MUV-LUV ALTERNATIVE ACE   作:もち猫

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すみません、今回は少しリアルを優先していたため、遅れました。
まぁ、見てくれる人が居るかどうかは別ですけどね。


第5話「黒き未亡人」

2001年3月15日、相馬原基地第2格納庫

 

side・黒川

 

天候は快晴、雲ひとつ無い爽快な天気。

そしてハンガーには骨組みだけになっている戦術機が二機居る。

 

「しかし、搬入された戦術機に試作機が混じっているとはどうなんだ?」

「さぁ。私に聞かないでよね。」

 

隣に居た亜矢が肩を竦める。

俺はとりあえず、仕様書(の様な物)に目を通す。

 

 

~YF-23『ブラックヴィトウⅡ』~

『先進戦術歩行戦闘機計画でノースロック社がマクダエル・ドグラム社の協力を得て開発した試作戦術機

 

 

 遠・中距離砲戦能力を重視している従来の米国製戦術機とは対照的に近接機動性の重視、

長刀・銃剣の標準装備など対BETA近接戦闘能力を設計段階から考慮されているのが特徴。

 

 YF-22との実機模擬戦闘試験では両機共に一歩も譲らない熾烈な戦闘を繰り広げたが、

対BETA近接格闘戦能力に於いてはYF-22を遙かに上回り、総合性能でもYF-23が優位とも囁かれていた。

 

 しかし、調達コストと整備性、そして機体がG弾運用を前提とした米軍の戦略ドクトリンと合致しない

 

と判断された為、

不採用となった。 』

 

 

しかしブラックヴィトウか。

直訳するとクロゴケグモだっけ。

寧ろ、行かず後家だろ、こいつは。

 

「だがC整備で当分は使用禁止か。」

「当然よ。愛機が整備不十分で命を落とすのは避けたいわ。」

 

隣の八神が呆れた口調で言う。

確かに野ざらしで置かれていたのだ、どんな損傷があるかも分からない機体に乗りたくはない。

 

「シゲさん、どれ位の時間を要しますか?」

 

俺は近くで整備員を指示していたシゲさんに尋ねる。

 

「C整備を2機だからね~、稼動状態まで整備班緊急シフトを組んで3日~4日かな。

まあ、これ2機だけだからそんなに掛からないよ。」

「ご迷惑掛けます。」

「別に良いよ~。米国の戦術機が長刀振るうのにどんな構造をしているのか全員興味津々だよ。」

 

見ればスパナを持った整備員の目が光っていて怖い。夜に出ると間違いなく子供は泣くな。

 

「おとうさん、こわい。」

 

イーニァが震えながら服の袖を引っ張る。

その姿に整備員数名が倒れるが無視する。

どうせすぐに復活するだろう。

 

「大丈夫、徹夜明けの俺達の方が怖い。」

「そうだね、半分死んでるよね。主に顔が。」

「そうね、半分死んでるわね。主に肌が。」

 

大咲と八神が半笑いし、俺も暗い雰囲気を展開する。

 

「りあ、こわい。」

「気にしたら負けだよ、イーニァ。」

 

リアがイーニァを抱きしめながら言う。

 

「各自、搭乗する戦術機の調整をしておけ。いざ実戦で不具合が出ても知らないぞ。」

『了解(りょうかい)。』

「まぁ、大咲はまだ良いからな。俺と3日後に行う。」

「了解。」

「では解散。」

 

解散同時に蜘蛛の子を散らすように各自の戦術機に向かう隊員達。

俺は近くの椅子に座り、各自に当てられた戦術機の早見表を見る。

 

『鉄の盾中隊コールサイン・搭乗衛士名・搭乗戦術機

イージス01・黒川敏行少佐・YF-23 RAV2

イージス02・大咲亜矢大尉・YF-23 RAV1

イージス03・八神あきら大尉・F-15E

イージス04・イーニァシェスチナ少尉・F-18F

イージス05・クリスカビャーチェノワ少尉・F-18F

イージス06・伊隅まりか中尉・F-15E

イージス07・伊隅あきら少尉・F-15E

イージス08・リーリア黒川准尉・E-18G』

 

