主人公がボーダー隊員とわちゃわちゃするだけ 作:シールドを信じろ
あ、作中の時間は黒江と茶野隊の2人が入隊したぐらいです
...俺が、俺が何かしたってのか?
先日ダークマターを食したばかりだと言うのに、何故俺はまた劇物を食わなければならない...?
あくる日の昼下がり、暇していた俺は運悪く加古さんに捕まり、隊室でお昼ご飯を振る舞うために呼び出されていた。クソッ!
最悪だ。防衛任務が終わって、途中で出水と別れたまでは良かった。いや良くない、どうせならアイツも巻き込んでおくべきだったな...ともかく、もっと別ルート辿ってれば...
って、あれ。見ない顔が...
「...なあ、加古さん。彼女は?」
「ああ、双葉の事ね。彼女は私の隊に入れる予定の子よ。双葉、自己紹介しなさい」
「...黒江双葉です。よろしくお願いします」
「よろしくね黒江ちゃん。平後園 明です」
黒江双葉。聞いた事がある。確か新入隊員の試験で11秒を叩き出した逸材だ。緑川と木虎ちゃんの記録には及ばないとは言え、普通に優秀だ。イニシャルKで隊員を揃えてる加古さんがスカウトしないはずが無い。
だが、加古さんのチームに入るって事は、要するに毎日炒飯チャレンジの危険性があるって事だ。俺にはその危険を受け入れる度量はない。喜多川ちゃんと小早川ちゃんはどうやって回避してるんだ...?
黒江ちゃんはもしかしたら加古さんが悪魔的炒飯を作ることを知らないのかもしれない。というか知ってたら入らない。
つまり俺達は彼女を守る立場にある...はずなのだが。
「な、なあ明。俺の分食ってくんねーか?(小声)」
「くたばっててくださいダンガー隊長」
「酷くね?」
「は、はは...俺の人生、どうやらここまでみたいだな...」
「3回目があったんだから4回目の人生信じましょうよ」
「先程から皆さん何を話してるんですか...?」
何も知らない子を守るべきなのにも関わらず、太刀川さんは自己保身に走り即座に俺を犠牲にしようとしてきた。この調子だと黒江ちゃんにも押し付けかねない。
更にもう1人の大人である堤さんはもう表情が死んでる。流石二度殺された男だ、(悲惨な方向に)面構えが違う。
太刀川さんは犠牲を増やそうと嘘を付いてでも二宮さんを連れてこようとしていたらしいが、同行者に堤さんの名前が挙がった瞬間に、実際は加古炒飯チャレンジである事を悟られてしまったらしい。
無駄に勘のいいポケインスーツめ、ランク戦でボコしてやるから覚悟しろよな...!
「さ、今から作ってくるから待っててね」
「あ、加古さんちょっと待っ」
「ああ...死の予感が...死が迫ってくる...」
「おい堤!気をしっかり持て!」
「(愉快な人達だな...)」
ま、マズイ...本格的にマズイぞ、味も不味い。せめて普通に作ってくれとお願いしたかったが、あの話の聞かなさは完全に創作意欲が爆発してる証だ。
今すぐにでもベイルアウトしたいが、俺はトリオンが多い為、1度ベイルアウトするとトリオン体の再構成が...
「...な、なあ黒江ちゃん」
「はい、なんでしょう」
「...無理そうだったら、俺に残りを渡しな」
「...?」
何を言ってるんだって表情だ。そりゃ理解出来ないよな...今から死をプレゼントする料理が出るなんて...
...うっ!なんて匂いだ!これは...ドリアンか!?おいおいマジか、炒飯にドリアンなんて使わないだろ!
そしてこれは...キムチ!?炒飯とキムチなら...まあ、まだしも!そこにドリアン?意味不明!
納豆の匂いもするぞ!?どういうことなんだっ!
俺達が肩を落としていると、心配したのだろうか黒江ちゃんが声を掛けてくれた。
「あ、あの...食べれなさそうなら皆さんの分も私が食べますよ?」
「ほんげブっ」
そのあまりにも魅力的な提案に太刀川さんが飛びつきそうになる。堤さんが足を全力で踏み、俺が全力でアッパーをして黙らせる。完璧な連携だったな今。諏訪隊に電撃移籍するか...?
「おまたせ〜」
「ああ...来てしまったか」
「待ち侘びた(訳ないだろ)ぜ...」
「緊張してきたな...」
さあて!クソみたいな匂いだ!見た目も最悪!...はあ、お嬢様、俺ここで終わりみたいです。坊ちゃん、遊ぶ約束、守れそうにないです。沢村さん...迅のセクハラの証言を纏めたファイルあるからそれ使って勝訴してくれ...
走馬灯が流れていく。だが、この状況を打開する方法など思いつく訳もなく...
「い、いただき...ます」
「召し上がれ♪」
炒飯を一口食べる。するとその瞬間、納豆とドリアンの混ざりあった匂いが脳を揺らす!そしてそこに追撃のように表れる激マズな味!これは...味噌とバニラエッセンス混ざってるな!?
そしてこの後味...ミント!?なんでミント入れちゃったかなぁ!
「ぐ、うっ」
「があっ...!」
「はぁーっ!はぁーっ!」
一口、たった一口でボーダーの精鋭が3人もノックアウト寸前となってしまう。これもう黒トリガーだろ...!
だが、ニコニコな加古さんを前にして男衆は食べる手を緩める訳には行かなかった。
既に限界の脳を回し、いざ二口目ー
そんなときだった。
「あの、加古さん」
「...何かしら?双葉」
「あの、平後園先輩達、今日体調が悪いそうなんです。それに、私今日お腹がすごく空いていて...だから、3人の分も私が食べます」
「「「......ッッ!?!?」」」
「あら...そうだったの。ごめんなさいね、気づかなくて」
女神だ、女神様だ。俺達野郎3人には、彼女が女神に見えた。だが、そんな無茶をさせる訳にはいかない。俺達は全力で黒江ちゃんを止めようとして、彼女の皿が既に空なことに気付いた。
俺達は理解に時間を要した。そして理解しきった頃には、俺達の皿まで空になっていた。
皿を空にしたであろう女神様は、涼しい顔で口元を拭っていた。
決めた。彼女を女神として崇める宗教を作ろう。その時、俺はそう決心したのだった...
尚、この策は未来を視たであろう迅に止められた。さりげなく証拠ファイルも押収された。
ちくしょうめ!
・新興宗教の開祖 ひごぞの
太刀川隊に所属する開祖(未遂)。後日女神様をスイパラに連れて行った事で、しばらくロリコンを疑われるようになった。