崩壊 : 恋愛古事記 ~愛は全て救うのかなぁ~ 作:クロウト
黄泉の口調バリ難しくね?
───突然だが、長く旅をしていると出会った人々の縁からか或いは誰かの虚言で自分についての噂が立つことは無いだろうか。旅の道中で偶然出会った人が自分の存在をまるで強者のそれだと認識してすぐ人々に言いふらして、噂がそこら中で立つという経験。
「あ、あの人って.......」
「えぇ....単独で反物質レギオンや裂界造物を大量に殺して回ってるっていうあの... 」
なんだその噂は。物騒にも程があるだろ。と、貴方は心の中で思い留めながら必死に謂れのない噂による恥ずかしさを押し殺しながら街中を闊歩する。
最近、何のキッカケか分からないが貴方のこうした事実が無い噂がそこら中に蔓延っているのだ。
貴方は銀河を旅する流浪人で様々な惑星に訪れたりする。ベロブルグ、仙舟羅浮、ピノコニーなどなど...。旅の中で出会った縁が旅そのものを繋いでくれたり、或いはその旅の中でまた新たな縁に出会う事もしばしばある。決して、貴方は反物質レギオンや裂界造物を殺して回っている狂気的バトルジャンキーという訳でもないし、何かそうしなければ理由があるわけでもない。貴方は生粋の流浪人なのだ。
───だが、どうしたって貴方の噂は絶えることはやめなかった。
ピノコニーではナイトメア劇団の天敵や、記憶域ミーム絶対殺すマンという本当に出所が分からない噂も流されるし、その噂があってかは分からないが何故か貴方だけは本来は完全な招待制のピノコニーでも惑星を救った英雄の様に扱われ、簡単な入国審査を済ませればピノコニーを実質的に牛耳っているファミリー直々の招待と同じ、或いはそれ以上の待遇を貰えるのだ。
流石に貴方もこれは他のピノコニーを利用する人とは不公平なんじゃないか、と思いファミリーの者に掛け合ってみた事がある。だが、掛け合ったファミリーの者が言うには貴方はどうやらこのピノコニーに起きた混乱を鎮めただけではなく、自分の妹を死の手から救い出せた恩人になっているらしく、そんな大恩人とも言える人に返せる褒章はピノコニーだけでも貴方の家だと思ってファミリーの一員と同等の位として接するぐらいしか思いつかなかったらしい。
それを聞いた時、貴方は本当に覚えが無かったので何かの間違いなんじゃないかと聞き返してみたが、自らの手柄に執着せず常に自分以外の誰かを見てる聖人だと勘違いされてしまったので、もう貴方は諦めた。
そんなこんなで貴方は今、そのピノコニーに足を運んでいた。ピノコニーは夢境、と呼ばれる夢の中の楽園で人々が一時の楽園を享受する場所であり、本来ならば流浪人風情の貴方が足を踏み入れて良いのは一度だけであった。だったのだが.........。
───貴方のスマホに大量の通知が鳴り響く。
突然の事にビックリした貴方は急いでスマホを取り出してメッセージを開いた。すると、そこには999+と表示されたメッセージの通知欄が貴方の視界へと映り込み、そこには旧友たちの迫真のメッセージが綴られていた。
ちなみに貴方がピノコニーに来ていることは既にバレている。プライバシーは死んでいるのだ。
ーーー知人から聞いたのだが...今、貴方はピノコニーに来ているのだろう?黄金の刻で今会えないだろうか。久しぶりに話がしたい。ーー黄泉
ーーーね、貴方今ピノコニーに居るの?良かったら...また私の歌を聴きに来てはくれないかしら。貴方に聴かせてあげたい新曲が沢山あるの。ーーロビン
ーーー今からそっちに行くから。待っててね。ーーホタル
ーーー漆黒・忍者サン!!拙者と共にまた繚乱・忍符を描き、忍道を歩んでくれる気になったのか?!!ならば拙者と共に今一度この地に蔓延る悪を成敗しようではないか!!ーー乱波
あーーもう駄目だこりゃ。貴方はそう諦めながらスマホをゆっくりと閉じて夢境の中にダイブした。プライバシーが死んでるのはもう随分と前から始まったことだから貴方ももうあのスマホのメッセージ欄を見る度にあぁ...と諦観10割が入った顔をしながら渋々受け入れる。
だが今回は想像以上にピノコニーに居る知人が多い。巡海レンジャーがピノコニーに二人も居て、加えて星核ハンターも一人いて、加えて世界的に有名な歌手がいる。怪獣大決戦よりも恐ろしい厳つい面子が揃い過ぎているのだ。
貴方は旅の癒しと用事を済ませる為にピノコニーに来たと言うのに何故だか身体が重くなりそうな嫌な予感がしてならないのがもう本当に憂鬱である。頼むから本当に勘違いしないでくれ、と貴方は切実に願うばかりである。
