魔法少女リリカルなのはEXCEEDS MASHINE COUNTRY―機械国家―   作:ヒアデス

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EXCEEDS連載記念として、ちょっと早いですが0話を投稿しました。
もう少し後に次話も投稿するかもしれませんが、それ以降はかなり先になると思います。
また、今回はEXCEEDS原作のツッコミとして書いた話なので、管理局とある組織についてはかなり厳しめの意見が出てきます。あらかじめご了承ください。


第0話 “国連調査機関”

 新暦69年。

 『時空管理局・本局』と名付けられた、次元空間に浮かぶ巨大な建造物。

 その内部に設けられた会議室に鎮座する円卓に数人の男女が腰を下ろし、硬い顔を向けあっていた。

 厳かな部屋の雰囲気に反して、座っている者のほとんどは若く、溢れんばかりの覇気をみなぎらせている。

 その中で他の面々より二回り年長の、眼鏡をかけた生真面目そうな女将校が硬い声を発した。

 

「ここ本局より800ベクサ先にある『第67管理外世界』。その世界に点在する国の一つで、“機械先進国”として知られている『ダルナザ共和国』で大規模な事故もしくは事件が発生しています。同世界もしくは同国をご存じの方は?」

 

 その問いに、彼女の傍に座る黒スーツを身に包んだ黒髪の青年士官のみが首を縦に振る。議長役の将校は彼と黙り込んだままの面々を眺め回し、手元にモニターを浮かべた。同時に他の面々の前にも同じ画面を映したモニターが現れる。

 

「では説明させていただきます。『第67管理外世界』は他の世界や次元空間に進出できるほど高度な文明を持つ世界です。特に《機械信奉国家》と呼ばれている『ダルナザ』の機械技術や人工知能(AI)技術は、ミッドチルダを含む『管理世界』にも引けを取らないと言われています。()()()()()()()()()()()()()()ロボットがいるほど……」

 

「人間のように生活するロボット……」

 

 クロノに似た黒スーツを着た長い金髪の少女が思わず驚愕の声を漏らす。人間並みの思考能力や自活能力を持つロボットなど、ミッドチルダでさえ未だ開発されていない。引けを取らないどころか“超えている”と言っても過言ではないだろう。

 

「しかし多数の国や軍隊がひしめいている管理外世界の例にもれず、第67管理外世界も戦争や争いが絶えない世界で、ダルナザも15年前まで内戦状態が続いていました。戦争終結後、各国が設立した『国家連立同盟』――略称“国連”により平定され、多くの国は平和になりつつありますが……」

 

「ダルナザの内戦が再び勃発してしまった、ということでしょうか?」

 

 短い茶髪の少女が発した推測に、将校はかすかに首を横に振る。そうではない……とは言い切れないと暗に含ませながらも……。

 

「いえ、事故や事件を起こしているのは内戦で使用、あるいは従軍していた“軍用ロボット”たちです。ロボットたちは何の前触れもなく無差別に各地を襲撃し、物的人的ともに甚大な被害を出しています。そのうえ、ダルナザ上層部も秘密裏に国際条約に反した兵器や機械兵を製造しているという噂も……」

 

 将校は両手を組み、重い溜息をつく。それで皆も今回の議題の趣旨を理解した。

 しかし……

 

「胸の痛む話だと思います……ですが、その話をなぜここ(管理局)で? 管理世界ならいざ知らず、管理外世界で戦争や事故が起きようと時空管理局が干渉することは固く禁じられているはずです」

 

 それが許されていれば『地球』や『オルセア』の戦争もとっくに終結している。

 心中でそう呟きながら金髪の少女は問いかける。その問いに将校の隣に浮かぶモニターに映る金髪の女騎士が答えた。

 

『数ヶ月前、私の元に新たな“預言”が現れました。

『法の船の管理から外れし67の世界。『鋼を奉じる国』にて“魔”を探す“鉄の兵”による乱の末に“大いなる魔”が目を覚ます。

 その果てに国と67の世界は滅び、“大いなる魔”は海と67以外の星々にも手を広げていくであろう』……と。

 私以上にベルカ語に詳しい御神(みかみ)捜査官の解読でも、同様の結果が出ています……そうですね?』

 

