どこかで切ろうにもきりがわるすぎた。
学校の情報を一週間で調べ尽くした俺はついに派閥作りへと足を伸ばすことに決めた。
Aクラスには葛城や坂柳といったリーダー候補が複数いる。彼等を抑えてリーダーになるには少なくともクラスの過半数の支持が必要だ。
その過半数を得る為に五月からは人材の奪い合いになることは必須なのだ。
故に先んじて必要な人材をこちらに置いて五月からのリーダー争いに備えておこうというわけだ。
現在その必要な人材を説得するために俺と神室は部屋で打ち合わせをしている。
神室説得の次くらいには大事なことなのでそれは念入りにしていく。
と言っても基本的に俺が説明して説得するだけだ。
神室には質問が飛んできた時の対応と説得してからの動きをお願いした。
「――っていう感じでお願い」
「いや、これかなり重労働じゃない。荷が重いと思うんだけど……」
「神室なら大丈夫だって。何度もシミュレーションしたし、それに万引きよりこっちのがスリルあっていいでしょ?」
「……はぁ、分かったわよ。上手くいかなくても文句言わないでよ」
っていう感じで了承も取れた。
ちなみにメンバー候補の人はもうすぐ俺の部屋に来る予定だ。
他に話が漏れてはアレなので部屋の中でというわけだ。
ちなみに呼んだのは二人。
男女一人ずつだ。
男だけだったら神室が肩身狭いだろうし、いや良かった良かった。
ピンポーン
呼び鈴がなり玄関まで行き、ドアを開け
俺が派閥に迎えたいその人物その一人目は――。
「いらっしゃい――
♢
石田優介
原作『ようこそ実力至上主義の教室へ』では名前だけ登場するキャラで主要人物ではない。
主な活躍としても一年最後に行われる選抜種目試験の数学に参加。
二年最後の学年末特別試験で第一議論に参加していたくらいだ。
客観的に見れば学力はAクラス相当だが特筆すべき点は描写のない生徒だ。
だが実際に見て判断することで気づけた。
石田は複数で話している時、必ず聞きに徹っし相手が気持ちよく喋れるように相槌をうつ意外と聞き上手な面。
上手く馴染めず会話に参加できない竹本君に話しを振り気を回す気遣いのできる面。
総じてみるに優しい気質の男だ。
我より輪を重んじるその性質は派閥だけでなくクラスでもありがたい人材だと分かった。
以上を持って能力と人格に問題がないと判断した俺は彼を引き抜きに動いたというわけだ。
まぁ、それらは後付けで本当の理由は別にあるのだが。
「――というわけで石田には俺の派閥に入って欲しいんだ」
俺は石田にSシステムについてと今後のクラスの動きについて話した。
この一週間で得た情報と原作知識を交えて全てを伝える。石田も初めは半信半疑だっただろうが、録音していた生徒会長との会話や初日に須藤と揉めた上級生のやりとりを聞かせることでなんとか飲み込ませた。
「なるほど……早乙女が初日に言っていたポイントの増減はそういうことだったのか。それにクラス対抗ならリーダーが必要なのも頷ける。だけど……うーん」
何か悩んでいる様子の石田。
先程開示した情報の精度から俺の能力に不満はない筈……。
「何か気になる点があるのかな?」
「まぁ、とりあえず……いくつか聞いていいか?」
「勿論。いくらでも聞いてもらっても構わないよ」
いきなり言われて困ってるだろうからな。
疑問点を解消しながら整理する時間は必要だろう。
「とりあえず初めに……後ろにいる神室さんはさっき言ってた早乙女の派閥に?」
「うん、そうだよ。ねっ、神室?」
「……まぁ、そうね」
「どうして早乙女をリーダーに推そうと考えたの?」
俺じゃなくて神室に聞いてきたか。
まぁ、第三者から聞いた方が参考になるか。
聞かれた神室は澱みなく質問に答えていく。
「色々あって私もコイツと一緒に学園を調べて回ったけどコイツの考察が全部間違ってるとは思わなかったし、何より一番最初に違和感に気づいて生徒会長にも裏をとりに行った胆力は認めてる。今のところコイツに任せてもいいと思ってるわ」
うん、とりあえず打ち合わせ通り肯定的な意見を述べてくれたな。
他にも既に仲間がいた方が派閥加入の心理的ハードルが下がるから神室には俺に肯定的な意見を言うように頼んだのだ。
でもあれだな。
打ち合わせ通りといっても実質神室から褒められたようなものだからなんか照れるな。
デュフフ……。
「なるほどありがとう神室さん。確かに最初に早乙女はクラス皆んなに注意してたな。それにあのおっかない生徒会長に裏をとりにいけるのはすげぇよ。でもうーん……」
石田は素直に感心した様子を見せたがまだ不安はあるようだ。
まぁ、まだ彼に何も示していないからな。
プールと小テストの後ならだいぶ印象も変わるんだろうけど……流石に遅すぎる。
でもとりあえず胆力は認めてくれた感じかな?
