淫夢厨社会人と封印から出れない妖狐   作:狐耳大すこすこすこてぃっしゅふぃーるど侍

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コーヒー&チョコレート

「銀狐さん、毎日水筒ありがとナス!でもさ……コーヒーだけ絶対出てこないの、なんか理由あるの?」

 

ふと気になって、男は素朴な疑問を投げた。

 

銀狐はきょとんとした後、ふわりと笑って応える。

 

「緑茶や紅茶はそのまま飲むじゃろ? じゃがコーヒーは……そのままでは少々、苦うての」

 

「まあ確かに」

 

「牛乳や砂糖で味を変えるのはのう……なんとなく邪道な気がしてな。

どうにかしてそのままで美味しくなる方法はないかと、いろいろ淹れ方を試してみておるのじゃが…」

 

「なるほど。素材本来の味を引き出す的な?」

 

「うーむ、少し違うかもしれん。たとえばじゃ、紅茶を美味しく淹れられぬ者がミルクティーを淹れても上手くいかぬじゃろ?

応用は、基礎があってこそ成り立つのじゃ」

 

「ブラックで美味しく淹れられてこそ、ミルクや砂糖も生きる…ってことっすね。納得」

 

「まぁそんなわけで色々試しておるのじゃ。

 

上手くいったら水筒に入れてやるから楽しみにしておれ」

 

「おっす、期待してまーす」

 

 「…もっとも、試行錯誤してたら、試作品のコーヒーがだいぶ余ってしもうての。しばらくは出せんかもしれんがな」

 

 「まあ、研究熱心なのはいいことだよ」

 

 「この苦い味も、のう…最近はだんだんと趣というのが出てきたようにも思うんじゃ。

 

 慣れただけなのか、儂の淹れ方が上手くなったのかは…、よう分からぬがな?」

 

 二人で顔を見合わせて笑った。

 

「そしたらさ。今日は作りすぎた苦いコーヒーに相性抜群の甘いものを合わせてみない?」

 

 男がチョコの袋を手に取ると、銀狐の耳がぴくりと動いた。

 

 「……甘味? それは儂の大好物じゃ! ぬし、わかっておるのぉ!」

 

 銀狐が用意してくれた、二人分のコーヒー。

 湯気が立ち上る湯呑の隣に、個包装のアルファベットチョコレートを並べる。

 

 銀狐は封を破り、ひとつをまじまじと見つめた。

 

 「ふむ……これがチョコレートとやらか。見た目は質素じゃが……いざ、参る」

 

 ぱくり。

 

 もぐもぐ。

 そして、コーヒーをひと口。

 

 「……これは……甘いのう。甘い、のじゃが……それだけではない!」

 

 銀狐の目が見開かれる。

 

 「良き香り、滑らかな舌触り、口の中で溶けゆく形……そして最後に来る、ほのかな苦味。

 なんとも言えぬ、珠玉の味わいではないか!」

 

 男は笑ってうなずく。

 

 「ね? コーヒーとチョコって、最強の組み合わせっしょ」

 

 「うむ、人の子よ、これは良いものじゃ! この二つは共にあるべきじゃな!」

 

 

 

 

 

チョコレート一つでこんだけ機嫌を良くしてくれるとこっちまで嬉しくなる。

 

そういえばチョコレートと言えばあの映画があったな。

 

 

 

「そういえばこのチョコレートの映画があるんですけど、興味あります?

 

ほう、映画にはそういった物まであるのか?幅が広いのぉ」

 

「俺が大好きな映画なんですよ、『チャーリーとチョコレート工場』ってやつです。

 

ファンタジーで、カラフルで、ちょっと狂気じみてて、めっちゃ面白いやつ」

 

 「ふむ、なんだかとても期待できそうな気配がするな?」

 

二人分のコーヒー、ボウルに山盛りにした小包装の買い置きチョコレート、これだけあればこの映画は十分楽しめるだろう。

 

隣り合って、期待に胸を膨らませて、再生ボタンを押した。

 

 

 

 

 

 

 

 

黄金のチケット、巨大なチョコレート工場、奇妙な工場主ウィリー・ウォンカ。

 

世界に五枚しかないチケットを偶然手に入れた少年チャーリー、そのチケットを使いチョコレート工場へ見学に行く事になった。

 

 

ウィリー・ウォンカが言った、理屈抜きで楽しいのがチョコさ、というセリフの通りに工場には素敵な物が詰まっていた。

 

 

銀狐はチョコを齧りながら、目を輝かせていた。

 

「なんと、壁から蜜が湧き、川が甘味で満ちておる……これは異界の描写か?」

 

「まあ、ウォンカの世界ではあれが日常だからな……」

 

「儂も工場に入ってみたいのぉ。」

 

 

 

 

そうして素敵な世界で展開されるチャーリーとウォンカと家族の物語。

 

 

素敵な世界にいるけど心が満たされてない工場長のウォンカ、それは自分が家族に愛されてないと思っていたから。

 

家族は何か始めようとするといつも邪魔する、きっと自分が嫌いなのだ。

 

チャーリーはそれは違うよと諭した、『愛しているから心配なのさ』

 

その言葉を信じた彼は家族に会いに行き、自分が愛されていた事を知り、家族の温もりを感じて、それを教えてくれたチャーリーと友達になり、隣人愛を知り、最後は大団円となって皆幸せになった。

 

 

 

 

 

 

銀狐はそっとチョコレートを置いて、小さく言った。

 

「……この子は、“名もなき者”として終わらぬのじゃな」

 

「うん。名前も、心も、ちゃんと残る」

 

 「甘いだけでない、“優しさ”が溶けておる映画じゃ」

 

 映画が終わった後、コーヒーを飲みながら二人であーだこーだと感想を言い合う。

 

 「お茶会に、うまい茶菓子に、映画鑑賞。これ以上に幸せな夜はないな」

 

 「うむ。今日の儂は、チョコレートと家族愛に満たされておる」

 

 銀狐はカップを両手で包みながら、素晴らしい映画の余韻に長く浸っていた。

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