原作主人公が居ないオーバーロード   作:Revak

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せーの!
セルフ二次創作☆


第2話

 

 ギルド、アインズ・ウール・ゴウンが誇る拠点。ナザリック地下大墳墓の第九階層、円卓の間。

 其処に一体の異形と一人の少女が居た。

 

 異形は骸骨だ。人が死ねばこうなるという外見であり、肉も皮も無い骨だけの姿。

 漆黒のローブを纏い、角にも似た肩パッドを付けた骸骨であり、胸を開いている。胸の少し下には赤いオーブが浮遊している。

 名をモモンガという、アインズ・ウール・ゴウンの長である最上位アンデッド死の支配者(オーバーロード)だ。

 

 もう一人は可憐な少女だ。

 濃い緑の服と黒のズボンを履いた少女であり、造形もまた美しいと言える。

 黒い髪に赤い瞳を持ち、何処か光線的な雰囲気を醸し出している。

 これは仮の姿。この少女もまた異形である。

 名をヴィルト・シュヴァイン。キメラ系統の最上位種である。

 

「ヘロヘロさんも帰ってしまいましたね……」

 

 ぽつりと、モモンガが寂しそうにつぶやいた。

 

「まぁ、仕事で疲れてたんです。仕方がないですよ」

 

 ヴィルトはモモンガを慰める様に、アイコンを出す。

 

「そうですよね……そろそろサービス終了の時間ですね。私は玉座の間で最期を迎えたいんですが、どうでしょう?」

「私も着いて行きますよ」

 

 そう話すと二人は円卓の椅子から立ち上がり、部屋から出る。

 

 廊下もまた豪華絢爛だ。

 壁や天井、床の材質から拘っている代物であり、材料費だけで考えても頭がくらむだろう。それを超一流の職人が手がけた様に美しく作られている。

 二人はそんな廊下を歩くと、廊下に時々調度品が置かれている。

 壺等も値段の張る物だ。

 

 二人が廊下を歩いていると階段に着く。階段を降りると其処は広間であり、其処には多数の人間──に見える異形が居る。

 

「プレアデスか」

 

 モモンガがポツリと呟いた。

 

 戦闘メイド、プレアデス。

 それは各種美人が揃ったNPCだ。

 

 ナーベラル・ガンマ。黒髪の魔力系魔法詠唱者。

 ユリ・アルファ。同じく黒髪で眼鏡をかけた近接系の職業であるモンク。

 ルプスレギナ・ベータ。赤い髪の信仰系魔法詠唱者(マジックキャスター)。

 エントマ・ヴァシリッサ・ゼータ。紫色の髪に見える──実際は蟲だ──を持つ巫術師。

 ソリシャン・イプシロン。金髪のアサシンである。

 CZ2128・Δ。ピンク色の髪をしたガンナー。左目に眼帯をしている。

 

 そして彼女たちのリーダーである白髪の執事服を着た老人、セバス・チャン。

 

「……どうせなら、彼女達も連れて行きますか」

「さんせー、連れて行きましょ」

「"付き従え"」

 

 モモンガはボイスコマンドでNPCに指示を出し、連れて行く。

 

 そうして二人が第九階層から第十階層に降り、暫く歩くと門の前に着く。

 天使と悪魔をモチーフにした、今にでも動きだしそうな造形美を持つ扉だ。

 

 モモンガが前に着くと扉がひとりでに動き、開いて行く。

 

 二人は門の向こう──玉座の間に入っていく。

 

 玉座の間は、何処か神聖さを感じる領域だ。

 天井からは水晶で出来たシャンデリアがぶら下がり、部屋の左右にはギルドメンバーをモチーフにした旗がぶら下がっている。

 二人はプレアデスを連れ、玉座の間の最奥に辿り着く。

 

 最奥には一人の女NPCが居た。

 

 聖母のような微笑みを浮かべている女だ。

 純白のドレスに身を包み。黒い髪を肩まで伸ばしている。金の瞳を有し、神の造形美とでも言うべき美貌を持つ。

 腰からは漆黒の鳥の翼が生えており、また頭部のこめかみからも黄金の角が生えている事から人間ではなく、悪魔である。

 名をアルベド。守護者統括というナザリックのNPCでも最上位の地位に付く大悪魔だ。

 

「アルベド……その手に持つのはギンヌンガガプか?」

 

