俺が神室を救う為の教室   作:まさこりん

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水泳前編

 神奈川県にある、とある小規模なスイミングスクール

 

 本日そこに入会を希望する母子が現れた。

 受付にてその旨を伝えるとインストラクターが現れた後、小部屋に通され手続きについて説明を受ける。

 

「――説明は以上になります。何かご不明な点はありますか?」

 

 母親はどこか不安げな表情でおずおずと質問をする。

 

「あの……ここの指導って厳しかったりしますか?」

「えっ? そんなことないですけど……」

「すいません……後ろの棚にあるトロフィーに全国大会のものがあったので……」

「ああ、なるほど! そうなんです、ウチは全国大会で"準優勝"の子を排出したことがあるんですよ」

 

 そう言ってインストラクターは後ろに飾ってあるトロフィーと記念写真に視線を移す。

 その視線は誇らしげで、でもどこか寂しげでもあった。

 

「あの子は当時小学校一年の時に入会した子だったんですけど、六年生の時に全国大会に初出場して準優勝。本当に凄かったです」

 

 小学校一年生と聞いて母親が反応する。

 息子と同じ時期だから。

 

「やっぱり初めから才能があったんですか?」

 

 もしかしたらウチの子も行けるかもしれないという気持ちを少しとやはり水泳は才能なのかという疑問で聞く。

 だが――

 

「いえ、あの子は同期の中でも一番遅かったんですよ」

「えっ⁈」

「あの子最初は全く泳げなくてしばらくはビート板使って練習してましてね。子供は普通出来なかったらすぐに投げ出したりするので辞めちゃうかなとも思ったんですがね。でも彼はひたむきで誰よりも努力家でした。泳げるようになった時は思わず泣いちゃいましたよ」

 

 インストラクターは昔を思い出すように声に熱が籠る。それほど思い入れがあるのだろう。

 

「毎日、毎日ぶっ倒れるまで泳いで……問題児でもありましたが――本当に自慢の生徒でした。全国大会で準優勝した時はあの子とならオリンピックも夢ではないと思うほどに……」

「その子は今は?」

 

 そう母親が聞くと、インストラクターは首を横に振った。

 

「全国大会で準優勝をとった次の日、退会していきました。噂では中学では陸上部に入ったそうです」

 

 それを聞いた母親は聞いたことを申し訳なく思った。

 きっとその子は全国制覇を目指していたのだろう。

 だからそれほどまでに練習をしていたんだ。

 そして全国にまで進んだが――そこで壁にぶつかった。

 

 目標を達成出来なかった彼はどんな思いで水泳を辞めたのだろう。

 そして我が子も同じ思いを味わうのだろうかと不安を抱いた。

 そんな不安を感じとったのかインストラクターは話の続きを話す。

 

「確かに彼は水泳を辞めました。敗北に絶望したのかもしれません、水泳が嫌いになったのかもしれません。でも――彼は"笑顔"でここを辞めていきました」

「……笑顔で?」

「最後に会った彼はまるでやり切ったかのようなそんな笑顔を見せたんです。だから私達も笑顔で彼を送り出しました」

 

 その時の写真を見せたられた。

 そこには目の前のインストラクターとロングヘアの女の子、そしてメダルとトロフィーを持った晴れやかな顔をした男の子の姿があった。

 確かにこれは悔いのない……やり切った者の顔だ。

 その話を聞いて母親は入会を決めた。

 ウチの子がどうなるかは分からない。

 でもこの写真の子のようにやり切ることができたならそれは何よりも変え難い財産になるはずだ。

 そう願い入会する旨を伝えた。

 

「お子さんが悔いの残さないよう私共も精一杯指導します」

「ウチの子をよろしくお願いします」

 

 そして今日もまた一人スイミングスクールに入会した。

 

 インストラクター達がみていたそれ。

 そこに飾られてあるトロフィーにはこう彫られている。

 

 

 

 全国ジュニアオリンピック競技大会

 男子自由型50メートルの部

 準優勝 早乙女 守 

 

 

 ♢

 

 AM4:00

 今日も例に漏れず起床する。

 クッソ眠いが毎日身体に鞭を入れ布団からでている。

 その後、朝食や歯磨きを30分で済ませる。

 その後準備をしてすぐに外出する。

 こんな朝早くからどこに行くのかって?

