魔法少女リリカルなのはEXCEEDS 危険管理外世界調査記録 作:ヒアデス
プロローグ
事件解決から一月後、俺たちはダルナザ共和国から撤収し、同世界の極東に位置する島国『瑞穂』に足を踏み入れていた。
「『国連危険生物駆除機関
“侵略種”こと《侵略性危険生物》が起こす災害に苦しめられている人々の助けになるため、瑞穂の人々を含め誰もが安心して過ごせる世界を築く手助けをするため、我々にできる事を
そこまで告げた直後、眩いフラッシュが浴びせられ反射的に目を細めたところで、横の机に座る三人の警察官が朗らかな笑みを浮かべながら言ってきた。
「ありがとうございます御神首監。お恥ずかしながら我々だけでは手をこまねいている所で、いつ来て下さるかと思っていたところです」
「侵略種の数が多すぎるうえに、軍さえ原種には手も足も出せない状況でして。そのうえ……」
「災害に乗じて一般人に危害を加えている集団にも悩まされてましてな。そちらに関しても、是非お力添えを頂きたいと思っているのですが」
最後の一人が言った途端、『警司局』を代表する三人は笑みはそのままに、獲物の隙を窺うような目を向けてくる。記者たちもまた俺の返事を聞き逃すまいと耳を傾ける。
さっきまでとは一転、しんと重苦しい沈黙が立ち込める中、俺は口の端を吊り上げて――
「もちろん。侵略種災害のみならず、それを利用した犯罪や事件の解決
そう述べると、三人はにんやりと笑みを浮かべる。そこで俺は「ただし」と続け……
「その代わりと言っては何ですが、侵略種の調査と事件の捜査のため、我々からも警司局の方々に協力をお願いしたいと思います」
「協力……と言いますと?」
この流れを想定していなかったらしく、警司局代表の一人が訝しげに聞き返す。俺は頷き――
「――例えば、事件を起こした人間の治療と素性の調査、これに我々も立ち会わせていただきたい。一部の国で侵略種の細胞や“ある薬物”を取り込んで身体能力を高めた人間がいるとの噂が立っており、侵略災害と並行して起きてる事件には“通常の人間には不可能”な力を持った《魔人》と呼ばれる容疑者による犯行が確認されています――もし侵略種の力を利用している人間がいるとすれば、国連にとっても看過できないことです。それを防ぐために瑞穂、特に警司局からご助力頂きたいと思うのですが」
こちらから要求を出した瞬間、三人はばつが悪そうに隣の同僚と視線を交わす。
「た、確かに協力して差し上げたいところですが……」
「侵略種の力を取り込む人間がいるなんて、信じられませんよ」
そう返しながらも、記者たちの手前笑い飛ばしたり拒否することも出来ず、中央に座る警司監は他の二人に目配せし、ゴホンと大げさな咳払いを上げてから言った。
「
その言葉とともに彼は愛想笑いをしながら立ち上がって俺と握手を交わし、他の二人も誤魔化すように甲高い拍手を打ち鳴らした。
「絶対、なにか隠してるよなあいつら。《魔人》の存在もかたくなに否定しやがるし」
「あの後、無用な混乱を招かないよう“侵略種化した人間”――《魔人》のことは口にしないようにきつく言われましたからね。《魔人》のものと思われる事件が起き続けている以上、遅かれ早かれ発表するしかないと思いますが」
ハンドルを握りながら愚痴を飛ばす俺に、助手席からリインも溜息を吐きながら呆れの言葉を漏らす。
「そのくせ、上手いこと誘導して
「記者会見を利用するのもなかなか姑息ですね。断れば何のために瑞穂に来たんだと責められかねませんから。侵略種駆除に専念するため、そうでない犯罪は警察に任せるという言い訳もできたと思いますが……」
今更ながら提案を口にするリインに、俺はすぐ首を横に振る。
「それじゃ俺たちが《魔人》に手出しできなくなる。侵略種の陰に隠れて、
「そうでしたね。申し訳ありません、失言でした」
