淫夢厨社会人と封印から出れない妖狐 作:狐耳大すこすこすこてぃっしゅふぃーるど侍
【清明連・寺の一室】
アリスの提出した報告書に目を通していたのは、清明連でも温厚さと穏やかさで知られる、とある中規模寺院の住職――仏頂丸(ふつちょうまる)師。
彼は禿げ頭を撫でつつ、読み終えた報告書をそっと机に置いた。
「……なるほど。“ただの狐”とは言いながら、これは間違いなく“神の器”だな!」
隣で控えていたアリスが小さく頷いた。
「はい。敵意はなく、対話も可能。……ただ、油断ならぬ相手でもありますわ」
「うむ。お主が丁寧に扱ったのは正解に思えるね。派手な者を送っておれば、祟りの一つもあったかもよ?」
仏頂丸は報告書を整えると、封筒に入れた。
「さて、この報告は依頼元にも回すとしよう。あちらさんも、ずいぶん気にしてたからね」
【依頼主邸・応接間】
豪奢な応接間。清明連の代表として仏頂丸とアリスが訪れると、依頼主である初老の大富豪は報告書を熱心に読み耽っていた。
「……なるほど。この“銀狐”なる存在が、あなた方でもはっきり分類できぬほどの“神格に近いもの”というわけか」
「そういう理解で間違いございません」
仏頂丸が穏やかに答えると、依頼主は一息つき、言いづらそうに口を開いた。
「その……このお守り……我が家の者にも、一つ分けてはいただけませんか?
いや、強奪など望んでおりません。ただ……対策としての価値は計り知れない。
礼も尽くすし、日々の祈りも惜しみません。正式な手順を踏みますし対価も惜しみませんので……どうか、ご相談いただけませんか?」
アリスが少し迷いながら口を開いた。
「……ご希望は承りました。ですが、それは銀狐様のお考え次第となります。
こちらから、改めて確認いたしますわ」
【封印の間・その夜】
いつものように襖を開け、男が顔を出す。
「銀狐さん、ちょっといいですか」
「ほいほい。なんじゃ?」
「この間会ったお嬢様――じゃなくて、アリスさん経由で、さらにその依頼主から相談がありまして。
あの“お守り”、いくつか分けてもらえないかって話でして……」
銀狐は湯呑を置き、くすっと笑った。
「ふむ、案の定じゃの。……実は、儂もちょうど考えておった」
「といいますと?」
「神通力、つまり信仰じゃ。今のままでは、この封印から出るには“力”が足りん。
じゃが――そなたのように、日々触れ合い、祈りを捧げる者が増えれば、自然と力も戻る」
「……つまり、信仰してくれるなら、ってことですか?」
「うむ。神棚でも置いて、朝晩に一度でも“気にかけて”くれるなら、
その見返りとして“お守り”を分けるのもやぶさかではない。
……ただワシは現状ここを出られんのでな?そなたのような者が間に立ち、橋渡しをしてくれると助かるんじゃが……」
男は目を瞬かせた。
「……これって、現代の信仰復活ってやつ?」
「ふふ。大袈裟に言えば、そういうことにもなるかもしれんな」
お主が神主じゃな!と告げる銀狐に、まぁダブルワーク神主でよければと苦笑をしながら返した。