 女騎士の問いに、“御神捜査官”と呼ばれた黒髪オッドアイの少年は硬い顔と頷きで応じる。

 第67管理外世界は文明レベルなら他の世界や次元に進出できるだけのレベルを持ち、機械技術に関しては管理世界以上といってもいい。そんな世界や国を脅かすロボットやそれらを滅ぼしうる“大いなる魔”とやらが他次元に進出してきたら、下手な次元犯罪を超える惨事が起こりかねない。

 

「故に上層部は第67管理外世界、特にダルナザ共和国で起きている事件を見過ごすわけにはいかないと判断し、現地の調査を決定しました……しかし」

 

「先ほどテスタロッサ執務官が指摘した通り、管理局は管理外世界への干渉や関与を禁じられている。違法魔導師が流れ込んでいたり《ロストロギア》が埋没している可能性がない限りな……」

 

 将校に続き黒スーツの士官も重い声でそう告げる。

 そう。次元や他世界に害をなす危険があろうと、管理局が管理外世界に干渉することはできない。《闇の書》や《ジュエルシード》など第一級ロストロギアが多数確認されたため、一般企業に偽装した『支局』を建てて監視していた地球は例外中の例外だ。

 しかし、地球と違い第67管理外世界はすでに他次元に渡る技術を持ち、時空管理局の存在を知っている者もいるという。そんな世界に支局を建てたらそれこそ干渉と捉えられ、最悪その世界やダルナザという国を敵に回しかねない。

 

「それを踏まえた結果、我々管理局は現地世界を調査する『外部組織』を援助し、その組織と協力してダルナザ共和国の調査とロボット暴走事件の解決を計ることにしました――なにか質問は?」

 

「……その『外部組織』、()()()()()()()()()()()()()()()わけじゃないですよね?」

 

「…………」

「…………」

 

 黒髪オッドアイの少年の問いに将校と黒スーツの士官は沈黙し、たまらずという風に視線をそらす。

 それを見て――。

 

 

 ――やっぱりそういう話か!

 

 つまり、俺たちに『管理外世界に踏み込むための組織』を作らせようということだ。

 

「仕方がないでしょう。再び次元レベルの危機を示唆する“預言”が出た以上、管理外世界だからと放置するわけにはいきません。二年前の『エグザミア事件』も、管理外世界で起きている事だからと放置していたらどうなっていたことか。……あなたと仲良くしている“法務相談役”にもお伺いを立てたと聞いたけど」

 

 レティ管理官の台詞を聞き、レオーネさんが顔を渋くしている場面が頭に浮かぶ。

 管理局とは無縁の『外部組織』を管理局の人間に作らせる――法的に黒に近いどころか“半分以上黒に染まっているグレー”だ。

 

「“国連”の要人にはすでに話を通してある。その組織には『国連直轄の調査機関』というお墨付きをもらって活動してもらう予定だ」

 

「では、堂々と時空管理局として“国連”と一緒に解決にあたった方が早いのではないでしょうか?」

 

 フェイトの意見に、クロノは渋い顔で「そうはいかない」と首を横に振る。

 

「“国連”の幹部はともかく、現地世界の住民に知られたら『事件の調査を理由に自分たちの世界に乗り込もうとしている組織がある』と警戒されかねない。それを考えると、まだ安易に『時空管理局』の名を出したくはない」

 

「それもそうだな。……ちなみにその“国連”ですが、ダルナザや他の国が『拒否権』を使った瞬間まったく動けなくなる……なんてことありませんよね?」

 

 俺が訊ねた途端、隣に座るはやてもクロノの傍に座っているフェイトも冷や汗を浮かべる。

 俺たちがよく知る“国連”は、戦争や紛争を止めるための解決案を出しても、常任理事国のうちどこか一国が『拒否権』を出した途端、議決が却下され組織として動きが取れなくなるという問題を抱えている。

 常任理事国を務めるある大国が隣の国に侵略した時、理事会が開かれ即時撤退を命じる決議が採択されかけたが、()()()()拒否権を出したためお流れになった――なんて阿呆らしいやり取りが繰り広げられていたのだ。

 

 それと同じ弱点を“あちらの国連”も持っていた場合、てんであてにならなくなる。どころか大きな障害になりかねない。

 