 ギンヌンガブブとはユグドラシル──このゲームに二百しかない超級のレアアイテムにしてぶっ壊れアイテムであるワールドアイテムの一つだ。

 効果としてあらゆる物質の破壊能力を有し、どんな物理防壁でもギンヌンガブブの前では豆腐の様に砕かれる。

 

「どうします? 処す? 処す?」

「処しませんよ。まぁ、恐らくタブラさんでしょうし……最終日だし大目に見ます」

 

 そういうとモモンガは玉座の前の階段を少し上る。プレアデスも着いてきそうになったのでモモンガは「待機」とボイスコマンドで停止させてから玉座に座る。

 

 時刻は34:58:48。時機にユグドラシルも終わる。

 

「本当にありがとうございました。ヴィルトさん。最終日まで付き合ってくれてありがとうございます」

 

 ヴィルト・シュヴァインはアインズ・ウール・ゴウンに加盟してから一日たりともログインを欠かさなかった。

 それはログインする人間が減っていってからも変わりはなく、常にモモンガと居た。

 

「こちらこそ、貴方のおかげで楽しいユグドラシルを過ごせました。ありがとうございます」

 

 そうして時間が過ぎ──遂に二十四時となった。

 

 さぁ、ここからだ。ヴィルトはそう思い隣のモモンガを見ようとして──

 

 居ない。

 

「は?」

 

 確かにさっきまで居た筈の、オーバーロードの姿が無かった。

 

「……マジ?」

 

 これ原作じゃなかったんだけど、とヴィルトは混乱した。

 

 

 

 

 ヴィルト・シュヴァイン──本名■■■■は転生者である。

 神の力に依って上流階級に生まれ、苦難の現世をある程度楽に生き抜くことが出来た凡百の転生者だ。

 転生前の世界、前世にて人気なライトノベルがあった。タイトルをオーバーロード。モモンガの種族と同じ名を関する作品である。

 アニメ化もされ、ヴィルトの知識では四期まで放送されたうえ劇場版も上映されたという超人気作である。

 その世界にヴィルトは転生した。

 

 その知識を全力で生かし、異形種でユグドラシルをプレイし原作主人公が属しているアインズ・ウール・ゴウンに所属。

 そのまま原作主人公と友となり、原作へと準備をしていた。

 

 だがそれは、モモンガも共に転移してくるのを前提にしており──自分とナザリックだけが転移するなど想像もしていなかった。

 

(お、落ち着け。ナザリックの何処かに居るのかもしれない)

 

 咄嗟にそう思ったヴィルトはアイテムボックスを開く。

 原作での描写を思い出し、手を虚空へと消えさせる。其処はアイテムボックスであり、中にはヴィルトが溜めこんだアイテムがある。

 その中から一つ、携帯電話を取り出す。

 閉じるタイプの古い携帯電話だ。

 それを開くとかちりと音が鳴る。

 

 勿論これは携帯電話の見た目をしたマジックアイテムであり、二十四時間に十二回まで<伝言>(メッセージ)が使えるマジックアイテムだ。

 

 それを起動し、モモンガへと繋げる。

 

(──繋がらない)

 

 一度やって駄目なら二度、ともう一回試すも繋がらない。

 

「……まじか」

 

 いや待て。まだ<伝言>(メッセージ)が繋がらないだけかもしれないと思いなおす。

 

 

「どうかなさいましたか? ヴィルト・シュヴァイン様」

 

 其処に、女悪魔が語りかける。

 

「アルベドか……少し待て。考える」

 

 アルベドにどんな指示を出すか、ヴィルトは悩む。

 数分ののち、結論を出す。

 

「アルベド。守護者全員に各階層にモモンガさんが居ないか捜索させろ。一時間の捜索後、玉座の間に第八、第四を除く守護者を集めろ。

 セバス。プレアデスを一人連れて外を探索。周囲に何か無いか探せ。残りのプレアデスは第九、第十階層を捜索しモモンガさんが居ないか探せ──以上だ」

「ご命令、承りました。早速行動に移らせて頂きます」

「頼んだぞ」

 

 そう言うとアルベドとプレアデスは行動を開始する。

 

「……よし、その間に……」

 

 ヴィルトは指にはめている指輪のうちの一つ。リング・オブ・アインズ・ウール・ゴウンを起動する。

 この指輪の能力はナザリックの各階層、各部屋への転移能力だ。

 

