観覧車の下、六人は互いの顔を見合わせていた。
マスコットたちの影は、まだ遠くでじっとこちらを見ている。
誰もが息をひそめ、夜の静寂の中で自分の心音だけがやけに大きく響いていた。
「……もう限界だ」
タケルが立ち上がり、頭を抱える。「ずっとここに閉じ込められてる気がする。もう何時間経ったんだ?」
「時計は止まったまま。空も変わらない」
カナエがスマホを見つめている。画面の光は頼りなく、彼女の顔を青白く照らしていた。
「USBの中身も、これ以上は何も出てこない」
シュンスケがノートPCを閉じる。
「アミさんの“出口”って、一体どこなんだよ……」
リョウタが低くつぶやく。
サヤカは膝を抱えて座り込み、震えていた。
「私、もう無理……。ここにいるだけで、何かに見られてる気がする」
「みんなで一緒にいれば大丈夫だよ」
カナエがそっと肩に手を置くが、サヤカは顔を上げようとしない。
その時、遠くでパレードの音楽が再び鳴り始めた。
不気味に歪んだメロディー。
観覧車のゴンドラが、誰も乗っていないのにゆっくりと動き出す。
「……また来る」
タケルがゴンドラを指差す。
暗闇の中、クラウンくんの影がゆっくりと近づいてくるのが見えた。
その後ろに、ポポリちゃんとミラミィも続いている。
「逃げよう!」
ナオキが叫ぶ。
六人は一斉に立ち上がり、園内の奥へと走り出した。
だが、走りながら、誰もが自分の限界を感じていた。
「もう無理だ、体が動かない……」
サヤカが足を止め、しゃがみ込む。
「ここで休もう」
カナエが隣に座り込む。
タケルは呼吸を整えようとベンチに腰を下ろした。
「みんな、バラバラになったら絶対ダメだぞ」
リョウタが周囲を見回す。「このパーク、何かがおかしい。誰か一人でもいなくなると……」
「でも、もう限界だよ」
サヤカが涙をこぼす。
「私も、少し一人になりたい」
シュンスケがカメラを抱えて立ち上がる。「動画の素材を集めておきたい。何か手がかりがあるかもしれない」
「やめた方がいい」
ナオキが制止するが、シュンスケは「大丈夫、すぐ戻る」と言い残し、売店の方へ歩き出した。
「俺も、ジェットコースターの方を見てくる」
タケルが立ち上がる。「何か、出口のヒントがあるかもしれないし」
「……気をつけて」
カナエが声をかける。
「私、観覧車の下をもう一度探してみる」
カナエが名札を握りしめて立ち上がる。「アミさんの痕跡、まだ残ってるかも」
「じゃあ、私は……」
サヤカがためらいながらも、ミラーハウスの方へ歩き出す。「あそこ、何か呼ばれてる気がする」
「みんな、絶対に無理はしないで」
ナオキが皆に声をかける。「何かあったら必ず戻ってくるんだ」
リョウタは腕を組み、観覧車の影から園内全体を見渡していた。
「俺はここで見張ってる。何かあったら叫べ」
それぞれが自分の思いと恐怖を胸に、夜のパークの闇へと散っていった。
カナエは観覧車の下で、アミの名札を握りしめながら、
「どうして、こんなことになったんだろう」と独りごちる。
ふと、足元で何かが光る。
拾い上げると、それはアミのものと思われる小さなペンダントだった。
タケルはジェットコースターの脇で、レールの錆びた音に耳を澄ませていた。
「出口……どこかに抜け道が……」
だが、背後で何かが動く気配がして、思わず振り返る。
シュンスケは売店の裏で、カメラを構えていた。
「この映像、誰かが見つけてくれたら……」
だが、ファインダー越しに、クラウンくんの影がゆっくりと近づいてくるのが見えた。
サヤカはミラーハウスの前で立ち止まり、
「……呼んでるのは、誰?」と小さくつぶやく。
扉の奥から、かすかな歌声が聞こえてくる。
リョウタは観覧車の下で、みんなの姿を見失わないように目を凝らしていた。
「……誰も、消えるなよ」
彼の声は、夜の静寂に吸い込まれていった。
パークの夜は、さらに深く、濃く、静まり返っていく。
それぞれが孤独と恐怖、そしてわずかな希望を胸に、
“出口”を求めて闇の中をさまよい始めていた。