旧都陥落の日   作:IamQRcode

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ライアー小隊救助へ②

 

 ライアー小隊は瓦礫を盾にして、トリガーを守るように戦っていた。追撃してきたエーテリアスたちは、ライアー小隊を殺そうと迫ってきている。

 

「レテ! 脱出経路はまだ見つからないか!?」

 

 レテはアサルトライフルを撃ちながら、腕に付けているデバイスを見る。

 

「この倒れたビルを越えたら逃げられる!」

 

 ライアー小隊の背後には倒壊したビルがあった。これを越えれば逃げられる。だが、この猛攻の中では登る時間はないに等しい。

 

「アケロン! ステュクス! 残弾はどれくらいだ!?」

 

「あと三マガジンよ!」

 

「同じく三マガジンだ! ロケットランチャーは残り一発!」

 

 弾薬の残りも少なくなってきた。装甲車に置いてあった弾薬は限界まで持ってきたはずが、やはり弾の損耗は激しい。

 

「ここぞという時に取っておけ!」

 

 くそっ⋯⋯このままじゃジリ貧だ。後ろに脱出経路があるのに、エーテリアスの猛攻が激しすぎる。

 

 追い詰められている状況と目の前に脱出口があるのに、脱出できない。この二つがカロンを焦らせる。

 

「グオオオ!」

 

「くっ、近づくな!」

 

 近付いてきたエーテリアスを銃床で殴る。そのエーテリアスは、銃器対策部隊のベストとバイザー付きのヘルメットを装備していた。自分たちを助けてくれた、治安官の部隊だ。

 

 共に戦った仲間が、理性を失いエーテリアスとなって襲いかかってくる。

 

 悪夢⋯それ以外の表現はないだろう

 

「くそっ⋯⋯くそっ! くそっ!」

 

 カロンは悪態をつきながらそのエーテリアスを撃ち殺す。

 

 軍人として元人間のエーテリアスと戦ったことは何度もある。けれど、さっきまで話し、共に戦っていた仲間を殺す経験はない。

 

 なんで⋯⋯なんで⋯⋯こんなことに。

 

 自分の判断が間違えたのか。仲間を見捨てた罰なのか。もっと、早く撤退すれば良かったのか。カロンの頭を後悔というネガティブな思考が支配してゆく。

 

「隊長! 中型が近付いてくる!」

 

「くっ!」

 

 もう⋯⋯駄目なのか。ならば、せめてトリガーだけでも助けないと。コキュートスに背負わせて、倒れたビルを登っている間、全員が援護すればいけるか?

 

「コキュートス! トリガーを背負ってお前だけでも逃げるんだ!」

 

「なっ!? そんな命令は受理できませんよ!」

 

「このままだと全滅だ! なら、せめて⋯⋯せめて⋯⋯トリガーとお前だけでも生きてくれ! 行けぇ!!」

 

「くっ⋯⋯」

 

 そうするしかないのか。他に全員で助かる方法は無いのか。コキュートスが必死に考えていると、突然自分たちの背後から弾丸の雨が降りかかる。

 

「ギュア!」

 

「グルアア!?」

 

 防衛線を突破しようとしていた、小型エーテリアスが粒子となって消える。

 

「なんだ⋯⋯」

 

 カロンが振り返ると、そこにいたのはトリガーの幼馴染であり、自分たちライアー小隊にとっても大切な者だった。

 

「ア⋯アベル!」

 

「カロンさん! 助けに来ました!」

 

 治安官と軍人が助けに来てくれた。特にカロンは知り合いであるアベルを見て、自分たちは見捨てられなかったということ。そして、大切な者が生きていることも知れたので涙を流しそうになる。だが、なんとか目に力を入れて堪える。

 

「トリガーが負傷したんだ! 命に別状はないが、早くしないと失明する!」

 

「トリガーが!?」

 

 下を見ると、コキュートスさんに守られているトリガーがいた。目の部分に包帯を巻いている。

 

 トリガーが負傷するだなんて⋯⋯いや、落ち着くんだ。命は無事なんだ。それなら、僕の役目は彼女を守ることだろう。

 

「ヴァルチャーとシュヴァルツさんはここから援護! ジムさんはロープを降ろして! アベルくんは僕と一緒に下に降り、エーテリアスを掃討する!」

 

「「「「了解!」」」」

 

 ハヤブサの指示に従って、動き始める。

 

「近づくエーテリアスには容赦しない」

 

 ヴァルチャーは狙撃銃を構え、近づく中型のコアを百発百中で撃ち抜く。ボルトアクションの動作も恐ろしく早く、セミオートと勘違いするほどの手さばきだ。

 

「同期の敵討ちと、仲間の弔い合戦だ!」

 

 シュヴァルツもMMP34を連射し、迫りくる小型エーテリアスを排除してゆく。その間にジムは素早く、ロープを固定して下ろす。

 

「よおし! 降りれるぞ!」

 

「行くよ、アベルくん!」

 

「はい!」

 

 ロープを使って二人は倒れたビルから降りる。そして、ライアー小隊を庇うように前に立つ。

 

「アベルくん! 来てくれたの」

 

 アケロンの視界にはアベルの背中が映る。トリガーと同じく、ここにいる者たちの中では最も若い年齢のはずだ。それなのに、今の彼の背中はとても大きく見える。

 

「アケロンさん。地下鉄に負傷者を運ぶ際、貴方に命を助けてもらいました。今度は、僕が貴方を⋯⋯いえ、ライアー小隊を助けます!」

 

「⋯⋯ありがとう」

 

 アケロンは思わず涙を流してしまう。

 

「休んでいてください。あとは僕らが担います」

 

 アベルとハヤブサは迫りくるエーテリアスたちの中へと突っ込む。炎を纏わせた軍用剣で、小型エーテリアスたちを斬り、蹴散らしてゆく。

 

「グアアア!」

 

 ハティがアベルに飛びかかる。

 

 エーテリアスの攻撃は⋯⋯受け流す!