 ヴィルトが転移すると、視界一杯に黄金の山が映る。

 黄金の正体は金貨だ。純金で作られたユグドラシルの通貨が山のように積み上がっている。

 それが何十とあり、黄金の山の中には多数のマジックアイテムが収められている。

 黒曜石の剣。よくわからない仮面。高位の金属で出来た盾等など。

 それ以外にも部屋の壁──円形上に広がるこの部屋の壁にはアイテムを居れる隙間があり、其処にもアイテムが治められている。

 黄金の山の中には比較的重要度が低いアイテムが混ざっているのだ。

 無論それは他のアイテムに比べて、の話であり山の中のアイテムも高位のマジックアイテムであることに変わりはない。

 

 ヴィルトは山を一瞥すると門の一つに向かう。

 門は漆黒の闇に覆われており、先が見えない。

 

「……かくて汝、全世界の栄光をわがものにし、暗きものは汝より離れ去るだろう」

 

 ヴィルトがそう言うと門の闇が消え、先が見えるようになる。

 パスワード式の扉だ。この門を作ったのは設定魔のタブラ・スマラグティナである。

 

 ヴィルトは一人、門の向こうを進む。

 

 通路の左右にもアイテムが治められており、多種多様な武具が飾られている。

 

 その通路を通っていくと、一つの小部屋に辿り着いた。

 

 そこは机が一つとソファが二つ置かれただけの簡素な部屋だ。

 

 その部屋の中央には異形が立っている。

 

 水死体の様に青白い肌。タコの触手の様に伸びた手足。頭部は蛸其の物であり、異様である。

 ボンテージ衣装を着たの姿は異様の一言に尽きる。

 

 その異形の前にヴィルトは歩き、口を開く。

 

「久しいな。パンドラズ・アクター」

 

 異形は姿を変えていく。

 粘土細工か何かの様に蠢き変わり、ピンク色の肌に変わる。

 頭部はつるりとした卵型。のっぺらぼうの様に鼻などの起伏は無い。

 眼と口があるべき場所には真っ黒な丸が浮かぶ。

 ナチスドイツの軍服を模した黄色い軍服を纏い、四つの指しかない手で敬礼を行う。

 

「ん~ヴィルト・シュヴァイン様! ようこそ宝物殿へ! この度は何の御用でしょうか?!」

「あぁ。お前に話す事があって来たんだ」

 

 思った以上のリアクションにヴィルトは内心ビビりながら、ソファに座る様に促す。

 パンドラズ・アクターとヴィルト、両方がソファに座り話が始まる。

 

「さて。早速だがお前の創造主でもあるモモンガさんの行方が知れなくなった」

「なんと! モモンガ様が?!」

 

 ヴィルトの言葉にパンドラはショックを受ける。

 自身の創造主の失踪。ショックを受けない訳が無い。

 

「まぁ、今ナザリック中を探させているが見つかる可能性は低いだろうな」

 

 ヴィルトとて急に玉座から消えたことでナザリック内に居る可能性は低いと踏んでいる。

 居るとしたら外の世界だろう。最も外の何処に居るかまでは見当はつかないが。

 

「そのため、お前には宝物殿(ここ)から出て動いて欲しい。具体的にはモモンガ代理として、な」

 

 パンドラズ・アクターはモモンガの一人息子と言える存在であると、ヴィルトは原作知識から知っている。

 その為の提案だが、パンドラズ・アクターは良い顔をしない。

 

「いえ。ヴィルト様。貴女がご健在の今、私がモモンガ様代理等として動けば他の者達の反感を買います。我々NPCは至高の四十一人に従うモノ。私には従いませぬ」

「……そうか?」

「そうでございます」

 

 だとするとすごい困るんだが、とヴィルトは顔で主張する。

 

 ヴィルト・シュヴァインは単なる社会人だ。副ギルドマスター等の職に就いている訳でも無い、正真正銘単なる一般人である。

 

 それが、ナザリックという巨大組織を動かす。

 

 出来るかボケ。それがヴィルトの本心である。

 

 だからこそ多少無理でもパンドラに代役になって欲しいというのがヴィルトの思いだ。

 だがそれが叶わぬというのなら、どうすればよいのか。

 

「……我がモモンガさんの代理として動くとか無理ゲーもいい所なんだが」

 

 思わず、ヴィルトの口から本音が漏れ出た。

 

「ご安心ください。ヴィルト様。我々NPC一同が貴女様を支えます」

 

「……その言葉。信じるからな」

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