グランドヒーローズ ワールド2-星の鎧-   作:四季永

3 / 3
 星の鎧を纏い、一人の少年を助ける為に、少女は戦場に向かう。そして戦いの光を感づいた戦士たちもまた、戦場に向かう。名も無き夜の山中で、目覚めつつある者達の戦いが、始まろうとしている。


閃光放つ山

 どこかのありふれた町。

 その森林に包まれた一つの山で、二つの発光現象が確認された。

 そして幾つかの何かが、その光を理由として動こうとしている。

 

 

「ああ、ああ。何とも優等生な戦い方。若気の至りがそうさせてるかもだが、足りないねぇ。俺に傷一つ付けらんないのが物語ってる」

「ふざけているのか、戦いの場で!?」

 こちらの戦意を削っていく戦術なのだろうか。そうだと読めば残念な事に、ブラッドスタークのやり方は功を成している。攻撃は当たらず挙動や舌戦による煽りで集中力は減らされていく。

「何事にも刺激というスパイスは必要だろう? 充実して生きる為には。俺のやり方なんでね。・・そして真面目君だからこそ周りが見えてない」

 

「何っ・・・」

 迂闊だった。正面の相手に固執して敵の援軍を警戒していなかったのだ。頭上から降り注ぐ熱弾はSEVENの行動範囲を奪っていく。

「必死な奴の足掻きは見てて飽きないねえ。傍から見ればピエロの様だ」

「ぐあっ・・!」

 ブラッドスタークの銃撃が次々と直撃する。致命的な威力では無いが装甲が削られ、痛みを感じるのは確かだ。

「今だったら容赦してやってもいいぜ? 先ずはその鎧を解いてデバイスをこちらに渡し、土下座で許しを請いて後は振り返らずに背を向けて逃げてくれれば・・・の話だが」

「そんな屈辱的な事を受け入れる奴が・・っ」

「そうか、だったら」

 

 

「うおおおおおおおおッ!!!」

 

「援軍か? こんなショボい山に駆けつけるとは暇なモンだ」

「・・・・まさか!?」

 夜闇を照らす程の輝きで、敵を貫き、それは地に降りた。

 

「—————っと! 助太刀に来たよ、風雅!」

 

グランドヒーローズ ワールド2『星の鎧』

第3話

『閃光放つ山』

 

「本当に向かってていいのか? これじゃあまるで野次馬だぜ」

「半分心にも無い事を言うな。この世界の『力』を見るには丁度良いかもしれん」

 意沙達がその戦いに気付いたきっかけは、デッドプールが深夜行っていた「遊び」に由来する。それは有体に言えばどこからか持ち込んで修理した無線機、それを弄っていた最中に軍の通信を傍受したというのだ。

「まぁ俺ちゃんの傭兵スキルの成せる技、ってワケ。あ、報酬は要らないよ? 何たって魂の」

「乗せてやってる立場でうるさいぞ。・・・だが士、現場に来たところでどうするつもりだ?」

「俺にとってはいつもの事だ。同調出来る奴なら力を貸すし気に食わなければ破壊する。通りすがりとして幾度となくやってきた事だ」

*

「そのスーツは・・・間違いない、ULTRAMANだ!! だがその声は! ・・・お前が装着しているのか!?」

「ウルトラ、マン・・? ・・・良いね、ヒーローっぽくてカッコいい名前!」

 

「ほーお。ナイトのピンチに姫が登場、か。男としては屈辱的だねえ」

「お姫様なんて柄じゃないし! 僕はこいつが何だかすごい困ってるように見えたから手を貸す、そんだけ!」

 こいつ、煽りに毅然と返答している。

「出逢ったばかりの男によくもまあ・・・」

「人助けはヒーローの常識!!」

 どうしてそんなにハッキリ即答出来るんだ。

「俺にはなにやら納得に苦しむ価値観だ。だがまだ数はある、とりあえずはこいつらを潰してから物を言ってくれ、ヒーローちゃん」

 周辺を固めている機兵達が距離を詰めてくる。その数は、20機程だろうか。

「泣き言を言うなよ、ここまで来たなら!」

「当たり前っ!!」

 走り出す―――

 その動きだけでその軌跡は光の尾が発生する。そして、

(飛べるっ。例えとかじゃなくて本気でっ)

