クローンの君と半分エーテリアスの僕 作:kakerutakeda
テトラ視点で描いてみます
クラルと一緒にいるようになって、数日が経った。
彼の隠れ家は、思っていたよりもずっと簡素だった。
トタン屋根と瓦礫を組み合わせただけの、小さな空間。
けれど、ホロウの中にしてはエーテル濃度が安定していて、息がしやすい。
「ここ、エーテリアスが寄りにくいんだよね」
クラルはそう言って、少し誇らしげに笑った。
理由は分かる。
エーテルの流れが均されている。人工的というより、偶然の産物に近い。
それでも、この場所は――安全だった。
私たちは、ここで一緒に暮らすことになった。
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食事は質素だ。
携帯用の保存食と、ホロウで回収した栄養剤を組み合わせるだけ。
それでも、二人で並んで食べると、不思議と味気なさは薄れた。
「……味、どう?」
「問題ないわ。軍の支給品よりは、ずっとマシ」
「それはよかった」
クラルはそう言って、肩の力を抜く。
その表情は穏やかで、戦闘のときとは別人のようだった。
武器の整備をしているときも同じだ。
彼は丁寧に、必要以上の力を使わず、刃を磨く。
「手つきが慣れてるわね」
「まあね。壊すより、直すほうが得意だったから」
そう言って笑う。
だが、その言葉の裏にある過去を、私はまだ知らない。
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隠れ家の奥、壁際に小さな棚がある。
そこに、何枚かの写真が飾られていた。
色あせたものばかりで、端は折れ、傷も多い。
それでも、大切にされているのは一目で分かった。
「……仲間?」
私がそう聞くと、クラルは一瞬だけ、視線を逸らした。
「うん。昔のね」
それ以上、彼は語らなかった。
けれど、写真の中の彼は、今よりもずっと幼くて、よく笑っていた。
その隣に立つ人物――赤いスカーフを巻いた青年が、やけに目に留まった。
「この人は?」
「……兄みたいな人だった」
短い答え。
でも、その声は、わずかに揺れていた。
私は、それ以上踏み込まなかった。
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戦闘になると、クラルは頼りになる。
判断は早く、無駄がない。
私が動きやすい位置を、自然と選んでくれる。
けれど――時々。
ほんの一瞬だけ、空気が変わる。
目が冷たくなる。
動きが鋭くなり、敵を倒す速度が、異様に速くなる。
次の瞬間には、元に戻っている。
「……今の、少し無理した?」
私がそう聞くと、彼は少し驚いたように瞬きをした。
「え? そうかな。大丈夫だよ」
そう言って、いつもの調子で笑う。
だが、私は見逃さなかった。
彼自身が、自分の動きを正確に覚えていないような、その間。
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夜。
簡易ベッドに横になりながら、私は天井を見つめていた。
クラルは、少し離れた場所で静かに眠っている。
寝息は穏やかだ。
――不思議な人。
優しくて、気弱で、争いを避けたがる。
それなのに、戦場では迷いがない。
まるで、必要なときだけ別の何かを呼び出しているような――
そんな感覚。
(……でも)
今は、まだいい。
彼は私を守った。
私も、彼と生き延びると決めた。
理由は単純だ。
一緒にいる方が、生存率が高い。
それだけ。
そう、思うことにした。
けれど心のどこかで、私は理解していた。
――クラルの中には、まだ語られていない何かがある。
それが、いずれ私たちの前に姿を現すとしても。
今はただ、この静かな時間を受け入れるだけだった。
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