ルーセント・アーカイブ   作:Arcaeaスキー

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Arcaea、最新ストーリーまで読んで理解するのに5ヶ月かかりました。日本語って難しいんですね。私日本人なんですけどね。


0-1.【第六天賦究明者】侘棄

【究明者】。何かを突き詰め、調べあげ、しかしそれは白日に晒すことを目的にするものではなく、ただ己の興味関心ひとつを充足させるために行う者。

 

 そんな名前を与えられたのが、私だった。私は究明者というらしい。いや、私にも個人名自体は存在しているのだけれど。なぜか、この世界に来てからはずっとそう呼ばれている。

 

「究明者さん、どうぞそちらのお席へ。我々は貴女を歓迎します」

 

 無言で席につく。この世界で目覚めてすぐ、目の前に立っていた黒い服の男に「貴女にピッタリの場所がある」というから何事かと思ったが、この円卓が「ピッタリの場所」であるのか。

 

「ふむ……黒服、そちらの者は」

「召集の理由、としておきましょう。究明者さん、ご挨拶を願えますか?」

 

 黒い服の男と呼んでいたら本当に呼称名が黒服だった。複雑な思いを胸に秘めて、なにやら紹介に与ったようなので、立ち上がる。

 

 赤い女、首のない男と絵画、頭がふたつある彫像にスーツを着せたような怪物。黒服だって顔がひび割れていて、異形であることに変わりはなかったから、この卓は異形しか座れないのか、なんなのか。

 

「……私は」

 

 ふと、どう名乗ればいいのか迷った。私は、どっちなんだろうか。考えて、けれど犯した罪が背筋を伸ばさせる。

 

 

 

 かつての私は、リフォンという世界に生きる【創形師(シェイパー)】だった。創形師というのは、端的に言うと世界にある無限のエネルギー……私たちはこれを【天剄】と呼んでいた……を自在に操ることが出来る者たちのこと。

 

 少し手のかかる妹と思うほどに愛した弟子、【■■■■■】……エル、なんて渾名で私は呼んでいたあの子と、2人で世界を巡りながら、天剄が溜まりすぎて生まれたバケモノを打ち倒し、天剄の流れに戻す仕事をしていた。

 

 でも、そんな日常は終わった。一人の【天賦究明者】が世界に反旗を翻し、神を殺そうとしたから。

 

 天賦究明者は、創形師へ神が声を届かせることのできた人物が至ることの出来る存在だ。異なる数字と、二文字の名を冠するそれらの存在は、天剄とはなにかを理解し、より強く無限のエネルギーを行使する。

 

 人によっては、あるいはその力は神の如きものになる。

 

 神を、世界を殺そうとしたその天賦究明者……天賦第二究明者【信興】は、その力を振るい、世界を殺そうとした。私は、無謀だと分かっていて、それに立ち向かう愚者だった。

 

『連番と号名を与えよう。永遠に努め給え』

 

 その声が、聞こえてもなお。神に至ってもなお。私は、弱くて。

 

 私はあっさりと敗北して、消滅した。消滅して、再誕して、神を『受け継いだ』エルに連番と号名を奪われた。

 

『■■■! ……キミには生きていてほしかった! ワタシと来て欲しかった! ワタシにとって、■■■は人生のほぼ全てなんだぞ!?』

『エル……ごめん、ごめんね……』

『謝られて当然だ……キミは、侘しいね。第八の連番は不相応だ……【侘棄】に値する』

『エル……』

『そうだ、呪いの連番を……第六を与えよう。忌むべき烙印を、唾棄される罪を、永遠に背負うがいい……!』

 

 私は、だから。

 

 

 

「……天賦第六究明者、【侘棄】。何故ここにいるのかも分からないような有様で、ごめんなさい」

 

 結局名乗ったのは愚かで忌むべき烙印の名。第八は唯一、彼女だけの連番だから。自己紹介に付随する謝罪に、黒服が立ち上がる。

 

「それに関しては、予想がついています」

「……そうなの」

「えぇ。といっても、私の実験のイレギュラーによるものとしか分かってはいませんが……原因が私にあることは確かです。申し訳ありません」

 

 聞くと、黒服は異界とこの世界……キヴォトスと呼ぶらしいこの都市を繋ぐ『経路』の研究をメインの研究とは別にしていたのだとか。

 

