クローンの君と半分エーテリアスの僕   作:kakerutakeda

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連載中の別の小説が煮詰まったので
新連載します

広めの心で読んでください


クローン拾いました、どうすればいいですか

雨が降っていた。ホロウの空に本来、雲など存在しないはずなのに、灰色の空間に液体が降る。おそらくは崩壊しかけたホロウの外殻から流れ落ちた何かだろう。それでも、彼は濡れることも厭わずに瓦礫の山を掘っていた。

「……誰か、生きてる人、いませんか……」

 弱々しい声が、静寂に吸い込まれる。そこには同じ顔をした少女たちの亡骸が転がっていた。数人……いや、十数人。見分けがつかないほど、彼女たちはよく似ていた。人形のような、作り物のような、けれど、どこか儚げな命の痕跡があった。

 その中で、彼はかすかな呼吸音を聞いた。

「……いた……!」

 少女は片腕と両脚がなかった。目は閉じ、顔は血に濡れ、けれどわずかに胸が上下していた。

「大丈夫、大丈夫だ……今、助けるから……っ」

 彼は震える手で、周囲の亡骸から状態の良い四肢を探した。自分が何をしようとしているのか、わかっていた。人の死体から部位を使って、生きている誰かを“修理”する――倫理的にも、人としても間違っていることだと。けれど、目の前の命を見捨てることはできなかった。

「……ごめん……本当に……ごめん……」

 そう呟きながら、彼はコアに意識を集中させた。胸の中にある黒い球体――かつて兄貴と呼んだ人がくれた、黒い心臓。その力を使えば、エーテルを侵食し、結合させることができる。侵食させて、結合して、そして……浄化する。

 恐る恐る彼はそれを行った。亡骸の手足と、少女の身体を、エーテルで繋げ、溶け合うように繋がった部分を浄化する。彼にとっては初めての行為だった。思わず目を伏せたくなるような光景の中、彼は歯を食いしばりながら、何度も呟いた。

「大丈夫、大丈夫……生きて……」

 ――数分後、少女の四肢は彼女の身体に馴染んでいた。皮膚の色が戻り、呼吸も安定している。彼はその場に座り込み、安堵したようにその場に倒れ込んだ。

「よかった……生きて……て……」

 意識が遠のく中、彼は少女の安らかな顔を見て、微笑んだ。

 次に目を覚ましたとき、彼は少女と目が合った。彼女は不思議そうに彼をじっと見つめていた。

「……き、気がついた……?」

「……あなたは……」

 少女の声は、かすれていた。けれど、瞳はどこか落ち着いていた。

「わたし……名前、思い出せない。でも、番号は……覚えてる。……“よん”……」

「“よん”……?」

 彼はしばらく考えたあと、そっと呟いた。

「それなら……“テトラ”っていうのは、どうかな。“4”って意味だよ。優しくて、綺麗な響きだ……」

 少女は少しだけ目を細めて、小さく頷いた。

「……じゃあ、あなたは“クラル”」

「えっ……?」

「名前……ないのでしょう? わたしに名前をくれた人……“クラル”。なんとなく、そんな音が浮かんだの」

 その言葉に、彼――クラルはぽかんとしたあと、ふっと微笑んだ。

「……クラル、か。うん、悪くないかも……ありがとう、テトラ」

「ふふ……クラル」

 そう呼ばれて、彼の中に何かが灯った。失ったものも多かったが、今、目の前にいるこの命を救えたこと。その事実が、彼をわずかに、救っていた。

 

 




あとがき

5話まで書きましたが、ひとまず1話投稿できて安心
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