傭兵団「不動」(ロイヤル1)
――――――イングラシア王国のとある酒場
その酒場は、冒険者たちのたまり場として繁盛していた。酒に酔ったものたちの叫び声がそこらじゅうで飛び交い、表を通り掛かった人も賑やかだなと覗きに来る。
今は夜で、1番繁盛する時間帯である。
その酒場に、ある2人の女性が入ってきた。うち1人の髪は輝く金と、一筋の赤いメッシュ。肩に軍服をモチーフとしたような上着を羽織り、黒のズボン、黒の手袋をみにつけた背の高い女性。
そしてもう1人の髪は吸い込まれるような蒼。全身を重厚な鎧につつみ、身の丈ほどもあるトゲの着いた棍棒を背負った女性。
荒くれ者である冒険者たちばかりが集うこの酒場に、2人は場違いと言われても当然のような美しさであった。一瞬静まる空気をものともせず、ひとつのテーブルに向かって歩む2人は、自然と酒場中の視線を集めていた。
2人が向かったテーブルには、髪がボサボサの1人の男と、船の錨と似た武器を横に立て掛けている小柄な紫髪の猫の獣人が座っていた。男は机に突っ伏しており、猫の獣人はクピクピと、大きなジョッキに入ったオレンジジュースを飲んでいる。
2人もは当然であるかのように隣に座り、酒を注文する。酒が届くと、二人ともまずは一口飲みこむ。
鎧を着ている女性が男に話しかけた。
「状況は?」
「まずいが、まだ何とかなるな」
男が突っ伏したまま目だけを向けて応える。その目は酔っているとは微塵も思えない鋭い眼光だった。
「この辺りの情報と、大まかな権力者、既に潜伏させたリオード達の集めた情報からわかっているわ。方針はどうするの?ヴェルトロ」
「まぁとりあえずは金だ。何をするにも金がなきゃならん。情報はあるしな。」
金髪の女性も続いて聞くが、ヴェルトロと呼ばれた男は顔を上げずに目だけを向けて応える。
「この辺に海はにゃいし、盗賊でもやるにゃ?」
「そんなもんやってられるか、どのくらいの実力者が集まってるかもわからねえのによ。」
「にゃんだ、残念にゃ…。」
猫の獣人はまたオレンジジュースをくぴくぴと飲み始める。そこで青い髪の女性が思案気に呟く。
「ならば傭兵はどうだ?手っ取り早く稼げると思うが。」
「あーー、それもありだと考えたんだがなあ」
ヴェルトロは顔を上げ、天井を見上げる。傭兵だと手っ取り早いが、この辺りに伝手もない荒くれ者たちの集まりだ。名を上げるにも、依頼を受けるかジュラの森にいって魔物を狩るなどしなければならない。後者ならば簡単だが、前者ならば身分証の作成が必要だ。そして、身分証の作成には自由組合と呼ばれる組織に行くのがよさそうだと、リオードたちの調査で判明していた。
「私は貴方以外の命令は受けたくないわよ。」
「お断りだにゃ。」
「ほらな、こうなる。」
「でもその案はいいものね。いっそのこと傭兵団を私たちで立ち上げてしまえばいいのよ。私たちだけの傭兵団を。」
ヴェルトロがほら、と半分呆れを含んだ口調で否定すると、金髪の女性が組んでいた足を替えながらつぶやく。その姿は様になっており、とても美しい。
「名を上げるのにいい感じそうな相手も来たにゃ。」
「あん?」
猫の獣人が反応した方向にヴェルトロが振り向くと、先ほどまで飲んでいた冒険者の3人組が近づいてくるのが目に入った。冒険者たちの顔は赤く、酔っていることが傍目で見てもわかる。そしてその下卑た視線は座っている女性陣3人に向けられていた。その手にはエールの入ったジョッキや武器が握られており、もめごとの予感がする。周りの客はにやにやしながら見ている。どうやらこの者たちは止めも参加もせず、観客に徹するようだ。
「おい、お前見ない顔だな」
「先輩の俺たちが教育してやるよ、ありがたく思え。」
「その前にそこの女たちを貸してもらうがな!」
もめごとの予感は当たった。しかしここは酒場であり、あまり目立った騒ぎを起こしたくはない。故に、最初は下手からでることにした。相手の強さも不明だったからだ。見る感じ素人ではないがそこまで強さも感じられない、中堅くらいの位置だ。