「いいよ、ただの確認だろう」
そんな言葉を交わしていくうちに“侵略種による災害”と“魔人が起こす事件”が起こるこの国の現状を思い出し、俺たちはしばらく口を閉じ、窓越しに映る景色に目をやる。
窓の外には並走している車の他、俺たちが暮らしている世界と大差ない平和な光景が映っており、さっきまで話していたことが映画かアニメ、あるいは他の世界のことかと思いたくなる。
しかし現実に、この街にも《侵略種》が入り込んでくるかもしれないし、《魔人》が潜んでいる可能性もあるのだ。
そんなことを思っている間に、『Pomegranate』という名がかかった大きな店が見えてきた。店の前には『一般開放日 特別セール中』と書かれた看板も立てかけられている。
「ちょうどいい。帰る前に腹ごしらえしていくか。リインもここでいいだろう?」
「ええ。ちょうど私もお腹が空いてきたところです」
彼女も気分転換したいと思ったのか、明るく笑いながら答える。
俺も笑みを返しながらハンドルを切り、店の傍にある駐車場に車を停めた。
「一般開放日……普段は予約しないと入れないみたいだな」
「ええ。肉料理がメインみたいですね。結構高そうですが」
何気なく寄るには贅沢すぎるんじゃないかと言いたげなリインに、俺は首を振る。
「報奨金も残ってるし大丈夫だ。ここんとこ仕事尽くしだったし、ご褒美にちょっとぐらいいいもの食べてもいいだろう」
なにしろクライアントが“国連”だからな。車一台買っただけじゃビクともしない。美味かったら今度なのはたちも連れてきてやろう。
「あの……そこに来るのは初めてですか?」
……?
不意に声をかけられ、俺とリインは眉を寄せながらそちらを見る。
気付けば視線の先に、長い黒髪の少女が立っていた。黒いセーラー服を着た高校生ぐらいの女の子で、髪の下半分は赤く染まっている。
「ああ、そうだが。君もここに食べに来たのか?」
尋ねながらもしやと思う。見たところ学生みたいだし、興味本位で来たものの高すぎて入れなくなったのかもしれない。住民からの情報も欲しいと思っていたところだし、ここは――
「良かったら君も一緒に来るか? いい機会だしご馳走しよう。その代わり、ちょっとだけこの町の話を聞かせてくれると――」
「いいえ、結構です!」
大きく首を横に振りながら断られ、出かかった言葉を飲み込む。男女一組からとはいえ怪しすぎたか。
そう思う俺をよそに彼女は声を顰めて言った。
「この店はやめた方がいいです。この店の肉、ものすごく
妙な響きで強調する少女にリインは小首をかしげる。一方、俺はしばらく彼女を見返して……。
「そうか。じゃあ“肉以外”は大丈夫か?」
「え、ええ……肉以外は悪い噂は聞きませんけど……」
少女は煮え切らない口調でそう言い、
「とにかく忠告はしました。私はそろそろ帰らないといけませんので!」
それだけ言うと少女は頭を下げ、俺たちに背を向けてその場を後にする。
俺の隣でリインは唖然としながらも、
「えっと……ここはやめておきますか? ああ言われましたし」
訊ねてくる彼女に対し、俺は首を横に振り。
「いや、ここにしよう。“肉以外”なら問題なさそうだし、別の匂いもしてきた。不安なら何も取らず話だけ付き合ってくれ」
そう言って店をくぐると、リインも黙って後に続いてきた。
鋭く尖った視線を背中に受けながら。
見慣れぬスーツを着た二人組を見張りながら、黒髪の少女は懐に手を入れ小さな白い蜘蛛を取り出す。
そして蜘蛛を口元まで近づけ、小さな声で囁いた。
「シオリ、ごめん。野暮用が出来たから帰るの遅れる。それとユズも一緒にいる? 記録用の“蜘蛛”を送ってきてほしいんだけど……うん。ちょっと気になる事があって」
◇
「いらっしゃいませ、ご注文はお決まりですか?」
