俺が神室を救う為の教室   作:まさこりん

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自己紹介と説明会

 Aクラスの教室に入った後、自身の席を探す。

 ……よりにもよって中央教卓前の最前列だった。

 いわゆるハズレ席というヤツだ。

 幸先が悪いなと思いつつ席についた俺はせっかくだからと先生が来るまで後ろの席の生徒と交流することにした。

 後ろの生徒はメガネをかけた知的な雰囲気の男子生徒で見た感じ原作の主要キャラではないから情報がない……仲良くなれるかな?

 

「初めまして、俺は早乙女 守。趣味は料理と将棋で特技はかけっこだよ。席が近くのもの同士これからよろしく」

「ああ、俺は石田優介。趣味はアニメ鑑賞だ、よろしくな早乙女」

 

 石田優介か……。

 確か一年最後に行われる選抜種目試験の数学に参加してた生徒だな。

 二年最後の学年末特別試験では第一議論に参加していたが特筆すべきデータはない生徒だ。

 もう少し情報が欲しいな。

 

「アニメ鑑賞かぁ、いい趣味だね。好きなヤツ教えてよ」

「好きなヤツか……プリズマイリヤとかりゅうおうのおしごとだな」

 

 プリズマイリヤとりゅうおうのおしごとだと⁈

 ロリコンじゃないか⁈ 坂柳派閥じゃないか⁈

 こいつは坂柳の手が入る前になんとかしないとな。

 

「……そっかいいチョイスだね。ちなみにこの学校全国から生徒が集まるって聞いたけど石田はどこ出身? 俺は神奈川」

「神奈川か、関東圏でいいな。俺は福岡の田舎の方から来たんだ」

「福岡かぁ遠かったでしょ」

「ああ、東京まで新幹線で六時間かかった。次は飛行機を使わないとな」

 

 たわいもない会話を続けていく。

 石田優介か……。

 かなり話しやすいな。

 ロリコンだから要警戒だが仲良くなれそうだな。

 

「早乙女はかけっこが得意ってことは足に自信があるのか?」

「そうだよ中学は陸上部でめちゃくちゃ速かったんだ」

 

 話は俺の特技に変わる。

 一応全国大会で入賞できるくらいには陸上を極めたので足にはガチで自信があるのだ。

 あの頃は打倒フィジカルモンスター共を目標にがむしゃらに練習してたからなぁ。部活のあとは毎日ジム行って食事にも気を使って体重管理も怠らなかった。意識の高さはプロアスリートにも負けてなかったと思う。

 目標が高すぎてだいぶそれに引っ張られてレベルが上がったように感じるよ今思えば。

 

「へぇ、それは凄いなぁ」

「なんか速すぎて他校の人から神奈川のオグリキャップって呼ばれてたしな」

「馬じゃん、そりゃ勝てねぇよ!」

 

 いやほんとなんでだろうね。

 オグリキャップ要素なんかないのに……。

 名付けた人は競馬好きだったのかな?

 でもまぁ、いくら中学で速くても体育祭で結果を出さねば意味がない。

 部活には入るつもりはないので毎日ジムに通って筋力の向上に努めないとな。

 

 とまぁ、そんなことを傍に考えながら石田としばらく会話を続けた。

 短い間だが仲良くなれた気がした。

 それから石田の後ろにいる竹本茂君も会話に加わり男子トークを展開しているとドアがスライドしスーツを機たガタイの良い男が入ってきた。

 その人物は――真嶋智也。

 Aクラスの担任だ。

 

「先生が来た、またあとでな」

「ああ」

 

 先生が来たことがわかった俺達は会話を打ち切り前を向く。

 

 緊張するなぁ

 

 これから始まる原作を前に僅かに緊張していた。

 だが、側から見るその表情は既に腹を括った男のそれだった。

 

 

 ♢

 

 Sシステムの説明が始まる。

 Aクラスのリーダーになる為にはこの説明会での存在感も重要になるだろう。なにせ俺には原作知識がありSシステムについて既に知っているのだから。

 

 ここでとれる俺の選択肢は二つ。

 

 一つは質問は控えて身を潜め虎視眈々とリーダーの座を狙う。

 坂柳の目に止まらないよう水面化で少数派閥を形成しリーダー争いに乗り込む作戦だ。

 坂柳と戦いたくないならこの方法がお勧めだ。

 原作のある機会で葛城と坂柳両名を落とす作戦があるのでそれを実行するだけだ。

 警戒されず賢いやり方に見えるが、一度きりゆえ失敗が許されない。それにせっかくの数あるチャンスのほとんどを棒に振り、その機会が訪れるまで相手に手番を渡す行為に等しいことを留意せねばならない。

 

 

