「はぁっ……はぁっ…!」
剣を支えに膝をつくシズに、クロは余裕そうに声をかける。
「クフフ、人間にしてはなかなかやりますね。イフリートの力をそこまで引き出すとは。」
「舐めないで、ほしいわね…っ!」
対してシズは満身創痍だった。イフリートの力をもってしてもクロは強かった。クロの正体は、上位悪魔だったのだ。
「いえ、純粋な誉め言葉ですよ。ではそろそろ、遊びは終わりといたしましょう。」
と言うと、一瞬でシズとの距離を詰め、左手で仮面ごと脳天を突くように攻撃した。シズを含め、周囲の人間はクロを目で追うことはできなかった。
「なっ……!?」
攻撃が決まったとほくそ笑むクロ。しかし、次の瞬間左腕に違和感を覚えた。目をやると、二の腕から先がなくなっていたのである。シズの表情を見るに何かをしたとは考えにくい。クロが目をつけたのはシズの仮面である。得体の知れない仮面は、まるで今壊れることを否定するかのような様を見せた。永き時を生きるクロでさえも見たことがないその効果を考えると、次の行動は必然であった。
「クフ、クフフフ……。その仮面、時を超えているとしか思えませんね……。それも実に興味深い!・・・いいでしょう、本日はここまでといたしましょう。」
撤退である。クロは悪魔の翼をはためかせると、転移してどこかへと消えた。
クロが撤退したことで冒険者たちは大いに盛り上がり、シズをほめたたえ、悪魔の討伐の成功に歓喜した。
その夜、シズは案内された客室で昼間に起こったことについて振り返っていた。
(クロが言っていたあの妙な魔力は私も感じていた・・・。あれは、確かに今まで感じたことのない気配だった。最初はクロの気配かと思っていたけれど、クロの反応から知っているようには見えなかった・・。しかも「依頼」という言葉を使っていたということは、クロは味方・・・?そうなると、この魔力の持ち主は別、しかもまだこの国にいることになる。)
思考を回していると、客室の扉からノックの音が響く。
「入っていいですよ。」
「シズエ様、昼間の一件で王がお礼を言いたいそうです。もしよろしければ王の間までご同行願えないでしょうか。」
「えぇ、いいわ。」
部屋に入ってきたのは昼間案内してくれた騎士だった。断り理由もないので、二人で部屋を出て王の間まで歩く。騎士は地下へ通じているような階段を下っていく。王の間が地下にある珍しい形であると感じるが、同時に警戒もした。昼間に感じた妙な魔力に近づいているような気がしたからだ。
王の間へ続く扉は、地下深くにあった。巨大で荘厳な扉は、神聖なものというよりは、邪悪なものを祭るような装飾がみられる。その扉の前に騎士が立つと、英雄が到着したと述べた後、ゆっくりと開ける。
王の間は、昼間いた広間と同程度だが、壁などは岩を削って用いているようで、広間よりはより重圧を感じるような作りになっている。王の間の奥には、椅子が3つあった。向かって左側には昼間見た大臣が座っており、右側の椅子には大臣よりも金の意匠が多く施され、頭に王冠を載せている国王らしき男が座っていた。真ん中の椅子は国王のそれよりも大きく、そして空席であった。首をかしげるシズを無視し、先ほどの騎士がまっすぐ王のところへと歩いていく。しかし、その先でとった行動は――
真ん中の椅子に座ることであった。
「――!?」
さらに、椅子へ座ることがトリガーとなっていたのか、妙な魔力がこれまでとは比べ物にならない密度で漂い、騎士の座る椅子へと流れていく。よく見てみると、その椅子の後ろにはカプセルのようなものがあり、そこへ魔力が漏れているようであった。
椅子に座り足を組むその騎士は、シズの息をのむ様子を見て嗤う。
「あの悪魔を討伐してくれたこと、そしてさらにその身をささげてくれること、王として礼を言うぞ。」
「身をささげる・・・?第一、あなたは誰なの?」
「俺の名はオルトス。この国の王だ。」
(オルトス・・・この国の昔の英雄と同じ名ね。)
「身をささげるのはお断りよ。そもそも、あの悪魔も討伐してはいないわ、逃げただけ。」
「御託はいい。それよりも俺が気になるのはその仮面だ。相当のものなんだろう?。それこそこの俺が身に着けるものにふさわしい。貴様の体も有効活用してやろうではないか、あの小娘のようにな。」
「小娘……それってまさか――」
シズがカプセルを見ると、カプセルの全体像が明らかになる。カプセルにはいくつかの管が繋がっており、カプセルの中には幼い少女が入っていた。少女は黒い長髪をカプセル内に漂わせており、あざや傷が浮かんだその肢体からは戦闘の跡がうかがえる。
少女は気を失っているようで、静かにカプセルの中で浮いていた。カプセルの中は魔力が渦巻いており、どうやら少女から魔素をすいとっているようだった。吸い取った魔素はオルトスの座っている椅子からオルトスへと取りこまれているようだ。
「なんてことを……」
「この娘は魔素を豊富に持っていてな、それを有効に活用させてもらっている。私の役に立つ名誉を断ったので少々手荒な手段を使ったがね。」
そしてオルトスは語った。その少女の魔素を取り込み、そして国民の英雄への思いがオルトスに名を与え、
シズがオルトスの言葉に唖然としていると、パキりとカプセルにヒビが入った。見ると、少女の目が開いている。確かに意思の宿るその蒼い瞳は、こちらを見つめていた。生きているのだとシズが名も知らぬ少女に対し心の中で安堵していると、少女が何かを呟いたように見えた。そして、少女の姿が黒い霧に覆われていく。カプセルの中が黒い霧で満たされ、中の様子が見えなくなった。オルトスもシズもその異常な様子に動くことをせず、少女に起きた変化をただ見ていた。
カプセルが音を立てて割れる。
中から現れたのは先ほどまでの少女ではなかった。薄紫の髪が少女を彩る。美しい花の意匠がついた帽子の下からは真紅の瞳をのぞかせ。白と赤を基調としたドレスを身にまとい。背後に2匹の蝙蝠を従えた、ナニか。
「こんばんは、さようなら。この私、『夜天の吸血鬼』カティアが、貴方に終末を与えに来たわ。」
そのナニか、カティアは真紅の瞳を輝かせながら、鋭くとがる犬歯をのぞかせた。
クラスごとの見出し(ヴァンパイアなど)
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章みたいになっていた方が良い
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その話の後ろについてればいい
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何でもいいから続きかきなよ