を使って、正門側を速攻で攻め落としていなかっただけでも不利な戦いになったかもしれない。

 

 とはいえ指揮官として、そんな弱音を吐くわけにもいかず。

 

「敵は策を看破され、破れかぶれの突撃をしている! デイン軍なにするものぞ!」

 

 そう叫び、軍を鼓舞した矢先。

 

 ――バーナーのような音を伴って、敵陣から一本の赤い閃光が迸る。ベグニオン軍の先陣に風穴を空けながら、俺のすぐ傍へと着弾した。

 

「身命を賭してモンテ将軍をお守りせよ! あの方はベグニオン軍のすべてだぞ!!!」

 

 慌てて何人かの重装兵が俺の前で盾を構える。あのブレスを直撃して即死してしまった者はともかく、後続が戦線の穴を埋め、生き残った兵士は後方に下げられて治癒の杖により回復を受ける。回復役の神官への負担を度外視すれば、見かけほどの損失は出ない。

 

 しかしそれでも兵卒に対する動揺は著しい。ターン制でない中であのリーチと破壊力は驚異的だ。しかも見れば、クリミア方に迫る竜麟族の姿もある。このままだと先に食い破られるのはクリミア方になりかねない。

 

 そんな時、化身したラメールがこちらへと舞い込んでくる。見たところ鴉王からの伝令のようだ。

 

「伝令。鷹王、鴉王が敵の竜を空から直接攻撃するらしいわ」

 

 一般兵ならともかくティバーン、ネサラならば、少なくとも竜麟族相手に一対一で劣りはしない。上空を飛び越えれば、敵の歩兵に付き合わなくてもいい。空を見れば、ティバーン、ネサラ共に自国の兵を伴って上空を進軍する様子であった。つまり他の鳥翼の兵士たちが、デイン軍の空中戦力を足止めしている間に王族で奇襲を仕掛ける算段ということ。

 

 ……空中に兵を送っても、かえって足並みが乱れる可能性がある。ならばこちらは地上に注力しよう。

 

「それなら陽動がいるな……騎兵と弓兵、魔導兵部隊に通達、竜近辺の兵隊に圧力をかける。その機に仕掛けるように伝えてくれ」

「わかった」

 

 どの道重装兵の殴り合いでは、戦線は硬直するばかり。戦線の硬直は竜麟族のブレスの格好の的だ。そういう訳で、こちらから攻勢に出る必要がある。

 

「モンテ将軍。騎兵の布陣完了しました」

 

 当然事前に準備はさせてある。戦線を支える重装兵の後方にて、ゼング率いる騎兵をまとまった数控えさせ、突撃の準備をさせてある。

 

「伝令! 敵前線に、獣のなりそこない多数! 普通の個体よりも強力で回復が間に合いません!」

 

 伝令が伝えるのは前線の悲鳴だ。降り注ぐブレスに加え、平野で獣牙族の突進も受け止めなければならないとあっては、限界が来るのも無理はない。

 

「――騎兵を突進させ、敵攻勢を減衰させる。重歩兵隊は、騎兵を突出させぬよう前進。炎魔術は獣のなりそこないに優先的に回していい」

「はっ」

「それと聖天馬騎士に伝令、騎兵と連携して地上兵の攻撃に回ってくれ。防空は聖竜騎士団に任せる」

 

 指示が行き渡り、ベグニオン軍が一斉に反転攻勢の構えを取る。

 

 ……対するクリミア方はガリア軍と共に戦っているが、かなり押されてる。アイクたちのような一騎当千の強者がいようと、兵への損耗は発生するし、なんならガリア軍は治癒を行う神官を引き連れていない。よってクリミアの神官部隊はガリア軍の治療にも割かねばならずパンク寸前。突出するアイクたち精鋭の奮戦と、ガリア軍の攻撃力で何とか押し返している現状だ。

 