部活動紹介で一発かました堀北先輩は凄かったからな。
あれ見て突撃できるならそりゃすげぇわ、まぁ偶然居合わせただけだけど……。
「他には何かある?」
「……次の質問なんだけど、このことをクラスに共有しないのはなんでだ?」
次はクラスに共有しない理由を聞いてきたか。
私益を重んじているのかと疑っているのかな?
まぁ、そう思うのも仕方ないけで一応理由があるんだよね。
「一応理由があるんだよ。まずさっき語ったのは間違いないとは思うけどそれを裏付ける証拠がないんだ。クラス全体で共有するならもっと確実な証拠を持たないと納得しない人もいるでしょ?」
初日からある程度語ってるし、証拠がないならそれの焼き増しでしかない。
それにAクラスには坂柳がいる。
あまり彼奴に情報を渡したくないというのもあるんだよなぁ。
「……まぁ、そうだな。流石に混乱させるだけか」
「それにまだ統制もとれていないのに全体で共有したら絶対他クラスに漏れちゃうでしょ。一応初日に最低限の注意はしてあるし、とりあえずは少数に共有するだけでいいと思うな」
戸塚とかうっかりで無人島試験で責任者バレしたしな。
奴がAクラスにいる以上、情報の取り扱いには細心の注意を払う必要がある。
クラス間競争は既に始まっているのだよ。
「うーむ……とりあえず早乙女の考えは分かった。まだ一週間目だからリスク管理も必要だしな」
とりあえずこの件については納得してくれたようだな。
とりあえず質問は以上かな?
「これで伝えたいことは全部伝えたよ。改めて石田……俺の派閥に入ってくれないか?」
あとは石田の選択を待つばかり。
沈黙の時間が続く。
俺はただ黙って石田の答えを待っていた。
しばらく腕を組んで悩んだ後、石田はようやく口を開いた。
石田からの答えは――
「……早乙女、お前が一生懸命調べてくれたのは伝わったし正直すげぇとは思ってる」
「でも……リーダーは別の人がやった方がいいんじゃないか?」
――まさかのやんわり拒否⁈
あれぇ〜?
♢
《石田side》
運動は苦手ではないが並程度。
勉強は多少できるがトップにはなれない。
小、中学校でのクラスカーストは二軍。
趣味はアニメ鑑賞でトレードマークは眼鏡。
総じて普通な男子、それが俺、石田 優介だ。
そんな普通な俺は今上京して初めて出来た友人である早乙女から部屋にお呼ばれした。
何して遊ぶかウキウキしながらお邪魔したものの、どうやら遊びではなく話しがしたかったらしく少し気落ちしたがまぁ早乙女の話ならととりあえず聞くことにした。
だがそこで話されたのは衝撃の内容だった。
クラス間競争の可能性の示唆
退学者が多数でているデータ
クラス分けの意図
Aクラス卒業時の特典
一応疑問点を聞いても嫌な顔せずに答えてくれて、とりあえず納得はした。
そして早乙女はクラス間競争に備えて早くから派閥を作る為に動いているらしくそれに勧誘するためにここに呼んだということだった。
後ろにいる神室さんは既に早乙女の派閥に入っており他にも一人遅れて来るらしい。
凄いな……まだ一週間なのに二人も……。
生徒会長に突撃したこともそうだし、この行動力は大したものだ。
だが……。
クラス間競争ならリーダーが必須なのは分かる。
早乙女の能力も疑ってはいないが……。
俺には早乙女はリーダーに向いていないように見える。
早乙女がリーダーに向いていないと思う理由……それは人を惹きつけるカリスマ、人をまとめる為に必要な威厳があるように見えないからだ。
早乙女は初日にポイント変動に気づき、それから積極的にクラスの皆んなにコミュニケーションを取っている。
今思えばリーダーになる為に既に下地を作っていたわけだ。
それでも、今クラスで誰が一番リーダーに相応しいかと聞かれたら葛城になると俺は思う。
葛城は同い年に見えないくらいしっかりしてるし、中学時代に生徒会長を経験しているからか目に見えて威厳を感じる。
対して早乙女は優しそうな顔立ちに柔らかい口調で人当たりはいいがやはり威厳がないからクラスをまとめるとなるとやはり不安なんだよな。
Aクラスには能力のある生徒が多いことは分かった。
実際実力に自信がある自尊心が強いタイプが多い。
ならそんなクラスメイト達をまとめるなら彼等をまとめるに相応しい実力が求められる。
早乙女に彼等以上の実力があるかは分からないが、既にリーダーシップを発揮しつつある葛城の方が向いてるんじゃないかと思う?