ピノコニー、黄金の刻。そこは夢追い人がたどり着く楽園。悦楽と安堵と調和が響き渡る安寧の地。人々はそこで遊戯の限りを尽くして空中に仄かに漂うスラーダの香りに誘われて、人々は幸せを享受する。
そんな黄金の刻で貴方はハウンド家への届け物をする為に足を運んでいる。貴方は黄金の刻を歩いている時に通行人とすれ違うのだがファミリーの一員と同等の扱いを受けているので通行人はとても信じられない様な顔で此方を見てくる。視線がものすごく痛い。
だが視線が痛いことを除けば、やはりピノコニーは夢の国と言われることもあってその全てが煌びやかに映っている。貴方はそれほど遊戯に心血を注ぐタイプでは無いが、こうして煌びやかな景色を視界におさめていると不思議と一人であっても気分が高揚するものだ。
貴方はスラーダを飲みながら、散歩がてらに黄金の刻を歩んでいく。貴方は黄金の刻に来るのは久しぶりであり、そもピノコニーに来るのだって長い時が進んでいた。故に貴方の目には黄金の刻は貴方が前来た時よりもその眩しさを増している様に映っていた。
そして、貴方が暫く黄金の刻を歩いて目的地へと進んでいる時...。貴方は予期せぬ事態に襲われる事になる。
───突如、貴方の目の前にある曲がり角から一人の女性が出てきたのだ。自身の端末を持って出てきた彼女は紫色の片目が隠れるほどの長髪で男性よりもやや劣るがそれでも高身長と呼べるほどのスラリとした体躯を備え合わせている。貴方はその目の前にいる女性の事を知っていたし、忘れることすら多分出来ないだろう。
さて、貴方はここでどうするべきだろう。先の999+メッセージ事件から先ここで不埒な行為をしてしまってはいつファミリーに処刑される運命がぶち込まれてくるのかはわからない。だがだからといって彼女の友愛の念を反故にしてしまうのは貴方の信条的にもなんとかそれは避けたい。
だがそれでも貴方の命と友愛を天秤に掛けてしまうと、どうしても貴方は自分の命が惜しいという結論に至ってしまう。それに旅の中で出会った縁だしピノコニー以外でも会えるだろう。うん、場所が悪かったんだ。と貴方は判別して踵を返して元来た道を戻ろうとするが────。
「───...何処に行くんだ? 」
背後から聞こえる凛とした声。鼓膜から響くそれに貴方はギギギ、と錆びついた歯車の如く後ろへ向く。するとどうだろうか、貴方の視界の先には先程のミステリアスな雰囲気を放っている美人がそこに立って、曇りなき眼で貴方を見つめている。
あーーもうダメだこりゃ。開き直ろう。貴方はもうこの状況から逃げられないと判断し、処刑されそうになったら笑顔になりながら、この世の全てを置いていきそうな顔をしながら首を刎ねられる覚悟を決めた。というかもう諦めた。
貴方は目の前の女性の方へと向き直って、名前を呼んだ。
────黄泉。
なんでもない、と一言だけ弁解しながら出されたその名前に反応する。
「...嗚呼。懐かしい響きだ。......貴方は、あの時から本当に変わってないな。 」
黄泉は貴方との再会に喜んでいるのか口角を上げて微笑んでいる。貴方も黄泉とは長い旅の中でもそこそこの頻度で一緒に旅をしたこともある旅仲間的な友達なので嘗ての仲間と再会して喜ぶのは貴方とて自然な事だろう。
黄泉が言うあの時、とは恐らく貴方と黄泉が出会った時の事を指すのだろう。巡海レンジャーとして銀河を孤独に彷徨う黄泉と銀河を流浪する唯の貴方とは何となく波長が合ったのかもしれない。
初めて会った時の事も覚えているなんて、と貴方は素直に関心する。だが黄泉は微笑んでいた表情からすぐさままた無表情へと戻って、貴方が関心してる時に黄泉はツカツカを足音を軽快に鳴らしては、貴方の元へと急接近してきた。そして黄泉は貴方と身体と身体が密着する一歩前まで近付くと黄泉は自分の手を貴方の頬にと添える様に伸ばす。
「...傷が、また増えているな。 」
黄泉は最近出来た頬に刻まれた貴方の傷を手で触れる。黄泉の顔は心配する様な、はたまた何となく怒ってるかの様にも見えた貴方はかすり傷だから心配するな、と黄泉を安堵させようとする。だが貴方のそれは黄泉には逆効果だったらしい。
「──貴方のその考えは直した方が良い。 」
黄泉はそう言うと貴方の傷に触れていた手を離して、今度は貴方の胸へとその手を当てる。此処は一応、人通りが多い場所でもないが流石に近すぎるんじゃないかなと思ったが今はそんなこと言える様な雰囲気でも無い為貴方は諦めた。