 そりゃ勿論――ジムだよ!

 

 AM4:40

 俺は日課のジムに来た。

 高度育成高等学校にあるジムは24時間営業なのでこんなに朝早くからでも使用できる。

 人より早く起きた時間をどう使うかで差がつく。

 俺はその考えのもと転生してから努力してきた。

 もう時間は限られている。

 時間を有効に使わなくては。

 

 そう気を引き締め中に入ると既に先客がいた。

 

「グッモーニング、早乙女ボーイ」

「おはよう高円寺君、早いね」

 

 高円寺六助

 高円寺グループの後継にして原作最強格の男だ。

 実は俺たちはこの学校に入る前から知り合いだったりする。

 ウチの親が彼の親の主治医でその縁というわけだ。

 

「それでは頑張りたまえ」

 

 トレーニング中に会話はマナー違反なので軽く挨拶だけして各々のトレーニングをしていく。

 今朝は下半身を中心にしっかり筋繊維を虐めていく。

 その時間およそ一時間。

 

 そろそろ切り上げ併設してあるプールに向かう。

 水着に着替え、水を身体に慣らしてから泳いでいく。

 今日はアレがあるからいつもより長めに泳いでおこう。

 

 にしても上手くなったものだ。

 前世での俺はカナヅチでその時のイメージに引っ張られ昔は全く泳げなかった。

 ずっと努力してきたのもあるけど、ずっと支えてくれたあの娘のおかげだな。

 

 そう思い一人の幼馴染の顔を思い浮かべる。

 

 元気にしてるかな……()()()()()

 

 時折昔を懐かしみながら暫く泳ぎ、ふと時計をみるとそろそろ良い時間なのでトレーニングを終わらせる。

 3キロくらいは泳いだかな?

 うん、朝の分のトレーニングは終わり!

 

 AM7:00

 トレーニングを終えて一度帰宅した俺は机に着いて勉学に勤しんだ。

 高校の範囲は完璧だが、この学校は大学の範囲も余裕で出してくる。

 いや、頭おかしいだろ。

 習わないところを出すな!

 まぁ、そんなわけで大学の範囲も手をつけているが広過ぎるからマジで終わらない。

 人生は勉学や!

 はぁ……地道に毎日に勉強していくしかないな。

 

 AM8:00

 制服に着替えて登校。

 途中神室と遭遇し一緒に登校する

 

 今日はついにアレが始まる。

 そのせいで気合いが入り神室との会話が少なくなるほどだ。

 けっ、決して神室に緊張してたわけじゃないんだからね!

 俺にとっては一世一代の舞台。

 それは――

 

 ――"水泳"だ。

 

 

 昼休みを終えての最初の授業それが"水泳"だった。

 俺はようやくこの時が来たかと武者震いした。

 "水泳"――他の者からすればただの授業だが俺からすれば違う。

 この場は序盤の数少ない実力をアピールする場でもあるのだ。

 この授業では生徒たちを競わせタイムをはかる。

 原作のDクラスではここで高円寺が日本記録に迫るタイムをだしたことで生徒や読者に強いインパクトを与えた。

 序盤は正直ここしかアピールする場がない。

 今日この場で俺と神室の命運が決まるといってもかごんではないのだ。

 

 以前石田が言っていたように俺には威厳やカリスマが足りない。

 故にこの場でクラスの男子の頂点に立ち実力を証明する。

 ここで結果をだす為だけに水泳を6年間習い全国大会にまで出場したのだから。

 ふふ、だがそれすらも前座にすぎない。

 ここが俺のインターハイだ。

 命を燃やしていくぞ!

 

 

 俺は更衣室で水着に着替えプールサイドへ向かう。

 ついにこの早乙女ボディをお披露目する時が来たか。

 先にいた葛城や鬼頭といったマッスル達が俺の肉体を見て「ほう」と声が漏れる。

 どうやらマッスル同士は互いの筋肉を見れば肉体レベルがわかるようだ。

 俺も分かるよ。

 仲間だね。

 

 

 石田が少し遅れてこちらに来る。

 何やら驚いた顔をしているが……はたして?

