救いの宣教師   作:王朝万歳

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異世界生活。「感動」との出会い

「遥か昔。人間は脆弱でした。神はそんな人間たちを哀れみ。人間に知恵と奇跡をお教えくださりました。特に被害の多かった。ここ、聖国のことを深く哀れんだ神はその慈愛をより深く我らにお恵みくださりました。我らの先祖は神より与えられた奇跡でもって、大陸の覇者へとなりました。以上で、本日の講義内容。聖国の成り立ちについてを終わります。次回は聖国建国から数年後、諸外国との間で起こった大戦とその戦争によって、信仰を深めた聖国の国教である太陽教について解説していきます」

 

「「先生、ありがとうございました」」

 

「ええ、どういたしまして。ホーリーお坊ちゃん」

 

 高齢の老人から指導を受けた少年二人が礼を伝え。白金の髪の少年が我先にと部屋を出ていき、その後を黒髪の少年がを追う。

 

「兄さん、早く早く。今日は教会でお祈りする日だよ。カルベンさんとの待ち合わせに間に合わなくなっちゃう」

 

「はは。教会でのミサは、太陽が真上に登ったときだろ。まだ、間に合う」

 

「そうなこと言ってるから。兄さん、いつも来るのがギリギリになってるじゃん」

 

「ギリギリでも間に合ってるんだから。いいだろ」

 

「よくないよ! 神様と対話できる大事な時間なんだから」

 

 前世、首を釣って死んだ俺は、自殺したことを嘆いた神の手によって異世界に転生した。生命溢れる世界、大陸随一の強国。その片田舎の男爵家の息子として。

 

 来世の世界は、魔法や奇跡が存在する。某小説サイト内のライトノベルにありそうな。いかにもなハイファンタジー世界だった。

 

 俺が生まれた国。聖国は、「世界を創造した神に、日々感謝して、良い人生を謳歌する」ことを宗教的第一教義とする太陽教を国教に据えられていた。

 

 弟を連れて、僕の世話係、カルベンとの待ち合わせ場所に向かう。

 

「ああ、カルべンさんだ。おーい」

 

「む。ホーリー様、アルバス様。今日もお元気そうで何よりです」

 

 黒髪に白髪が幾分か混ざった中年の男が俺たちに気づき、挨拶してきた。彼の腰には剣が帯剣され、馬が連れられていた。

 

「カルベンも元気そうで嬉しいよ」

 

「人数も揃いましたし、教会に行きましょうか」

 

「そうだね」

 

 彼と合流した俺たちは、彼の馬に乗せられ。領地の南東部、丘の上にある教会へとか走っていった。

 

「着きましたよ。アルバス様」

 

 山道を走り、景色が高速で流れていき。丘の教会に着いた。

 

「「おはようございます。お父さまとお母さま(父上、母上)」」

 

 

「ああ、おはよう。ホーリー、それに……アルバスも」

 

「ええ、おはようございますわ」

 

 教会の入口には、今世の両親がおり。その後ろに高齢の司祭が立っていた。二人は弟には笑顔浮かべて挨拶を返していたが。俺の挨拶には苦笑いを浮かべ挨拶を返していた。目があうと睨みつけられた。

 

「おお、彼らが噂の兄弟たちですかな。なぜ、弟君だけでなく、兄のほうも連れておいでで」

 

 後ろに立っていた司祭が口を開き。両親になぜ俺がついてきているのか追求する。

 

「はい。こちらの黒髪の子が、兄のアルバム。白髪の子が、弟のホーリーと申します。なぜ、兄のほうまでついて来ているのかといいますと。どうやら、弟が兄も連れてってあげてと従者たちにお願いしたそうで」

 

 

 

「そうですか。ホーリー君は噂通り優しいようですな。不浄なる存在に慈悲を与えるなど。ですが、今回、通常のミサではありません。教会本部に所属する方が、直々に弟様を祝福に来ておられます。悪いが出て行ってもらいましょう」

 

「アルバム。ミサが終わるまで、外で待機しておきなさい」

 

「了解しました。父上」

 

 父は司祭から追及に弁明を述べる。だが、それを聞いた。司祭からの返答は至ってシンプルで。ハッキリとした拒絶だった。

 

 俺は教会の外で、弟の祝福式が終わるまで待機していることになった。

 

 今回のミサも。ハッキリいえば、参加できるなどと期待はしていなかった。

 

「教会の連中いわく、俺は不浄な存在らしいからな」

 