 キヴォトスにいずれ訪れる滅び……【色彩】を次元を超えてやってくるものだと定義するならば、繋ぐ経路を塞ぐことで時間稼ぎにならないかと考えたらしい。

 

 私に言わせてみれば、超次元的存在というのはそういうのをぶち破ってくるから超次元的存在なのだと思うのだが。少なくとも、私に呪いを背負わせた彼女なら、突破してくるだろう。

 

 まぁとにかく、その研究中に事故が発生。開いた『経路』は私たちの世界……リフォンに繋がっていて、ただ無為にエルの居ないだけの同じ日常を繰り返して泥濘のように眠る私を呼び込んだ、らしい。

 

「あなたの衣食住に関して私が面倒を見るか、ある程度まとまった額面をお渡しする用意があります。これはお詫びのようなものと思ってくだされば。これを受け取っていただいても、私たちに協力するかどうかとは別とお考えください。人として果たす最低限の道義と、そう考えていただければ」

「厚意に、感謝を。この世界を見て回る必要があると思っているから……」

「ふむ。では、ある程度の金額の方でよろしいですか?」

「……この世界のことは分からないから、どの程度が適当かは分からないけれど」

 

 そう言うと、黒服は納得したように頷いて、面々に問いかけた。

 

「私の客人たる彼女ですが、しかしやはりキヴォトスに関しては疎いご様子。いくつか皆様に協力をお願いしたいのですが」

「ふむ。聞かせてもらおう」

「同じく」

「私にも利があるものでなければ難しいですよ、黒服?」

 

 3人がそれぞれ聞く体勢に入ったのを見て、まず黒服は赤い女に向けて口を開いた。

 

「マダム。あなたのところの精鋭をお借りして、彼女の戦闘能力を確認したく思います。異界の者の戦闘データ、あるいは特殊な技能。得がたい体験になるかと思いますが」

「……まあ、良いでしょう。スクワッドを出します」

 

 次に黒服は彫像の男へ向く。

 

「重畳です。マエストロ、研究成果の調子はどうでしょうか。テストとして彼女と噛み合わせるというのは」

「最近完成した指揮個体……グレゴリオがある。そちらの試験を兼ね、場を用意しよう」

 

 首のない男と絵画の顔へ向き直った黒服が言葉を止めることなく繋いだ。

 

「人と、人以外が揃いましたね。ゴルコンダ、あなたにはキヴォトスに関しての基礎的な知識をまとめたものを用意してもらいたいのですが……」

「すぐにでも用意できることでしょう。ダイレクトにインプットする形式から、文章の書かれた一冊の本まで、どのような形式がよろしいでしょうか」

「本形式にしておけばひとまず良いでしょう。お願いします」

 

 全員の協力が得られたところで、黒服はふぅ、と一息ついてこちらに向き直った。

 

「というわけで、ある程度ご準備はさせていただきます。基礎戦闘力、特殊状況と、基礎知識ですね。これらの準備と、実戦中は私の方で住まいとお食事を提供させていただきます。服はどうされますか?」

 

 ありがたい話だ、と思いつつ、服に関して問われたのでなんとも察しのいい男だと警戒レベルをひとつ上げて、そして返す。

 

「これは【天剄】からなる【神糸(ストランド)】というもので編み上げた服だけれど……この世界の一般の服にも興味はある。用意してもらえるなら、だけど」

「かしこまりました。部屋のクローゼットに種類を入れておきますので、姿見と合わせてお好みなようにご着用ください」

 

 礼を述べると、黒服がでは、と告げる。

 

「ひとまず、今回の緊急招集は以上の通りです。急なお呼び立てにお応えいただきありがとうございました」

「彼女の強さ如何によっては私の目的に狂いが出る可能性もあります。私は慎重に彼女を観測させてもらいます」

「戦力をお貸し願うのですから、私としても何も口出しは致しません。ご存分に、マダム」

 

 以後、大人同士の面倒な掛け合いが続いて、結局黒服に案内された『自室』についたのは半刻も経った頃だった。

 

「……いつぶりだろうか」

 

 まさか自分が試される側に回ろうとは、と私は思った。それこそ自分が創形師になった時くらいじゃないのか、とも。

 

 あの世界とは違っていてほしい……侘びしく棄て去られたこの身でも、できることが何かあってほしい。そう期待して、私は随分寝心地のいいベッドへ身を横たえ、瞼を閉じた。

 




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