 

「どうした石田?」

「いや、早乙女……お前凄い鍛えてるのな」

 

 石田が俺の身体を見てそう言ってくる。

 驚くのも無理もない。

 6年間の水泳と3年間の陸上を全力で取り組んだ結果の早乙女ボディだ。

 脂肪が全くない筋肉の凹凸がはっきりと浮かびあがる肉体。

 薄く見えるがその実かなり引き締まり最適化された筋肉。

 スピードを出すために特化した無駄のない仕上がりだ。

 

「中学は運動部で今もジム行ってるからね」

「でもスゲェよ。同じ男として憧れるわ」

 

 やっぱり男は筋肉に憧れるものだ。

 それはインドア派の石田も例外ではないようだ。

 

「なら石田も一緒にジム行こうよ。週3くらいなら付き合うしトレーニングメニューもアドバイスするよ」

「マジで? 早乙女がいいなら行こうかな」

 

 よし、言質とったぞ。

 石田を鍛え上げて体育祭の戦力にしてやる。

 クラスメイトを導くのもリーダーの役目だからな。

 グヘヘへ

   

 とそんなやり取りをしていると女子が来た。

 男子達の視線が一斉に女子達に向く。

 えっちだなぁ、もう……男の子なんだから。

 ん? なんか俺の方になんか視線を感じるような……気のせいか?

 あっ神室と森下がいる。

 神室と目が合うと二人はこちらに歩いてくる。

 

 スゥぅ……。

 ナイスバディ……。

 俺が水泳に向けて集中してなかったら危なかった。

 露わになったむちむちのふとももに薄い水着に隠された乳房。

 令和の世の中では絶滅した角度のついたスク水。

 それらを宿すはクール美少女の神室真澄。

 はぁ……たまらんなと内心歓喜する。

 そんな俺の煩悩をつゆ知らず神室は声をかける。

 

「……早乙女アンタなんかやってた? 凄い身体ね」

「早乙女 守中々いい身体してますね。べしべし」

 

 神室が俺の肉体を凝視する。

 なんか緊張して金縛りにあったくらい居心地が悪いな。

 でも推しに褒められて嬉しい。

 凄い身体ねだって!

 あと森下腹筋殴らないで……。

 

「ありがとう。一応中学の時は陸上部だったよ」

「ふーん……。陸上部ってそんなにハードなの?」

「競技によるでしょうね。早乙女 守の筋肉のつき方から砲丸投げや幅跳びではなく短距離か長距離走だと思います、べしべし」

「相変わらず凄いね。一応専門は短距離だね」

「やはりそうでしたか。しかしただの部活動のトレーニングだけでこのような身体になるとは思わないので食事制限をかけながら相当厳しいトレーニングをしているのでしょうね、べしべし」

 

 ……マジで森下有能だな。

 この洞察力無人島の責任者当てや船上試験の優待者当てに活かせるよな?

 夏休みは頼りにさせて貰うぞ森下。

 っていうかいつまで殴っとんねん。

 

 

「よーしお前ら集合しろ!」

 

 体育教師が集合をかけ授業が始まる。

 

「見学者は二人か、良い参加率だな。早速だが、準備運動をしたら実力が見たい。泳いでもらうぞ」

「あの先生、俺あまり泳げないんですけど」

「俺が担当するからには、必ず夏までに泳げるようにしてやる。泳げるようになっておけば必ず後で役に立つ。必ず、な」

 

 でた、この意味深な発言。

 はたして何人この発言の真意に気づいたか。

 神室や石田は特にないが森下が少し考え込んでるな。

 まぁ、そんなものか。

 

 その後準備運動をして50メートルを軽く泳ぐ。

 

「とりあえずは殆どの者が泳げるようだな。では、早速だがこれから競争をする。男女別、50メートル自由形だ。一位になった生徒には、俺から特別ボーナス5000ポイントを支給しよう。一番遅かった奴は、逆に補習を受けさせるから覚悟しろよ」

 

