管理室でUSBメモリの解析を終えた六人は、
新たな手がかりを得たものの、依然として出口も朝も見つからない絶望の中にいた。
観覧車の下へ戻ると、パーク全体がいっそう静まり返っていることに気づく。
「さっきよりも、音がしなくなった気がする……」
カナエが不安げに呟いた。
「風も止まってるみたいだ」
リョウタが周囲を見回す。
タケルは空を見上げ、何かを探すように深呼吸した。
「……なんか、空気が重い」
サヤカが腕を抱えて震える。
「観覧車のゴンドラも、さっきから全然揺れてない」
シュンスケがカメラを構えながら、静まり返った園内を映す。
その時、どこからともなく不気味な音楽が流れてきた。
「これ、パレードの時の……」
カナエが遠い記憶をなぞるようにつぶやく。
だが、音楽はどこか歪んでいて、懐かしさよりも恐怖を呼び起こした。
メロディーの合間に、奇妙なノイズや子供の笑い声が混じっている。
「何か、来る……?」
サヤカの声がかすれる。
タケルがふとメインストリートの奥を指差した。
「……あそこ、見て」
薄闇の中、クラウンくんの巨大なマスコットが立っていた。
その隣には、ポポリちゃん、そしてミラミィの影も見える。
「動いてる……?」
サヤカが声を震わせる。
マスコットたちは、無表情のまま、ゆっくりとこちらに向かって歩き始めた。
「逃げろ!」
ナオキが叫び、六人はパークの奥へと走り出す。
逃げる途中、園内の照明が一斉に点滅し、不気味な影が地面に揺れる。
「どこに行けば……」
タケルが息を切らしながら振り返ると、マスコットたちは速度を上げ、距離を詰めてくる。
「こっち!」
シュンスケが売店の裏手にみんなを誘導する。
だが、ミラミィが鏡のようなガラスに手を当てると、
ガラス越しに奇妙な歪みが広がり、逃げ道が塞がれていく。
「閉じ込められる!」
サヤカが叫ぶ。
「とにかく、観覧車の方に戻ろう」
ナオキが指示を出す。
六人は必死に走り、なんとか観覧車の下まで戻る。
マスコットたちは、一定の距離を保ったまま、じっとこちらを見つめて動かなくなった。
「どうして……追いかけてくるんだ」
カナエが涙ぐみながら言う。
「パークの“夜”の意思なのかも」
リョウタが低くつぶやく。
「USBの映像で、アミさんが“夜の真実”に近づいているって言ってた。
もしかしたら、私たちも何かを試されているのかもしれない」
ナオキが名札とUSBを握りしめる。
「でも、どうすればいいの……」
サヤカが膝を抱えて座り込む。
「諦めるな。まだ、何か方法があるはずだ」
タケルが必死に声をかける。
その時、クラウンくんがゆっくりと手を振った。
まるで「また来るよ」とでも言うように――
六人は、再び観覧車の下で身を寄せ合い、
パークの夜とマスコットの脅威の中で震えながら、次の一手を模索し始めた。
しばらく誰も口をきかなかった。
ナオキはUSBメモリを見つめ、カナエはアミの名札を握りしめていた。
タケルは何度も周囲を見回し、サヤカはうずくまったまま小さく震えている。
リョウタは懐中電灯を持ち直し、シュンスケはカメラの録画を止めて肩を落とした。
「……これからどうする?」
カナエがかすれた声で言った。
「出口も朝も、もうどこにもないのかも」
サヤカが涙声でつぶやく。
「USBの中身、もっと調べられないかな」
シュンスケがノートPCを開こうとするが、またしてもバッテリーが切れていた。
「電源、もうどこにも残ってないかも」
リョウタが管理室の方向を見やる。
「……パーク自体が、俺たちを出したくないみたいだ」
タケルがぽつりとつぶやく。
「アミさん、どこにいるんだろう」
カナエが名札を見つめる。
その時、パークの奥から、またしてもマスコットたちの不気味な音楽が響いてきた。
今度は、観覧車のゴンドラがゆっくりと動き始める。
「動いてる……?」
シュンスケがカメラを構える。
ゴンドラの中には、誰も乗っていないはずなのに、
窓の奥に白い影が揺れているのが見えた。
「アミさん……?」
カナエが思わず立ち上がる。
だが、影はすぐに消え、ゴンドラは再び止まった。
「これ、絶対に普通じゃない」
サヤカが震える声で言う。
「パークの“夜”が、俺たちを試してるのかもしれない」
ナオキが静かに言った。
「でも、どうやって……」
タケルが言いかけた時、クラウンくんがもう一度、ゆっくりと手を振った。
その仕草は、どこか哀しげで、まるで「まだ終わらない」と告げているようだった。
六人は、不安と絶望の中で、観覧車の下に身を寄せ合い、
夜明けの気配もないまま、次に何が起こるのかをただ静かに待ち続けていた。