彼方楽園のレチタティーヴォ―Interlude4   作:三文小説家

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 短めですが、リコさんの新戦術をお披露目。


ヴァニシング・リーフ

「ニャローテ、《アクロバット》!」

 

 辺獄に迷い込んだリコは、インディセンシーと戦っていた。最初は鎖による攻撃に苦戦していたが、何度か戦闘と逃走を繰り返すうちに闘い方を掴んだ。

 

 敵の行動パターンを把握し、そろそろあの技を使うべきかもしれない、とリコは実行した。

 

「ニャローテ、《マジカルリーフ》! そして、《アクロバット》!」

 

 ニャローテは指示通りに《マジカルリーフ》を展開し、それを隠れ蓑にインディセンシーの視界から、消えた。そして、敵の動きが一瞬止まった隙に、壁を踏み台にしたニャローテが蹴りを入れる。

 

「良かった。成功した……」

 

 リコの考えたオリジナル技《ヴァニシング・リーフ》

 

 原理は単純だ。《マジカルリーフ》で視界を遮った後に、《アクロバット》で相手の死角に潜り込み、攻撃する。しかし、敵の動きを把握している事を求められ、指示を出すタイミングが少しでもズレれば失敗する繊細さも併せ持つこの技は扱いがかなり難しい。

 

「《やどりぎのタネ》で足場を作って、もう一回、《マジカルリーフ》!」

 

 そして、再びインディセンシーの視界から消える。また背後に、と振り向くが、そこには《やどりぎのタネ》で生やされた植物が存在するだけであった。

 

「更に、《マジカルリーフ》!」

 

 三度目の《マジカルリーフ》。攻撃兼煙幕と、無駄の無いことである。姿が消えたであろうニャローテを探し出すインディセンシーだが、

 

「《マジカルリーフ》を使ったからって消えたとは限らない。単純だけど、引っかかるよね。ニャローテ、《アクロバット》」

 

 ニャローテは移動していなかった。そしてそのままニャローテの蹴りが炸裂する。致命の一撃によりインディセンシーは倒れた。

 

「はあ……やっと倒せた」

 

 リコにとって防御も硬く、動きも早く、攻撃の物量も多いインディセンシーは単独で戦うには強敵だった。二回ほど様子見と逃走を繰り返してようやく倒せた今は、思わずその場に安心感から崩れ落ちてしまった。彼女との闘いの最中に他の悪魔と会敵しなかったのは僥倖と言うほかない(なお、理由としては、過去に通ったアヤメが悪魔を粗方殲滅したからである)。

 

 しかし、悪魔はまだ倒れてはいなかった。手を使わずに起き上がるという人外の方法で体勢を直し、リコに鎖を叩きつけようとした時、

 

「!?」

 

 インディセンシーの身体を飛剣が貫き、体勢を低くしたアヤメが振り向いたリコの目の前に現れた。見れば腕は剣を振り切った風情であり、インディセンシーは一刀両断されている。もはや一枚の絵画とすら見紛う美しさの攻撃を目の前で展開されて、リコは暫し思考を停止させた。

 

「お久しぶりです。リコさん。間に合ってよかった」

 

 やがて、アヤメが口を開く。その瞬間、金縛りが解けたようにリコはアヤメにしがみついた。色々と、限界だったのだろう。未知の空間で、敵に襲われながら、ニャローテ以外に味方がいない状況で歩き回っていたのである。リンとの経験で鍛えられているとはいえ、十代前半かそれ以下の年である彼女にはつらいものであった。

 

「お嬢様~」

『無事かい!?』

「キル!」

「モシ!」

「ポリ2とキルリアとヒトモシと……どちら様?」

 

 そして遅れて駆け付けた残りの面々を見て、リコは赤面しながらアヤメから離れる。人前でしがみついているのは恥ずかしいと思ったのだろうか。

 

 なお、アヤメ達はあの後辺獄を探索していたのだが、ポリゴン2がふと、

 

『僕達以外に巻き込まれた人っているのかな』

 

 と、口にしたことがきっかけで辺獄におびき出された可能性のある存在を洗い出したのである。そして、その中で『巻き込まれたら安否が保証できないのはリコなのでは?』という結論に至り、探し回ったというわけだ。

 

 アヤメの反響定位やキルリアのテレパシーを使って、東へ西へ上へ下へと走り回ったのである。他にも巻き込まれた候補としてミレーユやWeyer String-III他、転移前のリン達の協力者である従騎士達も挙がったのだが、彼女達はまあ、大丈夫だろう。

 

「でも、ミレーユさんも巻き込まれてる可能性があるんだよね。それとリンやリンのポケモン達も……」

「今までの例を見るに、リンさんだけは弾かれている可能性もありますが……念の為探しましょう。それとMs. Stringも探しておきたいです。従騎士達は……」

「多分、探しに行かなくても大丈夫……だと思います。皆さんお強いですし……」

「サルビアの言う通り、従騎士達はついでに探すくらいで良いと思います。全員巻き込まれてるとしたら26人もいるので……探しに行くのは無謀かなという気もします」

「あ、でも巻き込まれてるのはもしかしたら三人だけかも……」

「だったら探しに行きましょうよ、三人だったら……因みに、その三人の候補は誰なんですか?」

「CとEとYです」

「なんで揃いも揃ってAの親衛隊が巻き込まれてるんですか」

「従騎士って誰ですか?」

 

 とりあえず誰が巻き込まれているか候補を洗い出してゆくアヤメ達。最低でもミレーユとWeyer String-IIIとリン(と彼のポケモン達)は捜すと決まったわけだが、リコからしたら物凄く気になる単語が出てきていた。

 

 とりあえず従騎士の一人である調律文字(オーダー):Hことサルビアがキルリアにしたような説明をリコにする。詳しいところまでは一発では分からなかったものの、とりあえずリンの転移前に協力してくれた組織だという事は分かった。

 

「それにしても26人って……多いね」

「AからZまでいますからね。それぞれにアルファベットになぞらえた能力が与えられています」

「凄く強そう……」

「実際、強いですよ? 決して無敵ではありませんけれど」

 

 26人である。ただの数の暴力でもかなり強い。エクスプローラーズの主要メンバーの倍以上はいる。来てくれれば心強いが……何故だか、リコにはとても恐ろしい事に思えた。

 




 ネタバレするとリン君は出ません。

 備忘録

>新戦術、《ヴァニシング・リーフ》

 《マジカルリーフ》を隠れ蓑にして視界から消え、不意を突く。という単純な技ながら、それ故に応用の幅が広い。また、別の物体で現在地を誤認させたり、使ったと見せかけて実は使っていないなど、非初見用初見殺しも満載。
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