 その跳躍は鳥の比では無い程速く、高い。そして放たれる鋼鉄の拳は輝きを放ち、機兵の装甲を紙の様に容易く貫き、粉砕する。

「凄い・・! 何なんだこの、アーマー!? 僕の身体じゃ・・・無いみたいだっ」

 体力が拡張されていくような感覚、同時に生まれる高揚感にも似た感情。

「張り切り過ぎだぞ! その鎧の性能に飲まれるな」

「っ」

 耳に響く警告を告げる声で、辛うじて我に返る。

「若造は荒削りで元気だねぇ。それがお前さん達の弱点でもある訳だが」

ULTRAMANに狙いを定め、ブラッドスタークは銃撃を行う。鎧を破壊するには不十分な攻撃だが、それは自分に敵意を向ける為の挑発としては十分であった。

「人間の反射だなぁ。害意を向けられたら強者であれ弱者であれ潰そうとする、凡人なら尚更」

 地面に降りたULTRAMAN、その行動はブラッドスタークの狙い通りに、攻撃を始める。当の本人はその攻撃意思にも動じる事無く、飄々と攻撃を避けていく。

「この状況・・まさかエネルギー切れでも狙っているのか!?」

 超高性能の戦闘アーマー、しかし今それを纏っているのは戦いを経験していない素人の少女。力のアンバランスはどちらかを押し潰す。このまま無茶な戦闘を続ければ――――

「くっ、やめろ!!」

二人の戦闘にSEVENが向かう、だがそれを阻まんと、機兵達が一斉に襲い掛かる。

「邪魔をするな・・・!!」

 残った機兵の数は10機程だが、それを対処している間、飛那が無事でいられる保証はあるだろうか。戦いとは縁の無い存在を、自分のせいで死なせるのだろうか。

 

 

「うおりゃあああああッ!!」

 一つの炎を纏ったキックが、戦場に介入する。

「援軍!?」

「さあな、お前がどう捉えるか!」

 その一撃は機兵の列を抉るように蹴り飛ばし、それに続けとばかりに三人の戦士が躍り出る。

「何だ、昼戦ったヤツと同じじゃねぇか! 楽に蹴散らせるか!?」

「油断はするな。指揮官の能で戦法が違う事もある」

 BLACK SUNの指摘は正解だ。この機兵の動きは、町で戦った攻めの動きでは無く、指揮官へ手出しを拒む守りの動きだ。

「成程ねぇ~っ。あの銀色ちゃんを一人で構いたいわけだ。で、どーすんの?」

「向こうまで道を拓けるか!?」

「っと割り込んできたよ」

SEVENの口調には明らかに焦りが感じ取れる。最早なりふりを構っていられない状況の様であると、ディケイドは察した。

「敵は一致しているようだが、見ず知らずの連中に援護を頼むか」

「向こうで弄ばれている女を、みすみす見殺しに出来るか!?」

 女、か。

「こいつらを引きつけるぞ。可能であれば全滅させる」

「勝手に仕切んなよ。てか見ず知らずの人助けか?」

「心にもない事を言うな。やれるのにやらんのは名折れだぞ」

「・・仕方ねえな」

 嬉しそうじゃねえか。————ディケイドの読みは図星だった。この少年は、人を助け、守る事は嫌いな訳じゃないのだ。

「なら早々に済ませるぞ。残った兵卒は7機、一気に引きつけて隙を作る・・・には目立つやり方が、」

「いえーい、ピースピース♪」

 

「オイ赤いオッサン!! 戦闘中なんだよふざけんなっ」

「ハイそこのガキンチョ! 踊り子って知ってる? 近くにいる仲間を不思議かつ情熱的なダンスで元気にするアレ! つまり俺ちゃんは仲間達を活性化させる起爆剤のような・・・ってのわあぁっ!? 説明中は攻撃禁止ぃっ!!」