 せめてこちらの攻勢が、クリミア方への圧力減にもなればいいが――そう思っていたところで、軍の後方から騎兵が一騎こちらの陣へと舞い込んできた。

 

「伝令です! レニング卿率いる増援部隊が、間もなく到着します!」

 

 レニング率いる増援部隊、確か大部分が騎兵で構成された部隊だったな。たぶんこっちの陣が、クリミアの陣よりも近かったからこっちに来たのだろう。

 

 一番欲しいのは治癒の手数だが、次手で求められるのは守勢と攻勢を切り替えるための衝突力。クリミア勢にとって、レニング隊はその足りない衝突力を補える天の恵みになり得るだろう。

 

「レニング隊はクリミアの増援に回ってくれ。こっちの人出は足りている」

「はっ」

 

 伝令が去っていくのを確認し、レニング隊到着に関する伝令をクリミアの陣へと走らせ、こちらはこちらの仕事に集中する。

 

 

 

 自陣の歩兵の間を縫って、一気に敵陣へと雪崩れ込んだ赤鎧を纏う騎兵たち。それに追従して重装兵は陣形をかけ、ベグニオン軍は巨大な突出部を形成した。鎧を纏っていないために柔らかい神官部隊や、弓兵、魔導兵といった遠距離攻撃を得意としつつも前衛ほどの固さを有さない後衛兵種に対して圧力をかけられる布陣だが、リスクは当然ある。

 

「敵騎兵に攻撃を集中しろ!」

 

 デインの将が叫んだ。周辺の兵士は一斉に、突出したベグニオンの騎兵隊に攻撃を仕掛けようとする。確かに騎兵は並外れた突破力を持ってるが、近代の砲兵のように、敵の反撃を許さないほどの熾烈な攻撃が出来るわけではない。

 

 とはいえ、反撃を行おうとする敵の攻勢を挫くという発想はとても普遍的だ。そしてそれを、部分的ながら実現する手段もある。

 

「聖天馬騎士団、かかれ! 地上部隊を支援せよ!」

 

 タニス副団長の号令の下、天馬騎士団が一斉に降下。ベグニオン騎兵への攻撃を試みる敵兵へと広範に襲い掛かった。兵力を分散し、広範囲を攻撃するというのは本来は愚策だ。そのまま何の援護もなければ各個撃破されるが、今回は騎兵突撃というこれ以上ない援護がある。騎兵が敵陣を荒らし、反撃しようとする敵を天馬騎士が降り注いで制圧、その隙に更に騎兵が暴れて――随伴する重歩兵が敵陣に穿たれた大穴を確固たるものにする。

 

 言ってしまえば、天馬騎士を砲兵の弾に見立てた支援攻撃だ。確かに天馬騎士たちにはリスクを背負わせるが、彼女らは危なくなったら上空へと逃れられるし、上空では(実力的には頼りないながらも)聖竜騎士団が防空を担い、天馬騎士たちの帰る場所を守っている。

 

 しかし、これだけ大暴れしてもその全ては陽動だ。

 

 フェニキス、そしてキルヴァスの兵たちはデインの竜騎士と拮抗した戦いを演じ、その隙にティバーン、ネサラが降下して竜のなりそこないを一体ずつ片付けている。少しずつだが、敵のブレスの数も減ってきたことで自陣にも余裕が出来てきた。

 

 そしてちょうど戦況が好転しつつある中、クリミアの陣から歓声が上がった。

 

 王宮騎士団、ガリアの獣牙族、そして見知らぬ騎兵団――あれがレニングの率いる騎士団だろう――彼らを先陣とし、息を吹き返したクリミア軍も反転攻勢に転じた。戦闘の趨勢はもはや決したと言えるだろう。

 

「トラヴィーユ、連絡だ。聖竜騎士団は陣地に戻り、例の準備を」

「分かりました!」

 

 トラヴィーユを上空に布陣する聖竜騎士団へと送り、前線の騎兵にも伝令を送る。

 

