夢幻パーク   作:砂漠のデスラクーダ

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夢幻パーク 第1幕 パート2/園内侵入とメインストリート探索

 錆びついた正門のアーチを、七人は一人ずつくぐった。

 門を押し開けると、軋む音が夜の空気に響く。

 誰もが思わず足を止め、無言で園内を見渡した。

 空気が、外とは微妙に違う。湿った土と錆びた鉄の匂い。

 風が吹き抜けるたび、遠くで観覧車のゴンドラが軋む音が聞こえた。

 

 メインストリートは、かつてパレードが行われた広い通りだった。

 今は雑草が伸び放題で、舗装のひび割れから小さな草花が顔を出している。

 色褪せたポップコーン屋台、壊れたベンチ、売店のガラス越しに見えるクラウンくんのピエロマスク……

 かつての賑わいの名残が、今はどこか不気味に沈黙している。

 

 「思ったより暗いな」

 タケルが小声で言う。

 「街灯も全部消えてるし、懐中電灯持ってきて正解だったな」

 シュンスケがカメラのライトを点けると、光の輪が地面を照らした。

 

 「ここがメインストリート……」

 カナエが周囲を見渡しながら呟く。

 「昔は、パレードとかやってたんですか?」

 タケルがアミの方を見る。

 アミは少しだけ微笑んでうなずいた。

 「はい。パレードの日は、この通りが子供たちでいっぱいになって、マスコットたちが踊ってました」

 「なんか、今は信じられないくらい静かだな」

 タケルが肩をすくめる。

 

 「売店の中、クラウンくんのマスクが見える……」

 サヤカがガラス越しに目を凝らす。

 「クラウンくんは、パークの“盛り上げ役”だったんですよ」

 アミが自然に解説を添える。

 「パレードの先頭で踊ったり、イベントで子供たちを笑わせたりしてました」

 「今見ると、ちょっと怖いけどな」

 タケルが冗談めかして笑う。

 カナエも「昼間だったら、きっと可愛く見えたんでしょうね」と小さく笑った。

 

 「やっぱり、帰った方がいいんじゃ……」

 サヤカが小さな声でつぶやく。

 タケルが「大丈夫だよ」と明るく返すと、サヤカは不安げにうなずいた。

 「でも、こういう場所の“空気”って、やっぱり違う気がします」

 カナエが静かに言う。

 その言葉に、誰もが一瞬だけ足を止める。

 ナオキは周囲を見回し、どこかで誰かに見られているような気配を感じた。

 

 「おい、あれ見てみろ」

 シュンスケがカメラを向ける先、看板に赤いスプレーで「帰れ」と落書きされていた。

 「やべ、雰囲気出てきたな」

 タケルが冗談めかして笑うが、誰も返さなかった。

 「廃墟のこういう落書き、よくあるけど……なんか、本気で書いた感じがするな」

 リョウタが短くつぶやく。

 「スタッフが書いたんじゃないですよね?」

 カナエが尋ねると、アミは首を横に振る。

 「閉園後、何度か侵入者があったみたいです。でも、こんなに大きく書かれてるのは初めて見ました」

 

 風が強くなり、屋台のテントがバサリと揺れる。

 その音にサヤカが肩をすくめる。

 「……今、誰か笑った?」

 サヤカが顔を上げる。

 「気のせいじゃね?」

 タケルが肩をすくめる。

 「……でも、なんか寒気がする」

 サヤカが腕を抱きしめる。

 カナエはサヤカの肩にそっと手を置いた。

 

 「昔は、本当に賑やかだったのに」

 アミがポツリとつぶやく。

 「パレードの時、子供たちがここで踊ってたんです」

 その言葉に、誰もが一瞬だけ、過去の夢幻パークの賑わいを想像した。

 だが今は、ただ風の音と、どこか遠くから響く観覧車の軋みだけが残っている。

 

 「このまま奥まで行く?」

 タケルが前を向く。

 「せっかくだし、全部見て回ろう」

 シュンスケがカメラを回しながら歩き出す。

 

 ナオキは、ふと足元の古いチケットを拾い上げた。

 「“夢幻パーク・スペシャルナイト”……」

 印刷がかすれて読めなくなった日付を指でなぞる。

 (妹と来た、あの日のチケットも、こんなだったかもしれない……)

 

 「ナオキくん、大丈夫?」

 カナエがそっと声をかける。

 「うん、なんでもない」

 ナオキは微笑み、チケットをそっとポケットにしまった。

 

 「次は、あっちに行ってみよう」

 アミが指さした先には、広場の中央に朽ちたメリーゴーランドが見えていた。

 その屋根の上には、ポポリちゃんのオブジェが傾いて、まるでこちらを見下ろしているようだった。

 

 「……あれ、最初からあんなふうに傾いてたっけ?」

 タケルが小声で言う。

 「さぁ……」

 シュンスケがカメラ越しにズームする。

 「なんか、見られてるみたい」

 サヤカがポポリちゃんから目をそらした。

 

 「そろそろ移動しようか」

 リョウタが短く促す。

 七人は、メリーゴーランドへと歩き出した。

 

 その背後で、クラウンくんのマスコットが、ガラス越しにじっとこちらを見つめていた。

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