原作主人公が居ないオーバーロード 作:Revak
基本書いてない所は原作通り進んだと思ってください
ナザリック地下大墳墓第十階層の玉座の間。其処には多様な異形が居た。
一見するとそれは可憐な少女に見える。だがよく見ると肌は死者の様に白く、瞳はらんらんと赤く輝いている。
口元からは牙が見えているのがチャームポイントに見えるが、それは異形の証。
銀髪赤目の美少女吸血鬼、シャルティア・ブラッドホールン。
ナザリック地下大墳墓の第一から第三階層までの守護者であり、単純なステータスだけを評価するならば守護者最強。
コバルトブルーの青白い体。
蟷螂と人間を悪夢の様にくっ付けたような蟲人間とでも表現すべき異形。背中の方部分からは氷が突き出ている。
四つの腕を持ち、臀部からは甲殻的な棘の付いた長い尻尾が生えている。
名をコキュートス。ナザリック地下大墳墓の第五階層守護者。
異形が蔓延る中で、人に最も近い容姿を持っている。
黒く染まった肌はただの人間ではなく、尖った耳もまた人ではない事の証ではあるが、異形ではない。
両目とも色が違うオッドアイ。容姿は幼くまだ少女や少年と言える歳だろう。
金髪の双子の守護者、アウラ・ベラ・フィオーラ。マーレ・ベロ・フィオーレ。
少女の恰好をした者が弟であり、少年の恰好をした者が姉である。
ナザリック地下大墳墓第六階層の守護者。
長身。百九十はあるだろう体躯。
見慣れぬ赤いスーツを纏う姿は実に様になっており、敏腕サラリーマンを彷彿とさせる。
だが黒い肌と尖った耳、そして臀部から生える甲殻的な尻尾が人間ではないと強く主張する。
その目は眼鏡をかけている事でわからないが、宝石で出来ている。
ナザリック地下大墳墓の第七階層守護者デミウルゴス。
そして、彼ら守護者を統括する立場の守護者統括アルベド。
彼女たちは一人の主を前に、膝を付いていた。
玉座に座ることは無く、立っているのは可憐な少女だ。
一見すると異形要素は無い。だがこの場の誰もが知っている。これほどに異形溢れる者は他にはいないと。
「さて。諸君、集まってくれて感謝する。早速だが本題だ。ナザリックは今原因不明の事態に陥っている。
更には我らの王であるモモンガさんが行方知らずとなった。諸君にも捜索を頼んだが……結果は?」
「申し訳ございません。ナザリック内をくまなく捜索しましたが見つかりませんでした」
アルベドが怯えながら答えた。
「よい。我も想定外の事態に混乱している。そもそもワールドアイテムを持つモモンガさんが消えるとなると相当の事態だ。これは誰の失態にもならん。
次にセバスから
ヴィルトの言葉に守護者たちは緊張を露わにする。
ナザリックきっての異常事態だ。守護者として有能な所を見せなければならぬと。
「その為、アルベドとデミウルゴスには共同で新しいナザリックの警戒網を作って貰う。マーレは
それと、とヴィルトは最後に言いにくそうに問いかける。
「お前達にとって……我は何だ?」
聞いてしまった、とヴィルトは羞恥で顔を覆いたくなるのを我慢する。
「力の王者。圧倒的な力を有する御方です」
シャルティア。
「暴力ノ化身。正シク御身ニ勝ル力ノ持チ主ハ居ナイデショウ」
コキュートス。
「破壊を司る御方です」
「逞しく、素晴らしい御方です!」
マーレ、アウラ。
「正しく力の結晶。御身が腕を振るえばそれだけで敵は塵とかす、我らの王者です」
デミウルゴス。
「素晴らしき御方です。モモンガ様と同じく最後まで残ってくださった心優しき御方でございます」
アルベド。
「……そうか……今後とも忠義に励め」
そう言い残すとヴィルトは指輪の力で自室に転移した。
「……やっぱ評価高いな」
■
ヴィルト・シュヴァインの自室は他のギルドメンバーの自室と同じく、ホテルのスィートルームを想像して創られた部屋だ。
広いバスルームにバー部屋、キングサイズのベッドがある寝室に客間など、部屋は広大だ。
その部屋の一室、寝室のベッドでヴィルトは仰向けに成りながら今後について考えていた。
元の考えでは原作ブレイクなど考えておらず、モモンガの指示通りに動けばいいやと楽観していた。
だがそのモモンガが消え、自身の判断でナザリックという組織を動かさざる負えない状況になった今、適当な運営では決して駄目だ。
(まずはデミウルゴス牧場は阻止した方が良いよな。後でモモンガさんに怒られるし。魔王計画も辞めといた方が良いよな……となると冒険者活動だけど、私が表に出るとなると出来ねぇよな……
うーん、ナーベラルとユリに冒険者やらせるか? いやそんなことしなくてパンドラとナーベラルでいいか。私は……何すればいいんだ? えーと、まずは──)
色々と、色々とヴィルトは考えていく。己が望む未来への道筋を考えていくのだった。
■
ナザリックが転移して二日目が経った。
「……こうか?」
ヴィルトは自室の椅子に座り、鏡を相手に苦戦していた。
当然ただの鑑ではない。
情報系の魔法効果を持つマジックアイテムではあるが効果としては低く屋内などは見れないし音声も拾えない。更には低位の対情報系魔法で対策が取れるなどあんまり使い道は無いアイテムだ。
だがそれでもこの世界で有能なアイテムだとヴィルトは知っている為に使用していた。
ヴィルトの後ろにはセバスが控えており、ヴィルトの作業を黙って見ている。
(さーてカルネ村は何処だ?)