この中で難物なのは俺と亜矢、それにリアだろう。

リアの戦術機は情報収集に特化した戦術機なので、電装品関連が特殊。

それに加え、最悪は基盤を交換する可能性もあり、修理と調達に一苦労だろう。

だが、運用次第では対AH戦では強力な切り札となり得る可能性を秘めている。

まあ結局は戦術に併せた運用次第だろうな。

 

 

 

side・あきら

 

戦術機『F-15E ストライクイーグル』

スペック表だけだと陽炎とは雲泥の差だ。

まぁ、陽炎のベース機のF-15Cとは80%近く中身が違うから、しょうがないか。

 

「う~ん。」

 

仕様書と睨めっこをしながら設定をしていく。

だがなかなか終わらない。

隣のリア少尉補を見てみると、すでに終わっているのか下で茶坊主をしていた。

他にもクリスカ少尉、イーニァ少尉、八神大尉も終わったのか下でお茶を飲んでいる。

 

「早いな~。私もあれだけ早かったら……。」

「リアちゃんたちは先天性の能力、あっきーは経験。逆立ちしたって追いつかないよ。」

 

声が聞こえるのでそちらの方を見ると大咲大尉が立っていた。

 

「大尉!?」

「努力したって凡人は凡人。逆立ちしたって天才には追いつかないわ。」

「そ、それは……。」

 

否定したいが、大尉の言っていることは尤もだ。

実際、努力程度で埋められる差じゃない。

それは今まで見てきた事だ。

けど、感情は納得していないし、出来ない。

 

「でもね、あなたはまだ若いから努力しなさい。努力し続ける天才になりなさい。」

「えっ?」

「私だってね、経験積んでここまで来たんだから、同じ時間を掛ければ同じ所には来れるよ。」

「はい。」

「それこそ、あそこで難しい顔してる隊長も、初めはチキンだったんだよ。」

 

大尉の指差す方には難しい顔をして整備員と話す少佐が居た。

しかも若干眉間に皺を寄せている。

 

「……想像できませんね。」

 

少佐の技量はここに居ると嫌でも耳に入ってくる。

それこそ、エースクラスの腕前を持っているというのが全員の答えだ。

その少佐が臆病者だったのは正直、分からない。

 

「そうでもないよ。前線の兵士は皆仲良くジョン・ドゥ。

死体は食われるか燃えて無くなり、ボディバックも必要なし。

昨日まで隣で笑ってた奴が今日は居ない。」

 

「……そんな事が日常茶飯事の場所だったからね。

強くなる。じゃなくて、心を強くしなければ、恐怖で潰れてしまうんだよ。

だから凡人じゃなくて神話や物語に出てくるような英雄になろうとしてるんだよ、あいつは。」

「英雄……。」

 

正直、想像できない。

 

「けどね、話には続きがあってね。」

「続きですか。」

「太陽(神)に近づきすぎた英雄(イカロス)は、ロウで固めた翼を焼かれて地に落ちたってね。」

「それって!?」

 

遠まわしに、少佐は死ぬかもしれないと言っているのと同じだ、と。

でも大尉は悲しい顔をして遠くを見てる。

まるで大切なものを失いたくな、けどと、言う、そんな表情だ。

 

「それくらい分かってるよ、あいつも。けどね、もう止まることは出来ないの。ここまで来たんだから。

 

「……。」

「ま、その時は私達だけで十分だから。」

「はい……。」

 

何となくだが、少佐達の闇の一部が見えた気がする。

 

 

side・黒川

 

「お~う、全員居るな~。」

 

全員の戦術機の調整が終わった頃、後藤副司令が現れた。

 

「敬礼。」

 

号令と共に全員が立ち敬礼をする。

後藤副司令も敬礼で返す。

 

「さて、そろそろ計画の全貌でも話しますか。」

「全員、整備班会議室に行くぞ。」

『了解。』

 