「貴方と別れざるを得なくなった時、私は...私を絶望の淵から救い出してくれた貴方を失う事が頭から離れなかった。 」
───え、そんな大した事したっけ。貴方は黄泉の言っている事にイマイチピンと来なかったが更に周りの雰囲気が重くなるのを感じて、貴方の口は更に開くことを許さなかった。代わりに黄泉の言葉が続いていく。
「貴方はきっと目の前にある助けられる可能性がある人を見つけたら、自分が致命傷を負ってでも助けに行く人なのだろう。貴方のその傷もそれで出来たものなのだろうから。 」
確かに、黄泉の言っている事は間違いじゃない。かといって的を得ている発言なのかと聞かれるとそうでもない。貴方は友達の為ならば義侠心にも似たもので扶助を喜んでやるタイプだ。それで刻まれた傷なんて貴方には無数にもあるので気にすることでもない。ただ、致命傷を負ってまで助けれるかと聞かれるとどうしても悩んでしまうところがある。
「....だけど貴方は、一人になるとそうやって傷を負う。私はそれが...きっと怖くて堪らない。 貴方はもうこれ以上、傷を負うべきではない。 」
貴方は黄泉の一連の話を聞いて、彼女にそこまで心配させてしまっていたのか。と貴方は驚くと同時に反省した。貴方は旅の縁、というものを大切にしており黄泉と繋いだこの縁も貴方にとっては宝物の一つだ。だが黄泉はその縁を紡いだ故に常に危なっかしいことばっかりする貴方に要らぬ心配を注がせてしまった。そこは素直に自分が謝るべき点だろうと思い、黄泉にごめん、とようやく貴方の口から言葉が出た。
「謝らなくて良い。だが貴方はもう一人で行動するのは控えた方が良い 」
そう言うと黄泉は貴方の胸に添えていた手を離して、今度は貴方の手へと触れる。頬、胸、手、と黄泉はまるで貴方の存在を確かめる様に貴方の身体を撫でる様にする。
そして黄泉は視線を貴方の手の方に落としては、次の瞬間にはもう言葉を紡いでおり......。
「今後は、貴方の旅に私も同行しよう。 」
───────────ん?
貴方は理解が及ばなかった。今、なんと言ったのだろうか。貴方の?旅に?同行する?貴方は突然、鳩が豆鉄砲を食ったような顔をしながら何で黄泉は自分の旅について行こうとするのかを必死で理解しようとバグった頭で整理していた。
「そうすれば、貴方の事は私が守れる。もう貴方が傷を負う心配をすることもない。 約束しよう、貴方の事は必ず私が守ると。 」
急に歯に衣着せぬ言葉を発するイケメンと化した黄泉に貴方は頬が若干赤くなるのを感じた。確かに貴方は黄泉よりも遥かに弱い。噂では何故か反物質レギオンや裂界造物を殺しまくる生粋のベルセルクバトルジャンキーという設定になってるが、本物の強さを持っている黄泉と比べたら貴方の強さは豆粒と同義なのだ。精々立派な男の体格を活かした自衛をするほどの強さしか持ち合わせていない。
───だからこそ、貴方は傷を負う。貴方は優しいけど、弱いから傷を負い続ける。ならば自分が同行すれば貴方は傷を負うことも無いし、安全に旅を勧められるんだ。と、黄泉はそう考えているのだろう。漸く黄泉の考えていることが理解できた貴方だったが、目の前にいるイケメンに情緒を奪われてからは考えがまともに回る事が許されなかった。
「ふふ...。貴方のその顔は初めて見た。意外に貴方は愛い反応をするらしい。 」
普通それは男である貴方が言うセリフだ。だが完全に今は立場が逆転している。歯に衣着せぬ発言を二連発した挙句に、貴方の情緒を破壊し尽くす様な発言。死角からの言葉の襲撃に貴方は多分もうノックアウトしているのだろう。
ただ、ノックアウトされた貴方が一つだけわかる事があった。
「...そうと決まれば、早速旅の予定を組むべきだろう。貴方ができるだけトラブルに巻き込まれない安全な航路が良いのかもしれない。 」
───これ、多分何言っても駄目だな、と。貴方は少しだけ楽しそうにしている黄泉を見てそう思った。さて、ファミリーにはどう弁解しようか。
「.......あぁ、そうだ。貴方に伝え忘れていた事がある。 」
貴方は黄泉のその発言に、もう何が来ても大丈夫だと再三ノックアウトされた精神で全てを受け止めようと気概を見せる。そしていつ歯に衣着せぬ発言が来てもノックアウトされずにいよう、と心の中でばっちこい!と叫んでいると...。
「これからも、末長く宜しく頼む。─────〇〇 」
────ノックアウト!ゲームオーバー!黄泉のキル数が1上がった!
pixivにも上げてます。オラ、こういうのでぇ好きなんだけど分かる人いる?