観覧車の下でアミの名札やキーホルダーを見つけた六人は、しばらくその場に立ち尽くしていた。
夜のパークは、さらに深い静けさに包まれている。
観覧車のゴンドラが、時折風に揺れて軋む音が響くたび、誰もが無意識に肩をすくめた。
「アミさん、やっぱりこの辺りに来てたんだよな」
タケルが名札を見つめながら言う。
「でも、どこにもいない……」
サヤカが不安げに周囲を見回す。
「このまま全員で固まって探すより、手分けした方が早く見つかるかもしれない」
ナオキが周囲を見渡しながら提案した。
「そうだな。アミさんが気にしそうな場所、いくつかあるし」
リョウタがうなずく。
「じゃあ、二手に分かれようか」
シュンスケがカメラを構え直す。
六人はその場で簡単に作戦を立てた。
ナオキ、カナエ、サヤカは観覧車下とその周辺を中心に、
タケル、シュンスケ、リョウタはメインストリートと売店側を探すことに決めた。
「何かあったらすぐ連絡しよう」
カナエが皆に声をかける。
「絶対に一人にならないで」
サヤカが念を押すと、みんながうなずいた。
ナオキたち三人は観覧車の基礎を中心に、地面や点検口の周りをくまなく探した。
「アミさーん!」
カナエが呼びかけるが、返事はない。
「何か、手がかりでも……」
サヤカが地面を照らして歩く。
「これ、見て」
ナオキが点検口の隅で小さな紙切れを拾い上げる。
「“奥へ”って書いてある」
カナエがライトで紙を照らす。
「アミさんの字だ」
サヤカがすぐに気づく。
「点検口の奥、調べてみよう」
ナオキが懐中電灯を持ってしゃがみ込む。
「私も行く」
カナエが名札を握りしめて後に続く。
「私も……」
サヤカも不安げにうなずいた。
三人は点検口の扉を慎重に開け、体を滑り込ませる。
中はひんやりとした空気が漂い、壁には配線や古びた配電盤が並んでいる。
「暗い……」
サヤカが懐中電灯で足元を照らす。
通路の奥へ進むと、小さな点検室にたどり着いた。
壁には古びた工具や点検記録の紙束、埃をかぶった椅子が並んでいる。
「ここ、スタッフが休憩してたのかな」
カナエが周囲を見回す。
「机の上に何かある」
ナオキがUSBメモリを見つけた。
「これ、アミさんの?」
カナエが手に取ると、メモリの側面に小さく「A.H.」と書かれていた。
「アミさん、ここで何を……」
サヤカが名札とメモリを見比べる。
「何か残したかったんだと思う」
ナオキが静かに言う。
そのとき、通路の奥から微かな音が聞こえた。
「今、何か聞こえなかった?」
カナエが立ち止まる。
「誰かの声みたいだった」
サヤカが耳を澄ます。
「……たすけて」
かすかな女の子の声が、通路の奥から響いた。
「アミさん?」
ナオキが呼びかけると、返事はない。
「幻聴じゃないよね……」
カナエが不安げにナオキを見る。
「とにかく、もう少し奥を調べてみよう」
ナオキが先頭に立つ。
三人は、声のした方へと慎重に進んだ。
やがて通路は行き止まりになった。
壁の隙間から外の夜風が吹き込んできて、埃が舞い上がる。
「ここで、何か……」
カナエが壁に手を当てると、壁の裏から何かが叩くような音がした。
「……誰かいるのか?」
ナオキが壁に耳を当てる。
「……たすけて」
再び、かすかな声が響いた。
「アミさん、いるの?」
サヤカが声をかけると、壁の向こうから微かなノック音が返ってきた。
「どうやって開けるんだろう……」
カナエが壁の継ぎ目をなぞると、パチンと小さな音を立てて壁の一部がわずかに開いた。
「開いた……!」
ナオキが声を上げる。
慎重に壁を押し開けると、さらに奥へと続く細い通路が現れた。
「行こう」
ナオキが懐中電灯を掲げて進む。
カナエとサヤカも後に続いた。
一方、タケル、シュンスケ、リョウタの三人はメインストリートや売店周辺を探していたが、アミの痕跡は見つからなかった。
「やっぱり観覧車の方に戻ろう」
タケルが提案し、三人は急ぎ足で観覧車下へと引き返した。
そのころ、ナオキたちは奥の通路を進んでいた。
奥の通路はさらに暗く、空気が重たく感じられた。
「ここ、本当にパークの地下なのかな……」
カナエが不安げに呟く。
「とにかく、進むしかない」
ナオキが前を向く。
三人は、かすかな声と闇に導かれるように、さらに奥へと歩み出した。