夜のパークに散った六人は、それぞれ孤独と不安を抱えながら、自分の選んだ場所で異常な現象や“何か”の気配に直面していた。
カナエは観覧車の下で、アミの名札とペンダントを握りしめていた。
ベンチに腰を下ろし、静かな夜空を見上げる。
(どうして、こんなことになったんだろう……)
ふと、足元で何かが光る。
拾い上げると、それは小さなメモだった。
「鏡の奥に出口がある」
アミの筆跡だ。
カナエはミラーハウスのことを思い出し、胸がざわつく。
「……アミさん、あなたはどこにいるの?」
タケルはジェットコースターの脇で、レールの錆びた音に耳を澄ませていた。
出口を探して歩き回るが、どこにも抜け道は見当たらない。
(何か、ヒントが……)
その時、背後で金属音が響いた。
振り返ると、誰もいないはずのコースターがゆっくりと動き出している。
車両の中には、幼い妹の幻影が座っていた。
「……どうしてここに?」
タケルは呆然と立ち尽くす。
妹は無言で手を振り、次の瞬間、コースターは闇に消えた。
シュンスケは売店の裏で、カメラを回していた。
「この映像、誰かが見つけてくれたら……」
ファインダー越しにクラウンくんの影がゆっくりと近づいてくるのが映る。
だが、肉眼で見ると誰もいない。
「ふざけるなよ……」
シュンスケは背筋に冷たいものを感じ、カメラの映像を確認する。
そこには、自分の背後に立つマスコットの姿が映っていた。
「……やめろ……」
恐怖でカメラを落としそうになりながら、シュンスケは後ずさる。
サヤカはミラーハウスの前で立ち止まっていた。
「……呼んでるのは、誰?」
扉の奥から、かすかな歌声が聞こえてくる。
サヤカは震える手で扉を押し開けた。
中は鏡の迷路。
懐中電灯の光が、無数の自分を映し出す。
その中の一枚の鏡に、見覚えのない“もう一人の自分”が立っていた。
その姿がゆっくりと手を振る。
サヤカは恐怖に駆られ、扉を閉めて後ずさった。
リョウタは観覧車の下で全体を見張っていた。
「……誰も、消えるなよ」
ふと背後に気配を感じて振り向くと、パークのマスコットたちが静かに並んでいる。
クラウンくん、ポポリちゃん、ミラミィ。
「……何か、始まるぞ」
リョウタは身構えた。
ナオキは園内を巡回していた。
「みんな、無事でいてくれ……」
途中、妹の幻影やアミの声を聞いた気がした。
「出口を見つけるんだ」
自分に言い聞かせながら、暗闇の中を歩き続ける。
その時、パークの奥から再びパレードの音楽が流れ始めた。
音楽はどこか歪んでいて、懐かしさよりも恐怖を呼び起こす。
観覧車のゴンドラが、誰も乗っていないのにゆっくりと動き出す。
遠くで誰かが叫ぶ声が聞こえた。
カナエは観覧車の下で、アミのメモを握りしめながら立ち上がった。
「鏡の奥……ミラーハウスに行かなきゃ」
その瞬間、背後でクラウンくんの影が現れた。
カナエは恐怖で足がすくむが、必死で走り出す。
タケルはジェットコースターの脇で、再び妹の幻影を見た。
「お兄ちゃん、こっちだよ」
幻の声に導かれるように、タケルはレールの下へと歩き出す。
シュンスケは売店裏で、クラウンくんの影に追い詰められていた。
「やめろ、来るな!」
叫びながら、カメラを振り回す。
だが、影はどんどん近づいてくる。
サヤカはミラーハウスの鏡の中で、“もう一人の自分”と目が合った。
鏡の中の自分が、ゆっくりと微笑む。
「こっちにおいで」
その声に引き寄せられ、サヤカは鏡に手を伸ばした。
リョウタは観覧車の下で、マスコットたちに囲まれていた。
「……やめろ」
リョウタは懐中電灯を振り回すが、マスコットたちは微動だにしない。
ナオキは園内を駆け回りながら、遠くで誰かが叫ぶ声を聞いた。
「みんな!」
ナオキは声のする方へと走り出す。
夜のパークは、さらに深い闇に包まれていく。
それぞれが怪異や幻覚、アミの新たな痕跡と向き合う中、
誰かが“消える”あるいは“襲われる”予感が、パーク全体を支配していた。