 補習と聞いて悲鳴を上げる者やポイントをかけた競争と聞き歓喜するものと様々な反応を見せる。

 だが中には闘争本能を見せるものも――。

 

 ――鬼頭か。

 

 俺は密かにやる気を漲らせている鬼頭を見る。

 

 鬼頭隼

 坂柳の側近でボディガードの役目をしていた男。

 その恵まれた体格からパワーがあり身体能力も学年上位の男だ。

 水泳をやっていたかは分からないがパワーはあるのでそのキック力は侮れないな。

 やはり優勝候補は奴か……。

 

「男女タイムの早かった上位5人で決勝をやる。がんばれよ」

 

 そして説明が終わり競争が幕をあける。

 初めは女子のレースから始まった。

 

 一応目安として原作Dクラスでの最速は水泳部小野寺の26秒。次点で堀北の28秒。少し間が空いて第4位が櫛田の31秒代となっている。

 

 対してAクラスだが……うん、普通かな。

 悪くはないけど、みんな普段からあまり運動をしてないからか全体的に動きが悪いな。

 ちらほら30秒の壁を超える人はいるものの平均はDクラスとどっこいぐらいだろうな。

 おっ神室は28秒か。

 森下は33秒、うん立派だな。

 

「二人ともお疲れ様」

「神室真澄にしてやられました」

「いや、私がなんかしたみたいに言うのやめなさいよ。普通に泳いだだけでしょ」

「隣の神室真澄につられてフォームを崩してしまいました」

「じゃあ私悪くないじゃない」

 

 おっ、神室と森下仲良くなってる?

 二人は意外と相性悪くないのかもな。

 森下の絡みを神室がしっかり対応してる。

 長い付き合いになるわけだしぜひこれからも仲を深めて欲しい。

 あっそうだ。

 気になることがあった。

 

「ちなみに神室は水泳か何かスポーツをやってたの? 凄い身体能力だったけど」

 

 神室の運動歴を俺は知らない。

 28秒は何かしらやらないと普通は出ないタイムなんだが……。

 

「ん? いや、特に何もしてないけど……」

「――⁈」

 

 それを聞いた瞬間、俺の頭に雷が落ちたくらい衝撃を受けた。

 素のスペックでこのタイムだと⁈

 原作で神室は選抜種目試験で男子に混じってバスケをしたり、二年生編のOAAの身体能力は堀北を抜いての、B +。

 過去に何かしら運動経験があったと思ってたがまさか素で身体能力が飛び抜けていたとは。

 石田だけじゃなく神室もジムに連れて行くか……。

 俺は内心そう決意した。

 

 さて女子が終わり次は男子の番だ。

 俺は最初の組に配属された。

 最初の組は司城、俺、清水、的場、橋本の五人だ。

 

「よろしくな司城、清水」

 

 俺は近くにいた二人に挨拶する。

 いい試合にしような。

 

「……ああよろしく」

 

 一言クールに返した彼は司城大河。

 イケメンランキング上位にしていずれ同じ部活の先輩と付き合うことになる男だ。

 原作では選抜種目試験で数学に参加。

 無人島サバイバル試験では坂柳の指示で一年生が敷いた綾小路包囲網の妨害をした生徒だ。

 男子側の統率を取る場面もあるから後に男子の中心になるかもしれない生徒でもある。

 クールだが意外と話せるし結構好きだ。

 ただ原作で部活は明らかになっていなかったが、どうやら彼は水泳部とのことなので要注意だな。

 

 

「くっくっ、お前は確かにいい身体を持っているがその細い身体からしてパワー不足なのは明白! 悪いが勝たせてもらうぞ早乙女ぇぇぇぇ!!」

 

 このいかにもパワー系な奴が清水直樹

 二年生編の体育祭で様々な種目に出場した。

 間違いなく原作Aクラスでトップの運動能力の持ち主だ。

 ちなみに1年のバレンタイン時におさげが可愛い西川さんに告白し、その後死亡。

 しかも振られたことを言いふらされ地獄の学園生活を送ることになる葛城の次に悲惨な生徒だ。

 体格はいいが少し熱血馬鹿な生徒。

 ちなみに原作では明らかになっていないが野球部らしい。

 

