旧都陥落の日   作:IamQRcode

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旧都陥落
平和な朝


 

 エリー都 治安局

 

「おはようございまーす」

 

 一人の青年が治安局の事務室に挨拶をしながら入る。

 

「んー、おはようさん」

 

 デスクでは先輩でありペアの治安官、シュヴァルツがパン屋で買ったベーグルを食べながらパソコンを触っていた。隣には湯気の立つコーヒーも置いてあるので、つい先程来たのだろう。

 

「先輩、今日もいつものメニューですか」

 

「ここのベーグル美味いぞ。アベルもどうだ?」

 

「僕、朝はシリアルなんです」

 

 シリアルは良い。特に最近のは栄養価もしっかりとしていて、その上牛乳も一緒に取れるのだ。働く者にとって最高の朝食なのではないだろうか。

 

「最近の若いのは健康的だねぇ。おっさんも健康に気を使おうかね」

 

「なら、タバコをやめてください」

 

「無理だな。こいつは俺の恋人だ」

 

 先輩はヘビースモーカーだ。常にタバコを吸っている人であるため、最近は僕の体にも臭いが付いている。幼馴染のトリガーにも指摘された。

 

「今日も平和な一日になるといいね〜」

 

「ですね⋯そういえば、新しい都市はかなり完成してきてますね」

 

「ああ、あそこか⋯あそこが完成したらここは旧エリー都とでも呼ばれるのかね」

 

「旧でも新でも、我々の仕事は変わりませんよ」

 

 僕らは治安官、都市の治安を守るために存在しているのだ。市民と都市の為に僕らは存在している。その役割は例え新しくできる都市でも変わらないだろう。

 

「そういえば、最近長官が新しい装備品の納入を市長に申請してたな」

 

「新しい装備ですか?」

 

「何でもアサルトライフルやスナイパーライフル、戦闘ロボットにホロウ用の戦闘服を申請してるらしいぜ」

 

 何だそれは⋯軍じゃないんだから。

 

 治安局の治安官の装備は現在は拳銃や警棒が主流だ。もし、何か重大な事があればショットガンやサブマシンガンを使用してもいい事になっている。だが、そんな時は機動隊が出撃してるし、軍も入ってくるだろう。

 

 戦闘ロボットなんて対エーテリアス用だ。仮に暴動が起きても鎮圧に使うにしては威力過剰で、民間人に死人が出る可能性も高い。

 

 ホロウ用の戦闘服も僕らはホロウに入らないから無意味だ。

 

 治安官には過ぎた武器だろう。

 

「戦争でも始める気ですか」

 

「さあな。だけど、軍は反対してるらしいぜ。当たり前だけどな」

 

「越権行為になる可能性もありますからね」

 

「仲良くしたいねぇ」

 

 僕もデスクに付いて今日の情報を見る。紛失物の届け物や窃盗などの犯罪、違法駐車の取締の記録などの報告書だ。特に大きな犯罪は起きてないようである。

 

「⋯ホロウの報告書か」

 

「ゼロ号ホロウか」

 

「ええ、特に異常もなく。拡大もしてないらしいですよ」

 

「ならいい」

 

 ホロウは人類を蝕む災害だ。エーテリアスという化物を生み出し、人類文明を脅かす。ここエリー都以外の都市も国家も既にホロウによって滅ぼされている。

 

「ホロウは俺達じゃどうにもならんからな。対抗できるのは⋯星見家か」

 

 星見家⋯虚狩りの子孫であり妖刀の力を持つ家だ。三代目当主の活躍は凄まじいものだったらしい。

 

「ですが、彼らに任せっきりも良くないですよ。星見家の子はまだ幼いんですから」

 

「そうは言っても周囲は勝手に期待するさ」

 

 だが、彼らも人間なのだ。周りからの期待に押しつぶされることや怖い事もあるだろう。特に星見家の一人娘である星見雅は周囲からのプレッシャーもあるはずだ。

 

「子どもが自由に未来を選べるようになる。そんな、世界になればいいんですが」

 

「だなぁ⋯さあて、朝のパトロールと行きますか」

 

「はい」

 

 防弾ベストと帽子を被り、拳銃と警棒を腰に装備してから駐車場へと向かう。

 

「お前⋯その拳銃改造しすぎだろ。変態か?」

 

 僕の拳銃は45口径だ。改造が許されているのでフルオート機能を付けている。更にバーティカルフォアグリップと、スリットの入ったマズルブレーキ、ロングマガジンが特徴的である。

 

「先輩だってスコープ付きの50口径の拳銃を使ってるじゃないですか」

 

「俺はまだ常識的な範囲だ。それに、スコープじゃなくてレーザーサイトな」

 

 車の鍵を解除して地下駐車場から外に出る。

 

 この世界はホロウに蝕まれているがこの都市はそれを感じさせないほど平和だ。治安官は犯罪以外にも市民の困り事にも対応している。落とし物やペットの捜索も僕らの仕事だと言ってもいい。

 

「ふはぁ〜⋯ねみぃ」

 

「さっきコーヒー飲んでましたよね」

 

「カフェインに耐性がついちまったのか?」

 

「まったく⋯カフェインの取りすぎは良くないですよ」

 

 まあ…かくいう僕もコーヒーやチョコは好きだ。人のことは言えないだろう。

 

「もし眠いなら代わりますよ?」

 

「いいよ。マジで耐えられなくなったら代わってもらうけど」

 

「治安官が事故を起こすのは勘弁ですよ」

 

「わかってるよ」

 

 そう言いながら先輩はエリー都中央に向かって車を進める。いつもと変わらない、平和な一日の始まりだ。

 

 

 

 

 




旧都の時の治安官の服はWW2のドイツの空軍野戦師団の軍服のイメージです。また、主人公の銃はネルソンガバメント、シュヴァルツの銃はターミネーターのハードボーラーをイメージしております。
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