旧都陥落の日   作:IamQRcode

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要救助者

 

 アベルとシュヴァルツは中央付近の大型のマンションに来ていた。ここから、救助信号の反応があったからだ。幸いにも火は鎮火されており、救助を拒む炎と煙はない。

 

「部屋数が多いですね」

 

 ひとつひとつ確認していては、間に合わない。何か一目でわかる印のようなものはないか。

 

 アベルは横断幕か何かが窓から出ていないかを確認する。

 

「おい、あの部屋」

 

 先輩がある部屋を指す。

 

 その部屋は、規則的に電気がついたり消えたりを繰り返していた。もし、漏電や停電であればあそこまで規則的にならないだろう。それに、あの部屋だけである。ということは、あそこの部屋の住人がモールス信号のように光を点けて、救助を求めているのかもしれない。

 

「六階の右から二番目の部屋です」

 

「よし、行くぞ」

 

 二人は部屋の位置を確認してから、マンションのエントランスに入る。エントランスには、二人の消防隊員の死体が放置されていた。

 

「⋯進むぞ」 

 

「エレベーターは⋯⋯壊れてますね」

 

「歩きだな」

 

 エレベーターはホロウの影響で壊れていた。

 

 そのため、階段を登り六階へと進む。階段にはマンションの住人らしき死体が少なからず転がっていた。エーテル結晶が生えており、いつエーテリアス化してもおかしくない。

 

 救えなかったか⋯⋯できれば、元人間のエーテリアスはもう殺したくない。はやく、要救助者を助けてホロウから出よう。

 

「急ぐぞ」

 

「はい」

 

 慎重に素早く、六階へと登る。

 

 扉を開けて廊下へと出る。幸いにもエーテリアスはいない。

 

「⋯よし、行くぞ」

 

 部屋は右から二番目、つまり廊下の奥の方の部屋である。

 

「ギュアア!!」

 

 二人が拳銃を構えながら警戒して進んでいると、真横の部屋からエーテリアスのティルヴィングが飛び出してきた。変異した腕の剣でアベルを刺そうとする。

 

「なっ!?」

 

 アベルは一瞬だけ戸惑ったものの、すぐに反撃を繰り出す。近接戦闘術「CQC」でエーテリアスの攻撃を防ぎ、逆に腕を掴み、足を引っ掛け地面に叩きつける。そして、全身を使ってエーテリアスの動きを抑え込む。

 

 シュヴァルツがトドメを刺そうとした時、反対の部屋からもエーテリアスが飛び出してきた。

 

「ちぃ!」

 

 シュヴァルツは背負い投げで壁にエーテリアスを叩きつけ、地面に倒れたところをナイフでコアを突き刺す。

 

「先輩!」

 

「おう!」

 

 シュヴァルツはアベルが抑え込んでいたエーテリアスのコアにナイフを突き刺す。エーテリアスはしばらく苦しんだ後に絶命した。

 

「よし⋯⋯大丈夫か?」

 

「ええ⋯⋯いきなり飛び出してくるなんて。まるで、ゾンビですね」

 

 できる限り最小限の戦闘で済ませた。

 

 起き上がって再び前へと進む。

 

 部屋の前に到着した。ここからは、光の点滅は確認できないが位置は合っている。扉を軽く三回ノックする。

 

「⋯⋯誰ですか?」

 

 若い男の声が聞こえた。

 

 良かった。生存者がいたんだ。

 

「治安官です。救助に来ました」

 

「ほ、本当ですか? てっきり、治安局は壊滅したと思っていたのですが」

 

「安心してください。必ず安全圏に送ります」

 

 ガチャっと扉の鍵が開く音がする。扉を開けると、中には女性が一人と成人男性が一人と高校生くらいの男の子が一人、ペットの犬が一匹いた。恐らく奥さんと兄弟だろう。

 

「三人だけか?」

 

「はい。夫は軍人でして、軍の救助を待っていたのですが」

 

「そうですか」

 

 この家族の救助信号が見つかって良かった。もし、あの時に見つけられなかったら、この人たちは今も来るはずのない軍を待つことになっていた。

 

「着いてきてください」 

 

 女性はペットを抱きしめ、兄弟は手を繋ぎながら不安そうな表情を浮かべてアベルたちの後ろを歩く。廊下の真ん中程まで到着した時、下から階段を登る音が響く。

 

「下がっていてください」

 

 三人を更に後ろに下げて、階段を警戒する。

 

 しばらく待っていると、階段からエーテリアスたちがやって来る。そのエーテリアスは道中で見かけた消防隊員の死体の装備や、市民の服の一部を着ていた。

 

 二人は拳銃の引金を引き弾丸を浴びせ、近付いてきたエーテリアスはアベルが軍用剣で斬る。幾度の戦場を乗り越えた二人にとって、小型エーテリアスとの戦闘は苦にもならない。

 

「よし、排除完了だな」

 

「行きましょう」

 

 階段を下りエントランスに着く。予想通り、先程まであった消防隊員の死体が無くなっていた。さっきの、エーテリアスは彼らだったのだろう。

 

「酷い⋯」

 

 エントランスから見える外を見て、女性は口に手を当てて嘆く。

 

「さあ、行きましょう」

 

 エントランスを出た瞬間、急に影ができて暗くなった。

 

「⋯⋯嘘だろ」

 

 上を見上げると、そこには地下鉄で見かけ、ライアー小隊救助の際にも見かけた大型のエーテリアスと無数の小型エーテリアスがいた。

 

 エーテリアスには目も無ければ、顔もない。それなのに、アベルたちはその大型エーテリアスに真っ直ぐ見つめられている気がした。

 

 

 

 

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