「でんじろう博士、まだ実験を続けるつもりですか?」
その言葉を発したのは、もちろん葛城ミサトだった。前回の“ラムネメントス事件”から数日が経過し、ネルフの中はようやく平穏を取り戻したかに見えた。しかし、でんじろう博士はその静寂を許さなかった。
「もちろんだよ、ミサトくん! 科学の世界は失敗から学ぶものなのだよ!」
「いや、学んだことは山ほどあるけど、それを次回に生かしてほしいだけよ! 今度は何をするつもりなの?」
ミサトは深いため息をつき、振り返った。そこには、またしてもエヴァの格納庫前に設置された「でんじろうラボ」の装置群が並んでいた。なんともシュールな光景だ。
「今回はね、重力加速実験だ!」「はぁ?」
「重力加速? それってまた、どういうことなのよ?」
ミサトの目が、いよいよ疑念でギラギラと光り始める。でんじろう博士は無邪気な笑顔で説明を始めた。
「いやね、エヴァを使って、人工的に重力を倍加してみるんだ! これにより、重力の影響を受ける物質や生命体の挙動を分析するんだよ。簡単に言うと、エヴァを宇宙に飛ばして、さらに加速させるんだ!」
「ちょ、待って! 宇宙!? しかもエヴァで!? どこに行くのよ、重力の実験!?」
「もちろん、これは高度な科学実験さ。わかるかね、ミサトくん? もし成功すれば、人類の宇宙開発に革命をもたらす可能性があるんだよ!」
その時、シンジが一歩踏み出し、小声で呟いた。
「いや、でも前回だって結局、格納庫がラムネの海に……」
「シンジ!」
ミサトは肩を小さく震わせながら、シンジの顔を見た。彼も一緒に突っ込むわけにはいかないと感じているのか、黙り込んだ。
アスカが言った。
「ったく、またあの男が何かやろうとしてんのね。どこでまた爆発するんだか。」
その言葉にレイが頷き、冷静に言った。
「事故の予防策は取ったほうがいいかもしれません。」
だが、でんじろう博士は何の気なしに続けた。
「いや、今回は万全だよ! もちろん、エヴァに搭載する装置も改良済みだし、過度な重力に耐えられるようにしてあるよ!」
「『過度な重力』って……それ、大丈夫なの!?」
ミサトの目が鋭くなる。だが、でんじろうは構わず実験の準備を始める。
「では、いよいよ実験開始だ!」
全員がエヴァの操縦席に座り、シンジは「またかよ」と呟きながらスイッチを押した。その瞬間、格納庫全体が微動だにし、エヴァが少しずつ上昇を始めた。
「どうだ、シンジ君? 重力加速度は完璧に制御されているか?」
「いや、まだレバーを引いてないし、何も起きてないよ。」
その言葉を合図に、でんじろう博士が操縦室に設置されたレバーを引いた。
突然、初号機に圧倒的な加速がかかる。まるで地球の重力が突然10倍になったかのように、シンジの顔がひきつる。
「ちょっと待て、博士!! こんな重力じゃ操作できない!」
「大丈夫、大丈夫! 科学の力があれば、すべてが解決する!」
「違う! こんな実験、絶対にダメだってば!!」
次の瞬間——
バキッ!!
初号機の足元で何かが割れた。ミサトがドアを開けた瞬間、初号機がバランスを崩し、勢いよく地面に倒れた。
「く、くそっ! 初号機、制御装置が故障してる!」
格納庫全体が揺れ、天井のライトが数個落下。でんじろう博士は「これで重力加速度を計測できるぞ」と呟いていたが、ミサトは何も答えなかった。
「死ぬぞでんじろう!!」
その一言で、ようやく博士の笑顔が崩れた。だが、彼はすぐにまた得意げな表情を見せて言った。
「まあまあ、ミサトくん、こんなこともあるさ! 重力加速度のデータは取れたし、むしろ成功なんだよ!」
「成功って何よ、この状態で! あんたのせいで、初号機がぬかるみ状態だし、格納庫は大惨事だし! そしてまたまたミント味!」
「…ちょっと待て、ミサトくん。次は重力トンネル実験を試してみるのはどうだろうか。」
「死ぬぞでんじろう!!!!」
その一言で、でんじろう博士の実験は中断された——