グランドヒーローズ ワールド2-星の鎧-   作:四季永

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 この世界へと来た意沙達とは別に、運命を拓かんとする少女がいた。
 名は、弥白飛那。ヒーローに憧れる熱血少女。世界と関われない事に苛立つ彼女の日々は、一人の少年と出会った夜、大きく変わり始める。


光を纏う子

「複数で現れてどんな戦力だと思ったが・・」

「あんまり大した事ねえなッ!!」

 

 町中に現れた機械の兵卒達は、クウガとBLACKSUNの応戦によって、呆気無い程劣勢に追い込まれている。二人の拳や蹴りはあっさりとその機械の身体を砕いており、放つ武装も機械故の動きの特徴を掴めば避ける事は難しくない。

「意沙、今ここでしか機会が無いかもしれん、忠告しておく」

「何だよ」

「戦いを遊びにするな、という事だ。いくら自分に劣る奴が相手であろうと、今戦ってる奴等の目的は明らかに殺戮だ。そんな奴らに手を抜くな」

「・・遊びでムカつく奴を殴った事なんかねぇよ」

 

 

『人間にしては中々良い足掻きをするではないか。厄介だが使える、延命させても面白いかもしれん』

「何なんだよその上から口調は。てめーが送り込んだ機械野郎は全滅寸前だろうが」

『大局を見れんのも未成熟である証拠だな。残念だが今回の啓蒙はここまでだ。待っているぞ、いずれお前達が我が正義に首を垂れる時を』

 直後、僅かに残った兵卒達は動きを止め、その場で爆散した。

「機密保持の自爆か。・・俺達も隠れたほうが良い、人に集まられると却って厄介だ」

「・・・だよな」

 

グランドヒーローズ ワールド2『星の鎧』

第2話

『光を纏う子』

 

「ねえ父さん」

「ん? どした?」

「どう思うこのニュース」

 それは飛那から見て離れの町で発生した謎の大規模火災、その顛末を伝えるテレビのニュース、なのだが。

「火事だと思ったらテロでした、か。情報操作ってヤツだな、父さんの世界でもよくあったさ」

「ジャーナリストだっけ。それが今じゃ空手道場の先生でしょ? 接点無くて笑っちゃうなぁ」

「笑うなよそこは。全然母さんどころかお前にも及ばんのは気にしてんだぞ?」

 弥白獏、飛那の父親であるこの男は、自称有能なジャーナリスト・・・だったらしい。飛那が物心ついた時には、本人曰く足を洗った、つまり廃業したらしいのだが、人格として悪くない父親である、のは少なくとも飛那本人は確信できる。

「で、何でいきなりそんな事を・・・って、父さん判るぞ。またヒーロー風でも吹かしたか?」

「うぐっ」

「あーんまりそういうのは考え過ぎない方が良いぜ。確かにまあ、この世の中キナ臭い事は多い。ぶっちゃけ平然と人死にをテレビで堂々と伝えてるメディアもヤバい感はある。俺が言いてえのはつまり・・」

「身の丈考えろ、でしょ。・・・しょーもな、ちょっと走ってくる」

「あんま夜更けまで気張るなよ?」

*

 またか。

 だからニュース番組って嫌いなんだ。

 

 身体は鍛えている。嫌な事があるともっと鍛えたくなる。何が身の丈だ。

 勿論頭は理解している。自分の力がちっぽけだという事を、世界の大きさには程遠い存在だという事を。日常ではそう言葉に出しても、頭の中に澱んだモノが溜まって、吐き出したくても吐き出せない。

 自然に、歯を食いしばる。

 

 何が、現実だ。

 

「でっ!? 痛た・・・っ、大丈夫ですか!? ・・・って」

「何やってる、前方ぐらい気をつけろ・・・って」

 

「涙を・・・浮かべたまま走ってたのか!?」

「えっ・・・悪いかぁ! 女子だって夜空にバカヤローしたくなる時があるんだぁ!」

 ぶつかった見知らぬ少年に、やり場の無い些細な悔しさをぶつける。

 返って来たのは、大きな溜息。

「その歳でその様子か。男にでもフラれたのか?」

「なっ、失礼な! この弥白飛那17歳、彼氏は募集中だけど中途半端な男の子はお断り! 守り甲斐のある愛嬌と一緒に並んで歩ける強さが理想の・・・」

 

