クローンの君と半分エーテリアスの僕 作:kakerutakeda
新連載します
広めの心で読んでください
追記
内容改稿いたしました
それでも、僕は歩いていた
灰色に濁った空間がどこまでも広がり、ところどころが大きく歪んでいる。
ホロウの外から
理由なんて、もうどうでもよかった。
僕にとっては、珍しいことでもない。
でも、
「……今日は、よく降るな」
誰に言うでもなく呟いて、前を向く。
なんだか少し、心がざわめく感覚がした。
濡れたマントが肩にまとわりつく。
左肩を覆う白い結晶の隙間から、淡い緑色の光が滲んでいた。
それを隠すように、マントの端を少しだけ引き寄せる。
そのまま、瓦礫の積み重なった道を進んでいく。
今日はギアコインを稼ぐために何か売れるものを探している。
先日ボンプ商人から買った保存食も、もうほとんど残っていない。
ギアコインも余裕があるわけではない。
何か売れそうなものが見つかればいいんだけど。
そんなことを考えながら歩いていたときだった。
『―――』
瓦礫の向こうから、かすかな音が聞こえた。
僕は足を止める。
風でもなければ
エーテリアスの気配でもない。
もっと小さい。
何かが擦れるような――
「……?」
息を潜めて耳を澄ます。
自分の鼓動の音が五月蠅いぐらいに
『―――』
もう一度。
今度は、はっきりと聞こえた。
瓦礫の奥。
周囲を見回す。
この辺りは崩落が激しい。
無理に動かせば、上からまた崩れてくるかもしれない。
それでも、その音を放っておくことはできなかった。
僕は瓦礫に手をかける。
冷たい。
雨で濡れた金属が、指先の感覚を奪っていく。
「……誰かいる?」
――返事はない。
僕は一つずつ、慎重に瓦礫をどかしていく。
重い鉄骨。
砕けたコンクリート。
何かの機械の残骸。
その下から、赤黒い液体が滲んでいた。
一瞬、動きが止まる。
「……血?」
――嫌な予感がした。
それでも、再び手を動かした。
一つ、瓦礫を取り除く。
もう一つ、取り除く。
――瓦礫を退かした先に、人がいた。
まるで銀のように、綺麗な白い髪を持つ少女だった。
――いや
一人ではない。
同じ顔をした少女たちが、何人も倒れていた。
髪の長さも、顔立ちも、身体つきもよく似ている。
それどころか、まったく一緒といっても差し支えないような。
違うところがあるとすれば、それぞれの負っているダメージ。
四肢がバラバラになっている子もいれば、胴体に風穴が空いている子もいる。
しかし、皆共通して服はぼろぼろに裂け、身体には無数の傷が残っていた。
どうしてこんなにも同じ姿をしているのか。
どうして皆一様にこんなにも深手を負っているのか。
僕には分からなかった。
ただ、目の前にいる彼女たちが、生きているようには見えなかった。
「……」
言葉が出ない。
僕は一人ずつ確認していく。
首元に触れる。
脈はない。
次も。
ない。
その次も――
「……誰か、生きてる人……」
声が震えた。
「……いませんか……?」
返事はない。
雨音だけが、あたりに響く。
雨だけが、僕の背中を濡らし続ける。
もう誰もいない。
そう思った。
――その時。
ほんの僅かに。
一人の少女の胸が動いた。
「……!」
僕はすぐに駆け寄る。
少女は、片腕と両脚を失っていた。
顔にも血がこびりついている。
それでも、胸だけがかすかに上下していた。
「……生きてる」
思わず声が漏れる。
急いで彼女の身体を確認する。
呼吸は弱い。
脈もほとんど感じない。
このままじゃ、長くは持たない。
「――待ってて……今、助けるから」
そう言ってから、僕は周囲を見た。
残された少女たち。
その身体に視線を落とす。
そして、自分が何を考えているのかに気づく。
「…………」
嫌な汗が出た。
そんなことをしていいはずがない。
死んだ人の身体から、まだ使えるものを取り出す。
そんなことをしたら、僕は――
「……ごめん」
口から出たのは、謝罪だった。
「本当に、ごめん」
少女のそばに、膝をつく。
自分の胸元に、手を当てる。
そこにあるものを、意識する。
――心臓の奥。
黒い球体が、静かに脈打っていた。
僕は目を閉じる。
大丈夫。
できる。
……たぶん。
黒いコアから、エーテルがゆっくりと流れ出す。
指先を伝い、少女の身体へ。
次に、隣に倒れている少女へ。
失われた腕へ。
脚へ。
エーテルが絡みつき、形を作っていく。
肉と金属の区別がなくなっていくような、不気味で、不快な感覚。
歯を食いしばる。
「大丈夫……」
繋ぐ。
そして、浄化する。
侵食したエーテルを、今度は少しずつ取り除いていく。
一度。
二度。
何度も繰り返す。
「お願いだから……生きて」
手が震える。
こんなことをするのは初めてだった。
失敗したら、この子も死ぬ。
それだけは嫌だった。
だから、何度も繰り返した。
そして――
「……っ」
少女の身体が、微かに震えた。
僕は息を止める。
少女の指先が動く。
脚も。
繋ぎ目から滲んでいた黒いエーテルが、少しずつ消えていく。
やがて、少女の呼吸が穏やかになった。
「……よかった」
力が抜ける。
僕はその場に座り込んだ。
身体から一気に力が抜けていく。
「生きて……る」
それだけ確認して、僕はその場に倒れ込んだ。
目の前の少女の顔を見つめる。
眠っているようだった。
「……よかった」
そこで、意識が途切れた。
あとがき
5話まで書きましたが、ひとまず1話投稿できて安心
追記
改稿した分は1話分しかないので不安心