淫夢厨社会人と封印から出れない妖狐 作:狐耳大すこすこすこてぃっしゅふぃーるど侍
感想とか面倒な事までしなくても、低評価でも良いので評価を入れてくださると非常に参考になります。
15話でこの感じだとお先ないですかねー。
ここ最近、男からの差し入れがますます充実していた。
お菓子、酒、家電、雑誌、ゲーム、時にはちょっとした贈り物まで。
銀狐は押し入れの中で、そのひとつひとつを大切に使っていた。
「儂も、何かお返しがしたいのぉ」
ある晩銀狐はぽつりと呟いた。
「だが外に出られぬ儂に何ができるか…物を買うわけにもいかんしのう」
思案の末ふと手を合わせて目を閉じる。
「……そうじゃ。神職時代護符やお守りを編んでいたな、あれを今に合わせてみるのも悪くない」
銀狐が引き出しから取り出したのはひとつの小さな銀色の玉――狐玉
本人の余剰の妖力を結晶化したものである、神様と言われた時代にはこれをほんの小さな巾着袋に詰めてお守りとしたものだ。
当時からしたら「周囲の低級妖怪を遠ざける程度の威を放つ」ちょっと便利なアイテムだった。
しかし幾百年以上の封印を経て、その力は静かに進化していた。
そして現代。
大正時代の文明開化の際に旧来の多くの神や伝説の妖が姿を隠し、妖怪の数も力もかつてに比べて圧倒的に衰退している、銀狐は封印されていた為知らないが。
その結果――
狐玉は現代の退魔師が見ただけで威を感じ即座に逃げだすような神具に化けていた。
もちろん、銀狐も男もそれには全く気づいていない。
「……これを、ぬしに贈る」
銀狐が差し出したのは、小さな手製のお守り袋。
中には、真っ白に輝く小さな玉が収まっている。
「“狐玉”と申しての。儂が神社に居た頃に授けていたお守りじゃ。ちょっとした護りにはなると思うてな」
「ありがとう…これ凄い嬉しいな、銀狐さん…マジで大事にするよ!」
「そう喜んで貰えれば冥利に尽きるという物よの」
「ところでこれは何のお守りなの?」
「ああ、昔に赤子が生まれた時に渡してたお守りじゃな」
「赤子に?」
「うむ。目も見えず、言葉も持たぬ命には、妖かしが好んで寄る。とりわけ、獣の気配や形の無い悪意は好き好んで抵抗ができぬ物によってくからの」
自分が取り上げた赤子には必ずお守りを身に着けさせた物、これは不定の悪意から守ってくれるお守りだ。
「それを見れば知能のない妖でも込められた力の威に恐れをなし逃げ出す。
無形の悪意、例えばあそこの家だけ男が生まれて狡い、等の嫉妬や好悪を始めとした不の感情が呪いになり無力な赤子を襲う、というのを防ぐ。
知恵ある強き妖はお守りを見て“ワシの信徒”と理解し、手を出すのをやめる」
「はー…安産祈願とかのお守りかと思ったら無病息災って感じなんだね、というかやたらと武闘派な感じが…」
「これでも昔は相当武威を示したのじゃぞ?今は昔の話であるが」
「儂の信徒の子を襲った愚か者が居てな」
銀狐の目が伏せられ、声が低くなる。
「そのときは、儂と付き従う退魔師と共に、その鬼を夜を徹して追い詰めた」
男の手が止まる。
「…殺したのか?」
「殺した、護りとは、優しさではなく、躊躇わぬことである。
その後鬼の遺体を見せてまわった、一罰百戒というやつじゃ。以降、誰も手を出さんようになった」
沈黙が降りた。
銀狐は目を閉じ茶を一口すする。
「ぬしが受け取った狐玉もその流れのものじゃ。
だが、ぬしには穏やかな日々のために使ってほしい。そう思って、渡したのじゃ」
男はお守りをそっと手のひらで包んだ。
「……ありがとう。大事にするよ。
守ってくれる誰かがいるって、こんなに心強いんだな」
銀狐は笑わずただ静かにうなずいた。
その表情は神でも妖でもない、ただ誰かを護ろうとする者のそれだった。