大聖堂は静まり返るほど美しく。青、赤、緑、黄、紫、紺、緋のステンドグラスが輝く。
フランは最愛の従姉との声を聞けて良かったのだがエレン神父が執務室へ戻ってしまったので他のキリスト信者とともに聖書を読んでいた。
聖書はざっくり言うと日本の古事記みたいに色々な神話が集まった本であるがキリスト教だけでなくユダヤ教でも扱われる。旧約聖書と新約聖書で分かれているのはそのためだがキリスト教は旧約聖書も新約聖書も読むのが基本的である。
聖書にはヨブ記やヤコブ記の内容などが書かれている。キリスト教は自分自身の罪を認め悔い改めていく信仰方法だが主に日本の神道では自分自身の罪は悔い改めず、逆に勝ち負けなくとも誰かに犠牲になってもらうというのが主な古事記の内容である。
この場合、須佐之男命と天照大御神が当たるのだろうか、誓約で須佐之男命は天照大御神の野望の犠牲となったのだ。
「Hei Abraham, sunt Fran. De mult timp nu ne-am văzut.」(やあ、エイブラハム。フランだよ。久しぶりだね。)
「Franc? S-a obosit să se întoarcă în România?」(フランか?わざわざルーマニアに戻ってきたのか?)
「Abraham, e timpul vacanței. E vacanța de vară. Ai fost aici acum trei luni, nu-i așa?」(エイブラハム、あなたねえ、今は休日デー。夏休みよ。前にも3ヶ月前来ていたじゃない?)
「Acum că mă gândesc, Bernard te căuta, iar Marianne voia și ea să te întâlnească.」(そういえばバーナードが探していたし、マリアンヌも会いたがっていたぞ。)
「Da. Îmi pare rău. Mă duc să-i întâlnesc.」(そうね。すまないわ。二人に会ってくる。)
これは実はフランが中学校に入ってから3ヶ月経った話であり、フランは3ヶ月前にも3人と出会い、同じ年齢ということもあって交流を深めていった。
「Deci, ce făcea Avraam în aceste ultime trei luni?」(で、エイブラハムはこの3ヶ月の間何をしていたの?)
「Îl ajut pe tatăl meu. Oțelăria noastră este foarte aglomerată.」(親父のお手伝いだ。まったくうちの鉄工所は忙しいよ。)
「Fran nu are tată, nu-i așa? Ce fel de tată a fost?」(フランに父親はいないんだよな?どんな父親だったんだ?)
フランは父バルザイラのことを思い出す。父はデットリーブラッド・ヴァンパイアだがいつも家族思いな吸血鬼だったということ。フランと休みの日には遊んでくれたり、出掛けたりしたこと。フランの翼がない状況に困っていたこと。フランの自慢の父親だった。
父としてだけでなく吸血鬼一族の代表としてや仕事するときの父の顔は公私の区別がちゃんとついた大人であったことだった。
その父と母はヴァンパイア・ハンターのアンリ率いる「月夜の神殺し団」によって殺されたのである。レミリアもフランも紅魔館が一度燃えたところをしっかり見ていた。なので今でもフランの心を締め付け脳裏に浮かび苦しむのである。
レミリアとフランはその後、叔父のラグナルのところへ行こうとしたがスコットランドはルーマニアのシギショアラから遠く断念せざるを得ず。叔父も二人の亡命を断っていたため、レミリアとフランには居場所が無かった。
レミリアとフランは最初、フランスまで行きパチュリーを発見する。彼女はナチス・ドイツ時代のフランスの人物であり、フランス人からもドイツ人からも迫害されてきた過去を持つ人物をレミリアは雇用した。
イギリスでは十六夜 咲夜を、台湾では紅 美鈴をそれぞれ仲間に加えたのである。レミリアはその頃、日本に来ていた。
日本の素晴らしいところはレミリアやフランが吸血鬼だったとしても迫害されなかったことと、吸血鬼にも人権はあると言った日本の政治家の言葉に二人は救われたからであって、幻想郷に元々彼らは住んでおらず、日本の広島県の高陽町白木町、福富町などの地域に館を築いたのである。
実際に高陽町の障害者達は健常者に対して戦争や抗争までしていたのだ。障害者達は吸血鬼だからといってそれが嫌悪で示せるものかと論争を繰り広げていたがアレクシスは違ったのである。
アレクシスはプロテスタントのキリスト教徒。高陽町や白木町にあるのはほとんどカトリックのキリスト教会だったがアレクシスは他の日本人とは違い異種族だからといって攻撃せず差別せず迫害もせず慈悲を示したのである。
そこが幻想郷の人達、神道の巫女霊夢などと違うところであった。実際に障害者の人達は重そうなソードメイスを用いて戦う人物もいた。
だがやがてアレクシスだけが生き残り、ほとんどは健常者に殺されてしまう結末を迎えたわけだ。
フランの想いとは裏腹にアレクシスもまた日本人と自分との狭間で苦しんでいたのである。アレクシスは思い出していた。
「おまえら借りは返したぞ。」
「安らかに眠って欲しい。」
「それが俺ができる唯一の贖罪であり、辺獄だからだ。」
「...............もし..........あの頃に戻れたら俺がおまえらを守れたのに。でも.........おまえたちも俺を守ってくれたんだよな?」
キリスト式の墓にキリスト式のお祈りをしてアレクシスは死んだ仲間に呼びかけた。アレクシスも自閉症であったがレミリアという愛する人物のために自らの匙を投げたのである。
時は変わって1日前の夜のこと。レミリアとアレクシスは話し合った。今後のこと、フランのこと、この世界での暮らし、過去のことよりも未来へ舵を少しづつだが漕ぎ出したのだ。
「ねえ、アレクシス、フランがあんなに疲れているの初めてだわ。」
レミリアがアレクシスに向かっていう。
「無理もないよ。フランは己自身の過去と向き合おうとしている。私もそれに応え、過去を清算しよう。」
「じゃあ、アレク。フランのあの赤色のオーラのこと知っているの?」
「あれはフランの能力が覚醒した証拠だよ。」
アレクシスは話を続ける。
「フランはおそらく全てを破壊する程度の能力じゃなくて私のようにいくつか世界を渡り歩いて行ける能力だろう。」
「覚醒した能力は自身の周辺にも影響するだろうね。」
アレクシスは大胆不適な笑みを浮かべ、そのままレミリアを抱きしめながらレミリアをそっと撫でて
「あの子は俺達が思っているより大丈夫だろう。愛の力は偉大だからね。フランもいずれ能力を更に飛躍させれるだろう。」