side・????
雨が降る。
森林は青々と息吹を吹き返し、燃え盛る炎を消していく。
川は黒く汚れ、赤く染まっていた。
風は血と硝煙と黒煙と悲鳴を運び、消えていく。
そこに誰もいない。そこに、イキモノはいない。
居るのは……
血も涙も通わない、バケモノが居るだけだった……。
side・黒川
懐かしい夢を見た。
俺が大陸で生きるために何でもしていた頃。
そしてその中でも最も胸糞悪い光景。
「……ちっ。」
苛立ちが心を占める。
左腕も左足も疼くように痛い。
まるであの時の痛みが再発したかの様に。
さっさと着替えると、訓練の為にシミュレータールームへ向かう。
ふと、廊下の窓を見る。
外は、雨が降っていた……。
side・涼宮
訓練4日目。
その日は何だか少佐の様子がおかしい。
その事に気が付いたのは訓練中の事だった。
「あの、少佐?」
「……。」
上の空なのか、私の声に反応しない少佐。
目の前を見ている様で虚ろに近い目で居る。
「黒川少佐?」
「……ん、呼んだか?」
やっと反応してくれたが、まだ上の空っぽかった。
「はい、何度も呼びました。」
「……済まなかった。で、何だ?」
「シミュレーション終了しました。今回は判定勝利です。」
「判定勝利か……。」
何かを考えているのか、それとも何も考えていないのか分からない表情をしている。
少しして少佐はそのままの表情で口を開く。
「上がらせろ。」
「え?」
「判定とは言え勝ったんだ、約束は守る主義だ。
シミュレーターの後始末は彼女たちに任せる。
報告書の提出も厳命しておいてくれ。」
「はい、分かりました。」
「任せた。」
そう言うと少佐は立ち上がってそのまま退出される。
「……。」
そして、私一人になった。
何がどうなってるのか、よく分からない。
昨日まで判定勝利では決して上がらせなかった少佐が、今日に限って違った。
『遥、次はまだ?』
『おや、速瀬中尉はやる気ですね。そこまで満足されていないとは。』
『あら、そう言う宗像だってまだ満足してないでしょ。
あの少佐の鼻を明かしたいって言ってたじゃないの。』
『そう言えばそんな事も言いましたか。』
『お二人共、そんな話をしていると怒られますよ。』
『主に私と伊隅大尉と少佐がな。』
『あぁ、お前たち、そんなに足りないのならばもう少しランクを上げるか?』
『上等ですよ大尉!!遥、次の支持は?』
みんな終わった後なのか異常にテンションが高い。
やる気はあるのは良い事だけど、良い事だけど……。
「えっと……。」
どう伝えよう。
『遥、どうしたの?』
「終了だって。」
『何が?』
「シミュレーション。」
『何で?』
「勝ったから免除だって、少佐が……。」
『『『……。』』』
気まずい沈黙の後。
『『『『『えぇーーーー!?!?!?』』』』』
みんなの叫び声がシミュレータールームに響き渡る。
side・風間
シミュレータールームの片付け後、全員で食堂へ向かう事となった。
「何であそこで終了なのよ!!」
「まーまー、水月、落ち着いて。」
「これが落ち着いてられるかってのよ!!」
道中で速瀬中尉が色々な不満を口にしている。
それを涼宮中尉が窘めている。
「流石、速瀬中尉。欲求不満の吐きどころがなくて八つ当たりとは。」
「うぐっ。だ、だってさ、判定勝ちでOKってどういうことよ!?」
「勝ちは勝ちだと言う事では?」
「それにしたって納得できないわよ!!」
「五月蝿い。」
一瞬で温度が2~3度下がった。
そんな感覚になる低い声だった。
全員で後ろを振り向くとそこには明らかに不機嫌そうな少佐が
背丈ほどある対物ライフルを抱えていた。
「廊下で話すのは勝手だが、大声で叫ぶな。
貴様は発情した犬や猫か、速瀬中尉。」
「い、いえ、そんな事は……。」
「欲求不満なら相手してやるぞ、速瀬中尉。
お望みとあらば、な。」
口調が荒くいつもの少佐とは何処かが違う。
「あの、少佐。」
「何だ、風間少尉。君が相手か。」
「……何か、無理してませんか?」
いつもの少佐らしさが無いと言うか、何処か余裕が無い様に感じる。
「……やはり、分かるものか。」
「何となく違和感、みたいなものがあります。」
少佐が窓の方を見る。
朝から降る雨は変わらず窓を濡らしている。
「雨が、嫌いなんだよ。」
ポツリと言った一言。
だが少佐のそれは何か、後悔、苦悩、懺悔……。
様々な負の感情が込められていた。
その一言に全員が沈黙する。
「雨にいい思い出がなくてな。
大概、ロクでもない事しか起こらないんだよな。」
『黒川少佐、黒川少佐、司令部までお越し下さい。
繰り返します……。』
「……だから雨は嫌いなんだよ。」
少佐の顔が苦虫を潰し、さらに合成コーヒーを飲んだような表情になった。
そして全員で少佐から視線を逸らした。
何か中間管理職の悲哀を感じた。
side・黒川
地下の副司令の部屋にキーカードを通す。
入室し、敬礼する。
「お呼びですか、香月副司令。」
「用がなきゃ呼ばないわよ。」
「確かに。」
でも無ければ無駄なリソースを消耗すると言いそうだ。
すると通信端末を投げ渡される。
「後藤からよ。」
それに納得し、応答する。
「お疲れ様です、どうかしましたか?」
『おー、お久しぶり。どうだった、元気にしてたか?』
「えぇ、幸いに五体満足ですよ。」
『そりゃーよかった。』
「で、お話とは?」
どうせ碌でも無い事だろうかと考えてると。
『うん、訓練期間の延長ね。』
「……はい?」
……ナニヲイッテルンダコノオッサンハ。
クンレンキカンノ、エンチョウ?
……エンチョウ、園長、円超、円頂、延長。
延長!!
『あとで命令書携えて子供たちを向かわせるから、よろしくねー。』
言い終わったのかブチッと何かが切れる音がした。
「おい、おっさん。」
通信機から聞こえるのは流砂の音だけだった。
「……ふざけんなー!!!!」
俺の叫びは虚しく響くだけだった……。
とりあえず丑の刻に釘打ちに行こう。そうしよう。
あとこの後、香月副司令に怒られた。
散々だ。
「……。」
俺は黙々と対物ライフルを的に向かって撃ち続ける。
とりあえずあのおっさんの面を想像しながら撃ち続ける。
弾が切れたら空のマガジンを外し、フルチェンバーのマガジンを装着し、装填し、撃ち続ける。
とりあえず10マガジン撃った所で手を止める。
「……ちっ。」
俺は対物ライフルを分解し、整備を始める。
無心に、何も考えずにパーツを拭き、オイルで磨き、埃を取り、グリスを塗っていく。
手入れを終えたら組み立てる。
久々だったからか少し時間が掛かった。
ハンドガンならもう少し早いのだがな。
「ふぅ。」
雨はまだ降るが、それでも前に進むしか出来ない。
なら、前に進むさ。
愚直に、己の信念のままに。
少ししたら過去編を挟んでそろそろイベントを発生させます。
キャラクターはお馴染みのヒロインズです。
近状報告
・赤セイバー白ドレスverが一発で当たったぜ!!
ヒャッフォーイ!!