だから――
「……早乙女、お前が一生懸命調べてくれたのは伝わったし正直すげぇとは思ってる。でも……リーダーは別の人がやった方がいいんじゃないか?」
遠回しに誘いを拒否する。
やはり三年間クラス間競争するならどれだけ早くクラスを掌握するかが重要になると思う。
早乙女に任せるより葛城……もしくは他の適任者をリーダーに据えた方が早くクラスは纏まるそう結論づけた。
せっかく仲良くなれたのにこれを機に仲が拗れるかもしれないのは残念だけど俺はその旨を伝える。
「やはりリーダーにするなら威厳とかカリスマが必要だと思う。早乙女に全くないとは言わないけど、今のクラスの中だと葛城が抜けてる。より早くクラスを纏めるなら変に争うより出来る人に初めから任せた方がいいんじゃないか?」
変にクラスを分裂させるより初めから葛城をリーダーに据える。
これが俺の答えだ。
悪いな……早乙女。
俺はそう心の中で謝罪した。
♢
石田を派閥に誘うもあっさり断られてしまった。
あれぇ……とショックを受けるもしっかり石田の理由を聞く。
ああ、なるほど。
「石田は早々にクラスを纏める為に、葛城をリーダーにした方がいい。そう言いたいんだね」
「ああ、クラスを割ることは不利益にしかならない。葛城なら反対する声も少ないしあっさりきまるんじゃないか?」
石田の言いたいことは分かる。
リーダー争いをすればクラス内で足の引っ張りあいが起きる。
それが続けばクラスポイントが落ちていくのは目に見えている。
原作のAクラスのようにな……。
でもな――
「俺はそうは思わない。むしろクラスの利益になると思う」
俺は石田の意見を否定する
俺はリーダー争いには意義があると思っているから。
「どういうことだ早乙女? リーダー争いなんてクラスに不利益なだけだろ」
「長引けばそうなるだろうね。でもそれをするメリットがある」
「メリット?」
「強いリーダーが誰か、それを明確に出来ることだよ」
リーダー争いが起こればそれぞれが派閥を作りそれを指揮しながら特別試験等を乗り越えていくことになる。
クラスが一つになっていないなら指揮する難易度は上がるだろう。
でもその中で自ずと優劣はついてくる。
「早くリーダーを決めるのではなく、ある程度損失覚悟で誰をリーダーにするのかに俺は焦点を当てた方がいいと思う。石田はもっとリーダーというものを重く捉えるべきだ」
Aクラスでの卒業は将来を左右する絶大な特権を与えられる。
リーダーはそんなクラスメイトの将来を背負っているといっても過言ではないのだ。
だからこそ、そんな大役に自ら責任を放棄した坂柳のような人間がつくことを許してはいけないんだ。
故に皆んなでしっかり見極めるべきなのだ。
リーダーの資質を――。
「この学校は普通の学校じゃない。各学年で最低でも退学者を10名もだすほどの苛烈な争いを強いられるのは間違いない。故にその先頭に立つ強いリーダーをクラスは選ばなければならない。ならそれを見極めるには競わせるのが一番手っ取り早いと思わないかい?」
「……だが団体戦なのにクラスを割るのはリスクが……」
一時とはいえクラスを割るのは確かにリスクがある。
でもそれは割り切るしかない。
何故なら――
「石田……例え俺がリーダーを降りたとして葛城がリーダーになれる保証はないぞ。他に誰かが名乗り出るとは考えないのか?」
「――⁈」
何故なら坂柳がリーダーに名乗りを上げるから――。
葛城と坂柳、主張が対立する二人は必ずリーダーに名乗り出る。
なら、別に俺も名乗り出ていいでしょ。
一人増えても誤差だよ誤差!