 にしても中々ハイレベルな戦いになりそうだな。

 司城や清水の他にもテニス部で身体能力が比較的高い橋本、葛城が失墜した後、指揮をする場面が多数あった的場。

 

 楽には勝てなさそうだ。

 そう考えながら、俺はレーンへと移動しスタート台に立った。

 

 

 ♢

 

 スタート台に立った俺はかつて出場した水泳の全国大会を思い出した。

 場は違うがここから見える青の景色はどこも同じだ。

 周囲の緊張感は全国大会の方が遥かに上だが、俺のみにかかるプレッシャーはその比ではない。

 

 もう覚悟は出来ているし、なによりもうこれ以上ないほど俺は努力してきたから。

 それにカッコ悪いとこ見せれるかよ。

 ()()()()()()()()()

 カッコよくいたいじゃないか。

 

 瞳を閉じて合図を待つ。

 そして――

 

 教師の笛が鳴り俺達は一斉に飛び込んだ。

 全員がいいスタートをきるがやはり水泳経験のある俺と司城が抜けているか。

 序盤は俺と並びツートップの展開を見せる。

 遅れて清水、少し離れて橋本、的場といった感じだ。

 

 司城とスタートは互角、ならここから差をつけるのは技術と身体能力だ。

 俺は小学生から肉体改造に取り組みスピードに特化した肉体を作り上げてきた。

 ハードな筋トレに徹底的な体重管理、体脂肪率は6パーセントを維持するなど一時は困難を極めた。

 だがその結果、無駄を許さない鍛え抜かれた最高の肉体へと昇華したのだ。

 

 徐々に司城と差が広がっていく。

 司城は必死に縮めようとするも全く縮まらない。

 だがそれは当然だ。

 

 スピードに特化した身体とは不用なものを削ぎ落とした身体。

 脂肪や無駄な筋肉は人によっては数キロもの重りにもなる。

 

 なら――それを削ぎ落とせばより早くなるとは思わないか?

 その理論の元鍛えた早乙女ボディ!

 

 今の俺は皆んなより身軽な状態で泳いでいるようなもの。

 なら差が広がるのは当然だった。

 残り10mに入りスパートをかける。

 並ぶ者は誰もいない。

 そして――

 

 俺は一位をもぎ取った。

 

 

 ♢

 

「早乙女24秒66。流石元ジュニアオリンピック準優勝者だな早乙女! 今からでも水泳部に入らないか?」

「まだ色々検討中なんですみません」

 

 教師の勧誘をやんわりかわす。

 俺のタイムは24秒66。

 原作の須藤よりは恐らく速いタイムだ。

 まぁ()()()()()はこんなものだろう。

 プールから上がり神室達の元へ向かおうとする。

 すると――。

 

「速いな早乙女……完敗だ」

「くっ、やるなぁ早乙女ぇぇ」

 

 司城と清水が声をかけてくる。

 一位は俺だったが司城は二位で25秒後半。

 清水は三位で27秒ちょっとと悪くはなかった。

 お前たちも速かったぜ。

 

「早乙女も水泳やってたんだな。しかもジュニアオリンピックで二位って……本当か?」

 

 司城からそう問いかけられた。

 かなり驚いたような表情をしているな。

 清水はジュニアオリンピックを知らないようだな。

 まぁ、あんま馴染みないよな。

 

「小学校の頃の話だけどね」

「おい司城、そのジュニアオリンピックってのはなんだ?」

「簡単に言うと将来オリンピックに出るようなジュニア選手の育成を目的とした格式の高い大会だ。出場するのにもかなりの実力が要求されるが、何より10年もすればオリンピックにでるようなメダリストの卵がわんさか出てくる……魔鏡だ」

「マジかよ……早乙女そんな凄い奴だったのか」

「いやいや、だから昔の話だって」

 

 それにいうて準優勝といっても負けだからなぁ。

 一応目的は達成したけどあの時は負けたくない事情があった。

 優勝メダルをマコちゃんに渡したかったよ。

 

「早乙女は水泳はもうやらないのか?」

「競うことは辞めたけど毎日ジムで泳いでるよ。なんなら今度一緒にトレーニングしようよ」

「⁈ ああ、是非やろう!」

「そん時は俺も行くぜ! 次は負けないからな!」

 

 司城と清水とトレーニングの約束を交わしその後別れる。

 よしよし、ここから仲を深めて派閥に引き込んでやるぜ。

 ちなみに橋本と的場は負けたらさっさと引っ込んだ。

 

 よし神室達のとこ戻ろっと。

 戻ったよ!

