旧都陥落の日   作:IamQRcode

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ライアー小隊救助へ③

 

 アベルとハヤブサ、二人は剣を構える。静かに、確実に気迫が高まってゆく。

 

 要警戒型エーテリアス2m程の大きさではあるが、一歩一歩が地面を揺るがしている。そして、エーテリアスとは思えない程の圧力を放っている。

 

「グオオオ!!」

 

 要警戒型エーテリアスは雄叫びを上げたかと思えば、大斧を引きずりながら、こちらへと突っ込んでくる。

 

「避けろ!」

 

 カロンの声を聞いたアベルとハヤブサが避けた瞬間、二人のいた所に大斧が振り下ろされ、地面にヒビが入る。さらにヒビからエーテルの光が溢れ、爆発が起きた。

 

 なんて馬鹿力だ。あれをくらえば、たとえ剣で受け止めたとしても、腕が痛むとかそんなんじゃすまない。

 

「直撃は絶対に避けよう。あの一撃をくらえば、致命傷じゃすまないよ」

 

「はい」

 

 要警戒型は再び、二人のいる方へと走り出し、大斧を振るう。

 

「っ!」

 

 アベルは横に避け、大斧を振るいバランスを崩した要警戒型の横腹に潜り込む。

 

 そして、軍用剣に炎を纏わせて斬る。だが、ただでさえ分厚いアーマーがエーテル結晶で強化されているため、刃が深くまで通らない。

 

「はあっ!」

 

 ハヤブサも背中を斬るが、アーマーに傷を付けただけであり本体へのダメージはない。

 

「グルアア!」

 

 要警戒型は邪魔だと言わんばかりに、大斧を地面に突き刺す。突き刺した瞬間、エーテル爆発が起き、アベルとハヤブサは吹き飛ばされる。

 

「ぐぅっ!」

 

「ごはぁ!」

 

 アベルは瓦礫に、ハヤブサは廃車に叩きつけられる。

 

「アベル!」

 

「ハヤブサ!」

 

「撃て! 二人を援護するんだ!」

 

 シュヴァルツとヴァルチャー、ジムとライアー小隊の面々は二人を援護する為に要警戒型に弾丸を浴びせる。だが、効いている様子はない。要警戒型は逆に左手の銃を構え、上にいる面々に向かって撃つ。

 

「くそっ! なんて硬さだ!」

 

 カロンらは瓦礫に隠れながら、悪態を吐く。

 

「⋯⋯おい、そこの狙撃手。その銃でも奴の装甲は撃ち抜けないか?」

 

「⋯⋯あの状態じゃ無理ね。せめて、アーマーにヒビを入れるくらいしないと⋯それでも、厳しいと思うけど」

 

「⋯ステュクス、ロケットランチャーは?」

 

「一発だけだがある⋯だが、動きが早すぎる。それに、タイミングを考えねえと二人を巻き込む」

 

「アベル! 立てるか!?」

 

「ええ⋯⋯ケホッ⋯なんとか」

 

 吹き飛ばされたアベルとハヤブサは咳き込みながら、立ち上がる。身体中に痛みが走るが、倒れている暇はない。要警戒型も二人の方へと体を向ける。

 

「アーマーを壊すことに専念しよう」

 

「はい。ですが、どうやって」

 

「同じ場所を攻撃し続けるんだ。いくら、アーマーといえど耐えられる攻撃には限度がある」

 

「了解です」

 

 二人は再び剣に炎を纏わせる。

 

「グゥオォォオ!!」

 

 要警戒型は雄叫びと共に再び大斧を振るうが、今度は二人とも一歩早く動いていた。アベルがその軌道を読んで跳躍し、ハヤブサが地を這うように滑り込む。

 

「ハァッ!」

 

 アベルの剣がアーマーを削り取り、更に炎がアーマーの表面を焼く。直後に、ハヤブサがそこへ追撃を加えた。

 

「割れろ!」

 

 ハヤブサの一撃が入る。アーマーは削れ、エーテル結晶は砕けたものの、まだダメージが入る程ではない。

 

「二人とも離れろ!」

 

 ステュクスはロケットランチャーを構える。

 

「最後の一発だ! よく味わえよ!」

 

 放たれたロケット弾は要警戒型に当たり、爆発を引き起こす。

 

 爆煙が上がり、辺りが土煙に包まれる。

 

 全員が緊張した面持ちで要警戒型がいた場所を見つめていた。アベルとハヤブサも息を整えながら剣を構え、いつでも動けるように構える。

 

 煙の中から重々しい足音が響く。

 

「まだ、生きてるのか⋯⋯」

 

 ヴァルチャーが呟いたその時、煙を裂いて姿を現した要警戒型は、アーマーの一部が焦げ落ち、胸部に大きな亀裂が走っていた。そこからわずかにエーテルの光が漏れ出している。

 

「効いてる⋯確実にダメージが入ってる!」

 

 シュヴァルツがそう言うと、全員の目が変わる。奴を倒すには今しかない。

 