 二つ目は質問をすることで実力を見せつけ、初めからリーダー争いに参加することだ。

 メリットはここで実力を示せば派閥を作るのが容易だということだ。なにせ一番初めに注意を促せばそれがクラスポイントを残せたという実績になるのだから。

 だが目立てば坂柳から警戒され攻撃がより陰湿になる恐れがある。

 坂柳のやり口を考えればあまりに序盤で目立つのはリスクが高すぎる。

 加えてここでの発言は坂柳にも答えを教えることになる。

 

 俺には15年間という準備期間があったがこの説明会での動きについては正直ずっと悩んでいた。

 悩みすぎて習い事にも影響したほどだ。

 

 だが小学校の頃、同じスイミングスクールに通う同い年の女の子に相談したことで答えを出すことができた。

 

『まもるくんはいつも難しく考えてるね。どっちの方がいいかよりどっちをやりたいかで決めたら? 自分の心に聞いてみなよ』

 

 どっちをやりかいか、自分の心で決めろか――

 ありがとう……マ(・)コ(・)ち(・)ゃ(・)ん(・)

 おかげでもう迷わなくて済む。

 もう会うことはないかもだが、どうか俺の決断を見守ってくれ

 

 

 

♢

《真嶋side》

 

 ようやく自身が受け持つ生徒達と対面できることに嬉しさを噛み締めながら私はAクラスへと足を踏み入れた。

 

 私が教室へ入ると同時に生徒達は会話を止め聴く姿勢を作っていく。この辺の民度の良さは流石最優のAクラスといったところだろう。

 

「新入生諸君、入学おめでとう。私はAクラスを担当する真嶋智也。科目は英語を担当している。この学園ではクラス替えはないので私が担任として3年間共に過ごすことになる。この後は入学式が控えているが、その前にこの学園の説明に移りたいと思う。配布する資料を見てくれ」

 

 回す資料は入学前に事前に配ったものだ。

 内容としては外部との連絡を一切禁じられていること。だがこの学園の敷地内には様々な娯楽施設が設備されており、生活する上で困ることはないから問題はない。

 問題はSシステムの方だ。

 

「今から学生証を配布する。この学園は現金ではなくこのカードでポイントを使い商品を購入することになっていてポイントは毎月一日に振り込まれる。1ポイント1円の価値があり、新入生の諸君には10万ポイントが振り込まれている。それ以上の説明は不用だろう」

 

 10万ポイントという金額にざわめきが起こる。いきなり現金10万を渡されたようなものだから無理もない。

 だが今月の授業態度や出席の有無にテストの成績で来月の支給額は変わってくる。

 そのことに気づく生徒ははたしているかどうか……。

 

「この学園では生徒を実力で測る。入学を果たした今の君たちにはそれだけの価値があるということだ。この10万というポイントも評価の対象と思ってくれて構わない。ポイントをどう使おうが君らの自由だが、このポイントは友人に譲る方法もある。それを使って無理矢理カツアゲするようなことはしないことだ。学校はいじめに敏感なので判断を間違えないようにしてくれ」

 

 言い終え、質問がないかぐるりと生徒達を見渡す。

 質問をするとすれば候補は二人。

 理事長の娘であり面接や通っていた中学校で知能面で高い評価を得ていた坂柳有栖。

 そして中学校では高いリーダーシップで生徒会長を務めたAクラスのリーダー候補である葛城康平。

 だが、二人は手を挙げる様子はない。

 他の生徒も10万ポイントに目がいっていてそれどころではないようだ。

 

 少し残念に思いながら教室を出ようとすると一人の生徒が静かに挙手をした。

 

「真嶋先生、質問していいですか」

 

 質問をする生徒の名前は早乙女 守。

 中学校では陸上で全国大会に出場した優秀な生徒だ。

 だが、あまり交友関係が多くなかったことから積極的にリーダーシップをふるうことはないと推測し、一生徒として活躍を期待していた子だ。

 さて、何を聞いてくるのか……。

 

「……早乙女か、なんだ」

「先生は先程10万ポイントは現時点での私達の評価だとおっしゃいましたよね」

「ああ、そうだな」

「こ(・)れ(・)は(・)来(・)月(・)の(・)支(・)給(・)額(・)は(・)実(・)力(・)に(・)応(・)じ(・)て(・)変(・)動(・)す(・)る(・)と(・)い(・)う(・)解(・)釈(・)で(・)よ(・)ろ(・)し(・)い(・)で(・)し(・)ょ(・)う(・)か(・)?」

「――っ⁈」

 

 その質問をした瞬間、クラスの空気が止まった。

 先程まで浮き足だって騒がしかった教室の中が一瞬静まりかえり、そしてざわざわと困惑が広がる。

 私も一瞬面食らったがすぐさま平静を装い質問に答えた。

 

