淫夢厨社会人と封印から出れない妖狐   作:狐耳大すこすこすこてぃっしゅふぃーるど侍

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本編に全然関係ない見なくていい設定
色々な裏設定を語るだけの見なくていいヤツ


 「――こちらが、銀狐様よりお預かりしていた“お守り”です」

 

 そう言って、男は懐から丁寧に取り出した小包を差し出す。

 和紙に包まれたその中には、小ぶりだが不思議な存在感を持つ護符が納まっていた。

 

 アリスは両手でそっと受け取り、膝の上で慎重に開いた。

 

 「……やはり、霊的な“威”がこれほど明確に漂っておりますのね……。本当にありがとうございます」

 

 「いえ、こちらこそ。銀狐さんも“祈ってくれるなら”って快く受けてくれましたし」

 

 「ふふっ。まるで、古き時代の神様ですわね」

 

 ふっと穏やかに微笑んだあと、アリスはふと顔を上げた。

 

 「せっかくの機会ですので……最近の界隈の事情を、簡単にご説明差し上げましょうか」

 

 「……界隈、ですか?」

 

 「ええ。裏の世界――霊的なものや妖怪に関わる“業界の常識”ですわ。あなた様も、これだけの力を持つ方に関わるのですから、少しは知っておいたほうがよろしいかと」

 

 男は初心者(オタク)に優しくしてくれる一軍女子に感謝し真面目に頷いた。

 

 「お願いします」

 

 テーブルの上にはコーヒーと、軽食のカレーライス。

 さながら小さなブリーフィングのように、アリスはナプキンを整えてから語り始めた。

 

 「まず、最も警戒すべきは“鬼哭庵”を始めとした――いわゆる、悪しき術者や妖を使役する地下の組織ですわ」

 

 「鬼哭庵……なんか名前からして悪そうですね」

 

 「実際に悪いのですわ。小妖たちに銃火器を与え、携帯で起爆できるリモコン爆弾を巻かせて突撃させたり――無茶苦茶な手段で実行犯を使い捨てにしますの」

 

 「物騒すぎません……?」

 

 「かなり……物騒ですわね、それに加えて一部の小妖は討伐されれば露と消える物も多く証拠も残らない場合が多いんですの、小妖へ実行を命じた犯人を割り出すのが非常に難しいのですわ」

 

 「うわぁ…悪い事やりたい放題じゃないですか……」

 

 「昔はかなり酷かったみたいですわよ?ただ、今は表立った活動はあまりありませんわ。というのも――」

 

 アリスはスプーンをひと振りし、言葉を続けた。

 

 「政府組織、“特別動物災害調査室”――通称“特災調”が、あちらこちらに睨みを利かせていますの。

 あそこは火器の使用も許可されておりますし、“戦闘”においては最強ですわ」

 

 「特別動物災害調査室……?なんかこう……ヤバい人を相手にしてる組織にしては……普通?の部署みたいな名前じゃないですか?というかあんまり戦闘って感じじゃなさそうな雰囲気の名前ですね」

 

 「動物災害云々は警察ではない組織が銃火器を持つ為の言い訳らしいですわよ?

彼らは熊が出た等という欺瞞情報を出して現場に赴くんですの、大口径のライフルやボディアーマーを始めとした最新鋭の装備を持って相手を執拗に殲滅しましてよ」

 

「しかし、それだと実行してる小妖なんかは倒せても、召喚して使ってるヤツは捕まらないのでは?」

 

 「まぁ、普通はそうなんですけども……そこで当時は熊退治の流れ弾が危険な為という理由で現地の人を大規模非難させたみたいですわ、そして襲撃された地点や、避難区域の中を徹底的に調査したのです。

 昔と違って遠隔で小妖を操作する等という高度な事は難しく、襲撃地点の近くに術者がいる事も多かった為に封鎖区域の中で捕まったり、襲撃された側に脅迫や地上げをしている相手がいた場合、それを特定し、其処から敵対組織を探り出しては文字通り血祭に上げたという歴史があります。

 それはもう……苛烈だったみたいですわね?」

 

「なるほど……じゃあ悪い奴らは黙ってるしかないと」

 

 

 「表では、ですわね。でも――特災調にも“穴”があります」

 

 「……たとえば?」

 

 「特災調は退魔師……というよりかは軍隊に近い性質の組織ですの。個人的な資質による霊的技量は部隊では重視されません……ですので霊的センスが低い方が多く、“呪い”や“まやかし”といった搦め手には弱いのですわ。

 それに、彼らとて最低限霊的な者が見える人で構成されておりますが、物理攻撃が効かない、効きにくい相手を苦手としています」

 

 「なるほど……つまり、力押しは強いけどトリッキーな相手には弱い?」

 

 「その通りですわ、ですので現代では特災調が対処できないような手段で人を攻撃する事が多いんですの。

 そしてその部分をカバーしているのが――わたくしたち、清明連のような“民間の術者組織”ですわ」

 

 アリスは紅茶に口をつけ、続けた。

 

 「我々は先祖から受け継いだ秘術や知識が強みとしてありますの、ですので“結界術”や“対呪術”が得意です。

 守る・祓う・調整するといった役割を担っておりますわ。

 特に“お金持ち”の方々は、証拠の残らない“呪術的な遠隔攻撃”を受けやすいため、そうした依頼で収入を得ることが多いですの。

 逆に特災調のように武器を持って戦う事は出来ませんわ、日本では銃火器を持つ事は法律で許されておりませんので、正面装備を整える事が出来ないんですのよ」

 

 「……なるほど、やっぱり金持ちも楽じゃないんですね……」

 

 「それにもう一つ――寺社仏閣に教会。

 神が去った現代でも、“神域としての結界”は今も働いていますの。

 怪異はそういった場所には入りにくく、我々の活動拠点にもなっております」

 

 「お守りもそうだけど……場所そのものにも意味があるんですね」

 

 「ええ。信仰や結界の重ねがけがなされた場所は、それだけで“安全地帯”になりますわ。

 わたくしたちは、それらの維持・管理にも関わっております。

 妖や霊が関わる危険であれば、最悪逃げ込めば助かる緊急避難場所としての役割がございますので、こちらも疎かにはできない勤めです」

 

 

 

 

カレーを食べ終わったアリスさんが口元を拭いて、ひと呼吸おいてからまた説明を再開した。

 

 

 

 

 

「今この界隈では基本的に、霊的な能力が低い方や安定した生活を求める方は国家公務員扱いの特災調を目指し、寺社仏閣の跡継ぎや、退魔の技術を親子代々受け継いでるような家は民間の組織に入る事が多いですわね」

 

 男は感心したように息をついた。

 

 「……思ってたより、ずっと組織的なんですね。霊の世界って、もっとふわっとしてるのかと」

 

 「表向きはそうですわ。ですが、現代でも“霊”は人を殺し得る。

 だからこそ、目立たず、確実に……抑え続けなければならないのです」

 

 彼女の言葉は、いつになく静かで、強かった。

 

 男はそれに、自然と敬意を抱く。

 この小さな“お守り”の重みと、それを支える世界の話――

 

 ようやく、少しだけ実感を持って理解できた気がした。

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