 

「早乙女! お前スゲェな! っていうかそんな凄い経歴持ってんなら早く言えよ!」

「……アンタはホント見かけによらないわね」

「少しだけ見直しましたよ。でも早乙女守ならもっとタイムを縮められた筈では? べしべし」

 

 石田、神室、森下あったかい対応ありがとう。

 っていうか神室達だけじゃなくて周囲の視線もなんか変わったような気がする。

 綾小路も足が速いと分かったら急にモテだしたからな。やはり普段目立たない奴が結果を出すとギャップが凄いのだろう。

 まさに望んでいたような展開だ。

 これで派閥勧誘もやりやすくなる。

 

「次は俺かよ……泳ぐのあんま得意じゃないんだよな」

「大丈夫です、私には分かります。石田優介の前世はニシオンデンザメという魚なので水中戦は得意な筈です」

「いや、そいつ確か世界一泳ぐのが遅い魚だったよな⁈ 駄目じゃん!」

「でも魚ならワンチャンあんじゃね?」

「適当なこというなよ早乙女! 補習かかってんだぞ」

「いいからさっさと行きなさいよ石田。もう皆んな行ってるわよ」

 

 石田を森下が弄り俺が乗っかり石田がツッコミ神室が締める。

 仲が良くて何よりだ。

 

 さてここから見に回るか。

 

 そこからトントンとニ組目、三組目と進んでいく。

 石田のいるニ組目は比較的運動が苦手な人達で構成されておりスローペースな試合だった。

 ちなみに石田は40秒で三位だった。

 

 次の三組目は町田や葛城、戸塚といった原作葛城派閥が集まった組み合わせだった。

 ここでは僅差で町田が一位を掴みとった。

 

 今のところ暫定一位が俺、二位が司城、三位が清水、四位が町田、五位が橋本になっている。

 

 そして注目の四組目。

 決勝に上がるのは誰か。

 誰もが注目する中、それは跳ねた。

 大きな水飛沫をあげながらそれは猛威を振るう。

 荒々しい――だがそれは速かった。

 

やはりお前と戦うことになったか。

 

「――24秒75⁈」

 

 鬼頭隼(フィジカルモンスター)

 

 

 ――――――――――――――――――――――――

早乙女 守

朝四時起きで夜は二四時に就寝する生活をずっと続けている朝活ガチ勢。

ジュニアオリンピックで準優勝した時は一時騒がれた。

ちなみに守くんに勝った子は両親メダリストのサラブレッドで将来メダル確実と言われるヤバい奴。

とある女子が守くんの体に目をつけた。

 

神室真澄

運動経験なしは独自解釈。

神室がAクラスにいる理由はそのフィジカルでのポテンシャルの高さだと推測したので。

スポーツ全般にセンスがある才能ウーマン。

 

石田優介

守くんの筋肉の仕上がりっぷりに憧れる。

この後一緒にジムに行く。

体育祭までに間に合うかな?

 

森下藍

守くんの筋肉が気に入った。

原作だと孤立していたが、今作だと楽しくやっている。

 

司城大河

なんの部活入ってるか分からないから水泳部にしました。

実は彼もジュニアオリンピック予選を目指したが出場すら叶わなかった過去がありそれ故に準優勝の守くんを一目おく。

クールなイケメン。

 

清水直樹

守くんの肉体に嫉妬して対抗心を燃やしたが敗北。

守くんを認めた。

葛城の次に可哀想な男。

これも坂柳の仕業か……

 

鬼頭隼

フィジカルモンスターというだけでは速すぎると思うので一応経験者という解釈で……

 

次回少し遅れるかもしれません。

守くんの小学校時代のエピソードと鬼頭との決着をいい感じにまとめたいのですが、少し難航しております。

 

 

 

 

 

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