 

整備班会議室。

本来は整備班が各自の作業報告をする場所だが、今回は俺達が使用する。

俺は設置されているパソコンを使い、スクリーンに映し出す。

 

「XFJ計画。」

 

XFJ計画のエンブレムが表示される。

 

「この計画はお偉いさん(国防省)が新型戦術機が実戦配備されるまでの間、

不知火の改良をもって戦力の充足を図ることを期待して生産された不知火・壱型丙である。

だがこの機体は、当初の想定以上に燃費が悪く、稼働時間が低下して通常運用が難しいため、

総機数が100機未満で生産中止となってしまった。」

 

不知火・壱型丙の全体図画が回転しながら表示される。

正直、俺も一時期は代替機として乗っていたが、コイツの燃費の悪さには頭を悩ませた。

 

「その為、不知火の改良計画は日米合同の戦術機開発計画であるXFJ計画の中に組み込まれ、

改めて研究が行われることになった。

その中で誕生したのがこの不知火・弐型だ。」

 

次に不知火の面影を残しながら、全体的に改修が加えられた不知火・弐型が表示される。

 

「だがそれとは別に、外国製戦術機を雛形に国産戦術機へ改修し、量産する計画が生まれた。

それがこの次期主力戦術機開発計画だ。」

 

今度はYF-23の全体図を表示し、不知火・弐型と一緒に表示させる。

 

「この計画の裏側には、純国産に拘り袋小路に陥っている帝国の体質を変えるべく、

巌谷中佐と共に副司令が唱えた計画だ。

その大まかな内容だが。」

 

01.戦術機はYF-23をベース機とする

02.国産パーツと外国製パーツの相互利用による整備時間の短縮と調達コストを抑える

03.調達コストを低くしながらも、高性能の実現

04.補助システムで新兵でも扱える戦術機とする

 

「なお、一応だが不知火弐型とのコンペも行われる。」

「なるほど。」

 

大咲が何か納得したような声を出す。

 

「つまり、どっちが勝っても日本の技術革新は行えるって事ですか?」

「実も蓋もないが、そうだな。実際、技術革命として十分な起爆剤だろう。」

 

実際、どうなるかは分からない。

しかし、こちらは無理難題が多い。

 

「まあ、負ける可能性がひっじょ~に高いが、出来レースにするつもりは無いからな。」

「それは勿論です。何時如何なる時でも全力を以って任務を遂行します。」

 

後藤副司令の注文に頷く。

正直、八百長は死んでもごめんだ。

 

「ですが、計画はあちらの方が長いのでは?」

「残念。計画自体は俺達の方が長いんだよ。

けどね、実行する為のお金が無かったからお蔵入りだっただけ。

もう少し理解あったら良かったんだけどね。

当時は連中、壱型丙の事で頭が一杯だったから。」

 

とりあえず、その計画の初期から関わっている俺は無言になる。

金策に走って色々な所から借金したな。

 

「大佐、上の借金のツケが私達に来るんですか?」

「しょうがないでしょ。上が馬鹿なら下が優秀に成らないと。この業界、生きていけないよ。」

 

大咲が文句を口にすると、後藤副司令が大袈裟に手をあげる。

 

「副司令の言っている事も確かだな。」

「そうだね。ここも同じだし。」

「えぇ。上がサボりの常習犯なら下は苦労するわ。」

「誰だろうね~、そんな上司は。」

 

俺も首を縦に振って同意する。

だが副司令は暖簾に手押し、ぬかに釘打ちの如くとぼける。

 

「さて、重い会議はコレくらいにするかね。あとは各自、シュミレーターで訓練してね。」

『了解。』

 

その声を以って会議は終了した。

 

side・あきら

 

目標を視認する。

少佐の愛機、92式試作戦術歩行戦闘機・改修型「翼竜」。

私の搭乗しているF-15Eに劣る筈なのだが、少佐が乗ると数段上に感じる。

 