 この国の国教。太陽教では、白などの明るい色が神聖な色と好まれている。なんでも、人類がまだ弱く、魔物たちの手によって追い込まれていた時に。それを哀れんだ神が遣わした御使いが白髪だったことが起因しているとか。

 だから、白と正反対の黒及びそれに近しい色は不浄な色として扱われている。

 

「髪の色がその者の魂を表す」

 

 太陽教の信者たちにとって、この価値観が一般的だ。

 

 まあ、そんな宗教的な観点をもっているから。黒髪をもって生まれた俺は不浄な存在というわけだ。現代に生きてきた人間としては、受け入れがたい価値観だ。

 

「両親から嫌われている理由は他にもあるだが」

 

 それに両親の髪色は銀髪と金髪。黒髪の俺が生まれる可能性はすくない。俺が生まれた時、父は母の浮気を疑い。ひと騒動あったそうだ。その時は家の者たちが総出で二人の仲を取りなったらしい。

 

 それで一先ず、表面的には二人は仲を戻した。心にお互いへの不和を抱えた状態で。

 

「この一件で、家のメイドや騎士から嫌われたという。泣きそう」

 

 この一件で、黒髪ということで嫌われていた俺の評価は底を突き抜け。家族の中を引き裂いた存在として、両親だけでなく従者からも、陰で「不義の子あるいは悪魔の子」と呼ばれ、忌み嫌われることになった。

 

「カルベンさんがいてホントよかったよ」

 

 家の恥部と言えども、正式な男爵家の息子。放逐するもけにもいかない。とわいえ、誰も面倒を見たがらない。嫌われ者の面倒は、同じ嫌われ者に任せよう。

 

 そういう考えで、当時、下級騎士として仕えており。黒髪のために家のものたちから嫌われていた。カルベンさんが俺の世話役になったという。

 

「家の者たちから触れられない透明な存在。俺を放置して、いままで通り、過ごす。これで一件落着、そういけばよかったんだが」

 

 両親は、俺に家を継がせるわけにはいかないと考えたのだろう。家督を継ぐものを。俺の弟を産むことになった。

 

「産まれた弟は、神に愛されていた」

 

 失敗は成功の本

 

 産まれた弟は神の最高傑作だった。髪は太陽教で最も神聖とされる白金で、容姿端麗、性格良し、器用万能。

 

「引き裂かれた家族の中は、修復されていった」

 

「一時期は、男爵たちの血が悪いからではと疑われましたが」

「あんなにも神聖な子供が産まれたのだ。ご両親の問題ではござりませんでしたな」

「第一子のことは何かの手違いだったのでしょうな」

 

 と父と母の評価は回復し、家族間の中は俺を除いて修復された。

 

 まあ、それだけなら俺としてもだったんだが。性格のいい弟が家族からはぶられている俺を見逃すわけもなく。

 

「お父さま、お母さま。どうして、兄さんのことは無視されるのですが」

 

「それは。お前の兄が黒髪に産まれた。不浄な存在だからだ。あまり関わってはいけないよ」

 

「確かに兄さんは黒髪に生まれた不浄な存在かもしれません。でも、同じ家族なのに兄には一切触れないというのは。あまりにも兄さんが可哀そうではありませんか」

 

「私だけが親の愛を一心に受けて育つ。それは不平等です。太陽教の教えには人は公正にあつかわれなければならないとあります」

 

「兄と私の対応に差をつけるなんて、私は父さんのことを嫌いになってしまいます」

 

「そうだな。父さんが間違っていた。これからは、お前と同様に。週一回の食事会に参加させ、講師による指導も受けさせよう。それでいいな。アルバス」

 

「もちろんです。父上。不浄な存在である私にこのような格別の配慮を」

 

「礼なら、弟にいいなさい。ホーリーが望みゆえ、答えたのだから」

 

「そうですか。ありがとな、ホーリー。お前は心まで美しいな」

 

「えへへ。そうかな。僕はなんだか胸がモヤモヤしたから言っただけなんだけど。でも、お礼を言われると嬉しい。ありがとう」

 

 清廉潔白の弟は、太陽教の教えに執心のようで。父に直談判した。家の中でタブーとされていたことを堂々と話した。爆弾が破裂したの幻視した。父は一瞬、その顔色を変えた後。

 

 弟の抗議を受け入れ。俺に食事と教育を与えることになった。距離が近くなったことで、俺はより両親や彼らの従者たちと触れる機会が多くなった。

 

