プログラム開発の能力を上げたいよ。
2001年3月22日
side・黒川
帝国軍厚木基地演習場傍のテント。
俺達は椅子に座り、コーヒーモドキを飲んでいた。
「不味い。泥水啜ってるみたい。」
八神が率直な感想を述べる。
確かに、モドキは香りも味も悲惨。だが、それを飲まないとやれない状況にある。
早朝出立なので、ともかく眠い。
中尉以上は大丈夫そうだが、少尉組は目が虚ろ、イーニァに関しては俺の膝で寝ている。
唯一例外なのは整備班の所へ出向いているリアだけだろう。
「同感。天然物はないの?」
不味そうな顔をして大咲がぼやく。実際、不味いのだろう。
「残念だが種切れだ。次の密輸まであと一週間は掛かる。」
流石に10kg買ったが、使えば無くなる。こればかりはどうしようもない。
しかも定期便は未だ海の上を航海中。
おかげでこの泥の様なコーヒーモドキを飲んでいる訳だが。
「一週間か。長いわね。」
カップを回しながら少し残念そうな顔をする八神。
娯楽が少ない現状、コーヒーが楽しみなのは分かるが、そんな残念そうな顔だけはして欲しくない。
まるで、俺が悪い風に見える。
「しょうがないだろう。闇市じゃ定期便が来る時くらいしか入らないんだから。」
「え?闇市とか、違法じゃ……。」
伊隅中尉が阿呆な事を言ってる。
全く、部隊(うち)のお嬢様方は無知と言うか純粋と言うか。
まあ、そこの熟れた方々よりは……。
「くろっち、今かなり失礼なことを考えなかった?」「黒川、今とても失礼なこと考えなかった?」
「何がだ?」
とりあえず惚ける。
バレれば確実に殺されるし。
「「次はないから(ね)。」」
意味深げに大咲と八神が言う。
とりあえず無言になる。
ここで何か言えば確実に殺される。
実際、いくら俺でもFFで死ぬのは勘弁だ。
「けど、ま、盗品はアウトだけど密輸は引っかからないぞ。」
屁理屈だが、筋さえ通せば理屈になる。
実際、暗黙の了解と言う言葉もあるし所謂、前線で快適に過ごす方法のひとつだな。
「そうよ。それに上だけが天然で下が合成って、不公平すぎるでしょ。」
「そうね。それに今までのコーヒーや少佐の秘蔵品、それに七瀬大尉の秘蔵品も闇市のものよ。」
とりあえず、帰ったら部屋にあるウィスキーやウォッカを別の棚に仕舞おう。
じゃないとこいつらが勝手に飲みそうな気がする。
「うわぁ。僕達、そんなものを飲んでたんですか?」
「それって、良いんですか?」
そんなのとか、それって言われると結構傷つくな。
一応、あの手この手を使って入手した良い物なのだし。
しかも高級品だし。
「だから言ったでしょ。盗品じゃないんだから。」
「ま、現実はいつも無慈悲だ。理想を抱くだけなら誰でも出来るぞ。」
実際、理想を現実にするには、相応の犠牲が必要になる。
今度は座学で教えてみるか。理想と現実の違いとか。
「でも、これも慣れれば面白い味に感じるわよ。」
「妥協すれば飲めるだ。」
本当はしたくないのだが。
人間生きる為には妥協と止揚を上手く使い分ければ良い。
「味覚が狂ったの?」
「言ってろ。」
「少佐~。」
と、作業を終えたのかリアが帰ってきていた。
「ん、少尉補か。どうした?」
「全機準備完了。ところで、後藤大佐は?」
「向こうでカボチャやピーマンとお話中。やれ無駄金だの無意味な部隊とか嫌味を言ってるぞ。」
その筆頭にペン回しの得意な帝国陸軍参謀本部付き中佐が居る。
今頃、普通の人なら致死量に値する毒を吐いているのだろうな。
……まあ、大佐にはあまり意味の無い事だろう。あの人、右から左に流すだろうし。
「それとも同行するか?あいつ等なら文句と嫌味だけで人が殺せると思うぞ。」
「えっと……遠慮します。」
「だろうな。俺も……。」
『黒川少佐、後藤大佐がお呼びです。至急、来賓席までお越しください。』
無意識に十字を切る。……仏教徒だが。
「……口は災いの元。今度からは考えて喋ろう。」
「頑張れ。応援だけはするよ。」
「頑張ってね。同情はしないわ。」
「その、お疲れ様です。」
大尉連中は楽しんでいるが、伊隅少尉だけが心配してくれた。
「伊隅少尉、ありがとう。」
そう言うと席を立ち来賓席へ向かう。
来賓席は物々しい警備状態が敷かれていた。
しかも警備員は斯衛の赤や山吹、それに黄色。
なるほど、と共に納得してしまう。
彼女なら確かにこの物々しさは納得できる。
「止まれ。」
「ここから先は立ち入り禁止だ。」
入り口前で赤と山吹の斯衛に止められる。
俺は左手で上着の懐から証明書を取り、渡す。
「帝国軍、本土防衛軍所属、黒川敏行少佐だ。」
「失礼した。葵少尉、案内してくれ。」
「了解です。こちらです、少佐。」
「あぁ。」
葵と呼ばれた少尉の後をついていく。
葵少尉の服装は白。黒ではない所を見るとどう考えてもあの御方か。
やれやれ、どうしたものか。
「少々お待ちください。」
そう言うと葵少尉がテントに入っていく。
テント前には赤が二人。相当の腕利きだなと意味も無く考える。
少しして、葵少尉が出てきた。
「お入り下さい、少佐。くれぐれも粗相の無い様に。」
「分かっています。」
