この世界はこと
それはゴミ箱が卵を産むという魔境、ノースティリス育ちのあなたから見ても違和感だらけと言える。
目の前のこれもその一環だ。
空から蔓が生えている。
それだけでもどういう状況じゃとツッコみたくなるほど意味が分からないが、その大きさもまた異常だ。
ノースティリスでよく自生している蔓のようなかわいらしいサイズではなく葉一枚一枚が数十mはありそうな規格外のサイズ。
現にあなたを乗せた移動専用機が葉に着地できる程である。
これがあなたが極上の野菜を手に入れるための目的地に続く入口、「天からのいざない」。
今回の目的である野菜の王様とやらが生息する場所らしい。
らしい、と曖昧に言ったのはなぜかそこに食材があるということは分かっているものの、誰も野菜の王様のその詳細を知らなかったからだ。
如何にもデマっぽいがこの世界のことだ。
優に数万mはあるだろう蔓を登った先、すなわち厳しい環境の先に食材が全くないというのはあり得ないだろう。
未だ見ぬ食材にそれなりに期待を抱きつつ、あなたは最初の一歩を踏み出した。
細かい蔓やツタで足場が悪く、風もどんどん強くなる中あなたは着実に歩を進めてゆく。
まだ登り始めたばかりだが、下をのぞき込むと建物も自然も豆粒のように見える。
既にあなたの経験の中での最高度であるスぺクウィングは軽く超えているであろう。
スぺクウィングやフォーチュンベルからの飛び降りで埋まらなくなって久しいが、流石のあなたでもこの高度では即死を免れないだろう。
再臨や不死鳥のポーションも持っていないのでそれなりに気を払った方が良さそうだ。
なんて決意をしてから早二日。
……長い。ただひたすらに長い。
この蔓長すぎである。
全く近づいた気がしない。
そのうえ景色も蔓と空のみで変わらないときた。
寂しくて仕方なく、あなたのかわいいペットが恋しいものである。
清々しいまでの青空を指さしながらお主の大好きな空色じゃぞ、と我らが開拓監査官をいじりたいものだ。
かなり上空までやってきた。
気温がかなり下がっており、氷点下といって差し支えないだろう。
周囲も分厚い雲に囲まれていてあなたの気分もどんよりである。
ピシ…
「うむ?」
物音がした気がしたので周囲を見渡す。
まさかこんな環境に生物がいるとは思えないが…気のせいだろうか。
そう考えたあなたを否定するように、あなたを中心に裂けるような音が次々に聞こえ、次の瞬間にはあなた目掛けて大きな口を持った蔓が攻撃を仕掛けてくる。
どうやらこの蔓が敵だったようだ。
とりあえず回避を試みるもその見た目に反してそれなりに素早く、数が多いことも相まって頭から食べられてしまった。
我ながらこのどんくささは擁護できない。
植物特有の青臭さを感じる口内に辟易としながらもあなたは脱出すべく魔力の球を唱える。
が、失敗。
重装備ゆえに致し方なし。
その間にあなたは足首まで飲み込まれ、体全体にそこそこ強い力で嚙みつけてくる。
埋まるほどではないにしろ痛い上に、べっちょりした微妙に暖かい唾液がきもちわるい。
たまらずもう一度球魔法を唱えようと準備をしたところで急に蔓型の敵の動きが鈍くなる。
何事か。
もしやあなたが非常に不味かったから固まったのだろうか。
あなたはあなた自身を食べたことがないが、エレアなので不味くはない筈だ。…多分。
あなたが地味にショックを受けている間に口内の温度がどんどん下がってくる。
元々かなりの高所だったので肌寒かったがその比ではない。
既に力なくなった蔓の口を無理やり開け、外に出たあなただが周囲がかなり暗くなっている。
夜にはまだ早い筈だが、と上空を見ると先ほどまでの分厚いながらも光の届いていた雲とは似ても似つかない、巨大な雲がかかっていた。
お、おぅ…
あなたが天からのいざないに挑戦するときにタイミングよくこんな巨大な雲がかかるだろうか?
誰かの陰謀を感j……そういえばあなたはエーテル病で雨雲を呼び寄せているのだった。
風もかなり強く、気温もどんどん下がってくるためあなたはバックパックからオーロラリングを取り出し、氷の唄を詠唱する。
この世界で嵐に遭遇したのは初めてだが、オーロラリングの雨風を無視できるという効果を信じ、雲の中に突入していく。
周囲の蔦や初めて見るゴリラのような生物があっけなく吹き飛ばされ、凍り付いている様子から見るに相当な悪環境なのだろう。
だがあなたの歩みは速度を落とさない。
氷の唄で冷気を抑え、オーロラリングで無風に等しいそよ風しか感じないからだ。
そうしてしばらく歩き、雷に打たれるというトラブルがありつつも分厚い雲を抜けた。
途端に香ってくる肥沃な土地の匂い。
定期的に農業をしているあなたには分かる。間違いなくこの先に畑がある。
あなたはふかふかした浮遊する大地に驚きながら駆け出した。
推しのVがトリコに関する動画出してました。
トリコは根強い人気があってうれしいですね。