「何やってんだあいつは・・」

「あいつの姿なら、踊り子と言うより遊び人だな」

「・・だが突破口かもしれん。今なら有利にやれるぞ」

 皆がその道化的行動に呆れる中、戦場を一番冷徹に見ていたBLACK SUNは、機兵達の動きの傾向を見抜きつつあった。

「そういう事かよ!?」

「単純な事だがそういう事だ。デッドプール、お前は面白いぞ! そいつらにユーモアの真価とやらを教えてやれ」

「何その重大任務!? でもイエッサー!!」

 

 

「さて、そろそろその重石を着て暴れ回るのも疲れたろ。解いてカプセルを渡して貰おうか、今なら無知なまま幸せに生きられるぞ?」

「誰がっ・・・お前みたいな楽しんで人をいたぶるような奴に・・・っ」

 少し、視界がぼやけてくる。

 人間、汗ってここまで出るものなんだろうか。

 鼻血が出てる・・・そんなのは今更良いか。

 とにかく身体が重い、身体が痛い。動かなくちゃいけないのに、何で動けないんだ。

「可哀想になぁ、うら若き乙女が血と汗と割に合わない棺桶でご臨終を迎えるのは残念無念だろう、せめて痛みを感じず楽にしてやるか。だから・・・もうそこから動くなよ」

 銃口が向けられる。

 ああ、こんなものか。

 現実って。

 

 

「おい、こんな所で勝手に死ぬな。助太刀に入って返り討ちになるのが理想のヒーローなのか?」

 

「えっ」

 3つの人影が、顔を上げたその前に立っている。まるで自分を守る為に駆けつけたかの様に。

「俺はフェミニストなんて感性は知らんが・・・この弄り方は趣味が悪いぞ」

「てか遊びで戦ってんじゃねーぞ、調子こいてるつもりならぶちのめしてやる」

「こんな立場で戦場に立つのは・・・柄じゃ無いな。後悔は感じないが」

 

「・・ヒーロー」

「おいボーっとしてるな、下がるぞ」

 

「3対1とは随分狡い盛り方じゃないか、謎のヒーローご一行」

「渡り合ってる奴がそう煽るのも充分卑劣なんだよ!」

 クウガ、ディケイド、BLACK SUNの三人がかりの攻撃を、ブラッドスタークは気持ち悪い位の柔軟な動きでかわし続ける。隙を見抜くのがこの相手の場合、困難なのだ。

「手玉に取られている・・・弱みを突けないなら有利とは言えないぞ」

「分かってらあんな事! 一発でも食らわせてえがムカつきが止まらねえっ」

「その様子だとチームワークはまだまだみたいだなあ。どちらがバテるか競争でもするか?」

*

「少しは落ち着いたか・・・後先考えずにこいつを使うからこうなる」

 とはいえ、彼女があの場で割り込んでこなければ、彼一人であれば袋叩きにされてどうなっていたかは判らない。そういう点を踏まえれば非難をする気は起こらなかった。

「・・・ありがと。・・ねえ風雅、まだ僕に・・・っ、出来る事無いかな?」

「なっ・・! 何を言い出す、お前はそのアーマーで命の危険手前だったんだぞ!? そこまで来て何故っ」

「あの人達を助けなきゃ。・・・見ず知らずの人を身体張って助けるなんて凄いヒーローしてる、でしょ? ヒーロー目指してるならここは気張る時、だよ」

 アーマーに阻まれてその表情は見えない、だがその声色にはおふざけの類は感じない、向こう見ずだが、信念に近い図太さを感じた。ただの十代の少女がこんな事を言う状況に、溜息の一つでも吐いてしまうが。

「・・仕方のない奴だ」

*

「そういえば俺をこの状態にしたのは、仲間が一芸を披露した・・みたいだが、さして状況は好転しなかったみたいだなあ。さてどんな気持ちだ?」

「この世界にも骨のある悪党様がいた事に感心する・・・この評価で満足か?」

 現在この戦場は、お互い未だ決定打を与えてはいない、所謂膠着状態という奴だ。場の空気も徐々にではあるが戦意が失われてきている。

「さて、そろそろこちらから行かせてもらうか。少しぐらいならお前らに痛手を・・ん?」

 

 どこからか放たれた熱光線が、夜闇を照らす勢いで山の一角を焼いた。

「ーっ。紙一重でかわせたが随分出力の高いモノだな。少しばかり視界をやられたがまあ、」

 