「コーヒーをブラックで。初めてなのでメニューを見てから決めます」
「私もそれで」
「かしこまりました、どうぞごゆっくり」と告げて店員は厨房に向かう。
メニュー表を広げると、いきなり香ばしく焼けた肉を用いた料理の写真が目に飛び込んできた。
料理の下には漢字と
「言葉や数字まで同じなのか。本当に日本にそっくりだな。未だに異世界とは思えない」
素の口調で呟くリインに、俺もメニューを見ながら相槌を返す。
「ああ、おそらく風土や気候が同じで向こうと似た歴史を辿ったからだろう。国連に加え、『合集国』や『瑛国』なんて国もあるし、一種の“パラレルワールド”ってとこかもしれん」
その歴史も近代から触りだけ飲み込んではいる。
半世紀以上前、あのダルナザも巻き込んだ世界規模の大戦が起こり、瑞穂も参戦し西側の植民地と化していた東大陸に出兵し『合集国』とも開戦したが、国民の窮乏を憂いた“
その拠点の明け渡しと引き換えに、かの国と終戦し対等な形で同盟を結び、東大陸からも兵を引き揚げた。
「そうして瑞穂は“唯一『合集国』と引き分けた国”となり、国連の常任理事国として世界の動向を決める国の一つになるはずだった……“あの災害”が起きなければな」
「30年前に起きた“侵略種”……いえ“原種”の出現ですか」
リインの問いに俺は頷きを送る。
終戦を機に“御上”が代わり、元号も『慶花』に変わって8年経った頃、“それ”は突然この世界の極東に現れた。
《原種0号》と呼ばれる“小さな植物もどき”は、この世界に出現してすぐ数百億以上の種子もしくは卵を
それが孵化し、『侵略性外来生物』――縮めて《侵略種》となって世界中の動植物を喰い荒らしている。人間や人間が住む街も含めてな。
それを思い出し、リインはますます食欲を失くしたように水入りのコップから手を離した。正直俺もメシどころの気分じゃなくなってきたな。適当な肉料理とサラダを頼んで問題がないか確かめてから帰るか――。
「きゃああああっ!」
「騒ぐな! 大人しく金を出せ!!」
つんざくようなウェイトレスの悲鳴とコーヒーを入れたコップが床に落ちて砕ける音、続けて野太い男の声が響き渡る。
振り返ってみれば、俺たちの方にコーヒーを持っていこうとしたウェイトレスが中年の男にナイフを突きつけられているのが見えた。
続けて厨房から白いコックコートを着たシェフが何人も出てくる。
「お客様どうされました!? 当店の料理に何か不備でも?」
先頭に立ち、果敢に訊ねる女性シェフに男はナイフを突き出し――
「そんなもんどうでもいい! ここは会員制の店だろ? 金持ちも通ってるって噂の。だったら金もたんまりあるはずだ。この店にある分だけでも取ってこい! そうすりゃとっとと出て行ってやるよ。こんな害獣だらけの国なんかからな!!」
「強盗、マジかよ」
「外国に逃げたい気持ちは分かるが、俺たちまで巻き込むなっつの」
「しっ、聞こえちゃうわ」
ナイフを振りかざしながら喚く強盗を前に、客は青い顔をしながらその場から動けずにいる。皆一刻も早く逃げたいところだが、強盗に目を付けられて人質にされるのを恐れてできずにいるようだ。
そんな中、リインは念話で『首監』と声をかけて俺を見る。
しかし俺は小さく首を横に振って、彼女を止めた。
今飛び込んでいけば容易に制圧できるが、タイミングを誤ってシェフたちを巻き込む可能性もある。向こうの気が逸れる頃を見計らった方が確実だ……あの強盗が《魔人》の可能性も0じゃない。
「……分かりました。奥の金庫に一週間分の売り上げが入ってます。私たちだけでは運びきれませんから、ついてきていただけないでしょうか?」
恐る恐る申し出る女性シェフに強盗はシェフと客たちを見渡し、ニヤリと口を吊り上げる。
「その間に客を逃がそうってハラか。まあいい。売上と人質一人いれば十分だ。金庫まで案内しろ」