 

 アベルは攻撃を受け流しながら、もう片方の手に持っていた拳銃のフルオートを浴びせる。45口径を連続でくらったハティは力無く地面に倒れた。

 

「リロード!」

 

「了解! ちゃんと、アドバイスを飲み込めてるね」

 

「ええ、元々飲み込みは早い方でして!」

 

 二人が戦っている間、ライアー小隊は何とかしてトリガーを上へと運ぼうとしていた。コキュートスが背負い、落ちないようにロープで縛り付ける。そして、ゆっくりと着実に登ってゆく。それを、ヴァルチャーとシュヴァルツ、ジムは援護する。

 

「はぁぁ!!」

 

 仲間を狙っていたタナトスの腕を切断し、回転斬りでコアを斬って仕留める。

 

「甘い!」

 

 ハヤブサも盾で防御しようとするデュラハンに対し、蹴りを入れて体のバランスを崩させる。そして、ふらついたところにアサルトライフルを撃ち込む。

 

「アベルくん! ホロウから出たら軍に来ないかい!」

 

「僕は治安官が性に合ってますよ!」

 

「もったいない⋯ねっ!」

 

 次から次へと襲い来るエーテリアスたちを斬り伏せ、撃ち抜きながら、アベルとハヤブサはライアー小隊を守り切る。地獄のような戦場の中でも、仲間を信じる心が揺るいでいないのだ。

 

 二人は背中を合わせる。

 

「君に出会えて⋯⋯助けられて良かったよ。僕はこの地獄で諦めかけていた⋯⋯でも、そんな中でもまだ希望を持とうとする君に僕とヴァルチャーは心打たれた」

 

「僕もですよ。ハヤブサさんのおかげで、僕らはここまで来れました。ライアー小隊を⋯⋯大切な人を助けられたんです」

 

 二人は燃える戦場で微笑む。

 

「まだ行けるね?」

 

「もちろんです」

 

「お前ら! 奥から来るぞ!」

 

 シュヴァルツが叫ぶと、奥からエーテリアスの軍団がやって来る。銃器対策部隊のアーマーやヘルメット、治安官の装備を身に着けたエーテリアスたちだ。かつての仲間が、敵となってやって来たのだ。

 

 銃器対策部隊⋯⋯やっぱり、壊滅していたのか。僕の同期もあそこにいるんだろう。

 

「アベルくん⋯⋯」

 

「大丈夫です⋯⋯同じ治安官として僕が楽にさせます」

 

 彼らも元は誰かを守る為に治安官になった。それが、今ではエーテリアスとなり、無差別に襲いかかる化物になってしまった。ならば、彼らの誇りを⋯⋯彼らの遺志を守る為にもここで討たなければならない。

 

「最後まで付き合うよ」

 

「ありがとうございます」

 

 二人は剣を構え、エーテリアスの軍団に突撃する。

 

「「うおおおおおお!!」」

 

 重く素早い攻撃で元治安官のエーテリアスたちを倒してゆく。できる限り、苦しませないように一撃で屠る。かつての仲間たちへの弔いの刃だ。

 

 エーテリアスとなった者はもう戻れない。

 

 昨日まで人として生き、治安官の誇りを持った仲間たち。

 

 危険な任務に従事し、多くの市民を助け、少しでもゼロ号ホロウ拡大を抑えた、大切な仲間たち。

 

「ありがとう⋯⋯ありがとう⋯⋯みんな」

 

 この言葉きっと届かない。わかっていても、言わずにはいられなかった。

 

「よし、次はあんたらだ! 早く登れ!」

 

 アベルがジムの方を見ると、コキュートスとトリガーは何とか登り終えていた。

 

「よし、急いで登るぞ!」

 

 カロンの号令を合図にアケロン、レテ、ステュクスの順に登り始める。そして、部下が登り終えたことをことを確認してから、カロンも登り始める。

 

「っ!? ハヤブサ、何かが来る!」

 

 奥の方から、濃密な殺気を感じた。

 

 ヴァルチャーの視線の先にいたのは、青い体を持ち、右手には大斧らしき物を、左手には銃らしき物を持った人型のエーテリアスだった。胸部には「POLICE」と書かれたアーマーで守られたコアがある。

 

 あのエーテリアスも元治安局の仲間だ。恐らく、銃器対策部隊の隊長だろう。

 

「気をつけて! 恐らく要警戒級の侵食体よ!」

 

「二人とも! 早く登ってくるんだ!」

 

 カロンがそう叫ぶが、アベルとハヤブサは理解していた。あれを倒さねば自分たちは避難できないことを。そして、奴がこの軍団のリーダーであることを。

 

「ハヤブサさん」

 

「ああ、最後まで抜かりなくね」

 

 二人は剣を構える。

 

「さあ⋯来い!」

 

 アベルの声が炎に包まれたエリー都に響き渡った。

 

 

 

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