はぐれ魔神は未踏の領域を夢に見る   作:隅っこ暮らし

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とある異物の黄金錬成

 

 黄金錬成(アルス=マグナ)。とある魔術の禁書目録に登場する魔術の中で最強の魔術は何か? という話題で真っ先に上がることの多い、非常に強力な魔術だ。

 その効果は至極単純、「想像したことを現実にする」ただこれだけ。

 言うなれば現実改変であるが、その自由度と強制力は数多ある他の魔術と比べても群を抜いて高く、一度発動すれば生死、時間、空間、何もかもが思い通りである。

 神や悪魔といった高次元存在すら含む世界の全てを思うがままに使役すること、すなわち全能の御業とも言えるだろう。

 

 ただし、その強力さに付随するデメリットもこの技には存在する。

 第一に、「自らに不利なこと」を想像してしまったらそれすら即座に実現してしまうこと。

 第二に、その弱点を克服すべく「実現したい内容は言葉にする」「鍼治療の要領で精神安定を行う」などの手順を踏めば、その分発動が遅れること。

 第三に、これだけ強力な魔術でも幻想殺し(イマジンブレイカー)のように効かない相手は存在すること。

 第四に、そもそもの発動までに「世界の全てを呪文と化し詠唱完了する」というあまりに遠大ゆえ現実的でない手順が存在すること。

 

 これらのデメリットゆえか、『黄金錬成』の使い手は作中でも元ローマ正教の優秀なる隠秘記録官(カンセラリウス)、アウレオルス=イザードしかおらず、その彼も最後は『幻想殺しの少年』が内に秘める“竜王”によって記憶を失い、顔を変えられた。

 そのため、事実上『とある魔術の禁書目録』におけるこの魔術の使い手は居なくなった。

 

 そう、思われていた。

 

 

 

「……まさか人の身で『黄金錬成(アルス=マグナ)』を完成させる魔術師が、元隠秘記録官(カンセラリウス)の彼以外にもいたとは」

 

 現世────通常の位相(うちゅう)。そこから隔絶された、しかし隠世とも違う……“そいつ”自身が作り出した異空間に“そいつ”はいた。

 永遠の命など持たざる人の身ながら、かの魔神キメラもかくやという程の自己改造を繰り返し、実に数万年の時を生き────時間を超えて、現代。

 とある魔術の禁書目録、本編開始直前。そのくらいまで時間軸を遡ってきた、魔術師。

 しかも────

 

「その上、まだ『槍』がなく魔神として未完成ゆえにろくに抵抗されなかったのをいいことに、隻眼の魔神(オティヌス)の肉体まで乗っ取ったときましたか」

 

「フ、未完成とはいえ魔神は魔神。その肉体を使っていると、心なしか私の『黄金錬成』も人間時代より冴え渡っているよ」

 

 オティヌスの肉体を奪いし魔術師はニヤリと嗤う。

 水着のような肌面積の多い装いを纏う魅惑の女体を見せびらかすように動かしながら、嗜虐的に微笑むその様は、まるでこの世のものではなかった。

 

「どっち道、ここで貴方は倒しておかねば、この世界の未来に影響が出る。可哀想ですが即刻魂だけ引っこ抜いて成仏させていただきますよ────」

 

「面白い! 全能を得たこの私を倒すと言うか! ならばやってみるがいい!!」

 

 

 

 ────対峙するは「白金」の聖女。

 矛盾司る未踏の理統べしものに、『全能』ごときが勝てる道理はあるか。

 

 

 

「どーん」

 

「うぎゃろぐがぎぶっぎぃんじゃおっしゃぁあああああっっ!!??!?」

 

 あわれ、全能の力を身に付け、神の肉体まで乗っ取り現代に蘇った魔術師は、一般通過未踏級のテキトー極まる霊的ビッグバン攻撃────それは威力以外は某変態の架空兵器、“航空支援式ビッグバン爆弾”のイメージに酷似していた────によって、オティヌスの肉体を残して“魂のみ”を徹底的に蒸発させられた。

 

「あ、貴方の存在そのものも単純に迷惑なので全並行世界の過去・現在・未来の時間軸に干渉して因果律レベルで存在しなかったことにしておきますねー」

 

 ……………………あわれ。

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