観覧車の下に集まった六人は、互いに顔を見合わせながら、しばらく無言で座り込んでいた。
誰もが疲れ切った表情を浮かべ、アミの名札とUSBメモリを囲むようにして、夜のパークに沈黙していた。
「……まだ、夜のままだな」
タケルが空を見上げてつぶやいた。
「もう何時間も経ってるはずなのに、空の色が全然変わらない」
カナエがスマホの画面を見つめる。
画面の時計は、さっきからまったく動いていない。
「これ、バッテリー切れじゃないよな?」
シュンスケが自分の腕時計を振ってみせるが、針は止まったままだった。
「私のも……」
サヤカが不安げにスマホを差し出す。
「どうして……朝が来ないの?」
彼女の声は震えていた。
「とにかく、朝になれば帰れると思ってたけど……」
リョウタが低くつぶやく。
「このままじゃ、ずっとここに閉じ込められたままかもしれない」
カナエが顔を伏せる。
「……出口を確かめに行こう」
ナオキが静かに言った。
「正門も非常口も、全部見て回ろう。どこかに抜け道があるかもしれない」
「そうだな。座ってても仕方ないし」
タケルが立ち上がる。
六人は懐中電灯を手に、パークの正門へ向かって歩き出した。
夜の空気は冷たく、足元の雑草がざわめく音だけが響く。
正門のアーチは、昼間と変わらず錆びついていた。
「開けてみる」
ナオキが門に手をかける。
だが、門の向こうには濃い霧が立ちこめていて、外の景色はまったく見えなかった。
「これ……外に続いてない?」
カナエが門の隙間から覗き込む。
「足を踏み出しても、霧の中に吸い込まれるだけだ」
リョウタが試しに一歩進み、すぐに戻ってきた。
「非常口も見てみよう」
タケルが園内マップを頼りに、裏手の非常口へと向かう。
だが、そこも錆びついた扉が固く閉ざされ、いくら押してもびくともしなかった。
「鍵がかかってる……」
シュンスケが肩を落とす。
「スタッフ通用口は?」
サヤカが声を震わせる。
「こっちだ」
ナオキが案内し、みんなで通用口へ向かう。
だが、そこも同じように開かなかった。
「どこにも、出口がない……」
カナエが呆然とつぶやく。
「これ、どういうことだよ……」
タケルが扉を叩くが、返事はない。
「パークの外に出られないなんて、そんなはずない」
サヤカが泣きそうな声で言う。
「もしかして、誰かが閉じ込めてるんじゃ……」
シュンスケが疑心を口にする。
「そんなはずないだろ」
リョウタが声を荒げる。
「落ち着いて。今はパニックになっても仕方ない」
ナオキがみんなを制止する。
「でも、どうして朝が来ないの? 時計も止まったままで……」
カナエが涙ぐみながら言う。
「わからない。でも、必ず脱出の方法があるはずだ」
ナオキが自分にも言い聞かせるように言った。
「……アミさんも、どこかで待ってるかもしれない」
カナエが名札を握りしめる。
「USBの中身、調べれば何かわかるかな」
シュンスケがバッグからノートPCを取り出そうとするが、バッテリーはすでに切れていた。
「電源が……全然持たない」
「パークの管理室に電源があるかも」
タケルが提案する。
「とにかく、今は一度観覧車の下に戻ろう」
ナオキがみんなを促す。
六人は再び観覧車の下に集まり、ベンチに腰を下ろした。
「これからどうする?」
サヤカが不安げに尋ねる。
「まずは落ち着こう。体力も温存しないと」
リョウタが冷静に言う。
「でも、眠れる気がしない……」
カナエが夜空を見上げる。
「朝が来るまで、ここで待つしかないのかな」
タケルがぽつりとつぶやく。
「……本当に、朝なんて来るの?」
サヤカが涙をこらえながら言う。
夜のパークは、相変わらず冷たく静まり返っていた。
観覧車のゴンドラが、夜風に揺れて軋む音が遠くから響いてくる。
六人は、互いに顔を見合わせ、言葉を失ったまま、夜明けを待ち続けた。