ナイフを突き出しながら迫る強盗に頷き、女性シェフは両手を上げたまま奥へ向かい、男もそれに続く。
二人が奥に向かった直後、客たちとウェイトレスは弾けたように外へ逃げだし、ホールには俺とリインだけが残された。
「今の隙に私たちも行くべき、でしょうか?」
「それにしては店側もあっさりしすぎだ。あのシェフも妙に落ち着いていたし……まさかと思うが――」
◇
「ここです」
立ち止まって先を促す女シェフを押しのけ、強盗は仕切りの先に踏み込む。
そこは厨房だった。妙に広いが調理道具以外見当たらない。
「な、なんだここは? ここのどこに金庫が――ぐあっ!」
強い力で突き飛ばされ、強盗だった男は床に倒される。
「何しやがる?」と口を開きかけた男が見たのは、不気味な笑みを浮かべたシェフたちだった。
さっきまで怯えながら自分を案内していた女シェフは“緑色の薬剤が入った注射器”を手に自身を見下ろしている。
「ここはあんたみたいな“獲物”を調理するための場所さ。今晩は上客が来る予定なのに新鮮な“肉”が足りなくて困ってたところでねぇ――ちょうどいいところに来てくれたわぁぁ♪」
そう吐き捨てるや、女の肌は赤黒く目も緑色に変色し、指からはアイスピックのように長い爪がせり出してくる。他のシェフたちも頭から角が生えたり、服を破りながら筋骨を隆起させる。
それを見て男は目と口を大きく開き――
「まさかお前ら《侵略種》? 本当に、こんな街の中に“人間の振りした害獣”がいたのかよ!!」
動物のように手足で這いつくばり、後ろに逃げる獲物の姿と鳴き声に
「害獣とは失礼だねぇ。アタシらはれっきとした人間さ。この薬で侵略種の力を得ただけの。スポンサーや上客からは“魔人”なんて呼ばれてるけどねぇ……さぁ、邪魔なサツが来る前に“
「ひっ――ひぃぃっ」
彼女らから逃れようと男はさらに後ろへと這いずり、ドンッと背中を何かに打ち付けた。
それは厨房の壁際に設置された業務用の大型冷蔵庫だった。ぶつかった衝撃で扉が開き、中から中身が転がってくる。
「冷てっ――な、なんだこれは」
冷たさと生々しい感触に男は声を漏らすが、それを見た瞬間、男は自分の目を疑う。
それはバラバラに“調理”された人間の肉だった。原形を留めたままの――人の手足だったそれを見て、口からひぃっと悲鳴が漏れる。
男はようやく“とんでもない場所に来てしまった”と気付いた。
ここは攫ったりのこのこやって来た“人間の肉”を調理し、客に喰わせる“食堂”だったのだ。
「ひっ――た、たすけてっ!」
「こんな害獣だらけの国から逃げたかったんだろう。よかったねぇ。あんたは“あの世”って国に逃げられて、お客様にはあんたの肉を堪能してもらえるんだ。喜んで調理されなよっ!」
女シェフの
しかしその直後、だだだっと慌ただしい足音、その一瞬後に甲高い金属音が響いた。
まさかと目を開くと、スーツを着た青年が抜き身の刀で魔人の爪を受け止めていた。
「あ、あんたは――」
「じっとしてろっ! はぁっ!」
青年は後ろを見ず一喝しながら爪を弾き上げる。それを見て他の魔人シェフが踏み出しかけるが、あらぬ方から飛んできた赤いナイフの爆発に巻き込まれ、怯んでいる間に飛び込んできた銀髪の女に殴り上げられ、倒れ伏した。
それを見て女シェフは驚愕に目を見開く。
「お前らはサツ? いやすぐには来ないよう上が手を回してるはず――まさか“魔人狩り”? ――ぐああっ」
驚愕の声を上げてる間に爪を叩き斬られ、さらに胴を貫かれ、女シェフは
他のシェフ――魔人たちもリインに打ちのめされていた。そこで青年が手を突きだし紺色の紐のようなものを出し、魔人たちの体を縛っていった。
「やっぱり魔人の店だったのか。あの子の言う通り、肉を頼まなくて正解だったな」
