皆様、遅くなりました。もう冬ですね。このシリーズを投稿し始めたのが春なのでだいぶ空きましたことをお詫びさせていただきます。m(_ _)m
教会に、マリアンヌの悲鳴が響き渡った。それは、この神聖な場所には決して似つかわしくない、純粋な恐怖の叫びだった。
「きゃああああああっ!」
バーナード、エイブラハム、グラン、そしてフランドールは、声のした方向――エレン神父の書斎へ一斉に駆け込んだ。書斎の扉は開け放たれており、マリアンヌは入口で膝から崩れ落ちていた。
書斎の中、ステンドグラスの光が届かない薄暗い一角で、エレン神父が倒れていた。聖職者の服の下、床の一部がわずかに濡れている。
グラン: 「Părinte Ellen!(エレン神父!)」
友人たちが動揺し、神父に駆け寄ろうとする中、フランだけは入口に立ち止まったままだった。彼女の視線は、倒れた恩人の遺体と、その下半身付近の濡れた痕跡に注がれていた。
バーナードが震える手でルーマニア国家警察庁に電話をかけ、そして三十分が経過した。
ルーマニア国家警察庁のエゼルレッド刑事と数名の警官が、重いブーツの足音を立てて書斎に踏み込んできた。
エゼルレッド刑事: (冷徹に、ルーマニア語で)
「Sunt Detectivul Ezellred. Cine sunteți voi? Și cine a atins ceva?(私はエゼルレッド刑事だ。あなた方は誰だ?そして、誰が何かに触れたか?)」
フランドール: (日本語で。友人たちがすぐに通訳する)
「私が真実を知っているわ。」
エゼルレッド刑事は苛立ちを露わにした。
エゼルレッド刑事: (フランに近づき、警戒の目を向ける)
「Fetițo, du-te la părinții tăi. Nu este locul tău. Te avertizez.
(お嬢ちゃん、すぐにここを離れなさい。ここは君のいる場所ではない。警告しておく。)」
フランは、神父のポケットにあった鍵と、右手に握られていた白紙のノート、そしてあの濡れた痕跡を確信に変えていた。
フランドール:
「あなたがこの事件を解決するのに、あと何時間かかるかしら?私と推理勝負をしてくれない?もし私が勝ったら、私を自由に行動させてくれる?エレン神父を殺した真犯人は、誰よりも早く裁かれるわ。」
エゼルレッド刑事は、フランの瞳の奥にある並外れた何かを感じ、その挑戦を受け入れた。
フランはまず鑑識担当者に、凶器と死亡推定時刻を聞いた。凶器は鈍器、死亡推定時刻は午後13時24分から14時25分の間。そして、フランは鍵を借り受ける。
フランドール: (皆に振り向き、紅い瞳で一人一人を見据える)
「最初に告白しておくわ。この部屋は、私とお姉様のための部屋よ。私たちは吸血鬼。エレン神父は、私たちがこのルーマニアで平和に暮らせるように、血液パックを飲める場所として、この部屋を特別に用意してくださったの。」
静寂が部屋を支配した。神父の深い慈愛が、殺人の闇の中で輝いた。
フランドール:「神父は、私たちがもう使わないこの部屋を清掃していなかったはず。でも見て。この部屋、かなり最近、清掃したみたいね。そして、この部屋には、鈍器になりそうな重い木材や工具がいくつかある。」
フランは、次に教会の大広間へ向かった。そして、書斎の扉に最も近い床の石畳の継ぎ目に残された、ごくわずかに湿った泥の痕跡を発見した。
フランは、これらの証拠を一つに繋げ、グランへと視線を向けた。
フランドール:「グラン。犯人はあなたね。」
「Ce spui?!(何を言っているんだ?!)私は実の父親を殺すわけがない!動機はどうなんだよ?そして、あの濡れた痕跡も解決していないだろう!」
フランドール:
「いいえ、全て解決しているわ。動機は後よ。まずは、あなたがどうやって殺害したか。あなたが自室にいたというのは嘘よ。この教会の間取り、二つの階段があることをあなたは利用した。」
「あなたは、大広間から遠い西側の階段を使い、誰も見ていない間に、この血の部屋から資材用の金属パイプ(鈍器)を持ち出した。あなたは神父の書斎へ行き、殴り殺した。そして、返り血が付くのを避けるため、神父を、西側の階段の近くにあるシャワールームに運び込んだ。」
フランは、鋭い推理を畳みかける。
フランドール:「神父の下半身が濡れていたのは、あなたがシャワールームで処理をした際、体表に残った水滴が付着したからよ。そして、大広間の床に残っていた泥は、鈍器についた泥を、シャワールームに入る前に大広間の隅で落とそうとした痕跡。あなたはすぐにシャワールームで洗い流したから、濡れた痕跡がほんのわずかしか残らなかった。」
グランは観念し、自嘲の笑みを浮かべた。
グラン:「はは……ただの14歳の小娘が、よくここまでたどり着いたな。そうだ。僕が親父を殺したんだ。あのとき、この部屋を取り壊す予定で清掃していたんだ。だが珍しく温厚だった親父が、強烈に怒って僕を殴ってきた。だから今日、その屈辱の復讐をしたんだ。」
フランドール:「おそらく、私とお姉様のための部屋だから、エレン神父も嫌だったのかもしれないね。エレン神父は、私たちに慈愛と平和を与えてくれた。自分の父親を殺してまで、やることはないじゃない!」
エゼルレッド刑事: (重々しく、部下に)
「Duceți-l!(連れて行け!)」
グランは警察官たちに拘束された。
事件が収束し、エゼルレッド刑事はフランに歩み寄った。
エゼルレッド刑事: (敬意を込めて)
「君……吸血鬼なら、いったいいくつなんだ?」
フランドールは、エレン神父の慈愛を思い、涙を流しながらも、誇り高き淑女として答えた。
フランドール:
「淑女に年齢を聞くのはダメよ。まぁ、495歳。人間換算で、14歳から15歳ってところかしら。」
フランはそっとエレン神父の思い出を胸に刻み、教会の外へと歩き出した。彼女は、破壊ではなく推理によって恩人の魂を守り抜き、この事件を通して真の意味で成長したのだった。