side・黒川
早朝、俺はシミュレーションルームでデータを入力していた。
予めリアが作成したパッチを当てて、現地で更新する所を更新する。
カタカタカタカタ………
周囲にはキーボードを叩く音と機械音しかしない。
リアほど早く入力できないので、気がつくと昼前になっていた。
しかし、それでも半分しか入力できなかった。
「ふむ。」
とりあえずでイイと割り切り、手を止める。
すると、腹の虫が抗議の声を上げる。
「そう言えば、朝から何も食べていなかったな。」
ツナギのまま、俺は食堂へ向かう。
席を探していると風間少尉が手招きをしていたので、反対側の空いている席に座った。
「ありがとう。」
「どういたしまして。」
行儀は悪いが、仕様書を見ながら終了した作業項目にチェックを入れていく。
まだ半分以上残っていると思うと気が重い。
リアならもう終わっているのにな。
「どうかしたか?」
「いえ、どうして作業着なのかと思いまして。」
「あぁ、その事か。」
言いながら俺は仕様書を祷子ちゃんに見せる。
「シミュレーションのデータ追加方法ですか?」
「そうだ。あいつなら短時間でできるんだが、俺はそこまで優秀じゃないのでね。
これを見ながらしていたのさ。」
正直、膨大な量を裁くのには時間が足りない。
それに加えて情報の入力には俺の限界がある。
その結果、どうしてもあいつの2倍以上時間が掛かる事となる。
「どうにもままならないものだ。」
「何がですか?」
「ん?あぁ、作業効率の事だ。」
「効率ですか?」
祷子ちゃんの尋ねに頷いて答える。
「適材適所は必要だなと思ってね。」
「確かにそうですね。ポジションでも適材適所ですしね。」
「ま、愚痴っても仕方がないさ。
どうせ予定では今日1日は作業で潰れるしな。」
スケジュールはある程度決めているし、そこまで慌てることでもない。
「じゃ、俺は作業に戻るから。」
「お疲れ様です。」
「あぁ。」
話もそこそこにし、シミュレータールームに戻る。
side・神宮寺
座学が終わり、一息つきながら考えるのは夕子の部屋の劇的な変化だ。
昨夜、夕子の研究室が何故か綺麗になっていた。
誰がしたかは知らないが、正直安心した。
あの部屋の汚さは前々から頭を悩ましていたし。
けど、本当に誰がしたのかしら。
「久しぶりですね、少尉。」
「えっ?」
すると誰かに声をかけられたので振り向く。
そこには帝国軍の制服を着た少佐が立たれていた。
……誰?
何処かで見たことあるのだけど、思い出せない。
「あの、どちら様でしょうか?」
「……。」
すると少佐が微妙な顔になる。
そして何かを考えているのか頭を掻いている。
「あ~、黒川敏行ですよ。」
「黒川中尉!?」
つい驚いてしまった。
あの新任の中尉が少佐になっていた事もあるが、何よりあの当時と顔つきが全く違う。
幼さが消えた青年そのものだった。
何だか感慨深い思いが込み上げて来る。
「えぇ、今では少佐ですけどね。」
苦笑しながらも敬語で話してくれる辺りは変わらないわね。
外見は変わっても根底はそこまで変わってないみたいね。
「本当に久しぶりですね。何年ぶりになりますかね?」
「9.6作戦以来だから、6年以上ですかね。
あ、自分は敬語は大丈夫なので。」
「分かったわ。しかし、お互い年をとったわね。」
「そうですね。」
思えば6年以上も経てば少年も青年になるしね。
昔のままとはいかないわね。
「そう言えば神宮司さんは教導隊からこちらに?」
「えぇ、引抜よ。」
「へぇ。と言う事は香月副司令経由ですか。」
「その通りよ。そう言う黒川君は?」
「自分は相馬原基地の方でアグレッサーをしています。」
アグレッサーと言うとエリート部隊ね。
まぁ、彼らの経験から言えば当然と言えば当然ね。
「へぇ、エリートね。
でもどうして帝国軍人がここに来たの?」
「香月副司令の要請ですよ。これ以上は本人から聞いてください。」
「分かったわ。所で、どれくらいここに居るの?」
「1週間とは言われましたが、延長しそうですね。」
気疲れした様にため息をつき、肩を落とす。
どうやら彼も色々ある様ね。
「そう。暇があったらお茶でもしましょう。」
「了解です。では、失礼します。」
そう言うと彼は真っ直ぐに何処かへ行く。
神宮司軍曹登場。
凄い上官に付いていく苦労人達です。
因みに、恋愛フラグは立ちませんので悪しからずorz
では感想お待ちしております。