「はい……まさかこんな街中に人肉を出す店があるなんて」
床に転がる人肉を見て、健斗とリインは顔を青くしながら告げる。それを前に男は尻もちをついたまま唖然とするしかなかった。
そこへ――
「おいあんた」
「は、はい!?」
刀を持ったまま迫る青年に、男は上ずった声を返す。会話からして魔人じゃなさそうだが、機嫌を損ねていい相手じゃない。
「危ないところみたいだが、あんたも強盗未遂の現行犯だ。一緒に来てもらうぞ」
「あ、ああ、そりゃ構わねえ。で、でもこいつらと一緒は嫌だ! 俺だけ別のとこに連れてってくれ! 頼むよ!!」
足に
「安心しろ。こいつらは俺たちが引き受ける。あんたは警察に捕まえてもらってくれ」
◇
「あの店に強盗が入ったんだって」
「いや、俺が聞いた話じゃ店員の中に人型の害獣が紛れていたとか」
「うそ、そっちの方が怖い」
「うわっ、Zで呟いた瞬間、五分で1000以上もヨイネとリプライが付いたんですけど!」
次々に停まるパトカーと、雑談を交わしたりスマホで店を映す野次馬で溢れかえる中、黒髪の少女は手の平に白い蜘蛛を載せたまま少し離れた場所で立ち尽くす。
「“魔人の食堂”をたった二人で……あの人たちは一体?」
◇
「ええーー!! うそぉ、それマジ~~!?」
スマホを耳に当てながら素っ頓狂な声を上げる緑髪の少女。
それにつられ、サングラスをかけた灰色髪の男が椅子を回転させ、株価や侵略種情報を映している複数のモニターから少女に視線を移した。
「どうしたマナ? 何かあったのか?」
言葉とは裏腹に大して関心なさそうに訊ねる男に、マナと呼ばれた少女はスマホから顔を離し、むすっと頬を膨らませながら答えた。
「『Pomegranate』って紙谷にあるお店、潰れちゃったんだって~。強盗が入られたせいで、店員たちまで魔人だってバレちゃってさ。強盗も店員もみんな逮捕。今夜あそこで食べるつもりだったのに。どうしようエイジくん?」
「逮捕? おかしいな。あそこもうちの得意先が管轄してるから、魔人関連は動かないはず。動かざるを得なくなったとしても一報ぐらい入れるはずだが……」
エイジというサングラスの男は顎に手を載せながらひとりごちる。その横から甘ったるい声が返ってきた。
「警察以外の組織が動いたんちゃう。この間、外国から調査機関が入ってきたってニュースやってたやろ」
そう言うと、マナから離れたソファに座るヴェールを被った女がスマホを弄り、ある動画を再生する。
そこには調査機関――あらため『国連危険生物駆除機関』の代表が記者会見に臨む姿が映っていた。それを見て、女はふふっと唇を上げる。
「外国の? めんどうくさいな~。今日のご飯台無しにされた仕返しにそいつら食べに行こうか?」
本気でのたまうマナにエイジは首を横に振りながら、
「よせよせ。国連や軍とかに動かれるとさすがに厄介だし、そいつらも丸め込める見込みはある。“魔人狩り”探しに利用できるかもしれねえしな。今動くのは得策じゃない」
「ええ~、じゃあ代わりにチトセ食べていい? なんとかって国の仕事失敗しちゃったみたいだし、お仕置きってことで♪」
「私が仕入れた食材食い散らかしといてよく言うわ。ま、ちょうど運動したかったとこやし、戦うんはええよ。私が勝ったら、マナちゃんを代わりに食べさせてもらうけど」
マナとチトセは互いに笑みを交わし、両腕を変色させながら対峙する。そこにエイジが言葉を割り込ませた。
「
チトセが帰ってきてから、二人の仲裁のような真似をすることが増えた。マナだけなら言うこと聞いてくれて楽だったんだが。
チトセは一人だけで
頭を抱えたくなるエイジをよそに二人はあっさり姿を戻し、マナはスマホを取って“出前”を注文し、チトセは動画のニュースに目を戻した。
――さっそく動き始めよったか、御神健斗“君”。