林間合宿での生徒誘拐、生徒の救出に失敗どころか死亡と敵堕ち、
果てはエリちゃんの保護作戦失敗により、ヒーロー社会は大いに揺れた。
各地では敵が暴れ、自警団が暴れ、両者をヒーローが止めるという事態になっていた。
もはや治安はがたがたと言って良いだろう。
「ということで!ちょっと遅れたけど!
トガちゃんの活躍による作戦成功パーティーを開催するわ!乾杯!」
「「「カンパーイ!」」」
「かん…ぱい…?」
お陰で略奪してきたもので豪華なパーティーが開けるわ。
手口は簡単。結成した略奪部隊をトゥワイスにコピーしてもらう。
そして本隊以外はその場でヒーローと戦う。
どれが本物かわからないし、そもそも本物がいない時もある。
この治安で私たちを捕らえるのは到底不可能だ。
物はコンプレスさんが圧縮するから好きなだけ持ち運べる。
「いい加減にしろ!」
ノリの悪いスピナー君が机をたたいて怒鳴る。
「俺はステインに触発されてここにいる!この現状は」
「これこそ『ステイン』の望みなのよ…分からないかしらスピナー君?」
スピナー君の口にサンドイッチを詰め込んで黙らせる。
「無法がまかり通り、悪が楽しく笑い、正義が非難される…
こんな最悪の状況の中で立ち上がるやつがいたら…『真のヒーロー』じゃない?
彼は社会への警鐘のために人を殺していたわね。だったら…
『敵がパーティーを開いて楽しんでいる様を世間に見せつける』ぐらいするわよ?」
「…!えんほお…!」
スピナー君はサンドイッチをもぐもぐしながら目を輝かせている。
「…すまなかった。俺の理解が足りていなかったようだ。存分に楽しもう!」
スピナー君が私の手をガシリと握る。ちょっと痛い。
これからは『ステインならこうする』で手綱を握れるな。
「…では改めて…乾杯!」
何事なかったかのようにパーティーが続く。
「エリちゃん。どれ食べたいですか?好きなもの食べていいんですよ。」
「リンゴ…すきだから…」
トガちゃんがリンゴのウサギをエリちゃんに食べさせている。うらやましい。
対しアタシは…
「早く何食べたいか言いなさいよ。水の代わりにアタシの塩基飲みたい?」
「さ、サンドイッチで大丈夫です…」
顔が塩基によって焼け、怯え切った治崎の世話をしている。
エリちゃんにしてきた仕打ちを聞いて、アタシはこいつを『分からせて』やった。
今ではエリちゃんの"個性"のいい練習台だ。
「サンドイッチィ?アタシの手を煩わせるもの食べるつもり?」
「か、唐揚」
「アンタ、メイン食べられる身分だと思ってる?」
「…さ、サラダで…」
「ほら。食いな。」
コンビニのカップに入ったサラダを治崎に与える。
治崎の世話を終えたアタシはトガちゃんの隣に座る。
「トガちゃん。あーんして。」
「モトちゃんは甘えんぼさんです。はい、あーん…」
トガちゃんがリンゴを食べさせてくれる。世界で一番おいしいリンゴだった。
「トガちゃんも。あーん…」
「あーん…唐揚げおいしいです。エリちゃんも食べますか?」
「からあげ…おいしい…」
エリちゃんの口からよだれが垂れてる。
「エリちゃんも食べていいんだよ。はい、あーん…」
「あーん…おいしい…」
エリちゃんがちょっと笑った気がする。かあいい。
この子はアタシとトガちゃんの間に産まれた子に違いない。
「微笑ましいねえ…おじさん眩しくて見てられないや…」
「コンプレス、恋する乙女はすごいのよ。」
モトちゃんも見違えるように可愛く、美しくなったわ。」
「トガちゃんを取られた気がするぜ…喜んでくれてやるよ!」
「あれが元雄英生って信じられるか、荼毘?」
「どう見ても生粋の敵だよ。"個性"も"性格"も。」
すごく楽しい。『敵になって』よかった。
ほのぼの()日常回です。
次回は異能解放軍との戦いです。