「アベルくん!」

 

「はい、畳み掛けます!」

 

 二人が再び要警戒型と戦い始めた時、上から援護していたライアー小隊も何かできないかを考えていた。無闇に撃てば、二人に当たってしまう。

 

「⋯⋯ア⋯ベル⋯⋯」

 

 トリガーは目を負傷し、ほぼ何も見えない状態ではあるが戦いの音と、大切な人の気配で起き上がる。

 

「トリガー?」

 

「カロン⋯⋯隊長⋯これを⋯使って⋯⋯ください」

 

 そう言って、トリガーが渡したのは軍が新開発したエーテル爆裂徹甲弾だった。目標の装甲を貫通し、内部で小さなエーテル爆発を起こす。

 

「これなら⋯⋯ありがとう、トリガー。狙撃手!」

 

「なんだい?」

 

「これを使え!」

 

 カロンから弾を受け取ったヴァルチャーは、一瞬だけ微笑みを浮かべる。

 

「ハヤブサ、アベル、そいつの動きを止めて!」

 

「了解!」

 

 アベルとハヤブサは互いに頷き合い、再び剣を構える。焦げたアーマーの亀裂を見据え、そこを狙って動き始めた。

 

「来るぞ⋯⋯!」

 

 要警戒型が大斧を振りかぶる。二人は斧の動きを見切って左右に分かれ、接近する。

 

「今だッ!」

 

 アベルの炎剣が裂け目に飛び込み、エーテルの火花を散らす。すかさずハヤブサが反対側から切り込み、勢いを加える形で要警戒型をよろめかせる。

 

「今しかないっ!」

 

 ヴァルチャーがスコープを覗き、呼吸を静かに整える。風の流れ、敵の動き、味方の位置――すべてを把握する一瞬。

 

「⋯⋯届け」

 

 引き金が引かれ、エーテル爆裂徹甲弾が唸りを上げて放たれる。

 

 弾は一直線に飛翔し、アベルたちが空けた胸部の亀裂に、正確に突き刺さった。

 

「グ、グオオオ!!!」

 

 次の瞬間、激しい閃光と爆音が戦場を包んだ。

 

「ッッ!!」

 

 全員が思わず目を覆うほどの閃光が走る。直後、地響きのような衝撃と共に、要警戒型の巨体が崩れ落ちた。

 

 ⋯⋯静寂が訪れる。

 

 しばしの沈黙の後、土煙の中から、崩れた装甲と砕けたエーテル結晶が転がり出た。

 

「倒した⋯⋯のか?」

 

 アベルが剣をゆっくり下ろしながら、警戒を解かぬように足を進める。

 

 やがて、要警戒型の胸部の中心――かすかに明滅していたエーテリアスのコアの光が完全に消え、粒子となって消えさった。

 

「⋯⋯やった。撃破、確認」

 

 カロンが呟くと、皆が一斉に声を上げる。

 

「よっしゃあ!!」

 

 シュヴァルツが拳を突き上げ、ジムとコキュートス、アケロン、ステュクスたちが歓声を上げる。レテとカロン、ヴァルチャーは安心したように深いため息をついた。

 

 そして、アベルとハヤブサは互いの顔を見て、小さく頷き合った。

 

「⋯っとと」

 

 アベルはふらつき、思わず地面に座ってしまう。

 

「アベルくん、よく頑張ったね」

 

「ハヤブサさんのおかげです」

 

「いや⋯みんなのおかげさ」

 

 一人でも欠けていたら、勝てなかった。ネメシス、ライアー、治安官、全員が集まり勝てた戦いなのだ。そして、誰も欠けなかった。

 

「おーい、お前ら早く登ってこい」

 

 シュヴァルツがそう言う。

 

 そうだ。ここも、ずっと安全とは限らない。いち早く離れて、トラックに戻らなければいけない。トリガーの目の治療もある。

 

 ハヤブサが手を貸し、アベルは立ち上がる。

 

「行こう」

 

「はい」

 

 ライアー小隊の救助は成功した。なら、軍人の彼らを安全にホロウの外へと運ぶのが僕らの次の役割だ。

 

 一時の勝利の余韻を味わったアベルたちは、トラックへと向かった。

 

 

 

 

 

  

 

 

 

ーーーーーー

 

 要警戒型エーテリアス ガーディアン

 大斧を逆手に持ち、連射できる銃を持ったエーテリアスである。黒色と紺碧色という他のエーテリアスには見られない体を持つ。高い攻撃性と頑丈な装甲が強みである。ゼロ号ホロウにしかおらず、一部異常個体は他のエーテリアスを攻撃するという特徴的なエーテリアスである。治安官の装備を身に着け、最も多い出現地が旧治安局周辺であることから、治安官がエーテリアス化したものと思われる。

 異常個体には旧都陥落事件、市民と街を守るという遺志がまだ残っているのだろうか。それとも、全てを奪われた復讐心故か。

 

 

 

 

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