「一応クラスの全員とは話した。その上で俺の予想ではリーダーに立候補するだろうって奴は俺を合わせて3人いる。リーダー争いは間違いなく起きる……だからそれに合わせて仲間を集めているんだ」
「……………………」
まぁ坂柳と話したのは初日だけだがな。
用もないから特に話すことないし……。
さて……ちょっと突きつけ過ぎたか。
普通に反論しちゃって傷ついてないかな?
少し元気がなくなった石田を心配する。
すると――。
「……悪い早乙女。さっきの発言撤回するわ」
おっ?
「確かにその可能性は頭になかった。それにカリスマは分かんないが少なくともさっき話してるときは結構威厳を感じた。リーダーに向いてないとか思ってごめんな」
どうやら少しは認めてもらえたようだ。
反論してる時割と必死だったからな。
それが良かったのかもしれない。
うんうん、良かった。
「おっついに石田がデレたな。いいよ、派閥に入ってくれたら許すよ」
「……派閥な。なんかさっきの会話で早乙女とだいぶ差を感じたんだよな……正直俺役に立ちそうにないぜ? なんで俺を誘ったんだよ」
差というか意識の違いだと思うけどね。
自分リーダー目指してますから。
それに石田を誘った理由?
そんなの――
「そんなの――
「はっ?」
石田とは一回遊んだし昼飯も何度か一緒に食べた。
話しも合うし俺は友達だと思っている。
そんな彼に手伝って欲しいと思うのはおかしいことだろうか。
違う派閥に行かれて疎遠になるのも寂しいしね。
「やっぱ友達が助けてくれたら嬉しいし……駄目かな?」
「――いや、駄目……ではないけど……。そんな選び方でいいのか? 俺、勉強くらいしか取り柄ないぞ?」
「そんなことないよ。石田は物腰が柔らかいから人との衝突が少ないだろうし何かあったら割って入り緩衝材の役割もできると思う。さっきだってだいぶ言葉を選んでくれてたしね。自分で思ってるより優秀な人だと思うよ」
今さっきの対話でも石田はなるべく俺を傷つかないように言葉を選びながら会話をしていた。
やっぱり優しい奴だよ。
そんな奴には坂柳のとこより俺の派閥にいて欲しい。
だから――
「だから石田……手伝ってくれないか?」
そう言って俺は右手を差し出す。
石田はその手を数秒見つめて――
「……はぁ、しょうがないな。
俺の手を握り返した。
こうして石田が派閥に加わった。
♢
やった石田が仲間になったぞ!
これで早乙女派閥
うん……4人?
「っていうか、もう一人は誰よ」
神室の一言で我にかえる。
そうだよ!
アイツまだきてねぇじゃん!
時間過ぎてるよ。
俺はまだ来てないあの子に電話をかける。
ちょっと! 今どこにいる?
いや、なんでそんなことしてるの?
ちょっと待ってて!