「騎兵は一旦後退して、重歩兵で再度布陣を固めるように」

 

 一応、このまま攻勢を続けて敵陣を食い破って包囲に移るという案もある。が、今回はクリミア勢の頑張り、そして包囲作戦における味方の被害を考えると見送った方が賢明だと考えた。孫子も逃げ道を残せと言っているしな。

 

 それに敵が撤退を始めたら、一度休ませた騎兵と天馬騎士を動員すればいい。奥の手も用意してある。

 

 

 

 それから、デイン軍が撤退を始めるのにそう時間はかからなかった。上空の戦いは、敵の竜麟族が片付いたのちに参戦したティバーン、ネサラの加勢で完全に決着がついた。地上の兵士もクリミア方の猛攻を前に完全に陣形が崩れ、もはや逆転の芽がない状態にまで追いやられていた。結局のところ、最後に雌雄を決したのは総合的な兵力だった。

 

 撤退を始めたデイン軍を前に、歓喜の声を上げるクリミア、そしてガリア兵たち。確かに一度は追い込まれ、勝ちを危ぶまれる局面もあった。勝利したことを喜ぶのは必要だ。

 

 ――しかしいくら何でも撤退するデイン兵が多すぎる。いくつか刈り取っておかなければ、後のネヴァサ攻略の障害として立ち塞がるだろう。

 

「ベグニオン軍はこれより追討戦を始める! 一人たりとも逃すな、逃した数だけネヴァサで同胞の命が消えると思えッ!!!」

 

 たぶんアイクはいつもの「戦意のない奴は逃がしてやれ」をするはずだ。それは良い、清廉で高潔な英雄は戦争遂行に必要である。だとするならば、ここで汚名を被ってでも負荷を減らすのが肝要だろう。

 

 一旦休息を取らせた騎兵、そして天馬騎士団が一斉に出撃する。そして――

 

「聖竜騎士団、出撃――!!!」

 

 上空を一斉に飛翔していく竜騎士団。彼らの背には多様な兵科の兵員だけではなく、シューターも備えられている。竜騎士団を用いた兵員輸送。敵の退却口に降下させ、敵の撤退を止める。騎兵、天馬騎士団との挟撃によって、撤退する敵の包囲を行うという算段だ。

 

 無論、敵の重装兵のような戦場に取り残される兵科については、捕縛してなるべく命を奪わないようにとは言っているが、敵兵の命より自軍の兵士の命を守ることを優先するべきだろう。

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 作戦が敵に露呈し、策の修正をする間もなく突撃したデイン軍。その判断は、既に西方軍が陽動に動いてしまっていることが要因であった。このまま本隊が動かねば、西方軍を見殺しにすることになってしまう。しかしその判断のツケは大きかった。

 

 ベグニオン軍による執拗な追撃。後方からは常に騎兵と天馬騎士団の圧力に晒され、要所にはすでに竜騎士団が輸送した兵団が待ち構える。それらを潜り抜けるために全ての武装解除と部隊解散を独断で許可した部隊長や、逆に他の部隊を逃がすための決死隊として全滅した部隊もあり、デイン軍の撤退戦は熾烈を極めた。

 

 デイン軍は散り散りになりながら、最も大きい集団はネヴァサに通じる林道へと逃げ込んだ。モンテ将軍は騎兵を森林に放り込むような愚は犯さないし、天馬騎士の空からの監視を躱すことも出来る。双方の魔の手を逃れるには最も適した立地だ。

 

「こ、ここまで逃げてこれたのは……」

 

 デインの将、ゲランが背後を振り返る。

 

「部隊としての体を為しているのは、これだけか……」

 

 彼の下に残った兵隊は1,000にも満たない数だった。疲労困憊、まさに敗残兵といった有様であったが、それでも纏まった数の兵隊が残っているという事実は、彼らがおかれた環境を考慮すれば十分に幸運なものであった。