 飛んで来たのはそれだけでは無かった。更にそれは眩い光線で視界を奪ったブラッドスタークの腹部を貫いていた。

「無傷で返してなるかよっ・・・!!」

「このキックの威力は・・・ハッ、仮面ライダーかッ」

 

 

「この状況ならそれなりに遠くに吹っ飛ばせたかな。随分派手にやったもんだ」

 一人の仮面の戦士が戦場だった場所に現れ、立っている。

「随分と美味しい所を持っていったモンだな。お前も仮面ライダー・・・確かゼロワンといったか」

「ん!? 見ず知らずの人に知られる位には知名度上がった!? やっぱ継続は力なりって奴だなあ! ・・一言キメたいけどネタが思い浮かばないや」

 青年は仮面ライダーとしての姿を解く。どこか少年的な雰囲気がある男だと感じた光太郎は思わず、

「何者だ? 礼を欠くが随分若く見えるな・・・」

「オイ年齢聞くのは・・でもねぇか。てかオレは16なんだけど・・」

「威厳が無いってのはよく言われるよ。俺は飛電或人。自己紹介として言うのもなんだけど・・・一社の社長兼、そこの人が言う通り・・・仮面ライダーゼロワンをやってる」

 一社の社長で仮面ライダー、か。

「随分な肩書きじゃないか。その顔に頼って教えてほしいんだが、さっき戦った連中はもとより、ここいらで暴れているあの趣味の悪い銀色のロボットは一体何だ?」

「・・・あなた達も襲われてたか。あれは海外の大企業が製作したパワードスーツの量産型だよ。それに自立稼働機能を搭載して」

「そのあたりは不破という男から聞いた。なら連中を操っている親玉は誰か、あのスーツを製作したスタークという企業は何か、を聞きたいんだが」

 

「その話はもっと快適な部屋でやろーか。暗く不衛生な山中で解説されても頭に入んないだろ?」

 士と或人の会話に割り込むように、一人の青年が姿を現す。

「あぁリアクションは結構。俺は桐生戦兎。爽やかに見えて疑問を抱くかもしれんが、これで天・才科学者で・・・仮面ライダー」

「何だかめんどい奴が出て来たな、どう纏めるんだよ、この場を」

「それについては心配ないぜ? 戦兎は正式な俺の協力者だ。科学者である分状況説明は俺よりも格段に上! だしな。それで、あなた達はこれで全員かな? 別で動いている仲間達がいるなら、今から――」

「どうやらその必要も無さそうだな」

 二方向から、草木の揺れる音が聞こえた。

「・・すまんが、俺はその戦兎という男を頼って来た者だ。それとこいつを・・・このバカを、何とか助けてやってくれ」

 

「なぁんだ~っ、ロボット軍団全員バラバラにして静かになったと思ったら勝負ついてたのかぁ~っ、何か人増えてるし。助っ人がいるならちゃんと教えてくれりゃあいいのにねぇ奥さん! あ、この場は旦那さんか」

*

「大分派手に受けたな、これでは万全に動けるには少し時間がかかる。他所の仮面ライダーを甘く見過ぎた、か。・・そこにいるのは分かってるぞ」

 

「こんばんわ。それとも夜明けが近いからおはようございます、かな? 宇宙破壊王さん」

「挑発するにしてもセンスが無いな。褒め言葉にしても安っぽい」

「そうやって喋りたくなるのは生まれつき、みたいでね。不愉快に思うならもう消えようか?」

 もろに直撃を受けて大きく蹴り飛ばされたブラッドスタークの身体は、大きく欠けた部分の繊維が、再生を促そうと蠢いている。通常の人間だが激痛を超える激痛を伴いそのまま死んでもおかしくは無いが、口調は呻きどころか、そのダメージに感心するかの様に飄々としている。

「こんな面白い燃料、見逃してなるか。それを持っているのが並行世界の地球人・・・ってのは少し気に食わんがな」

「個人での契約は成立、か。お得意様にも通しといてくれよ?」

「通れば、話だがな。この世界の巨悪はお前ら人類でも俺様みたいな異星体でもない、自分が進化したと思い込んでる自称超越者なんだからな、ハハハッ・・・・」

 

 

つづく

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。