はぐれ魔神は未踏の領域を夢に見る   作:隅っこ暮らし

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矛盾司りし白金の聖女

 

 私は『未踏級』被召物(マテリアル)である。名前はもうある。

 その名を『矛盾に苦しみ悩む魂救う「白金」の聖女』と言う。担う理は矛盾。役割は救済。迷える魂に導きを与え、失われた命を慈しみ、あるべき場所へと還す。

 ゆえに現世では救世主とも呼ばれている。

 

 しかし私が救える魂は、担う理と役割により限られている。無論その理と役割を無視して全ての魂を救うことも可能であるが、最も私の全力を発揮できるのは、やはり自ら担う理に沿って力を振るう時である。

 

 対してかの万色統べし絶対者────女王陛下は、いかなる理も超越した正真正銘の怪物である。

 ゆえに陛下は理に縛られず、いかなる局面においても全力を振るえる。

 ────私は、そんな陛下に憧れた。

 偽りなく全知全能、何もかも手のひらの上、そんな絶対者となり、己の理に縛られることなく万人を救う。

 そんな夢物語に期待できてしまうようになったのは、この頃からだったように思う。

 

 

 

「…………で、貴女は何故またそこに?」

 

 『彼』は魔神である。私が主に管轄していた世界とは異なる次元の『神格級』被召物相当の存在であり、未踏級の概念が存在しなかった世界に生きていた神である。

 

「えーと……暇だから?」

 

「暇…………。なんだか前に会った時とキャラが変わってないか?」

 

「これでも自我はありますのでね、ただの救済マシーンとかではないので、たまには異世界の風景を見てみたい的な欲求も生まれるのですよ」

 

隠世(ここ)には貴女の求めるような風景はないと思われるが……」

 

「……まあ、それはいいじゃないですか」

 

 なんてことのない会話だが、彼との会話は楽しい。

 なんせ未踏級は互いに馴れ合うようなことは滅多にないので、話し相手というものが概念レベルで無い。

 かといって神格級以下の存在にそれを求めても、私が何者か知っている彼らは無駄に萎縮してしまうので話にならない。

 だから私は異世界に『理解者』を求めた。

 結果、彼と出会えた。まあ、そういうことだ。

 柄にもなく異世界の住人にまでお節介を焼いて導こうとしているのも、きっと私のそんな感情のせいだろう。

 

「しかしその……なんだ、未踏級ってどれくらい強いのかよくわからないけど」

 

「あら、なら試してみますか?」

 

 瞬間、少しだけ力を放ってみる。といっても、それまでこの世界をうっかり滅ぼさないよう絞っていた蛇口をゆるりと開いたというだけの話。

 

「あばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばびぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぅぅぅっっっ!!!!??」

 

「あっ」

 

 しかしそれだけで『彼』には刺激が強すぎたようで、隠世なるこの空間を飛び出して危うく“新たな天地”を拝みかねない程高速で……那由多の光年を一瞬で横切る超スピードでこの世界から全力離脱しかねなかったため慌てて力を抑える。

 世界に影響を与えないように力を放つ標的は彼に絞ったが、いかんせん彼自身もこの世界には大きすぎる力を持つようで、一瞬世界が消滅しかけた。

 そのアフターケアもしつつ、彼をこの空間になんとか呼び戻した。

 

「……まあ、これで未踏級が神格級(あなた)とどれ程違うのかわかっていただけたでしょうか」

 

 そう呟きながら、なんだか申し訳なくてそそくさと今日の所はこの世界から離れた。

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