ヴィルトは真剣な表情でとある村を探している。
原作においてカルネ村が襲撃されるのは転移して四日目。つまりまだ二日の今は猶予がある。
その間にモモンとナーベを向かわせようと考え、早速鏡を使っていた。
モモンガが消え原作展開が全部ぶっ壊れた事で、ヴィルトは計画を考えざる負えなくなった。
今後の方針、ナザリック全体の動き。そして自身の今後についてもだ。
本来は全てモモンガに任せ傍で支えると言いつつニートを満喫しようとしていたバツが当たったのだろうかとヴィルトはそんなくだらない事を考える。
そうして操作していき、ヴィルトは遂に村を見つける。
「……村があるな」
木造の家が並ぶ、防衛力の低そうな村だ。村の周囲を見ても柵の一つもない。
ここがカルネ村だろうか、とヴィルトは考えるも確証はない。現地に行って確かめさせなければならない。
「よし。セバス。パンドラズ・アクターとナーベラルを呼んでくれ」
「畏まりました」
セバスは部屋を出て、二人を探しに行く。
「さて、どうするか」
取りあえずの命令内容を考えながら、ヴィルトは思案する。
自分はどう動くべきか、と。
原作モモンガの様に冒険者として活動する事は出来ない。最終的にアインズ・ウール・ゴウン魔導国を立ち上げた場合、その国家の要人として動くことになるからだ。
本来の姿での政治活動はほぼ無理であり、必然人の姿で動くしかない。となれば大々的に自分が動くことは出来なく成る。
「どうしたものかな」
■
トブの大森林の程近くの街道。碌に整備されていない、人が踏み鳴らしただけの道に二人の人物が居る。
片方は偉丈夫だ。長身であり、ガタイも良い。
漆黒の全身鎧には金のスリットが入っており、それだけで美術的価値も高いとわかる。
クローズドヘルムの全身鎧であり、防御力も非常に高そうに見える一品だ。
背中には先端が扇状になった鎧と同じく漆黒のグレートソードを二つも背負っており、筋力の高さが伺える。
もう一人はとんでもない美女だ。街に行けばそれだけで注目を集め、貴族の妾になるのも夢では無いだろう。
漆黒の髪をポニーテルにして靡かせる様は実に様になっており、肖像画にすればさぞ売れるだろう。
旅人用の白い服に茶色のローブを纏っており、腰には剣が刺さっている。
ナザリック地下大墳墓のNPC。パンドラズ・アクターの変身形態とナーベラル・ガンマの旅装束の姿だ。
「さて。行くか」
「わかりました。モモンさん」
「……呼び捨てで構わないぞ」
「いえ。これでも
二人は話しながら道を歩いて行く。
二人はヴィルト・シュヴァインから命令を受けた。目的は人間の村についての情報収集だ。
数日滞在し、人間の村からあらゆる情報を収集せよ、と命じられている。
また出来うる範囲で人を助け、英雄と成れとも命じられているのだ。
その為の人選だが、少し疑問が残るとパンドラは考える。
英雄となる、つまり注目を集めろという事だがその為の人選なのに全身鎧で顔を見せれぬモモンガ様の姿で魔法で武具を作った状態で活動しろというのがわからない。
それにプレアデスを使うならばもっと使い方がある。ユリ・アルファやソリシャン・イプシロンを使えばもっと英雄らしくなるはずだ。
だがそれをしないというのは、何か深謀成る考えがあるのだろうかとパンドラは考える。
そうこうしているうちに、二人は村に辿り着く。
柵の一つもない、防衛的観点からすればそうとう駄目な村だ。
見張りも立ってなく、二人は苦もなく村に入る事に成功する。
そうして村を少し歩くと、畑で作業している村人を目にする。
「すみません。少しいいですか?」
「おや。冒険者の方かい? カルネ村へようこそ」
農作業をしている村人と少し話、パンドラは村長の家の場所を知る。
さてここからが忙しくなるぞ、とパンドラは気合を入れた。