「わりぃな、これでも新しい傭兵団を立ち上げるところだったもんでよ。先輩方は傭兵の経験なさそうだし、今回は縁がなかったってことで。」
「あぁ!?なめんじゃねぇよ」
「こちとらそこらの傭兵よりも断然上に決まってるだろーが!」
「いいからてめぇは女おいていけばいいんだ…よ!」
冒険者たちは自分の思い通りにいかなかったからか腹を立てたようだった。口々に罵倒して行く中、最後の一人が武器を振りかざす。
その様子をみて、笑顔をひっこめたヴェルトロは静かに懐からカードを1枚取り出す。
「スペル:疾風怒濤。」
「うっ!? 」
「やりやがったな!?」
「やっちまうぞ!」
武器を振り上げた一人が軽く吹っ飛び、それを見たほかの二人はこぶしで殴り掛かる。だが、殴り掛かった二人の意識はそこで終わる。
「うげっ」「アガッ」
青い髪の女性が、その手に持つ棘棍棒を一振りしただけで2人が酒場の壁まで吹っ飛ぶ。その様子を見て周りの観客は「なっ……!?」と驚いている。酔っているとはいえ決して弱い部類では無い冒険者を一振で2人もダウンさせたのだ。
ヴェルトロは、倒れ伏した二人を前に立ち、声を上げて宣言した。
「俺たちは傭兵団『不動』だ!傭兵といっているが諜報から暗殺まで手広くやるつもりだから、よろしく頼む。対価さえ払ってくれたら依頼は基本請け負う。こいつらみたいなのはごめんだけどな。」
周りの冒険者たちはいつの間にか酔いもさめていたが、その雰囲気にのまれ言葉を発することができなかった。ヴェルトロの放つ気配が上級冒険者のそれと酷似していたからだ。
「てめぇ……よくもやってくれたな」
だが、頭に血が上った冒険者はその気配に気づくことができなかった。一番最初にヴェルトロに吹き飛ばされた男が立ち上がり、そのまま殴りかかる。しかしヴェルトロは構えもしなかった。それどころか笑みまで浮かべて男に語り掛ける。
「あぁ、そうだ。あんまり俺に対して手を出してくんなよ。うちの女王サマがーーー」
キンッ
「黙っていないぜ~って遅かったか。」
「囀ることさえ許しはしないわ。箱の中でおとなしくしてなさいな。」
そこには男の姿はなく、ただ黒い箱だけがあった。黒い立方体の結晶にも見えるそれはひとりでに浮遊し、金髪の女性の手に収まる。その黒い箱の中に男が入っていることは明白であった。
「あ~、そいや自己紹介がまだだったな。俺は団長のヴェルトロだ。んでこっちの猫がキャットアドミラル。」
「よろしくにゃ~」
「私のことは兵団長とでも呼んでくれ。」
「んで、うちの女王サマ
「恐怖を私に献上なさいな。」
ヴェルトロが箱の事から話題をそらすようにして自己紹介を始める。キャットアドミラルはオレンジジュースの入ったジョッキをいまだに持ちながらにこやかに挨拶をし、兵団長はとげ棍棒を傍らに堂々とした仁王立ちをしている。そしてナハト・ナハトは他の人間の不安をあおるような言葉を重ねる。しかしこの場では力を示した彼女の言葉は、畏怖として心に刻まれることになる。
こうしてを上げることに成功した傭兵団『不動』は、その豊富な人員を活かして依頼をこなし、力のある傭兵団としておそれられる世になる。余談だが、ナハト・ナハトは「箱詰め女王」の二つ名でおそれられ、戦場でも対決を避けられるようになった。
クラスごとの見出し(ヴァンパイアなど)
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章みたいになっていた方が良い
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その話の後ろについてればいい
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何でもいいから続きかきなよ