「ごめん、ちょっと迎えにいってくるね」
数分後
「お待たせ! 連れてきたよ!」
息を切らしながらもう最後の派閥メンバーを小脇に抱えて連れてきた。
「っていうか約束したのに忘れてたでしょ?」
「忘れてはいません。蟻の観察をしていたら時間を過ぎていただけですよ早乙女守」
「間に合ってないんだから一緒だよ」
彼女の名前は――
「
♢
森下との出会いは神室が部活でいない日の放課後。
クラスメイトと遊び、交流を深めた帰りに俺と森下は出会った。
「えっと……森下さんだよね? なんで木に登っているの?」
帰宅途中、学生寮の前に植えてあるクヌギの木の上に登っている森下が目に入り思わず声をかけてしまった。
「ここに鳥の巣があるので、雛達の成長を日々観察しています」
「あ、そうなんだ」
「ふふん、まるで親鳥になった気分です」
そう言って木から飛び降りる森下。
パンツが見えないように目を逸らす俺。
紳士である。
それにしても本当に独特だな森下は。
森下藍
感性が独特で学園の中でも変わり者に分類される生徒だが、学力は勿論その洞察力や駆け引きといった部分は並外れている。
原作では二年生編まで出番はなかったがそれは坂柳の独裁でもクラスが盤石だったため動く必要がなかったからと言っていた。
独特で扱いづらいが間違いなく優秀な生徒の一人だ。
「ところでさっきから馴れ馴れしく話しかけていますが貴方は何者ですか?」
「んっ? ああ、俺の名前は早乙女 守。一応同じクラスだよ。よろしくね」
「早乙女 守……ああ、そういえばそんな人いましたね」
とりあえず認知はされていたようだ。
にしても森下か。
可能なら派閥に引き込みたいが……。
森下のスタンスは多分中立でリーダー争いには興味無さそうなんだよな。
そういう中立の生徒こそ引き込みたいが、その中でも森下は一番訳が分からんからな。
「そういえば早乙女守は自己紹介で将棋が得意だと言っていましたね」
俺がなんとか引き込めないか思案していると森下から唐突に将棋の話を振られる。
「んっ? まぁ言ってたね」
「実は私も得意だったんですが、自己紹介の時、早乙女守が先に得意だと言ったせいで言い出せませんでした」
「別に言えばいいのに」
「せっかくなのでどっちが本当に得意なのか将棋で白黒つけましょう」
そう言って彼女は鞄の中からマグネットの携帯将棋板を取り出した。
俺が自己紹介で先に言ったから、二番煎じになるのが嫌でって感じか。
なんでやねん。
「私が勝ったら将棋が得意という発言を訂正してもらいます」
これは有無をいわせず勝負する流れか……。
だが、これはチャンスだな。
どうやら賭け要素のある勝負をお望みみたいだから、こっちが勝ったら派閥に入ってもらお。
「なら俺が勝ったら常識の範囲内で一つお願いを聞いて貰えるかな」
「いいでしょう勝つのは私です。クラスの前で将棋が得意は嘘でしたと言わせて見せましょう。いざ――」
「――とまぁ、出会いはそんな感じかな」
「一生の不覚です」
森下と将棋で勝負をした俺は彼女に勝利し、その時のお願いの権利を行使して事情を説明して派閥に加わって貰ったというわけだ。
ちなみに森下は自分でいうだけあって結構強かった。
二年生編で行われる体験学習型の交流会で綾小路が褒めていただけはある。
俺が前世で某最年少七冠の棋譜を研究していなかったら危なかった。
なんでそんなことをしていたかって?
ファンだからだよっ!!
「それで今日は顔合わせだけですか? ならもう帰りたいのですが?」
いや、君は来たばっかりでしょ。
っていうか行ってもらいたい場所があるから。
「いや行ってきて欲しい場所があるんだけど皆んな神室に着いていってくれるかな?」
「どこに行くのですか?」
森下がそう問いかける。
ん? そんなの決まってんじゃん。
Sシステムを解明したなら行く場所は一つでしょ。
その場所は――
「
♢
というわけで神室には石田達をつれて職員室に行ってもらった。
なんで職員室に行くのかって?
理由は勿論ある。
それはSシステムについて口外しないかわりに口止め料を請求する為だ。
入学してからの最初の一カ月はどれだけポイントを残せるのかを見ている。
もし現時点で全クラスに秘密をばらそうものならその前提は覆り学園側は想定より多くのポイントを支払う羽目になる。
ポイントが税金からきている以上、出費は抑えねばならないからね運営側は。
故にここは口止め料を払ってでも出費を抑えたいと学園は思っている筈なのだ。
だから交渉をする為に三人を職員室へと向かわせたというわけだ。
まぁ、もし言っても構わないと言われたらしょうがないけどな。
ちなみに俺は三人がいない間に派閥結成パーティーの準備の為、部屋で料理や飾り付けをしている。
やっぱり派閥内の仲は良くしたいしね!
料理よし!
お菓子の準備もよし!
パーティーゲームもよし!