「……先程言った通り来月にポイントは振り込まれる。今はそれしか言えないな」

「今(・)は(・)……ね。分かりました。ありがとうございます」

 

 既にポイントが変動することは確信しているようだ。

 これ以上追求できないとすぐに引くあたり判断力もある。

 これはとんだ伏兵だな。

 

「他に質問があるものはいるか? ないならこれで終わりにする」

 

 誰も質問する者がいないことを確認し私は教室からでる。

 

 早乙女 守……面白い生徒だ。

 Sシステムの秘密に迫った生徒がAクラスにいることに嬉しさを感じながら教室を後にした。

 

 

♢

 

 質問は控えて虎視眈々とリーダーの座を狙う。

 質問をすることで実力を見せつけ始めからリーダー争いに参加する。

 

 悩み抜いた末に俺が選んだのは後者だった。

 客観的に見て一番安全なのは前者だ。

 坂柳と勝負せず葛城を隠れ蓑にして原作の機会に乗じて二人とも蹴落とせば良いのだから。

 

 だが俺は最初からばちばちに戦うことを選んだ。

 その理由は簡単なもの、自分の感情に従った結果。

 ――俺の私情だ。

 

 ――俺(・)は(・)坂(・)柳(・)に(・)勝(・)ち(・)た(・)い(・)ん(・)だ(・)。

 

 たったそれだけの理由なのだ。

 しょうもない男の自己満足だと思う奴もいるだろう。

 だがな……俺は坂柳が起こした『神室ショック』で推しと親友に両親を失った。

 アイツに……"大事なもの"を全部奪われたのだ。

 

 今でも覚えている――神室が退学した時の無力感を

 

 ずっと目に焼きついている――自殺した親友を見つけた時の光景を

 

 未だ夢に見る――両親が目の前で殺された時の絶望を

 

 この十五年間決して前世の"痛み"を忘れたことはなくむしろ怒りが増し、何度も涙を流してきた。

 前世とはいえ大事な人達を忘れられるはずがなかった。

 

 神室を救うことが第一目標なのは変わりはない。

 推しを救うことが俺の生きる理由なのだから。

 だが――その上で勝ちたいのだ。

 例え自己満足でも……両親や親友に報いるために。

 神室を運命から守れると証明するために。

 俺がクラスメイトの将来を背負うリーダーに相応しくあるために。

 この選択は不退転の覚悟の証。

 もう後には引けないし引く気もない。

 覚悟など生まれた時から出来ている。

 

 さぁ戦おう……坂柳。

 どちらかがいなくなるまでとことんやり合おう。

 醜くどこまでも汚く貶め合おう。

 俺の15年の――いや前世も含めて全てをお前にぶつけてやる。

 覚悟はいいか坂柳

 リーダーになるのは――早乙女 守だ。

 

♢

 

 先生が退出したあと、クラスメイトの視線が俺に集まっていた。

 まるで俺に説明しろと訴えているみたいだ。

 俺から説明した方が良いかな? と思ったそんな時だった。

 

「すまない、少しいいだろうか」

 

 一人のガタイの良いスキンヘッドの男が俺の元へ寄った。

 その人物の名前は、葛城 康平

 原作で坂柳とリーダー争いをするクラスのリーダー候補の一人だ。

 

 葛城康平

 原作では坂柳に割りを食う悲惨なキャラクターだった。戸塚のミスと橋本の暗躍で無人島では責任者を当てられ、龍園に唆される形で不利な契約を結び試験は惨敗。

 その後の優待者試験や体育祭でも仲間に裏切られてばかりで結果は失墜。

 その後は坂柳に逆らった見せしめのような形でクラスでの居場所を奪われた不幸な男だ。

 

「俺かな?」

「ああ、俺の名前は葛城康平。先程の質問のことだが大変興味深い内容だった。よければ何故そのような考えに至ったのか君の考えを聞かせてくれないか。皆んな気になっているようだからな」

 

 葛城か……。

 出来れば彼も救済したいものだ。

 この学校とは相性が悪いが原作の男子の中では1番良いヤツなのだ。

 まぁ、神室のついでになるがな。

 そう思案していると別の方からも声が上がる。

 

「私も気になりますね」

 

 その声の主は――

 

「失礼、私は坂柳有栖と申します。先程おっしゃっていたその根拠を是非お聞かせ願えますか?」

 

 坂柳有栖

 原作のAクラスリーダーで学年トップクラスの実力を持つヒロインの一人だ。

 そして俺の前世の家族や親友を失った原因であり神室を退学にした女――"神室ショック"を引き起こした張本人だ。

 怒りを抑える。

 今はまだその時ではない。

 

「うん、分かった。皆んな少しだけ時間をもらうね」

 

