夢幻パーク   作:砂漠のデスラクーダ

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夢幻パーク 第2幕 シーン6/犠牲と決断、再集結

夜のパークに散った六人は、それぞれの恐怖と幻覚の中で孤独に戦っていた。

 

 カナエはミラーハウスの前で、アミのメモを握りしめて震えていた。

 「サヤカ……?」

 扉の奥から聞こえる歌声に導かれるように、カナエは鏡の迷路へと足を踏み入れる。

 懐中電灯の光が無数の自分を映し出し、不安が胸を締めつける。

 奥の鏡の前で、サヤカがうつろな目で立ち尽くしていた。

 

 「サヤカ、しっかりして!」

 カナエが駆け寄ると、サヤカは鏡の中の“もう一人の自分”に手を伸ばしていた。

 「……呼ばれてるの、あっちから」

 サヤカの声はどこか甘く、恍惚とした響きを帯びていた。

 

 鏡の中のサヤカは、妖艶に微笑みながら、現実のサヤカをゆっくりと抱きしめる。

 サヤカの体は、まるで恋人に誘われるように、鏡の中へと引き寄せられていく。

 「だめ、戻って!」

 カナエが必死でサヤカの腕を引くが、サヤカの唇は鏡の中の自分と重なり合い、

 そのままガラスの表面に体を押しつけていく。

 

 サヤカの白い首筋が、鏡の中の自分にゆっくりと舐められる。

 「やめて……いや……」

 甘い吐息とともに、サヤカのドレスの肩紐がずり落ち、

 鏡の中の自分の手が、彼女の背中をなぞる。

 

 その指先が、サヤカの背骨に食い込む。

 一瞬、快楽と苦痛が入り混じったような表情で、サヤカは背を反らせた。

 「やめて……やめて……!」

 次の瞬間、鏡の中の自分がサヤカの背中に手を突き刺し、

 ガラスの向こうで肉を裂き、骨を砕く音が響く。

 

 サヤカの身体は、鏡の中でゆっくりと抱きしめられたまま、

 背骨を伝って鮮血がしたたり落ちる。

 鏡の表面には、赤い液体が艶めかしく広がり、

 サヤカの顔は快楽と苦痛がないまぜになったまま、鏡の中で絶叫した。

 

 「カナエ……たすけて……」

 サヤカの声は、最後だけ少女のように震えていた。

 鏡の中で、サヤカの身体は“もう一人の自分”に貪られ、

 血と涙と嗚咽が混じったまま、ゆっくりと崩れていく。

 

 現実の鏡の表面には、サヤカの手形と血の跡だけが残り、

 彼女の姿はどこにもなかった。

 

 カナエはその場に崩れ落ち、涙と嗚咽で喉が詰まる。

 「うそ……サヤカ、やめて……返して……!」

 鏡の前で、カナエは声にならない叫びをあげ続けた。

 

 ――

 

 他の仲間たちも、それぞれの場所で怪異に追われ、絶叫や悲鳴が夜のパークに響いていた。

 タケルはジェットコースターの脇でクラウンくんに追い詰められ、

 絶体絶命の状況に陥るが、間一髪でレールから転げ落ち、

 「……あぶね……死ぬかと思った……」と息を切らして無傷で逃げおおせた。

 

 シュンスケは売店裏で、ファインダー越しにクラウンくんの影が迫るのを見て、

 カメラを落としながら必死で逃げ出した。

 リョウタは観覧車の下でマスコットたちに囲まれ、

 冷や汗をかきながらも、なんとかその場を離れることができた。

 

 ――

 

 やがて、観覧車の下にカナエとナオキ、タケル、シュンスケ、リョウタが集まった。

 カナエはサヤカの名札を握りしめ、涙を止められないまま、

 「サヤカが……消えた……」と震える声で告げた。

 

 仲間たちは、サヤカの不在と、鏡の中でのあまりに異様な死に言葉を失った。

 絶望と恐怖、そして「自分たちも次はどうなるか分からない」という現実が、

 全員の心を締めつけていた。

 

 その中で、タケルが無傷で戻ってきたことに、

 カナエとナオキは涙を流して安堵し、

 「よかった……本当に……」とタケルにすがるように抱きついた。

 

 夜のパークは、サヤカの消失と血の匂い、

 そして生き残った者たちの嗚咽と震えで満たされていた。

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