「どうした、滑っているようだが自己紹介は終わりか?」

 ここらでは見た事の無い顔だが、恐らく飛那と同年代。しかし雰囲気は学校で会う男子達よりも確実に大人びている、少々張りつめている感はあるが。

 だがその見てくれよりも目についたのは。

「満足したなら俺は行くぞ、急いでいる、もう会う事も―――」

「ちょっと待った」

「何だまだ何かあ・・痛っ」

「明らかに血が出てるじゃん、そんなボロボロの服で夜道徘徊とかマトモじゃないよ」

 昔から揉め事にはとにかく首を突っ込む性分だ。今自分が腕を掴んだ少年、彼のケガの様子からして、これまでと比にならない危険な予感がする。

「付き纏うな、これ以上! こんな所で死にたくはないだろう」

 やっぱり、か。

「ケガの手当て位はしないと。隠れるのにピッタリな場所、知ってるんだ」

*

「遅めの合流になったな。何か収穫はあったか」

「街中で暴れてるロボットをぶっ壊してたよ。ここらは平和じゃなさそーだな、発展してるクセに」

「奇遇だねー。俺ちゃん達も殺風景な町でイカレロボットとご対面さ」

 機械技術の発達した世界———意沙達4人の大雑把な感想は大体一致した。更に情報を掘り下げていくと、かつてこの世界では正体不明の機械生命体『バグシーン』が猛威を振るっていたらしく、またそれに並行して異星人による破壊工作も横行していた。

「そうして発展したのが所謂パワードスーツ技術、だそうだ。どうもこの世界では人間がアーマーを纏って悪党共と戦ってる戦力が主流みたいだな」

「機械技術でヒトを超える、か。異形の力を宿すよりも健全な所業だな」

 そう呟く光太郎は、寂しさを交えた苦笑いを浮かべる。

「・・まあ、それで万事解決出来れば、俺達がああいうのと戦う事は無かった訳だが。俺達のやる事はその機械連中の殲滅、といったところか」

「やっぱそうなるか・・」

「どした意沙。不満か?」

「不満じゃねーよ、自分で選んだ事だし。でもオレ達だけで出来る事なのか?」

 この力と共に生きる責任として、戦う。正直まだ見ず知らずの人々を守る、とまでは完全に決意は出来ないが、不覚悟のままに命の危険が迫り、逃げ惑う姿を見るのは良い気持ちがしない、その感覚は確かだった。

「ハッキリ言うけど。こんな所でこのクセ強メンツでじっとしてても通報されそうな気がするんだけど」

「確かにな。コンタクトがとれる連中は欲しい」

「それだったら丁度良い機会があるぞ。明日離れの廃町に赴く」

「ちょいちょい、あそこは明日は危ないじゃなかったぁ? 大規模調査とかなんとか」

「だから行くんだ。その調査とやら、早朝に行われるらしいから今日は早く寝ろ」

*

「秘密基地、のつもり、なのか・・?」

「よくぞ見抜きました! 子供のロマンだよねぇこれは」

「お前どう見ても女子高生だろ勘違いしてないか」

 とはいえどういう訳か明かりがつき小さな冷蔵庫やラジオがあるあたり、電気が何故か通っているようだ。確かに隠れ家としては申し分無い。

「とりあえず消毒して包帯巻くから座って。・・・えーっと」

「一眞風雅。風雅でいい」

「えっそんな簡単に名乗って良いの?」

「名乗らなきゃしつこく聞くつもりだったろうが」

 手当ての間、風雅は消毒等で痛がる様子は見せなかった。丈夫な男の子なんだな、と感心したが、

「邪魔したな、気をつけて帰れ」

「って! ケガが治るまで安静にしてなよ! これですぐ治るような状態じゃないんだから」

「何だ恩でも売りたいのか?」

「なっ・・・いくらなんでもそんな言い方」

 突然、音が聞こえた。草を搔き分ける音と、機械の駆動音、そして何かが歩く音だ。

 

 即、明かりを消し、物陰に隠れる。

「迅速に動けるじゃないか。慌てて大声出すと思ったぞ」

「一言多いっ。何でこんな人気の無い所に・・」

 

「まーったく・・・JAとやらの学習はまだなってねぇなぁ。普通かくれんぼってのは鬼の心を読んで息を潜めるモンだ。町中ばっかり捜したところで徒労になるだけってのに・・・ああ機械は汗水なんか流さんか、失敬失敬」

 隠れた飛那と風雅の目に映った者達は、人・・・の形を成した異形と、それが率いる機械の兵達である。

「ま、見つからんモンは見つからんわな。こんな立派な場所なら一服・・・と言いたい所だが? 俺様もヒマじゃないから素通りしとく、か」

 

 

「行ったみたいだけど?」

「・・どうもわざとらしい喋りの奴だったな、あまり好きになれん」

 怪人と機兵達が去り、二人は周囲を確認しつつ表へと出る。

「よくあんなのを見てビビらなかったな。そこは正直に褒めてやるぞ」

「なっ、べっつにぃ~。あんなんアニメ特撮で見慣れてるデザインだよ、いちいち弱ってたらヒーロー目指せないじゃん」

「言ってる意味がさっぱり解らん・・・同じ日本語なのに」

 また呆れられた、今回は同年代、と思しき男子だ。反射的にしかめっ面になったが口喧嘩しても体力が減るだけなのでここは堪える。

「ところでさ、あいつら何? 何か知ってる風だったけど。JAとかって」

「これ以上は知り過ぎるな。命に関わるぞ」

「そーそ。秘密を悶々と抱えて生きるのも場合によっては楽しいぜ?」

 