 全員に断りを入れて真嶋先生がいた教卓へと立つ。

 クラスメイトの視線が俺に集まる。

 よく見たら坂柳がおもちゃを見つけた悪ガキのようにニタニタ笑いながらコチラを見ていた。

 

「では皆さんまずは自己紹介から……初めまして、俺の名前は早乙女 守。趣味は料理と将棋で特技はかけっこ。これからよろしく」

 

 皆んなに名前を覚えてもらう為に、初めは軽く自己紹介から行う。

 

「まず、言っておくけど正解は来月にならないと分からないし今から話すのは全部俺の憶測だよ。でもさっき聞いた来月貰えるポイントは変動することは間違いないと思う」

 

「まずそう思った理由としては、先生がこの学校は生徒を実力で測ると言ったからだよ。先程配られた10万ポイントは明らかに高すぎると思わない? まだ未成年の子供に毎月10万は頭がおかしいよ。それなら毎月生徒の実力を学校側が査定してそれに見合った額を支給するの方が毎月10万貰えるより現実的じゃないかな?」

 

 確かに……と声がを漏れたのを聞こえる。

 クラスメイトの表情からみてある程度俺の話に信憑性を持ってくれたみたいだ。

 でもよく考えたら10万は本当に胡散臭すぎるよなぁ。

 一ノ瀬とか能力的に気づいても良さそうだけどやはりそこはまだ子供だからなんだろうな。

 

「なるほどな、確かに一理ある。因みに早乙女が言ったポイントが変動する要因である実力とは何だと思う?」

 

 葛城から質問がでる。

 いい質問だな。

 

「テストの点数とか授業態度、あとは遅刻と欠席の有無じゃないかな? 通知表とか実力の指標に適していると思うし、あとはこれの他に一ヶ月の総決算とばかりに特殊なテストとかかな? まぁとりあえずこんな感じじゃないかな」

「なるほどな、ありがとう参考になった。皆んな早乙女の話はかなり納得できるものだった。これからの一ヶ月節度を持って気をつけていこう」

 

 最後は葛城がしめて全員が納得したのか頷いたり了解の意を示す。

 一応最後に釘刺しとくかな。

 

「あぁ……最後に一ついいかな。今話した内容はよそのクラスの人には話さないでほしいんだ」

「ん? どういうことだ早乙女」

 

 俺の言葉が理解できないのか葛城から疑問の声が上がる。

 他の人達も同じようだが一人だけ理解しているものがいた。

 

「なるほど、真面目にしているAクラスと不真面目な他クラスで支給額の差異を調べる為ですね」

 

 ――坂柳だ。

 まぁ表向きはそうだな。

 本当は他クラスにクラスポイントを残したくないからだけど。

 俺はAクラスで卒業も勿論目指すから他クラスに対しても坂柳同様厳しく行く予定だ。

 他クラスに塩を送ってもこの学校では舐めプ以外の何ものでもないしね。

 

「坂柳さんのいう通りだよ。このSシステムは思った以上に謎が深い。言い方は悪いが最初の一ヶ月でどれだけ減るのかデータが欲しいんだ」

 

「俺はいいと思うぜ。早乙女の話が本当なら悪いのは不真面目な連中だしな」

「私もです。特にこちらにメリットはないでしょうから」

 

 橋本を筆頭に賛同する声を出す。

 それをかわきりにクラス全員の了解をとることができた。

 これで原作ぐらいのポイント差になってくれるかな?

 

「皆んな、入学式まで時間もあることだし親睦を深める為に自己紹介をしないか」

 

 葛城の提案でクラスで自己紹介をするながれになりクラス全員で自己紹介をした後、入学式へ向かう。

 沢山の偉い人の話を聞き終え入学式を終えた俺たちは再び教室へ戻り解散した。

 

 その際クラスメイトの何人かと連絡先を交換した後、俺はある目的のためにコンビニへと向かった。

 

 

 

 

 ――――――――――――――――――――――――

 早乙女 守

 身長175センチ 体重62キロ

 体脂肪率一桁のスプリンター。

 顔は整っているが優しい顔立ち故に舐められることもしばしば。

 一度全てを失ったことから、何も恐れず坂柳に立ち向かえる覚悟を持つ。

 

 石田優介

 ロリコン

 原作では名前しかでてこないモブキャラ。

 威厳がない学くんみたいな見た目

 守君への印象は、優しそうな見た目で接しやすい。

 上京したてで知り合いもおらず不安だったので守君から話しかけてくれて嬉しかった。

 

 葛城康平

 守君の考察に目から鱗。

 学友としてこれから仲良くなりたいと思っている。

 

 坂柳有栖

 暇つぶしになりそうなおもちゃを見つけた♪

 

 その他クラスメイト

 十万に気を取られてポイントの増減の可能性に気づかなかった

 注意してくれて感謝している。

 

 

 

 

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