ジェットコースター事故現場の余韻を引きずりながら、七人はパークの裏手へと進んだ。
コースターの脇に、半ば隠れるようにして古い建物が建っている。
「スタッフルームって、この奥?」
タケルが足元の雑草をかき分けながら尋ねる。
「はい。従業員用の通用口があって、地下通路でつながっているんです」
アミが案内役らしく先頭に立った。
建物の扉は重く、錆びついた取っ手をタケルとナオキが力を合わせて開ける。
中はひんやりとした空気が漂い、埃っぽい匂いが鼻をつく。
「ここ、ずっと閉め切りだったんだろうな……」
シュンスケがカメラのライトを点けると、薄暗い廊下が奥へと続いていた。
「昔はここでスタッフが休憩してたんです」
アミが懐かしげに壁の掲示物を指さす。
「パークの閉園が決まった後、荷物を片付けに来たことがあって……」
彼女の声に、カナエが「寂しかったですか?」とそっと尋ねる。
「ええ。みんなで最後に写真を撮ったんです」
アミは壁に残された色褪せた集合写真を見つけ、指でなぞった。
「地下通路って、どこから行くの?」
リョウタが周囲を見回す。
「この奥の扉です」
アミが指さした先には、鉄製の重い扉があった。
「開くかな……」
タケルが力を込めてノブを回すと、ギギギと音を立てて扉が開いた。
階段を下りると、コンクリートの壁に囲まれた細い通路が続いている。
「地下って、やっぱり空気が違うな」
タケルが肩をすくめる。
「ここ、閉園後は誰も入ってないはずです」
アミが懐中電灯で足元を照らす。
「壁に何か書いてある」
カナエが指差す。
「点検記録だな」
リョウタが紙片を拾い上げる。
「……でも、日付が途中で途切れてる」
シュンスケがカメラで記録を撮影する。
通路の途中、古びたロッカーが並んでいた。
「これ、従業員のロッカー?」
サヤカが扉をそっと開ける。
中には埃をかぶった制服や、使いかけのノートが残されていた。
「このノート、何か書いてある?」
カナエがページをめくる。
「“夜の点検は一人で行くな”……?」
タケルが読み上げると、みんなが一瞬黙り込んだ。
「事故の後、夜の点検は必ず二人以上で行う決まりになったんです」
アミが静かに説明する。
「それまでは、夜も一人で点検してたんですか?」
シュンスケが尋ねる。
「ええ。スタッフが消えてから、みんな怖がって……」
アミの声が少しだけ震えた。
通路の奥に、もう一つ扉があった。
「こっちは何?」
タケルがノブに手をかける。
「点検室です。パーク全体の電源や監視カメラの管理をしていました」
アミが答える。
扉の中はさらに埃っぽく、壁には監視カメラのモニターが並んでいた。
「全部、電源落ちてるな」
リョウタがモニターを確認する。
「でも、これ……」
シュンスケが一台のモニターに映る静止画に気づく。
「誰か、映ってる?」
カナエが画面を覗き込む。
「……スタッフの制服?」
サヤカが不安げに呟く。
「古い録画かも」
アミがモニターの下の操作パネルを調べる。
「この映像、事故の日のものだ」
シュンスケが映像の端に映る日付を指差す。
「でも、動かない……」
ナオキがモニターを叩くが、画面は静止したままだった。
「ここ、もう出よう」
カナエがそっと言う。
「この空気、長くいると気分が悪くなる」
タケルが同意し、みんなも無言でうなずいた。
七人は、地下通路を引き返し、スタッフルームを後にした。
外に出ると、夜の空気が一層冷たく感じられた。
遠くで観覧車のゴンドラが、風に揺れて軋む音が響いていた。