日常って、意図的にしようとすると難しいです。
side・????
広大な荒野。
そこに一機の戦術機が蠢く影と相対していた。
それは帝国最強の剣であり、最後の盾が佇んでいた。
00式戦術歩行戦闘機【武御雷】
蒼い機体を紅い色が染めている。
左腕は損失して、機体の装甲も所々欠如している。
またマウントに武装は無く、右手に持っている長刀は中間から折れている。
そしてメインカメラはまるで泣いているかの様にオイルを流している。
「ここまでか。」
誰かの声が聞こえる。
「もう何も護る者が無い俺が、生き延びる意味はないな。」
疲れ果てた、男の声だった。
「さて、お前達は絶望を知るか?」
男は、蠢く影に向かって喋っている。
しかし、蠢く影は何も言わず、何かをしているようだ。
「掛かって来い、下等生物共!!」
長刀を構え、一喝する。
刹那、蠢く影が荒れ狂った川の様に押し寄せ。
そして、影が武御雷を呑み込んでいく。
武御雷は長刀を振るい影を斬っていくが、一向に減らない。
それ所か、影は武御雷を包んでいく。
「黄泉路への道連れだ。来い。」
男は何かのボタンを押す。
その瞬間、閃光が辺りを包む。
「…達…な。」
2001年3月23日
side・黒川
「……。」
目が覚めた。
周りを見渡す。
両隣には幸せそうな顔をして寝ている義娘達。
その向こうに大尉、中尉、少尉と並んで寝ている。
「……。」
時計を見てみると「3時45分」を刻んでいる。
「おいおい。」
どうして起きた自分。
こんな時間帯に起きたら今日の活動に支障をきたすぞ。
「……もう一眠りするか。」
そして俺は頭から布団を被りそのまま深い眠りに就いた。
……結論から言えば、イーニァとリアに抱き着かれて眠れなかった。
抱き枕じゃないんだぞ、俺は。
久々の実家での起床は最悪の物だった。
「眠い。」
眠気を冷たい水で顔を洗い晴らそうとするが、余り効果が無い。
やはり中途半端な時間に起きたからか?
「おはよう。」
『おはようございます。』
居間では各員、料理を作っていた。
「朝から元気で宜しい。」
さて、今回の朝食は味噌汁とご飯と魚と海苔。
全て合成とは言え、食べなければ空腹が辛い。
それに、慣れればこれもそれなりに食べられる。
「少佐、お茶いりますか?」
すると、タイミング良くリアがお茶を持ってくる。
「あぁ、頼む。」
俺は湯飲みを渡す。
そして目の前に冷たい麦茶が置かれる。
「大咲大尉と八神大尉は?」
「あ、私も頂戴。」
「お願い。」
「はい。」
今度は亜矢とあきらに茶を注ぐ。
しかし、本格的に茶坊主だな、リアは。
このまま任命するか。
「伊隅中尉達はどうですか?」
「欲しいかな。」
「僕も貰える?」
「了解です。」
次に伊隅姉妹に注ぎに行く。
そう言えば、伊隅少尉もあきらだったか。
八神あきらに伊隅あきら。
面白い偶然だな。
「姉さん、貰えるか?」
「りあ、ちょうだい。」
「はい。」
そして最後にクリスカとイーニァと自分のにお茶を入れる。
微笑ましい戦場の日常。
これを壊したくないが、そうは言ってられないな。
なら、俺に出来ることはこの子達を生きて帰すだけだ。
「何か、初めてみんなで朝食を取るな。」
「そうだね。朝食は各自で取るからね。特にくろっちは。」
「否定はしないが、俺は早朝から起きて自主訓練して報告書や申告書を書くからな。」
まぁ、朝早い時は4時には起きている時もある。
慣れればどうにでもなる。
第一、活動するだけなら4時間寝れば十分だ。
「どうだクリスカ、イーニァ。日本食は慣れたか。」
「大丈夫だ。」
「おいしいよ。」
お世辞にも上手とは言えないが、それでも普通に箸を使いご飯を食べるクリスカとイーニァ。
まぁ、来て早々に出来るまで教えたからな。
懐かしいな。つい最近の事なのに。
「なら良かった。」
「最初の頃は御箸が使い難そうだったしね。」
「そうだな。あれでよく食べられるなと思ったくらいだ。」
「けどなれたららくだよ。」
「確かにね。」
イーニァに同意する大咲。
本当に、この日常が続けば、この時間が永遠に続けば良いのにな。
朝食後、2時間かけて基地に帰って早々、副司令に呼び出しを食らう。
何をしたかと思い出しながら副司令室前まで行く。
思い出せないのでとりあえずドアをノックする。
「うん、入れ。」
許可が下りたので入室する。
「失礼します。後藤副司令、お呼びですか?」
よく見ると副司令が何かの書類を捌いていた。
良かった、仕事はしているようだな。
「昨日はご苦労様。最高のプレゼンになったと思うよ。」
「は、ありがとうございます。」
「ま、某中佐殿は眉間に皺寄せて睨んでたけどね。」
「……階段で躓かないかな、あの人。」
地味な嫌がらせを口にする。
「ま、正面から撃たない限り死なないだろう、あれは。」
「ですね。」
人が聞けば上官侮辱罪だろうが、ここでは意味を成さない。
暗黙の了解だ。
「でだ、報告書の提出、お願い。」
「了解。」
「頼んだよ~。」
敬礼をし、退出する。
待機室で俺達は各々机に向かい書類を記入していく。
ま、要は反省文の様な物だ。
しかし、量は多い。
「少佐、これで良いんですか?」
伊隅少尉が俺に書類を渡す。俺は渡された書類に目を通す。
「……漢字、間違ってるぞ。」
「え、どこですか?」
「ここだ。記録が縁になってる。」
間違った所を指摘する。
微妙な間違いだが、やり直しはやり直し。
「あぁ。気付きませんでした。」
「気をつけろよ。」
俺は再び書類に目をやる。
暫し無言になる。
すると、途端に静かになる。
「「「「「「「「……。」」」」」」」」
室内には鉛筆やボールペンの音しかしなくなった。
ふと時計を見てみると既に定刻を過ぎていた。
「リア、クリスカ、イーニァ、飯にするぞ。」
「え、もうそんな時間?」
「分かった。」
「はーい。」
すると、急に全ての音が止む。
……何だ?
