私達の平和はギガントマキアっていう怪物に壊された。
皆無事だったけど、家とかお菓子とか全部滅茶苦茶にされた。
ドクターこと氏子達磨が言うには、アレを従えたらすべてをくれるらしい。
「『支配者ならすべてを手に入れて当然』…やりましょう、死柄木君。」
「強欲女が…端からそのつもりだ。」
かっこよく啖呵を切って一か月半、アタシ達はまだ戦っている。
トゥワイスをの力を使っても勝てなかった。シンプルに強すぎる。
「トガちゃんその服に合ってるわ。本当にかあいいわ。」
「モトちゃんもお似合いです。ペアルックにしてよかったです。」
ちなみに支援でもらったお金は、アタシとトガちゃんのオシャレ代になった。
別に食事とかは困ってないわ。
トゥワイスが電話で誰かと喋っている。
ブローカーの義爛が異能解放戦線に捕まったらしい。
『本物達だけ』で来て、愛知の泥花市にて戦おうということだ。
「治崎だけじゃ不安ね…アタシ達の分身と…」
「私が残るわ。本物がいないとエリちゃんもさみしいはずよ。」
マグネさんが留守番を担当してくれる。
「さあ…『支配者』になるわよ。」
「お前が仕切るな。お前の活躍は認めるが、俺がリーダーだ。」
変なヒーローに案内されて戦いが始まる。
「一緒に行こう、トガちゃん。」
「モトちゃんと一緒なら心強いです。」
トガちゃんと一緒に駆け出した矢先、地面が爆発する。
「『女子高校生たちはなぜ狂気に至ったか』…インタビュー受けてくださる?」
趣味の悪いおばさんが語っている。
「えー、や。」
「トガちゃんが嫌ならアタシもいやよ。死にたくなかったら失せなさい、おばさん。」
アタシとトガちゃんは『例の動き』で敵の背後を取る。
一か月半でトガちゃんから教えてもらった。
持ち前の身体能力とトガちゃんが教え上手なのもあってすぐできた。
血を吸ったトガちゃんが爆発する。
「自信を起爆装置にするのも厭わない戦士たちよ!
さあ、早くあなた達の素顔を明らかにしてちょうだい!」
「塩導基子!遠藤家長女!12月17日生まれ!15歳!
雄英高校林間合宿で敵連合に攫われた後、
学友の爆豪勝己を"個性"で殺害!
以降、敵連合として活躍!両親へのインタビューは楽しかったですよ!
『水を放つ"個性"』と『食塩と作る"個性"』から
こんな子供が生まれるとは思っていなかったとおっしゃっていましたよ!」
ある日、コンプレスさんがこんなことを言った。
「おじさんさ、マジシャンだから種とか仕掛けとか気になっちゃうんだよね。
基子ちゃんの"個性"…どんな原理で『塩基性の液体を放出』しているんだい?」
考えたこともなかった。そういう"個性"だと思っていたから。
「人間にも酸性の液体は色々あるけど、塩基性のものって少ないじゃん?
で、基子ちゃんの液体の性質から『水酸化ナトリウム』だと思うんだよね。」
水酸化ナトリウム。化学式はNaOH。水溶液は強塩基性を示す。
洗剤や酸の中和、殺菌や漂白など様々なものに使われる。
皮膚に触れると化学火傷や、タンパク質の分解などが起こる。
「多分さ、『水酸化ナトリウムを作って放出している』と思うんだよね。
だから肌とか髪が荒れるんじゃないかな?訓練すれば抑えられると思うよ。
そうすればさ…トガちゃんともっと仲良くなれると思うよ。」
その日からトガちゃんのために必死で訓練した。
「モトちゃんきれいになりましたね。前よりずっとかあいいです。」
トガちゃんからそう言われた時は、本当に嬉しかった。
やっと『変われた』って。『トガちゃんから認めらえた』って。
そのトガちゃんがこいつのせいで爆発している。
『殺す。』
『こいつは絶対に殺す。』
『アタシのトガちゃんを傷つけたから殺す。』
「あなたの異能は液体を飛ばすだけ!身体能力に気を付ければなんとも」
「アンタを殺す。」
その辺に転がっていた死体をアイツに向けて投げる。
その死体は突如膨らみ爆発する。
想定通りだ。
「…今のは一体…!?個性届と違」
「もう一度だけ言う。『アンタを殺す』。」
コイツの顔にアタシの手が『触れる』。
「っ!?ぎゃあああ!?あ、『熱い』!?」
コイツの顔がボコボコと沸騰し溶けていく。
想定通りだ。
「…素顔を知りたい?
『アタシはトガちゃんが好きな女の子』…
たったそれだけよ。」
そいつの顔が破裂し、溶けて、飛び散る。
アタシはその返り血を浴びる。
そのままトガちゃんに歩み寄る。
「トガちゃん…何があっても…『アタシがトガちゃんを守る』わ。」
「モトちゃん…かっこいいです…」
朦朧としているトガちゃんは私を見てつぶやく。
「だから…」
そのままトガちゃんとキスをする。
血の味しかしない。なのにすごく温かい。
水酸化ナトリウムの溶解熱のせいじゃない。
きっと、トガちゃんに本当の想いを伝えられたからだ。
「…アンタたち…トガちゃんに指一本でも触れてみなさい…
そこのゴミクズみたいに…
『殺す』。」
そこに立っているのはまだ15歳の小さな少女のはずだった。
だがその姿と発言によって、大の大人たちは一歩も動けなくなっていた。
『殺される』
殺しをためらいなく行った人間のその発言は、もはや『子供』の『戯言』ではなかった。
人を、社会を、世界を震え上がらせる、『支配者』の『宣言』であった。
恋する乙女ってすごいですね。