「事件の規模が他国または世界規模まで広がったら、ダルナザが反対しようと“国連”本体が動くことも可能だ。ただし、内政不干渉の原則もあるため、今の段階ではダルナザが認めた調査機関しか送ることができない」

 

 クロノの話に「そうですか」と返す。

 他国が巻き込まれそうな事態になったら動けるだけマシか。しかし、逆に事件がダルナザに収まっている限り、“国連”とやらは一切手が出せないということだ。

 

「わかりました、回答ありがとうございます。――では『外部組織』もとい『調査機関』について教えてください。すでに概略と組織図はできてるんですよね?」

 

 その問いにレティさんは首を縦に振り、手前のモニターを人差し指で押す。すると俺たちの前に浮かんでいるモニターの画面も変わり、『調査機関』の概略と組織図が表示された。

 これが……。

 

国連調査機関『EXCEEDS(エクシーズ)……この中から選出した“総督”と優れた事務能力を持つスタッフ数名、そして高い()()能力を持つ調査員たちで構成する組織よ。彼らならダルナザと第67管理外世界、そして他の世界を脅かす危機を解決してくれると信じています」

 

「…………」

 

 レティさんの説明を聞き流しつつ、俺も他の面々も『EXCEEDS』とやらの組織図に目を通す。そして……

 

「ロウラン管理官、機関の“総督”はどなたが務めるんでしょうか? この中だと妥当なのは……」

 

 フェイトは訊ねつつ、レティさんとクロノに視線を回す。だが……。

 

「私は無理よ。管理局の代表として知られているし、運用部と人事部の取り纏めをしている身だもの。調査機関まで見ている余裕はないわ。この会議だって予定を切り詰めて参加してるんだから」

 

 レティさんはそう言って分刻みのスケジュールで詰まった画面(ディスプレイ)を浮かべ、フェイトや俺たちに見せてくる。さらに……。

 

「残念だが僕も無理だ。第80管理外方面に流れたロストロギアとそれを狙う違法組織を追うために、隊を率いて出動している最中だ。この会議だって直に参加したかったんだが――」

 

 そう言うと同時にクロノの体がふっと透ける。彼は幽霊だった――なんてわけもなく、今乗っている艦(アースラ)からホログラムを飛ばして会議に参加しているに過ぎない。

 俺とフェイト、はやてはモニターの向こうに映るカリムさんに目を向けるが、やはり彼女も申し訳なさそうに首を横に振るのみだった。

 

『ごめんなさい。私も教会騎士としてのお役目があって、『ベルカ自治区』から離れることができないんです。それに『聖王教会』の幹部でもある私が調査機関の長を務めたら、現地世界や国からあらぬ嫌疑をかけられてしまうかもしれません』

 

「そうですね……」

 

 教会の『正騎士』でもあるはやては肯定しながら頷く。

 って、いやいや、この三人が無理ってなると――。

 

 俺は残りの二人を見る。俺の他には同い年で中学校に通っているはやて、同じく同い年で中学生のフェイトしかいない。この二人も似たような目で俺ともう片方に目を向けていた。

 まさか本当に中学生になったばかりの――12.3歳の子供に調査機関を任せようって気か?

 

「一つ問題があります。第67管理外世界は就労年齢が高めで、組織や団体のトップもそれなりの年齢の者が就く傾向が多く、十代初めの者が交渉の場に立っても侮られる可能性が高いでしょう」

 

「そうね。この子たちの誰かにEXCEEDSの総督を任せる場合、変身魔法で大人の振りをしてもらった方が円滑に交渉を進められるでしょうね」

 

 報告するクロノと相槌を打つレティさんに、俺は『おいおい』と突っ込みを入れかけながら――

 

「あの、管理官……念のため聞きますが、本当に他にいないんですか? 調査機関のトップを務められそうなのは――」

 

 懇願を込めて問いかけるも、レティさんもクロノも無情に首を横に振る。

 

「私もギリギリまで探したんだけど……いないのよ。あなたたちのような癖がありすぎ――もとい高ランク魔導師の集団の指揮が執れて、管理外世界との折衝も任せられそうな人間が。できそうな人はみんな他の任務に行っちゃってるし……」

 