「ねえあっきー、今日は何にする?」
「いつものよ。」
あ、全員一斉に夕食にするのか。
確かに区切りは良いが、全員行くつもりか?
「あ、大尉。一緒に良いですか?」
「いいよ~。ついでに、我らが隊長の奢りで食べようよ。」
はい?
何を言ってるんだこの大尉は。
「おい亜矢。それは卑怯だぞ。せめてお前達も3分の1は払え。」
地金が出るが、知ったことか。
ただでさえ扶養家族を3人を抱えているのに、これ以上出費を出してたまるか。
第一、お前も出せよ。
「良いじゃん。上が下に奢るのは、当たり前だと思うよ。」
「とは言え、流石に扶養家族を抱える黒川に奢らせるのも酷よ、大咲。」
すると、八神が助け舟を出す。
流石に今回のはありがたい。
「えぇ~、あっきー、くろっちの味方?」
「敵ではないわ。」
味方でもないって事か、と心の中で突っ込む。
口に出したら大変だし、何より面倒な事になりそうだし。
「まあ、味方になるとまた喧嘩になりそうだからね。」
……ん?
「読心術の心得でもあるのか、あきらは?」
「さぁ。少なくとも、相手にカマを掛けるのは得意ね。」
つまり、引っ掛けられたということか。
こいつは・・・・・・。
「了解。おいお前ら、飯食いに全員で行くぞ。俺と大咲と八神の奢りだ。」
「えっ?」
ここまで来れば一蓮托生だぞ。
ついでに、大尉2人にも支払わせてやる。
「そうね。上官が部下に奢るのは普通ね。」
「無論だ。士気向上のために財布を軽くするのは名誉だぞ、大咲大尉。」
とりあえず、ひっそりと逃げようとする大咲に釘をさす。
逃げられたら適わん。
「ったくも~、財布が軽くなるわ。」
「諦めろ、俺も同じだ。」
言いながら全員で食堂に向かう。
side・堀江
珍しく黒川少佐達の部隊全員が見られた。
「少佐、珍しいですね全員で夕食って。」
二ノ宮が軽口を叩く。
根は良い奴だが口が軽いところをよく大尉に叱られている。
「二ノ宮、姉さんに密告するぞ。」
案の定、死刑宣告を言い渡される。
しかし、少佐もフランクだな。
中尉が少佐にこんなこと言えば、殴られても可笑しくない。
「げ、少佐!?それは俺に死ねと!?」
「大丈夫だ、神田少佐と七瀬大尉を監視につけるから。」
完全に終わったと言える面子だな。
私なら間違いなく逃げ出す。
「嘘だろ……。」
机に項垂れる二ノ宮。
……そろそろ助けるか。
「少佐。お遊びはそれくらいで。彼も十分反省してますから。」
「堀江、相変わらず優しいな。」
少佐の勘違いに私は首を横に振る。
「飛び火がこちらに来ては困りますから。」
「堀江、お前は俺の味方じゃないのか!?」
涙を流しながら勘違いをしている二ノ宮に釘を刺しておく。
「敵ではないだけだ。」
「つまり味方じゃないって事か。」
少佐の発言に頷く。
第一、援護できるようならとっくにしている。
「神は死んだ!!」
しかし、矢張り少佐は親馬鹿だな。
特に娘達に関して過保護に見えるが・・・・・・。
「少佐、質問です。」
「何だ二ノ宮?」
懲りずにまた何かしようとしてる二ノ宮を見て、溜め息を吐く。
少しは学習しろ、馬鹿者。
「娘さんを下さいって言ったらどうします?」
「安心しろ。今すぐ佐渡島のハイヴに放り込む。」
少佐の無表情が怖い。
とりあえず二ノ宮を殴っておく。
本気で恐いからな。
少し急いで書いた感があり、直す予定です。
しかし、日常会話が難しい……。