夢幻パーク   作:砂漠のデスラクーダ

14 / 18
夢幻パーク 第2幕 シーン3/マスコットの襲撃・怪異の激化

管理室でUSBメモリの解析を終えた六人は、

 新たな手がかりを得たものの、依然として出口も朝も見つからない絶望の中にいた。

 観覧車の下へ戻ると、パーク全体がいっそう静まり返っていることに気づく。

 

 「さっきよりも、音がしなくなった気がする……」

 カナエが不安げに呟いた。

 「風も止まってるみたいだ」

 リョウタが周囲を見回す。

 タケルは空を見上げ、何かを探すように深呼吸した。

 

 「……なんか、空気が重い」

 サヤカが腕を抱えて震える。

 「観覧車のゴンドラも、さっきから全然揺れてない」

 シュンスケがカメラを構えながら、静まり返った園内を映す。

 

 その時、どこからともなく不気味な音楽が流れてきた。

 「これ、パレードの時の……」

 カナエが遠い記憶をなぞるようにつぶやく。

 だが、音楽はどこか歪んでいて、懐かしさよりも恐怖を呼び起こした。

 メロディーの合間に、奇妙なノイズや子供の笑い声が混じっている。

 

 「何か、来る……?」

 サヤカの声がかすれる。

 

 タケルがふとメインストリートの奥を指差した。

 「……あそこ、見て」

 薄闇の中、クラウンくんの巨大なマスコットが立っていた。

 その隣には、ポポリちゃん、そしてミラミィの影も見える。

 「動いてる……?」

 サヤカが声を震わせる。

 

 マスコットたちは、無表情のまま、ゆっくりとこちらに向かって歩き始めた。

 「逃げろ!」

 ナオキが叫び、六人はパークの奥へと走り出す。

 

 逃げる途中、園内の照明が一斉に点滅し、不気味な影が地面に揺れる。

 「どこに行けば……」

 タケルが息を切らしながら振り返ると、マスコットたちは速度を上げ、距離を詰めてくる。

 

 「こっち!」

 シュンスケが売店の裏手にみんなを誘導する。

 だが、ミラミィが鏡のようなガラスに手を当てると、

 ガラス越しに奇妙な歪みが広がり、逃げ道が塞がれていく。

 

 「閉じ込められる!」

 サヤカが叫ぶ。

 「とにかく、観覧車の方に戻ろう」

 ナオキが指示を出す。

 

 六人は必死に走り、なんとか観覧車の下まで戻る。

 マスコットたちは、一定の距離を保ったまま、じっとこちらを見つめて動かなくなった。

 

 「どうして……追いかけてくるんだ」

 カナエが涙ぐみながら言う。

 「パークの“夜”の意思なのかも」

 リョウタが低くつぶやく。

 

 「USBの映像で、アミさんが“夜の真実”に近づいているって言ってた。

 もしかしたら、私たちも何かを試されているのかもしれない」

 ナオキが名札とUSBを握りしめる。

 

 「でも、どうすればいいの……」

 サヤカが膝を抱えて座り込む。

 「諦めるな。まだ、何か方法があるはずだ」

 タケルが必死に声をかける。

 

 その時、クラウンくんがゆっくりと手を振った。

 まるで「また来るよ」とでも言うように――

 

 六人は、再び観覧車の下で身を寄せ合い、

 パークの夜とマスコットの脅威の中で震えながら、次の一手を模索し始めた。

 

 しばらく誰も口をきかなかった。

 ナオキはUSBメモリを見つめ、カナエはアミの名札を握りしめていた。

 タケルは何度も周囲を見回し、サヤカはうずくまったまま小さく震えている。

 リョウタは懐中電灯を持ち直し、シュンスケはカメラの録画を止めて肩を落とした。

 

 「……これからどうする?」

 カナエがかすれた声で言った。

 「出口も朝も、もうどこにもないのかも」

 サヤカが涙声でつぶやく。

 

 「USBの中身、もっと調べられないかな」

 シュンスケがノートPCを開こうとするが、またしてもバッテリーが切れていた。

 「電源、もうどこにも残ってないかも」

 リョウタが管理室の方向を見やる。

 

 「……パーク自体が、俺たちを出したくないみたいだ」

 タケルがぽつりとつぶやく。

 「アミさん、どこにいるんだろう」

 カナエが名札を見つめる。

 

 その時、パークの奥から、またしてもマスコットたちの不気味な音楽が響いてきた。

 今度は、観覧車のゴンドラがゆっくりと動き始める。

 「動いてる……?」

 シュンスケがカメラを構える。

 ゴンドラの中には、誰も乗っていないはずなのに、

 窓の奥に白い影が揺れているのが見えた。

 

 「アミさん……?」

 カナエが思わず立ち上がる。

 だが、影はすぐに消え、ゴンドラは再び止まった。

 

 「これ、絶対に普通じゃない」

 サヤカが震える声で言う。

 「パークの“夜”が、俺たちを試してるのかもしれない」

 ナオキが静かに言った。

 

 「でも、どうやって……」

 タケルが言いかけた時、クラウンくんがもう一度、ゆっくりと手を振った。

 その仕草は、どこか哀しげで、まるで「まだ終わらない」と告げているようだった。

 

 六人は、不安と絶望の中で、観覧車の下に身を寄せ合い、

 夜明けの気配もないまま、次に何が起こるのかをただ静かに待ち続けていた。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。