「エンゲージ・オフェンシヴ。イージス05、フォックス03、フォックス03。」

 

目標をロックオンし、36mmを掃射する。

しかし、直前で視界から消え、一発も当たらない。

 

「くっ。」

『FSCばかり頼るな。手動補正も掛けていけ。特に高機動戦闘時はFSC処理が追いつかない場合もある。

それと相手を撃とうとするな。相手の二手先を呼んで撃て。そうすれば当たる。』

「りょ、了解。」

 

僕は言われた通り先を読んで撃つが、当たらない。

 

『筋は良いが、意識し過ぎだ。』

「は、はい。」

 

続けて先を読みながら撃つ。すると、とうとう一発が少佐の機体を掠る。

 

「あ。」

 

思わず声が出る。だが、その直後に弾の雨が機体に命中する。

 

「あれ?」

『良い読みだ。が、最後で気を抜いたな。これはその罰だ。』

 

手厳しい一言だった。だが、その声色は優しい感じがする。

 

「……はい。」

『よし、今度は実戦形式だ。04、05とエレメントを組め。開始は俺がレンジアウトしてから1分後。

今度は正面から行くぞ。』

「『了解。』」

 

少佐に返事をする。

 

『イージス01、戦線離脱する。02、03は時間を計測。頼むぞ。』

『『了解。』』

 

すると少佐の機体が高速で離脱していく。

正直、似たような機体とは思えない性能だ。

 

「やっぱり、腕かなぁ。」

 

side・黒川

 

窓から見える夕焼けが空を橙に染める。

そして机には俺達ベテランを除く全員が机に伏していた。

 

「ご苦労様。今日の教導は終わりだが、生きているか?」

 

へんじがない。ただのしかばねのようだ。

 

何かが聞こえた様な気がするが、あえて気にしない。

 

「さて、大咲大尉はどう見る?」

「若いって良いわね~。覚えも良いし、今日一日で色々なことを学べたと思うわ。」

 

大咲が相変わらずな事を言う。一応、俺たちも十分若いのだがな。

 

「八神大尉はどうだ?」

「そうね。経験が無いんだから、体に刻んでもらうしかないわね。

ただ、この状態で実戦って事も有り得るし、早めに仕込みたいわ。」

「そうだな。」

 

無意識に握る手が食い込む。

例えそれが起きたとしても、それだけは全力で阻止する。

 

「全員、起きれるか?」

 

すると徐々にだが全員が起き上がり、姿勢を正す。

 

「もし今の現状のままで全員を戦場に出せば2人から3人は高い確率で死ぬ。

俺達も万能ではない。そして戦場では皆平等だ。死ぬのも生きるのも運。

これだけが戦場での唯一のルールだ。

だから、俺よりも長く生きろ。生きて、生きて、生き抜いて、俺達が生きていた証として存在しろ。

良いな!!」

『了解(りょうかい)!!』

 

全員が席を立ち敬礼する。

 

「さて……。」

『黒川少佐、黒川少佐、後藤副司令がお呼びです。直ちに副司令室までお越し下さい。繰り返します……

 

。』

 

溜め息を吐く。良い予感が一切しない。

 

「全員、良い予感がしないから覚悟だけしておけ。解散。」

 

そして俺は一路、副司令室を目指す。

 

 

 

「1週間後に帝都本土防衛軍との合同演習ですか?」

「そうだ。要望はあちらから、見返りは経験と宣伝。どうだ?」

 

少し思案に暮れるが、条件が異常に破格過ぎる。まるで裏があるかのように。

 

「条件が破格過ぎますね。他にも何かあるんでしょう。」

「正解。大方、俺達を負けさせて計画中止に持ち込もうって腹だろう。

あそこの師団長はバリバリの国産派だからな。」

 

溜め息を一つ吐き、命令受諾の意味を込めて敬礼する。

 

「了解。」

「それと、当日は出資者や後見人が来賓として来るから無様な戦いだけはするなよ。」

 

俺はそれに無言の敬礼で答える。

 

 




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