 

 だが彼らが林道を進んだ先……少し視界が開けると同時に、広がる風景は――

 

 彼らの前に立ち塞がったのは、彼らにとって忌まわしき赤鎧の軍勢であった。

 

 決戦前、聖竜騎士団は哨戒の任を与えられていた。それはルソードを回収するためでもあったが、同時に聖竜騎士団に"土地勘"を持たせる役割を担った。彼らはデインという敵地の土地勘を得る中で、敵軍がネヴァサへと撤退する道筋についても幾つか絞り込むことが出来た。今、ゲラン将軍の目の前に立ち塞がる軍勢がここにいる理由はそれだ。

 

 無論、今まで腐敗していた軍勢が何の命令もなくそのような判断をすることは出来ない。すべてモンテ将軍が、予め作戦目標について指示をしていたことである。

 

「は、はは……」

 

 絶望したのはゲランだけではなく、彼の配下の兵士もである。

 

 ゲラン将軍に立ち塞がったのは、ザック団長を指揮官とする数千の軍勢である。部隊にはトラヴィーユの他、ルソードやジャンクといったモンテ将軍に近しい人材も参加していた。

 

 絶望に打ちひしがれるデイン軍残党に対し、今にも襲い掛からんとするベグニオン勢。一触即発の状況の中に、割って入ってくる一団があった。

 

 銀色の煌めく髪をたなびかせる乙女。乙女に付き従う緑髪の青年と、重厚な黒鎧に身を包み、赤いマントをたなびかせる騎士。他にも彼らに付いてきた複数人の戦士たち。

 

 その様子――特に漆黒の鎧を纏う騎士のただならぬ雰囲気に、ザックは驚愕する。

 

「な、なんじゃ。あの黒鎧の騎士は……」

「エタルド! あの男の持っている剣は我が国の至宝、エタルドではないですか!」

「なにぃ!? エタルドだと!? であればあれが、件の四俊……!?」

 

 副団長に言われ、そこでザックはようやく漆黒の騎士が持つ剣がエタルドであることに気づいた。

 

「デイン軍はベグニオン軍に、即時の停戦を申し入れます!」

 

 そう宣言するのは、銀の髪の乙女――ミカヤである。ベグニオン勢ですぐさま反応したのは、彼女の容姿をよく知るルソードであった。

 

「暁の巫女……!」

「ルソードさん、あの女の人がそうなんですか?」

 

 トラヴィーユの問いに、ルソードは首肯を返す。

 

「ただでさえ目立つ容姿に、お供の緑も一緒だ。如何に物覚えが悪くとも間違えようがない。クソ、もう少し早く出てくるか、遅く出てくれば良かったものを」

 

 ルソードは深く溜息を吐いた。

 

「……ルソードさん的には、あれとやり合ってどうにかなります?」

 

 次はジャンクがルソードに対し、そう問いかける。

 

「……漆黒の騎士が厄介極まりない。この場にいる全軍を犠牲にする覚悟で、どさくさに紛れて巫女を討ち取るのが関の山だろう」

「じゃあ止めといた方がいいっすね。らしいですよ、ザック団長」

「し、しかしモンテ将軍がどういうかだが……」

「モンテ将軍は、撤退した兵が城塞都市であるネヴァサに入ることを危惧してました。その辺りを盛り込んだ停戦なら、事後承諾でもなんとかなると思いますよ」

 

 ザックは「むむむ……」と唸り声を上げる。軍勢を止め、しばし悩んだのち……ジャンクの方を見ながら、ぼそっと呟いた。

 

「……口添えはしとくれよ?」

 

 ザックのその言葉に、トラヴィーユ、ルソードの二人が呆れた表情を浮かべていたが、当のザックはそんなことを気にする余裕はなかった。ルカンが政局を去り、神使が台頭した今。彼の政治的後ろ盾は、もはやモンテ将軍しかないのである。

 

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