夢幻パーク   作:砂漠のデスラクーダ

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夢幻パーク 第1幕 シーン4/ミラーハウス探索

七人はミラーハウスの前で、しばし足を止めた。

 古びた洋館のような建物は、夜の闇に沈んでいる。

 入口の上の「ミラーハウス」の看板は色褪せ、ガラス窓はほとんど割れている。

 扉のペンキも剥げ落ち、かつての賑わいを想像するのは難しかった。

 

 「やっぱり、入るのやめようかな……」

 サヤカが不安げに言う。

 「大丈夫、みんな一緒だし」

 カナエが優しく声をかける。

 タケルが懐中電灯を握りしめて「せっかくだし、ちょっとだけ見てみよう」と、なるべく明るく振る舞った。

 

 アミは扉の前で一瞬立ち止まり、静かに息を吸い込む。

 「……ここ、夜に入るのは久しぶりです」

 彼女の声に、みんなが自然と耳を傾けた。

 「昼間は子供たちが鏡の迷路を楽しんでましたけど、夜は雰囲気が全然違うんです」

 その言葉に、シュンスケが「確かに、昼と夜じゃまるで別世界だな」とカメラを構えながら応じた。

 

 扉を押し開けると、冷たい空気が流れ出した。

 中は想像以上に暗い。懐中電灯の光が細長く伸び、壁一面に鏡が貼られている。

 床には割れたガラス片が散らばり、鏡の中には自分たちの姿がいくつも重なって映っていた。

 

 「なんか、自分がいっぱいで気持ち悪いな」

 タケルが苦笑する。

 「本物の自分って、どれなんだろう……」

 カナエがぽつりとつぶやく。

 

 「小さい頃、ここで迷子になった子が何人もいたんです」

 アミが懐かしそうに、けれどどこか寂しげに語る。

 「鏡の中に自分がいるのに、出口が見つからなくて泣き出しちゃって……。スタッフ同士でよく探し回りました」

 「今なら絶対泣く自信あるわ……」

 サヤカが小さく笑い、みんなもわずかに緊張をほぐした。

 

 通路を進むと、四方が鏡に囲まれた小部屋にたどり着いた。

 中央には古びた椅子がぽつんと置かれている。

 「ここ、事故の時に割れたって聞いた」

 アミが静かに言う。

 「誰か、座ってみる?」

 タケルが冗談めかして椅子を指すが、誰も動こうとしなかった。

 

 「……この鏡、何かおかしくない?」

 カナエが一枚の鏡の前で立ち止まる。

 「どうした?」

 ナオキが隣に立つ。

 「私たちの姿、ひとつだけ動きが遅れてる気がする……」

 カナエが鏡越しに自分の手を振ると、ほんの一瞬だけ遅れて鏡の中の自分が同じ動きをした。

 

 「気のせいだよ」

 タケルが笑ってみせるが、どこか不安げだ。

 「鏡のせいで目が回りそうだな」

 シュンスケがカメラを下ろす。

 

 ナオキは、ふと一枚の鏡の前で立ち止まった。

 そこには、自分の姿と――もう一人、小さな女の子が映っていた。

 「……っ」

 思わず息を呑む。

 「どうしたの?」

 カナエが隣に立つが、彼女には女の子の姿は見えていないようだった。

 

 「ごめん、ちょっと目が回っただけ」

 ナオキはごまかし、鏡から目をそらした。

 だが、鏡の奥で誰かが手を振ったような気がして、心臓が早鐘を打つ。

 

 「今の、見た?」

 サヤカが震える声で言う。

 「何が?」

 タケルが振り返る。

 「鏡に、手形が……」

 サヤカの指差す先に、うっすらと曇った手形が浮かび上がっていた。

 

 「湿気のせいじゃないかな」

 リョウタが短く言うが、その声にも緊張が滲んでいた。

 

 「……でも、誰かが本当にここにいるみたい」

 カナエがぽつりとつぶやく。

 

 そのとき、鏡の中に一瞬だけ、パークのマスコット――ミラミィの姿が映った気がした。

 だが、シュンスケがカメラを向けると、何も映っていない。

 

 「そろそろ出ようか」

 アミが静かに言った。

 七人は、妙な胸騒ぎを覚えながら、ミラーハウスを後にした。

 

 外に出ると、夜の空気が一層冷たく感じられた。

 観覧車のゴンドラが、風に揺れて軋む音が遠くから響いてくる。

 

 「次はどこを見て回る?」

 タケルが皆を振り返る。

 「ジェットコースターの方を見てみませんか」

 アミが提案し、リョウタも「事故現場なら何か残ってるかもしれない」とうなずいた。

 

 七人は、ミラーハウスを後にして、ジェットコースターの方へと向かって歩き出した。

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