 お互いの間の。暗黙の了解が解かれ。鎮火し凍てついた関係に火が再びついた。

 

 弟の余計なお世話。彼のちょっとした胸のつかえを取り除くために。ささやかな善意から動いた軽率な行動が、俺に苦難を敷いた。

 

「ただ、講師による指導を受らけれた。このことだけは感謝だな」

 

 以前は、まともに教育をしてもらうこともできなかったから。おかげで、カルベンさんの指導だけでは足りなかった。この国の言語、歴史、地理といった基本的な知識を学べた。

 

 講師からチクチクと嫌味を言われようとも、耐えたかいがあった。

 

「そろそろか」

 

 ミサが終わったのだろう。静粛を保っていた教会が。人の声で騒がしくなってきた。

 

「御者さん。僕、動物が好きで。中の動物を見学させて貰えますか」

 

「なに? 中の動物つったらネズミしかいないぞ」

 

「それでも見たいんです」

 

「チッ。やっぱり、汚れ者は変わってるんだな。いいぜ、中に入りな。ただし、聖別式が近い。さっさと済ませろよ」

 

「ありがとうございます」

 

 俺は御者に声をかけ、儀式で使用されるネズミに近づく。手には暗い闇が纏わりついていた。

 

 さあ、計画開始だ。

 

 

 ────────────────────────────────────────

 

 教会の庭、司祭と白金の髪をした少年が立っていた。司祭の背後には助司祭が。庭の外周には、領地か来た民主が押し寄せている。

 

「これより、聖別式を行う。ホーリー君、こちらへ」

 

 司祭の呼びかけに応じ、少年は司祭の傍へと寄る。

 

「では、あれを持ってきなさい」

 

 助司祭たちは司祭の命令に従い。御者からネズミを持ってくる。手すきの一人がテーブルを用意すると。他の者たちがネズミをそこに並べていく。並べられるネズミは、死んだ者、半死の者、生きたものの二体ずつ。

 

「では、始めなさい」

 

 司祭が生きているネズミをナイフで傷つけ。儀式の開始を宣言する。宣言を聞いて、少年は手から光を放出させ。

 

「いきます」

 

 ネズミの治療を開始した。

 

「素晴らしい!! 傷を負った者、半死者を回復させ、死者を半数回復させるとは。将来有望だ」

 

 儀式を終わり、司祭が歓喜の声をあげる。

 

「どうか。君たちも彼を祝福してやってくれ。彼は今日から聖職者になる。そして、いずれは高位聖職者となるだろう」

 

「「「ウオオオオオオ!! おめでとうございます。ホーリー様」」」

 

「おめでとうございます。ホーリー坊ちゃん」

 

「めでたい。実にめでたい。これで私たちの領地は安泰だ」

 

「ええ、私たちはあなたを誇りに思うわ」

 

 司祭のその一声に、静まりきっていた観衆、家の従者たち、両親が喜びの声あげる。

 

「ホーリー様、万歳!! ホーリー様、万歳!! ホーリー様、万歳!!」

 

 ついに、民衆は熱狂し、彼に万歳コールを送り始めた。

 

「くく。素晴らしい。結果じゃないか。弟よ、お前のおかげで計画は上手くいきそうだ」

 

 教会の外。樹の天辺から弟が奇跡を起こす様を見て。俺は笑顔を浮かべた。

 

 

 

 

 ──────────────────────────────────────────

 

 聖別式から数か月後。屋敷は燃えていた。

 

「起きろ!! ホーリー。隣国の軍がこちらの領地へ攻めてきた!!」

 

「え!? そんな。うそでしょ。お父さま、お母さま」

 

「残念だが、本当だ。逃げるぞ」

 

「兄さんはどこ。逃げるんだったら、兄さんも連れてかないと」

 

「お前のお兄ちゃんは死んだ。兄が住んでいる屋敷の離れ。あそこに侵入した賊に殺されたんだ。離れは本邸に比べれば、警備が甘いからな。賊も容易いと考えたのだろう」

 

「そんな」

 

「私たちだけでも生き残らなくては。お前は一足先に母を連れて逃げなさい」

 

「お父さまはどうするの」

 

「まだやり残したことがある。それを終わらせてから私は合流する」

 

「僕一人でなんて」

 

「先日。お前は聖職者になったんだろ。奇跡だって使えるんだ。母さんを守ってやるんだぞ」

 

「うん。わかった」

 