「くっ・・」

「何これっ・・・!?」

「よぉくかわしたなあ! 立派立派! だがここまでが読めなかったのは減点だ」

 頭上のそれに気づけたのは銃弾が放たれる寸前だった。飛那を抱えて避ける事は出来たが、その一撃をかわせて安心が保証されている訳ではない。

「お前のデータは見た事がある。ブラッドスタークといったか」

「おっ、若者に知って貰えるのは嬉しいねえ。何せ俺の仕事は基本的に工作、つまりはドブ臭い事ばっかりでそれこそ風評はレアモンスター並ってね。まぁここで遭遇出来たのは奇縁って事で・・」

 降りてきた怪人・ブラッドスタークが指を鳴らすと、それを合図に機兵達が集まって来る。それは満遍無く周囲から現れており、つまり二人は囲まれた、という位置にある。

「お互い仲良く殺し合おうじゃねえの」

 

「弥白と言ったな」

「なっ何だよそんな深刻な顔で」

「俺が道を作る、これを持ってとにかく逃げろ」

「これ、は・・・」

 飛那の手中に『何か』を託した風雅は、直後眼鏡もしくはグラスに似た道具を取り出し、それで目を覆う。

「こいつらは俺が片付ける!!」

 風雅の身体は光に包まれ、生成された鎧に覆われていく。

 

「ほぉう、それが噂の『星の鎧』か。資料とは外見が違うみたいだが」

 その姿は、鋼鉄の鎧を纏った―――飛那にはまるで、日頃好きで観ている番組とかに出ている、ヒーローのような。

「か・・っこいい、デザイン」

「『SEVEN』。それがこのアーマーのコードネームだ。貴様らの目当てとは違ったようだな」

「だがまぁ、潰して回収すりゃあ収穫にはなる」

 ブラッドスタークが指を鳴らし、機兵達が攻撃態勢に入る。

 

 一閃。

 まさにその一言が相応しい攻撃。

「随分な速さだな・・アーマー5機を秒殺とは」

「貴様の首も取れると思ったがな・・!」

 兵卒は大した事は無いが、リーダーはそうはいかないようだ。自慢では無いがSEVENの戦法は主武器である長刀・スペシウムソードを用いた瞬間加速的な接近戦である。間合いに入り、仕留めた感覚はあった、と感じたのだが、

「お喋りなだけの奴では無いかっ」

 互いに下がり、距離を整える。

「戦士は寡黙であれ、って価値観か? 面白味が無いな、可哀想に」

 仕掛けてくる銃弾は容易に払える。だが本人にはイライラする程に当てられない、それはまるでピエロの様に遊ばれている感覚だ。

 だが、

(こっちに目が向いてる内は逆に好都合かもな。装着時の発光も照明弾の代わりになった。・・・来るか、援軍は?)

 

 

「はっ、はっ、はっ・・・何で、こんなに走ってるんだっ」

 一目散に、本来ならば慣れている筈の裏山を駆け降りる。だが何故か焦りと疲れ、後味の悪さを感じる。

「僕が・・・匿っておいて、何でっ」

 走り出したのは、確か、鎧を纏った風雅が、ロボット達を斬り倒したあたりだ。

 しょうがない。

 その言葉が頭をよぎり、何度も自分に言い聞かせる。

 僕は何も出来なかったんだ、あの場にいても殺されただけだ、これで助かったのなら、これが正しかったんだ。

 

 

 でも。

「これが僕なのか?」

 ケガをしてる人を置き去りにして、困ってるように見える人を見捨てて、笑顔で家に帰れるのか?

 顔を上げると、人型の何かが火を吹かし、頭上を通過するのが見える。恐らくあの場で戦っている風雅を討つべく、ロボット兵の増援が呼ばれているのだろう。

 手に握られたモノを見る。

 それはペンの様に長い、カプセル状の機械。明らかに、押せば何かあるようなスイッチが、備わっている。

 無謀な考えが過ぎる。風雅があのグラスをつけて戦える姿となったのなら。

 それと同じ力を、今僕が使えるのなら。

「————ごめんっ」

 誰に向けての謝罪なのか、それは自分でも分からない、ただ。

 

 

 

 カチッ

 

 一眞風雅という少年から渡された謎のカプセルのスイッチを押し、弥白飛那は閃光と共に銀色の鎧を身に纏った。閃光の如き速さで空高く跳躍し、みなぎるエネルギーで道を遮るロボット達をも粉砕する超人となったのだ。

「・・・・それ行け、ヒーローって感じ・・? 待ってて、風雅。今助けに行く!!」

 一つの閃光が、夜の裏山を駆ける。この夜の内に、会ったばかりの少年を助ける為に。

 だが、動機はその少女には必要無い。

 

 人を助ける。

 それは、ヒーローである事に当然の条件だからだ。

 

 

 つづく

 

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