そう言うと葵少尉が来た道を戻っていく。
「黒川少佐、入ります。」
「おう、入れ。」
「失礼します。」
やはりと言うか何と言うか、予想が当り少し呆れてしまう。
そこには煌武院悠陽殿下と月詠真耶大尉が後藤副司令と話し合っていた。
「正月以来ですね、黒川。」
「久しぶりだな、黒川少佐。」
声を掛けられ、とりあえず敬礼をする。
「は、殿下もご健在で何よりです。君臣、心より安堵しております。
それと月詠大尉もお久しぶりです。正月の懐石以来ですね。」
春の日のような暖かさの悠陽殿下と、薔薇の様に美しくも棘がある月詠真耶大尉。
対極だからこそ相性が良いのだろうかとついつい考えてしまう。
「えぇ、お兄様こそお元気そうで。」
「殿下、幾ら自分がかつて世話役をしていたとは言え、公式の場ではお控えください。」
それに月詠大尉からの視線が痛いです。
視線で人が殺せるのなら、間違いなく10回は死んでいる程に。
「いえ、何時如何なる時も如何なる事があろうとも、お兄様はお兄様です。」
悠陽の優しさにグッと来るが、それに比例して大尉からの殺意の視線が増加した。
「いやいや、少佐。美人に慕われて、男冥利に尽きるだろう。」
一瞬、大佐を本気で殴りたい衝動に駆られるが、鋼鉄の意志で押し留める。
「無論、黒川家の誇りです。しかし、此度はどのようなご用件で?」
すると、場の空気が変わるのを肌で感じる。
ここからが本番だな。
俺は気を引き締めて殿下の方を向く。
「黒川少佐、此度の結果次第ではこの計画の支援を打ち切ります。」
「それは重々承知しております。無論、此度の一戦で良い結果を出しましょう。」
そも、負ける気など毛頭ない。
あんな連中に負けるほど、耄碌していない。
「分かりました。」
「では、そろそろ時間なので失礼します。」
「えぇ。御武運を。」
俺はそれに敬礼で答える。
俺は与えられたテントで中隊全員と作戦会議をしていた。
「全機、作戦を伝える。」
ホワイトボードに戦力差を書く。
『戦術機36:7』
普通なら無理と匙を投げるレベルの戦力差だろう。
ま、負ける気は毛頭無い。
あれだけの大見得を切ったのだから勝つ以外に道はないしな。
「現状、戦力差はおよそ5:1。明らかに我々のほうが不利だが、これは卓上の数字に過ぎない。」
「と、言うと?」
「まぁ待て伊隅少尉。相手は総数ではこれだが、中隊に分断できれば……。」
再び戦力差を書く。
『戦術機12:7』
「大体、2:1位ね。」
「けど、まだ厳しいわね。」
「あと一手、ですか?」
大尉達の言葉と伊隅中尉の言葉に頷く。
「そこで、だ。罠をここと、ここと、ここに設置する。」
地図上に磁石を三つ、一定のポイントに置く。
「08は情報処理を最優先。02、03は俺と共に囮になれ。残りは猟師だ。
敵をこれを置いているポイントまで誘導後、08が操作して起動させろ。
……質問は?」
大咲が手を上げたので目線で指名する。
「編成は?」
「08はアンブッシになりそうなポイントで固定。
索敵にパッシブ、レーダーを併用しろ。今回は移動しないからサーマルは必要ない。」
「了解。」
「02・03は俺と、04は06・07とチームを組め。」
「「「「了解(りょうかい)。」」」」
全員の配置や段取りを細かく確認していると、チャイムが鳴る。
「さて、時間だ。全機搭乗。今までの訓練を思い出して行動しろ、いいな。」
『了解(りょうかい)!!』
掛け声と共に全員、戦術機に向かう。
「さて、始めるか。」
戦争を……。
side・沙霧
『センサーに反応なし。完全に隠れています。』
「やはり奇襲か。」
少数における
『大尉、隠れているのならば分散して探すべきです。』
「中尉、君は本気でそんな事を言っているのか?
この状況下では分散すれば敵の思う壺だぞ。」
飯島中尉の言葉に呆れてしまう。
彼は確かに優秀だがどうしても相手を侮る癖がある。
だが、この国を憂う気持ちは確かだから仲間にしたが。
『第一、あんな外国かぶれの部隊に負けるわけがありません!!』
『黒川少佐は大陸から生き抜いてきた猛者。沙霧大尉と互角の衛士よ。
他にも大咲先輩や八神先輩は一流の衛士。大尉、私は奇襲が目的だと思われます。
ここは下手に散開せず、大隊で行動し一気に殲滅すべきです。
あの二人を生かしておいては後々大変な目に逢います。』
駒木君も私と同じ意見らしい。
彼女も、大咲大尉や八神大尉に楽しい『教育』を施されたのだろう。
最後のほうを話しているときの彼女は少しばかり語尾が強い。
『しかし、時間が経てば不利になるのはこちらです。』
確かに、飯島中尉が言っていることもあながち間違いとは思えない。
もし乾坤一擲だったとしても数の上では不利だが、それを覆されない訳ではない。
「……駒木中隊は中央、飯島中隊は右翼を、私は左翼を調べてみる。
異常があればすぐに通信で援軍を呼べ、いいな。」
『『了解。』』
「よし、では散開。」
だが、私の胸に一抹の不安が残る。
あの少佐が迂闊な事をするのか、と。
次は中編です。
何時になるかな~(;/-_-)/
正直、就活なので遅れますが、許してください。
では~(;-_-)ノシ