「いい子だ。また、会おう」

 

 他国の襲撃によって、兄を失った少年は心を痛めながらも。母を連れて自領から脱出を決意する。少年の父は領首としての責務を果たすため、しばしこの場に残る。

 

 もし、第三者が二人を見ていれば。その悲痛で。あまり劇的な別れに。涙をながすだろう。

 

 ただし、何も知らない第三者であることが前提であるが。

 

 真実は異なる。

 

 ───────────────────────────────────────

 

「どこだ! どこにあるんだ!! まずい。まずいぞ。あの紙がもし何処かに渡ったら」

 

 ホーリー少年の父は、自身の書斎だった場所で。大声をあげる。

 

「探し物はこれですか。父上」

 

 男の背後から、忌まわしい声が聞こえ。振り向くと、そこには。己の全てを破壊した。忌まわしき存在がいた。

 

「なぜ。貴様がここにいる」

 

「まあ、いいじゃないですか。それより。これを見てくださいよ」

 

 黒髪の少年の手には、男が探していたとある文書があった。

 

「ええと、内容は。なになに、「春の季節、我々はあなた方の領に攻め入る。領民と自身の命が惜しいならば降伏するべし」と」

 

「読むな!!」

 

 静止の声がかかるが。少年は読むことを辞めない。

 

「これは返事の文書ですか。まあ、領民から公正にして清廉潔白な大人物と称えられる父上なら。この降伏文書に対して、毅然とした態度で国は裏切られないと答えて下さるとは思いますが」

 

「念のため、読んでますか。なに、なに。「貴国の提案を有難く受けさせていただく。春の季節になり、貴国が攻め入る際。我が領は寝返りを約束する」ですか」

 

「これは驚いた。不浄を誰よりも嫌っている父上が裏切りなどと。我が国の法律では、敵への寝返りは重罪。死刑は免れません。だというのに。このようなことを行うなど」

 

「父上はどうやら、不浄なる者である私よりも不浄で許し難い穢れ者であったようですね」

 

「きさま! よくもこの俺を侮辱してくれたな!!」

 

 激高した少年の父だったものが、腰に据えていた剣を取り出し。少年へと斬りかかる。だが、少年はその危機的状況ながら、冷静だった。

 

「カウベルさん!! お願いします!!」

 

「任せろ」

 

 今世、少年が唯一信頼が置けた人物。従者カウベルが男の横から飛び出し、少年とかつての雇用主と間に挟まると。

 

 少年に迫る凶刃を弾き。そして、返す刀で。敵を切り殺した。

 

 先ほどまでの喧噪が嘘のように。書斎は再び静けさを取り戻していた。

 

「助かりました。カウベルさん」

 

「気にするな。契約を遂行したまでだ」

 

「じゃあ、後は僕に任せてください」

 

 少年が地面に這いつくばる男へと近づく。男は逃げようと必死に地面を這う。

 

「ぐあああ」

 

 だが、少年に追いつかれ。足で体を踏みつけられ。その動きを止められてしまう。

 

「父上、こんなこと言うのもなんですが。あなたには感謝してるんです」

 

「う、嘘だ」

 

 激痛の中、聞こえる声は慈愛にあふれていて。

 

「いえいえ、ほんとですとも。私はこの世界に生まれ落ちた時。絶望していました。「ああ、また無意味な生が始まるのか」と」

 

「きっと、何も。強い感情を呼び起こす機会がなければ、僕はそのまま腐り落ちていた。でも、あなたたちのおかげで!!」

 

「この世界での、とりあえず。やりたいことが生まれたんです。そう、貴方たちへの復讐が」

 

「だから、父上には感謝しているんです。お礼もしたいと思ってる」

 

 その目には狂気が宿っていた。

 

「父上。この世界の宗教。太陽教とは本当に面白いですね。私の前世で、信仰されていた宗教と似通った所が幾つか見られる」

 

「やはり、人間に共通する道徳的意識が。互いを類似させたのでしょうか。それとも、あの神がそう仕向けたのか」

 

「おっと、話がそれましたね。どうも、昔から考えだすと意識がそれるんですよ。このままだと。父上は焼け死にます」

 

「焼死は太陽教でも最も重い重罪人にかけられる。なんせ。いつか、神の慈愛によって奇跡が起こった際に。灰になった肉体では、蘇れませんものね」

 

「そうなっては、父上の魂は現世を彷徨う続けることになってしまう。それはいただけない。だから……」

 