準備OK! 早く帰ってこないかなぁ。
そうして皆んなを待っていると神室達が帰ってきたようだ。
神室には合鍵を持たせているのでそれで入ったのだろう。
「皆んなおかえり」
「……いや、なにこの飾り付けに料理」
「早乙女一人残ったかと思えば、これの為だったのか?」
「このピザ手作りですか? やりますね、褒めてあげます早乙女 守」
神室と石田がこの状況に驚き森下はピザのクオリティに目を輝かせた。
うんうん、サプライズ成功だ。
「せっかくだから派閥結成パーティーをやろうと思ってね」
今日集まったのはこれがメインでもあるのだ。
やっぱり交流会は必須でしょ。
あっ、まだ神室達から戦果を聞いてなかったね。
「神室、それでいくら取れた?」
「一人50万」
「んーそんなもんか」
交渉次第では一人百万はイケると思ったけど、まぁ、あんまり学校側に不況を買いたくないしこれぐらいが安牌だろう。
「っていうか早乙女もいれば50万貰えたのにどうして来なかったんだ?」
石田がそう問いかける。
理由?
あぁ、それは――
「
「おぉ、正解」
俺が答える前に森下がそう答えた。
「早乙女 守の言う通りリーダー争いが起こるなら早いうちに数を揃えなければなりません。何人候補がいるかは分かりませんが最低でも10人は必要なはずですから。だから口止めされていない早乙女 守が説明してまわり仲間を増やす――そうですね?」
「流石森下……凄いね」
流石綾小路が褒めてた洞察力。
仲間だと頼もしいわ。
「でも俺たちだけもらって良かったのか? 半分渡すぞ?」
「ん? いや、全額受け取って欲しい」
石田が気を遣ってそう言ってくれるが俺はそれを拒否した。
勿論理由はある。
「俺につく以上もし俺がリーダー争いに敗れたら、他のリーダー候補によっては冷遇されるかもしれない。数ヶ月のお試し期間といえど危ない橋を渡ってくれるわけだから一応謝礼ってことで。だから遠慮なく受け取って欲しい」
俺から今彼等に渡せるのは原作知識を使って学校側から得たポイントだけだから。
少しでも俺を信じて着いてきてくれる彼等に利益になるようにしたかったのだ。
俺は三人に頭を下げる。
「もし結果を出せなかったら見捨てくれてもいい。二学期が始まるまででいい。それまでどうか――
そう言って俺は改めて三人に頭を下げた。
これから迷惑をかけるだろう三人に対して真摯でありたかった。
1番初めに口を開いたのは神室だった。
「……はぁ、流石にポイントまで貰ったら従うしかないじゃなない」
二番目は石田。
「俺はポイントはいらないけど、早乙女の気持ちは受け取ったよ」
最後は森下
「とりあえずご飯食べませんか?」
……森下。
でもそうだな。
あんまりパーティー前にすることじゃなかったな。
気を取り直してパーティーを始める。
「じゃあ皆んなコップ持って乾杯!」
ちなみにパーティーはそれなりに盛り上がり、食事を終えたのちは朝までゲームをしたりして盛り上がった。
初めの一週間はこうして終わりを迎えた。
――――――――――――――――――――――――
早乙女 守
無事に石田と森下を派閥に加入させた。
色々企画するなどムードメーカー的な役割もこなす。
将棋は前世プラス今世でもAIソフトを使うほど研究しておりもはや一芸とよべるレベル。
神室 真澄
学校側から口止め料をもらってきた功労者。
すんごいドキドキしたけど楽しかった。
パーティーもなんやかんや楽しかったし今日はとてもいい日だった。
石田 優介
コイツのせいで五回ぐらい書き直した。
全然派閥に入ってくれなくて作者は泣いた。
守くんに友達と言われて、仕方ないなぁって感じで加入。
もし守くんがいなかったら坂柳派閥にいた。
このロリコン野郎が!
森下 藍
守くんに負けて派閥に加入。
原作でも将棋が強い描写があったのでこんな展開に。
原作ではリーダー争いに興味なさげだった?
今作では守くんが一週間でシステムの謎を解き、将棋でもぐうの音のでないほどボコしたのでとりあえずリーダーとして認めている。
1番パーティーを楽しんだのはコイツだった。