 本当に人材が不足してるな管理局って。“海”でも俺たちしか集められなかったなんて。これで『地上部隊』よりはマシなのか……。

 そこへさらにクロノが言った。

 

「選択肢を狭めるようですまないが、フェイトには調査機関の監査役を頼みたい。彼女なら君たちとも見知った間柄だし、魔導師としても優秀だ。それにこの機会に監査業務の経験も積ませたいと思っている」

 

「それはいいんだけど……身内が監査役っていいのか?」

 

 俺の問いにクロノは渋い顔で「禁止されてはいない」と返す。確かに登用するだけなら身内や知り合いでもいいらしいし、地球でも似たケースはあるらしいけど……。

 

「――そういうわけで、八神(やがみ)はやて特別捜査官、御神健斗(みかみけんと)特別捜査官、あなたたちのどちらかに国連調査機関『EXCEEDS』の総督を任せたいの。どちらか、引き受けてもらえないかしら?」

 

 そう言ってレティさんとクロノ、フェイトは俺たち――いや俺に視線を注ぐ。

 俺かはやてのどちらかから選ぶとしたら……俺の方がいいだろうな。

 

 

 ミッドチルダは就労年齢が早く、教育カリキュラムもそれまでに社会に出られるよう組まれている。そのためクロノやフェイトのように十代前半から執務官なんかやってる奴もいるし、中にはユーノのように10にならないうちに学校を出て、現場を仕切っている優秀な奴もいる。

 しかし、俺やはやて、フェイトもそういった教育(カリキュラム)を受けておらず、精神面に甘さが残る。

 そんな俺たちが調査機関の指揮を執り、なおかつ大人のふりをして“国連”やダルナザ政府の人間と相対した場合、ボロを出す危険が大きい。特に肉体的にも精神的にも子供(13歳)のフェイトとはやてじゃ。

 

 すでに多忙なレティさんは無理としても、クロノかカリムさんに指揮官をやってほしい。それが無理なら少し設立を延ばしてでも他から候補を探したいが……それも難しいとなったら前世の経験を持つ俺がやるしかないだろうな。

 だが……

 

「先ほどから言おうと思ったことがあるんですが、いいですか?」

 

「……何かしら」

 

 訊き返すレティさんに、俺は呼吸を整えてから告げた。

 

「調査機関のトップの役職名ですが……“総督”って名前は変えた方がいいんじゃないですか。向こうにいらぬ刺激を与えかねません」

 

 そう言うと一同はきょとんとする。管理世界で生まれ育った彼女たちと“総督”という言葉と縁がなかったはやてにとって予期せぬ言葉だったらしい。

 

「“総督”は大抵の場合、国外の領土や占領地の統治者を意味する言葉です。管理局の思惑はどうあれ、そんな役職を名乗ればそれこそ現地からあらぬ疑いを持たれかねません」

 

 もっとも、“あらぬ疑い”ではないかもしれないが。

 第67管理世界はすでに外次元に渡れるだけの文明と技術を持ち、わずかながら管理局との繋がりも持つ世界。管理局にとってこのまま放置するのは危険な場所だ。

 この件を機に“国連”とやらを抱き込み、あちらを管理世界に加えるつもりかもしれない。惑星全体が荒廃し住民のほとんどが宇宙に逃げ出した『エルトリア』と違って“投資”は安く済む上に、ミッドチルダ以上の機械技術という“リターン”も見込めるだろうしな。

 だとしても、最初から向こうの警戒を買うような真似をする必要はない。

 

「“総督”なんて役職で向こうと接触したくはありません。長官や局長など障りのない言葉に変えさせてください。それが調査機関のトップを受ける条件です」

 

「……わかった、検討しておくわ。はやてもそれでいい? 彼がEXCEEDSのトップに就く形で」

 

「ええ。まだ半人前の私より、()()()()()経験を積んだ御神捜査官の方が適任やと思います」

 

 レティさんの問いにはやては含みのある返事と頷きを返し、クロノも交えていくつか言葉を交わす。

 そうして第67管理外世界への派遣と調査機関の結成に関する会議は終わった。

 

 

 その三日後、俺が“首監”として国連調査機関『EXCEEDS』を()()()、EXCEEDSの調査員(スタッフ)たちとともに“機械信奉国家『ダルナザ共和国』”に出向くことになった。

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