「だから、送ってあげます。もっと素晴らしい場所へと。そこへ送られた人は。神の手によって、転生することなく。また、この世界の聖職者たちの手によって。復活することもない」

 

 少年の手から、暗い闇が噴出する。

 

「やめろ! やめてくっ!? もが、もが!! ううんん! ううんんnん!」

 

 何かを察した少年の父が必死に抵抗するが。取り押さえられてしまう。

 

「そこは虚無。人類の祖がかつて追放された地。楽園です。初めは恐ろしく感じるでしょうが。安心してください」

 

vanitas vanitatum et omnia vanitas(全ては虚しいもの)

 

「この世と大して変わりませんから」

 

 闇が、男を飲み込んでいく。半死の体は魂と肉体を分離させ。

 

「素敵な父上へ、僕からのから私的な贈り物です」

 

「……」

 

「なるほど。喜んでいただけたようで幸いです。子は父と母を愛すべきですからね」

 

「父上、良い旅を」

 

 少年が父をのぞき込めば。父の目には一片の光などなく。深淵のみ広がっていた。

 

 父の死を確認すると。少年は屋敷を抜けていった。

 

 

 領地を抜けた先。戦火に巻き込まれた住人たちが足早に去っていき。静寂に包まれた街道。

 

「お待たせしました。カウベルさん」

 

「待ってはいない」

 

「ふふ」

 

「おい」

 

 そこで、アルバス少年は。今回の父への反逆。協力者であり、功労者である従者と再会を果たした。彼の正直なもの言いに少し笑いが漏れてしまい。それを咎められる。

 

「今回は本当にありがとうございました。あなたが父の寝返り教えて下さらなければ。私は今頃、あの屋敷で燃えカスになっていました」

 

 少年はそう言って、衣服を捲りあげる。手足には、腕輪や足枷のあざが浮かんでいる。少年の父のやるべきこと。それに厄介者を事故に見せかけて殺すことが含まれていたのだ。

 

「俺もあの領主には、辛酸を舐めさせられていた。報酬が貰えるなら、お前に協力するのもやぶさかじゃない」

 

「依頼は達成した。報酬を寄こせ」

 

「もちろんです。はい、どうぞ」

 

 そのことを知った。少年は従者に協力を申しこみ。事が起こる正確な時期や計画について調べ上げてもらい。反撃の一手を画策した。

 

「この後は娘さんを連れて」

 

「そうだ。娘を連れて、連邦国に向かう。あそこは太陽教の信仰が薄いからな。お前はどうするんだ」

 

「とりあえずは王都に向かって。そこのスラムで潜伏しようと思ってます」

 

「寂しいですが。ここでお別れですね。娘さんと元気に過ごしてください」

 

「お前も元気でな。胸がすくいい依頼だったぞ。依頼主(フィクサー)

 

「! ええ。あなたの仕事ぶりも素晴らしかったです。仕事人(プロフェッショナル)

 

「お前とは長い付き合いになったな。お前の目、今が一番輝いているぞ。夢ができてよかったな。お前がやりたいことを存分にやるといい。お前はもう自由だ」

 

「はい。僕が夢を叶える姿見ていてください」

 

 馬に乗って、遠く離れていく。彼からのエールを受け取って俺は軽やかに足を進めていった。

 

「神に転生させられて。前世を引きずり、僕は生きる目的を見失ってたまま、この世界を生きてきた。だけど、たった今、僕にも目標ができた」

 

 脳裏に浮かぶのは前世での最後と今世での父の結末

 

「前世の僕にとって、死は救いだった。けれど、今世の父が、死に抱いたのは苦しみだった」

 

「この違い。それはきっと人生に対する考え方の違いだ。人生において、僕は苦しみを、父は幸福を抱いていた」

 

「だから、死という全てをゼロに均すものに。僕は幸福を嚙みしめ、父は絶望した」

 

 革命的な答えを見つけた。

 

「聖職者の手によって、命の選別され。価値が歪められた。生命溢れるこの素晴らしい世界に」

 

「僕は死という救いを宣教する」

 

 星は蘭々と輝く。

 

 ニヒリズムに浸り。前世を末人として、生きた人は。

 

 神の計らいによって、別世界に転生し。そこで。

 

 感動と出会った。魂を震わすほどの感動に。

 

 二度目の人生の暗闇は晴れ。

 

 ラクダの精神を超え。獅子となって。

 

 ついに、少年のような心を取り戻した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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